13/01/06 00:25:45.08 kuZ7daiL0
「のどちゃん」
え?
聴き慣れた声でありながら聴き慣れない響き、という違和感に振り向くと、そこにいたのは咲さんだった。
「どうしたんですか?」
「えへへ。優希ちゃんのマネ。
のどちゃんって響き、可愛くていいなあって前から思ってたんだ」
「そうなんですか…なんだかちょっと気恥ずかしいですね」
「そう?」
「はい。実はその呼ばれ方、最初は少し恥ずかしかったんです」
「そうなの?」
「はい。こう言ってはアレですが、私、あまり友達いないんですよ」
「…え?」
「転校生でしたしね。最初はあまり馴染めなくて…
そんな時、私に遠慮なく話しかけてきてくれたのが優希でした」
もちろん、好奇心で話しかけてきてくれる人たちも大勢いましたが。
「でも、転校生だったら質問攻めに遭うんじゃないの?」
そう思いますよね。
その通りなんですけど。
「最初だけでしたよ。
私が面白くない人間だとわかると、すぐに皆、興味を失いました」
「……」
「どうやら、取っ付きにくい印象を与えてしまったみたいで。
そんなつもりじゃなかったんですけど。
でも、それでも優希は話しかけ続けてくれました」
「それで、友達になったんだね」
「はい。私はこんな人間ですので、中々友達が…」
「私が最初に部室に来た時も微妙に距離をおいてたよね~」
「う…それはもう忘れてください…」
「ふふ、なるほど、そっかあ。そういうことかあ」
「どうしたんですか?」
「なんでもないよ。ただ…」
咲さんはそこで言葉を切り、
「…うん。なんでもないよ」
と、なんでもありそうな顔で言った。
「咲さん、何を言おうとしたんですか?」
「だから何でもないってば」
「嘘を言わないでください。気になります」
「…っと、そろそろ始業だね。じゃあお先に」
そう言うと咲さんは校舎に向かって走りだした。
慌てて追いかけるが、私の足では咲さんに追いつけはしない。
ここは諦めて昼休みに聞くことにしよう。
足を止め、天を仰ぐ。
昼休みの予定が埋まってしまった。
咲さんたちと昼食を共にするのはいつものことではあるが…