11/12/10 17:49:47.19 fM8KxpmP0
折角の皆既月食なのでマミ×キュゥべえでちょっとSS
窓の方角とか日付とかあんま気にしないでいただけると幸いです。一応本編では西窓と南窓があるように見えましたが。
マンションの窓から空を見上げると、ちょうど満月がビルの上に光っているようだった。
時計を見ると21時45分。
月食が始まる時間だった。
マミは紅茶を淹れて部屋の電気を消し、窓辺に置いた椅子に腰を下ろす。
横の戸棚の上にティーカップを置き、窓を開ける。
窓の幾何学的な模様による歪みが無くなり、マミの目に真円の満月が確認できた。
2011年12月10日。
マミにとって、「皆既月食の始まり」を見るのは初めてだった。
昨年の末に、月食が終わる直前の30分を見たことを思い出す。
「11ヶ月と11日ぶりだね」
足元にやってきたキュゥべえが告げる。
「早いものね」
一年を振り返るマミのひざの上に、するりとキュゥべえが登る。
「去年は窓からは見られなかった。環境としては絶好だろうね」
キュゥべえの言葉が始まりを告げたかのように、月の左にぼんやりと陰りが見える。
「君の人生に換算すると、『月食』を完全に観察できるタイミングって言うのは貴重だろう」
キュゥべえは軽く背を伸ばして、そういいながら月を見ていた。
「そうかもしれないわね」
キュゥべえに答えながら、欠け行く月をしっかりと目に焼き付ける。
「しっかり見るといいよ。幸い魔女の気配も無いみたいだしね」
キュゥべえの声に気付かないまま、瞬きの一回も惜しむように、マミの瞳はまっすぐに月を見据える。
マミはひざが軽くなったのに気付いたけれど、キュゥべえの行方を追う気にはなれなかった。
「珍しい気遣いね」
「君たちの楽しみを奪う事は得とは思えないからね」
互いを見ずとも、意図は汲み取れる。
だからマミは月を見続け、キュゥべえは部屋を後にする。
3時間半の、自然の織り成すロードショウ。
幕は上がったばかり。
後は時に任せて、行く末を見守るだけだった。