07/02/14 11:50:05 lteevlYb0
>>578
「お、お姉…様……そ、その……」
「綺麗な服が汚れてしまうであろう? それに、その長いスカートでは歩きにくかろう」
「でも……っ」
「……みどの」
「は…はい……っ!」
「今代の『A』は誰かえ?」
「それ…は……」
「聞こえなんだか? 先ほど返事をしたであろう。それとも……媛の声は聞きたくないと?」
「い、いえっ! お姉様! 此芽お姉様ですっ!」
「では、桜守姫の当主は誰かえ?」
「御前……」
「――」
「ひっ…!」
「あやつなど、とうに居らぬ。あの者がどういう末期をたどったか……そなたも見ておったであろう?」
「見…まし、た……」
「では、改めて。桜守姫の当主は誰かえ?」
「此芽お姉様……です」
「ほほ、さすがは媛の妹。理解が早いのう。ならばその理解のうえで、なお媛の声に従わぬは何故か?」
「…………」
「桜守姫の直系ともある者が『なんでもする』と言うておきながら、自ら犯した罪も償わぬ……と?」
「し、従いますっ! 従いますからっ! だから、お姉様……赦して……」
「然様ですか。ならば早くなさい」
「……はい。…………っ」
「あの日よりこの空明市でも星が瞬き、月が昇るようになりました。今宵は満月。ずいぶんと明るい夜だとは思いませぬか?」
「…………ぅ……っ」
「みどの」
「…は…い……」
「少し、歩き疲れました」
「え……?」
「なれど、ここには媛の座る椅子がありませぬ.。そう思わぬか?」
「お…お姉様……、……あ…あたしに、お…お座り、ください……」