12/06/17 22:41:29.63 brbFbZyw0
さやか「ん？ どうしたの？」
杏子 「あ、ああ、別に……」
さやか「ひょっとしてなんか隠してる？」
杏子 「何も……って言ってもあんたのことだ、それにあまり隠し事もしたくねえし」
さやか「うん」
杏子 「あたしはね、今日が一年で一番嫌いなんだ」
さやか「今日―あ……」
杏子 「誤解のないように言っておくけど、親父が嫌いって意味じゃない。今日が嫌いなんだ」
さやか「…………」
杏子 「父親にさ、感謝する日だろ？ なんだかんだ言っても自分を育ててくれた大切な人だ。
なのにあたしは……父さんに何もできなかった。それどころか絶望させちまった……。
あたしは親不孝者だ。バカな娘さ―」
さやか「杏子、あんたは……」
杏子 「さやか、両親を大切にしなよ。たとえ喧嘩したって憎み合ったって自分を一番分かってくれるのは親だけなんだ」
さやか「杏子はバカでも親不孝者でもないよ」
杏子 「…………」
さやか「あんたはお父さんのために願ったんだ。結果が伴わなかったとしてもその気持ちはウソじゃないでしょ？」
杏子 「どうだかな……今にして思えば結局は自分のために契約したのかもしれねえな。
生活が苦しかったから、父さんの話をみんなが聞いてくれるようになれば、また元の生活に戻れるって」
さやか「違う……杏子、それは違うよ！」
杏子 「な、なんだよいきなり……！？」
さやか「自分のために祈った、って？ だったら何であんた、泣いてるんだよ？」
杏子 「あたし、が……？」
さやか「自分のことしか考えてない奴はそんな涙流したりしないよ。杏子、あんたは今でも―」
杏子 「さやか…………」
さやか「ねえ、杏子。辛いかもしれないけどさ、今からプレゼント買いに行こう」
杏子 「プレゼント？ 誰のだよ……」
さやか「あんたのお父さんに決まってんじゃん」
杏子 「なに言ってんだよ……あたしが今さら―」
さやか「今日はそういう日なんだから」
杏子 「できるかよ……父さんを裏切ったあたしの贈り物なんて……」
さやか「あんたさっき言ったじゃんか。自分を一番分かってくれるのは親だ、って。
だったらさ、あんたの気持ち……きっとちゃんと伝わるよ。
だって杏子、今でもお父さんのことが好きなんだろ？」
杏子 「…………」
さやか「ほら、隠し事したくないんだろ。正直に言っちゃいな」
杏子 「ああ、好きだ。父さんのこと、大好きだし尊敬してる」
さやか「よし、よく言えた！ じゃあ早くプレゼント買いに行こう！」
杏子 「ちょっと待てよ、あたしお金持ってない……」
さやか「え、だって……」
杏子 「真っ当な方法で得てないお金でプレゼントなんて―」
さやか「そっか、ならあたしが―」
杏子 「いや、いい。気の利いたものは買えないけど、せめて」
さやか「ここって教会の裏の……？ ここでどうするの？」
杏子 「昔さ、モモによく作ってやったんだ。ほら、こうやって軽く結んで」
さやか「へえ、花飾りか。月桂冠みたいなもの？」
杏子 「そんな立派なものじゃないけどね」
さやか「でもよく出来てるじゃん」
杏子 「あたしにはこれくらいしかできねえけど……父さん、喜んでくれるかな？」
さやか「うん、きっと喜んでくれるよ」
杏子 「さやか…………」
さやか「なに？」
杏子 「…………ありがと」
たまにはこういうＳＳも。
動画作るのって難しいのですね……。