12/08/06 19:40:08.80 hnPhbgMhP
翌朝、わたしは飛ぶように駆けてさやかちゃんと仁美ちゃんとの待ち合わせ場所に急ぎました。
昨晩はその日の出来事が次から次へと思い出されて、そのたびに顔がかあっと赤くなり、一睡もできませんでした。
そして今日も昨日のようにさやかちゃんに可愛がってもらえると思うと、心臓がドキドキしていてもたってもいられなくって
朝食もそこそこに家を飛び出し、知らず知らずのうちに走り出してしまっていたのです。
家の前の坂を下り終わって、待ち合わせ場所に一人たたずむさやかちゃんの姿が見えてきました。
わたしの胸の高鳴りもよりいっそう大きくなります。さやかちゃんがわたしの足音に気付いてわたしの方に振り向きます。
そして。
「あっ、まどかおはよー」
あれ? 確かにさやかちゃんは笑顔でわたしに手を振っていてくれていますが、その振る舞いには昨日の面影は全くなく、普段通りそのものでした。
わたしが駆け寄っても、手にキスしたりお姫様だっこしてくれようとする素振りすらありません。
「どしたのまどか? 変な顔して」
「えっと、その……」
当てが外れてわたしが混乱していると、仁美ちゃんがやってきました。
「おはようございます、お二人とも。遅れて申し訳ありませんでしたわ」
「んーん、そんなに待ってないよ。あたしらも今来たとこだし。じゃあ、行こっか」
歩き出した二人に続いて、わたしも歩き出します。昨日と違うさやかちゃんの様子を見ても、仁美ちゃんは全く気にした様子がありません。
昨日のさやかちゃんは、やっぱり夢か幻だったんだ、とわたしがひそかにため息をついたその時。
「いやー、昨日は仁美のおかげで大変だったよー。いくら負けた方が何でも言うこと聞く罰ゲームだったからって、
『一日まどかさんに思いっきりキザに格好良く接してあげてくださいな』なんて言われるなんてさー」
「あら、さやかさんだってノリノリだったではありませんか。私がお願いした以上のことをやってらしたくせに」
わたしは、二人の言葉を聞いてただただ呆然とすることしかできませんでした。昨日のさやかちゃんは、夢でも幻でもなかったのです。
ですが、ですが。いっそ、その方が良かったかもしれません。
「まどかー、あんただって昨日は可笑しかったでしょ……まどか?」
わたしの方を振り向いたさやかちゃんが、わたしの顔を見てぎくりと動きを止めます。何故か仁美ちゃんも慌てています。
「まどかさん? あの、私は良かれと思って……」
「良かれって?」
「いえ、その」
わたしの肩は小刻みに震えていました。昨日のあまりのさやかちゃんのかっこよさに浮かれて、舞い上がっていた自分がバカみたいです。
すべて仁美ちゃんの計略とさやかちゃんの悪ふざけのせいだったなんて。自分が情けなくてみっともなくて消えてしまいたくなりました。
「あの、まどかごめ」
「さやかちゃんのばかあああああーーー!!!」
そう叫ぶと同時に走り出して一日中学校のトイレに閉じこもり、キザさやかちゃんの延長三日間を引き換えに説得に応じたわたしを誰も責められないはずです。(キリッ
>>1乙。