11/12/07 19:28:49.55 Mxu1f6On0
「フレーッ! フレーッ! あっかっぐっみっ!!」
「いけいけ白組! いけいけ白組!」
秋空の下に響くのは、声を振り絞った援声。そこに観衆たちの歓声と悲鳴が入り交じり、
グラウンドは興奮のるつぼと化している。
体育祭。小中高と秋に必ずあるイベント。体育会系の生徒が輝き、文科系はひたすら憂鬱になるこの行事。
基本は文科系、魔獣相手にやっていることは体育会系。そんなイレギュラー生徒、暁美ほむらは憂鬱を通り越し、
死んで腐って踏んづけられた魚のような眼をしていた。
(…………暑い……しんどい……喉痛い……帰りたい)
心中でうめき声を上げ続けるほむらが着ているのは、真っ白の上に紺のブルマが揃いの体操着ではない。
黒一色の上着に、同色のズボン。額に白ハチマキ。手に白手袋。きっちりとしまった詰襟。
つまりは、応援団の格好であった。
ほむらは観客席のもう一段上に作られた応援団席で、手を振ったり叫んだりという
自分のキャラと百八十度違うことをさせられていた。
(断ればよかった……病み上がりだから無理ですって強引に断ればばよかったのよ……)
ひたすら襲い来る後悔は、己の迂闊さとクジ運の悪さに向けられる。
各クラスから選抜される応援団員。数は男子五人に女子一人。その人選は公平無私にクジで選ばれる。
そしてほむらが適当に引いたクジには、見事に赤い丸の当たり印。
売店のアイスでもマーブルガムでも当たりを引いたことが無い少女の、人生初の当たりクジであった。
へし折りたいぐらい感動的だった。