ロリショタバトルロワイアル13at SUBCAL
ロリショタバトルロワイアル13 - 暇つぶし2ch673:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:14:42 PUCyvFSS
 

674:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:15:05 iDD2WFCb
              

675:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:15:17 qiOTB6eM
 

676:少し遅い(前編6/8) ◆JZARTt62K2
07/10/15 19:15:53 EFQEoYNx
チアキのことを教えても教えなくても、特に重要な意味はない。
それならば、チアキが姿を隠す理由はないはずだった。
……しかし、太一の主張にチアキは首を振る。
「それは、誰が確かめたんだ?」
「誰が、って……」

「誰が、あいつが殺し合いに乗っていないと確認したんだ?」

チアキは、感情の灯っていない声で淡々と続ける。
「嘘を吐いてるだけかもしれない。殺意を隠しているだけかもしれない。善人のふりをしているだけかもしれない。
 どうして、殺し合いに乗っていないと断言できる? そう信頼するほど、太一はあいつを知っているのか?」

弥彦の無実を『N』に聞いただけの太一は、反論することができない。
太一自身が弥彦と真正面から向き合ったのは、実際、先程の交渉が初めてだったのだ。
何も言えない太一に向かって、チアキは言葉を重ねる。

「まあいいや。仮にあいつが殺し合いに乗っていなかったとしよう。
 でも、その考えがずっと変わらないと、どうして言い切れるんだ?
 脱出は無理だと諦めて、優勝を目指すことにしたかもしれない。人が死ぬのを目の当たりにして、常識が崩壊したかもしれない。
 ―人を殺してしまって、吹っ切れたかもしれない」
徐々にチアキは、言葉に感情を上乗せしていく。
何かを、訴えるように。

「人間なんて、いくらでも変わるんだ。
 なのにッ、あいつが殺し合いに乗っていないと、どうして断言できるんだよッ!」

最後は、ほとんど叫び声になっていた。悲痛さを滲ませた残響が、タワーの内部に広がって、消えた。
平坦な表情をした少女の姿は既になく、唐突に感情を昂ぶらせた“参加者”だけが、非難するように太一を睨みつけている。
目に涙すら浮かばせたチアキを前に、太一は言葉を選ぶように沈黙していたが、やがて、静かに口を開いた。
「落ち着け、チアキ。その理論でいくと、俺もお前も殺し合いに乗ってることになっちまうぞ?」
「…………」
黙りこくるチアキを無視して、太一は徐々に声のトーンを上げていく。
雪山の遭難者を諭すように、熱く。そして、力強く。
「疑心暗鬼は、ジェダの思う壺だ。こんな罠に引っかかってちゃ、アイツを倒すことなんてできない―
 ……だから! ジェダを倒すためには、お互いに信頼し合わないとダメなんだよ!」
きっぱりと言い切った太一は、両手でチアキの肩を掴んだ。
ビクリと震えるチアキに構わず、放つ言葉に勇気を宿らせる。
「チアキ、一人で戦うな! ジェダを倒さなきゃ、俺達は生き延びることはできないんだ!
 敵の力は強大だけど、皆の力を合わせれば絶対勝てる! だから、信じるんだ!」
デビモン、エテモン、ヴァンデモン、ダークマスターズ……
太一が今まで戦ってきた敵は皆、絶望的なまでに強大な力を持っていた。
たった一人で立ち向かっていたとしたら、間違いなく敗北していただろう。
だが、太一は勝った。
光子郎の知識を駆使し、空の愛情に助けられ、丈の誠実さで皆をまとめ、ミミの純真さで仲間を募り、
ヒカリの示す光を目印にして、タケルの掲げる希望を信じ、ヤマトの友情を力に変え、太一の勇気であらゆる困難を突破してきたのだ。
一人では倒せない敵も、皆で戦えば必ず倒せる。
太一は、そう信じていた。

―そしてチアキは、そう信じていなかった。

「……もういい」
元の無表情に戻ったチアキは、肩に置かれた太一の手を振り払うと、くるりと踵を返した。
「チアキ!」
「邪魔したな。私はそろそろ行くことにするよ」
机の上の食料や支給品を、自分の分だけランドセルに戻しながら、チアキは別れの言葉を口にする。
太一の存在を無理矢理無視しているかのような、厳然とした拒絶。
ひび割れた貝殻のように、触れれば壊れてしまいそうな、危うい拒絶。
太一は、黙々と出発の準備を始めたチアキに更に声をかけようとして―やめた。

677:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:16:48 iDD2WFCb
   

678:少し遅い(前編7/8) ◆JZARTt62K2
07/10/15 19:17:08 EFQEoYNx
(……これ以上言っても逆効果みたいだな。チアキは、チアキの道を行くってことか)
誰だって、独りになりたいときくらいある。そんなときは、他人が何を言っても無駄だ。
しかし、別れて終わりではない。志が同じなら、いつかまた会えるはず。
ダークマスターズとの戦いの最中に離れ離れになりながらも、再び共に戦うことになった、石田ヤマトのように。
(でも、なんか危ういな……)
荷物をまとめているチアキの後姿を見た太一は、漠然とした不安を覚える。
ヤマトにはガブモンがいた。それに比べて、チアキは本当に一人なのだ。
敵に襲われたとき、果たして対処しきれるのかどうか……
(そうだ!)
唐突に“ある考え”が浮かんだ太一は、ポケットから円形の容器を取り出した。
円形の容器には穴が開いており、太一が容器を振ると、穴から丸薬が3つ転がり出る。
丸薬に問題がないことを確認した太一は、ランドセルを背負おうとしていたチアキに向かって、手の平を突き出した。
「これ、持ってけよ」
「……なんだ、コレ?」
目の前に突き出された奇妙な物体に、チアキが疑惑の視線を向ける。
「『コンチュー丹』って言ってな。飲むと『虫の力』を得ることができる薬なんだ」
丸薬は、太一の支給品の一つである『コンチュー丹』だった。
チアキの身を心配した太一は、護身用の道具として10粒中3粒を譲ることにしたのだ。
「身につく力は、アリの怪力に、チョウの身軽さに、ハチの素早さ……それと、カブトムシの硬さだな。
 これさえ飲めば、大抵の敵から逃げられると思うぜ」
自慢げに説明する太一から丸薬を受け取ったチアキは、その不思議な丸薬をためつすがめつ見ていたが、
やがて、そのうちの一つを選び取り、太一に突き出した。
「飲んでみろ」
「は?」
「その、虫の力とかいうのを見てみたい」
チアキは平坦な声でそう言うと、当惑している太一の手に丸薬をねじ込んだ。
しばらくの間、太一は、チアキと突き返された丸薬を交互に眺めていたが、やがて得心がいったように苦笑した。
「なるほど。信用できないってか」
「当然だ。いきなり不気味な薬を渡されても飲めるわけないだろう」
「ったく、本当に疑り深いやつだな。
 ……まあいいや。俺も飲んだことなかったし、テスト代わりってことで」
太一は特に気分を害した様子もなく、丸薬を飲み込んだ。


変化は、劇的だった。
虫の力を得た太一は、チアキの目の前で4人がけのソファーを軽々と持ち上げたのだ。
コンチュー丹の効能の一つである『アリの怪力』を見せ付けられるたチアキは、始めは驚愕した。
だが、太一がコンチュー丹の効果を証明するにつれて―
チョウの身軽さでタワーの内部を跳ね回る姿を見て、
ハチの素早さでフロアを何度も往復する姿を見て、
カブトムシの硬さで様々な物を弾き返す姿を見て、
―なぜか、チアキの表情は暗くなっていった。

「どーだ! 信じたか!」
薬の効果の証明を終え、勢いよくソファーに沈み込んだ太一は、やけくそ気味に大声を上げた。
タワーの中で激しく動き回っていたため、滝のように汗を流している。
といっても、コンチュー丹の効果に興奮してはしゃいでしまった太一の自業自得ではあるのだが。
しかし、そんな太一とは対照的に、チアキは顔を俯けていた。
「……なんでだよ」
チアキが、聞き取れないほどのか細さでボソリと呟く。
「なんで、こんな便利な道具を、出会ったばかりの私にくれるんだよ」
ソファーの上で息を整えていた太一は、チアキを見た。
それまでずっと俯いていたチアキは、太一を見た。
二人の視線が交錯し、チアキは、非難すら混じった目線で太一に訴えかけた。
『一体、何を考えているんだ』と。

679:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:17:29 chf6AANm


680:少し遅い(前編8/8) ◆JZARTt62K2
07/10/15 19:18:00 EFQEoYNx
チアキの視線を受けた太一は、少し照れくさそうに顔を背けながらも、答えを返した。
「……お前が、悩みを自分一人で抱え込んで、あまり他人を頼らなそうなやつだからだよ。
 最後まで我慢するやつは、危なっかしいからな。
 ―ヒカリも……俺の妹も、そうだった」
太一が口にした『妹』という言葉に、チアキは驚いたような、焦ったような、複雑な表情を浮かべた。
「妹が、いるのか」
「言っとくが、チアキとは全然似てないぞ。意地っ張りなところ以外は、本当に、マジで、全ッッッ然似てない」
過剰なほどに言い切った太一は、しかし、不意に声のトーンを落とした。
チアキから顔を背けたまま、いつになく真剣な表情で言葉を繋げる。
「ヒカリは、いつも人のことばっかり考えて、自分が辛いとか苦しいとか、絶対に最後まで言わないやつなんだ」
「……本当に、似ていないな。私は、むしろ自分のことばかり考えているよ」
自嘲の笑みを浮かべたチアキを、しかし太一は慰めない。
慰めの言葉など無意味だと、わかっているから。
だからただ、自分の想いだけを、語る。
「まあ、そんな性格だから、俺が死んだらヒカリは多分泣く。だから、俺は絶対に生きて帰らなきゃいけないんだ。
 ……チアキだって、生きて帰りたい理由が―待っている家族が、いるんじゃないか?
 仲間割れをしてる場合じゃないと、俺は思うんだけどな」
「…………ッ!」
不意打ち気味に話を振られたチアキは、唇を噛んで俯いた。
そんな、再び俯いたチアキを見て、太一は思う。
推測でしかないが……多分もう、大丈夫だと。
チアキの表情は、最初と比べて随分と険が取れている。
誰も信じず、周囲に敵意を振り撒いていた少女の心が開かれつつあるのかもしれない。
流石に、今すぐとまではいかないだろう。だけど。
(独りで考えをまとめれば、きっと仲間になってくれるさ)
希望的観測を心に描きながら、ペットボトルの水で乾いた喉を潤す。
ちょうどその時、何かを決心したように、チアキが顔を上げた。
「た、太一!」
「ん。どうした?」
太一はペットボトルから口を離し、チアキを見た。
決意を秘めた、チアキの顔を。
―そして、その顔が真っ青に染まる瞬間を。
「あ……」
「……チアキ? どうし……、ごほっ」
言葉の途中で咳き込んだ太一は、反射的に口を押さえる。


大量の血が、その手を紅色に染め上げた。


「え……?」
口から手を離した太一は、紅く汚れた自分の手を、他人事のように見つめた。
どろりとした赤色は太一の手をてらてらと照らし、肘の先から床へと落ちる。
ぼたぼたと、口から血が垂れる感触。ぼろぼろと、身体が崩れていく感覚。
「ぁ……」
墜ちる視界。
消える触覚。
鈍る思考。
薄れゆく生命を感じながら、太一が最後に見たものは、泣き出しそうなチアキの顔。
最後に聞いたのは、掠れて消えそうなチアキの声。

「……他人の前に食料を置いて、目を離すなよ。どこまでお人好しなんだバカ野郎……」


    ※    ※    ※    ※    ※



681:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:18:06 PUCyvFSS
 

682:少し遅い(後編1/3) ◆JZARTt62K2
07/10/15 19:18:54 EFQEoYNx
結局のところチアキの目的は、太一が持っていた首輪探知機だった。
参加者の居場所を知ることができるレーダーは、チアキにとってあまりにも有用すぎたのだ。
探知機を奪うためだけに『利用価値があるかもしれない参加者』を一人殺しても、十二分にお釣りがくるほどに。
だからチアキは、太一が不審者の確認のために席を立ったとき、目の前にあった太一のペットボトルに青酸カリを入れた。
それは、これ以上ないチャンスであり、幸運であり、不運であった。
もしも、直前のやり取りから、チアキが首輪探知機の存在に勘付いていなければ。
もしも、食事が終わっており、机の上に飲みかけの飲料水がなければ。
もしも、チアキが青酸カリをポケットに入れていなければ。
チアキの目の前に、太一の死体が転がることはなかっただろう。

「……うぷッ」
チアキは、喉の奥に込み上がる胃液を必死で飲み込んだ。
胃酸による独特の苦味が、チアキの舌を麻痺させる。
死体を見るのは、初めてではない。顔がどす黒く変色したよつばの死体は、今でも頭に焼き付いている。
人を殺したのも、初めてではない。陸の上で溺死させたあのバカ野郎の顔は、今思い出しても腹が立つ。
だけど、無関係の人間を殺すのは、直前まで普通に話をしていた人間が“自分のせいで”絶命する瞬間を見るのは、初めてだった。
(これが見たくなかったから、出て行くつもりだったのにな……)
その場で太一の死を待ったほうが効率がいいにも関わらず、タワーを離れようとした理由の一つがこれだ。
少しの間でも交友を持った人間が―笑いながら、自分を受け入れてくれた太一が死ぬ場面を、見たくなかったから。
八神太一が死ぬ場面に遭遇することと比べれば、時間を置いてからタワーに戻ることなど、些細な手間だった。
結局、選択肢などなかったのだけれど。

「……まあ、いいか。目的は、達成できたんだし」
レーダーは、手に入ったんだ。良しとしよう。
そう、擦り切れた声で無理矢理自分に言い聞かせたチアキは、机の上の首輪探知機に手を伸ばす。
運よく血で汚れていなかった首輪探知機を掴んだチアキは、その拍子に、見開かれた太一の瞳を見てしまった。
「…………ッ」
居眠りでもしているかのように机に突っ伏した太一の死体は、虚ろな目でチアキを見つめていた。
その顔に、苦痛はないように見える。ただ、『何が起こったかわからない』といった表情を、死貌に貼り付けているだけだ。
「……苦しんだ、かな」
よつばを殺したバカ野郎と違って、太一に恨みはない。ただ、首輪探知機のために殺しただけだ。
苦しんで死ぬことなど、望んでいなかった。

(って、何を言ってるんだよ。私が殺したことに、変わりは無いじゃないか)
そうだ、何も変わらない。
こんな思考の理由は、きっとただの罪悪感。単なる言い訳だ。
死に方如何に関わらず、自分が太一を殺したことは変わらない。
南チアキが『ひとごろし』であることに変わりは―
(あれ?)
おかしいな。
私は、『ひとごろし』にならないために戦っているはずなのに。
どうして、人を殺しているんだろう。
(なんでだっけ。なんでだっけ。なんでだっけ)
思考の迷路に嵌り始めたチアキは、必死で記憶を探った。
太一と出会ったせいで忘れかけていた目的を、記憶の底から引きずり出す。
二人の人間の死によってチアキの価値観が崩壊した、最悪の記憶を。
(変な広間からこの島に飛ばされて、パタリロと出会って、よつばと出会って、パタリロと別れて、よつばと別れて、それから……)
よつばが死に、チアキは人を殺した。
だから、地獄で決意した。
「……思い出した。私が『ひとごろし』だと知っている人間を、残さないためだった」
そのために、優勝する。そのために、他の参加者を殺す。
何か致命的に間違っているような気もするが、関係ない。
だってもう、戻れないのだから。完全に、戻れなくなったのだから。
八神太一を、殺したのだから。
……………………………………。

683:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:19:13 qiOTB6eM
 

684:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:19:33 iDD2WFCb
  

685:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:19:42 PUCyvFSS
 

686:少し遅い(後編2/3) ◆JZARTt62K2
07/10/15 19:19:46 EFQEoYNx
「……私は、戻りたかったのかな」
多分、戻りたかったのだろう。
戻れなくなった今だから、はっきりとわかる。
自分は、利用するために近づいたはずの太一に、いつの間にか魅せられていた。
真っ直ぐに人の目を見ることができる太一に、勇気に溢れた太一に、光の道を歩いている太一に。
人を殺してしまったチアキは、嘘を吐き続けているチアキは、影の道を歩もうとしているチアキは、魅せられた。
あまりにも日常的な太一の態度は、血に塗れたチアキの思考を徐々に洗い流していったのだ。
だから、ほんの少しだけ思ってしまった。
よつば殺しの犯人を“撃退”しただけの自分は、まだ戻れるかもしれないと、傲慢にも思ってしまった。
そうでなければ、『誰でも殺し合いに乗り得る』といった、自らの首を絞める主張を、大声で叫ぶことなどしなかっただろう。
(だいたい、お前を信じて弥彦だけを疑う理屈はないだろう……。よく、考えろよ)
チアキが自分の姿を見せたくなかった理由は、『南チアキが八神太一と一緒にいた』という情報を、誰にも漏らしたくなかったから。
太一殺しの疑いがかかる危険を避けるために屁理屈を並べて。
そのまま、溢れる感情に飲み込まれた。
(自分の言葉で興奮するなんて……まったく、恥ずかしい)
もし、あのとき太一が、言葉の真意に気付いていたら。
疑心暗鬼の否定などせず、南チアキが作り出した殺人装置を看破していたら。
今頃どんな事態になっていたかはさっぱりわからないが、少なくとも、太一が死ぬことはなかったと思う。
―けれど、太一は最後まで気付いてくれなかった。

結局太一は、チアキの錯乱を、ただの恐怖によるものと思ってしまったのだ。
だから最後まで、人を信頼することの重要性を主張し続けた。
“人はそう簡単に殺し合いに乗らない”とでも、信じていたのだろうか。
だとしたら、この島に来てから、よほど“まともな”人間ばかりに出会ってきたようだ。
一度でも惨劇を経験していれば、人の善性を信じることがどれほど愚かしい行為なのかわかっただろうに。
自分が言えた義理ではないのだけれど―本当に、失望した。
(私を信用しちゃ、いけなかったのに)
最も疑うべき人間に向かって『仲間を信頼すること』を勧めるなんて、あまりにも馬鹿馬鹿しい。
ひどく笑えて、泣けてくる。

「きっと、全部、遅すぎたんだ」
自分自身が『戻りたい』と思っていたことに気付いたのは、ついさっきのことだ。
太一の飲み水に青酸カリを入れたときは、突然やってきたチャンスに思わず乗っかってしまった。
自分の気持ちの変化など考えず、決めていた方針に従ってしまった。
気付いたときには、もう手遅れ。
「……あと、ほんの少し早く気付いていれば良かったんだけどな」
最後に太一の名前を呼んだとき、自分は“ペットボトルの水を飲ませないようにしよう”としていた。
―結局それも、間に合わなかった。

「…………」
……過ぎたことを考えるのは、やめよう。
ただ、後戻りできる最後の機会を逃しただけ。
元々存在していなかった希望が、改めて潰えただけ。
優勝するという方針が、変わらないだけ。
それよりも今は、一刻も早くこの場を離れなければならない。
太一が言っていた『仲間』が、いつやって来るかも知れないからだ。
レーダーを片手に持ち、タワーの入り口に向かいかけたチアキは、最後にもう一度だけ振り返る。
口元を赤く染め、陰鬱に目を見開いた太一の死体が、場違いなほど鮮やかに存在していた。
(本当に、変なやつだったな)
見知らぬ参加者を平然と信じ、本気で励まし、快活に笑う。殺し合いの参加者とは、とても思えなかった。
だが、一番驚いたのは、何の見返りもなくコンチュー丹をくれたこと。
想定外すぎて、自分と同じように毒殺を狙っているとしか考えられなかった。
譲渡の理由も、『人を頼ろうとしないところが妹と似ていた』といった、どう考えても納得できないもので―

687:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:19:49 qiOTB6eM
 

688:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:21:04 qiOTB6eM
 

689:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:21:22 PUCyvFSS
 

690:少し遅い(後編3/3) ◆JZARTt62K2
07/10/15 19:21:59 EFQEoYNx
(そういえば、妹がいたんだっけ)
死ぬ直前に太一が語っていた、八神ヒカリ。
太一の帰りを待っている、家族。
ただ、いつものように家族の帰りを待っている、ひと。
八神ヒカリの話を聞いたとき、チアキが真っ先に思い浮かべたのは、二人の姉の姿だった。
それが、太一に毒を飲ませまいと動くための、最後の引き金になったのだ。
決して間に合わない、引き金の。
(……なにが、『待っている家族が、いるんだろ?』だ。
 他人の家族より、お前の家族のことを、お前の命を第一に考えるべきだろう。
 私にかまって、死んでいる場合じゃないだろうが……!)
唇を噛みながら、しばらく死体を見つめていたチアキは、やがてぽつりと呟いた。

「そう、だな。―形見くらいは、届けてやるよ」


    ※    ※    ※    ※    ※


「ふむ。変化はありませんね」
展望台から、キルアと『のび太』が向かった廃墟群を眺めていたニアは、欠伸を噛み殺しながら目を擦った。
落雷があった付近をずっと観察し続けているのだが、何の変化もない。ニアはいい加減、諦めつつあった。
(しかし、尻尾すら掴ませてくれないのは異常、と言っていいでしょう。……私が見える範囲を考慮して動いているのでしょうか?)
溜息を零したニアは、気分転換でもしようと内線電話に手を伸ばした。
電話をかける相手は、八神太一。
レーダーによってタワー周辺の監視をしている人物である。
太一がいるから、ニアは安心して一方向だけを見ていることができるのだ。
なぜなら、もしタワーに何か異常が起これば、すぐさま連絡がくるはずだから。
連絡が来ないということは、何も問題が起こっていないということ。
もしくは、太一が『何の問題もない』と判断したということ。
(彼も馬鹿というわけではありませんし、まあ心配はないでしょう)
とはいえ、油断は禁物である。
あまり頻繁に連絡を取って機嫌を損ねるのも利口ではないが、完全に連絡を絶つのもいけない。
人は、逐一行動を管理されることを嫌がる。
だが、管理監督なしでは、もしもの事態には対応できない。
これからかけようとしている電話は、そういった意味も含んでいた。
「……しかし、どんな話で場を繋ぎましょうかね」

    ※    ※    ※    ※    ※

トォルルル―

電話のベルが鳴っている。
静寂に包まれていた1階フロアに、耳障りな電子音が木霊する。

トォルルル―

受話器を取る手は現れない。
唯一存在しているヒトガタは、一切の反応を放棄している。

トォルルル―

ヒトガタは動かない。
かつて八神太一だった塊は、置物のように鎮座している。

トォルルル―

ヒトガタの目は閉じられている。
まるで、眠っているように閉じられている。
―そして。その額に、ゴーグルはついていなかった。

691:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:22:58 iDD2WFCb
   

692:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/15 19:23:31 qiOTB6eM
 

693:少し遅い(状態表) ◆JZARTt62K2
07/10/15 19:23:44 EFQEoYNx
【B-7/タワー内展望室/1日目/午後】
【ニア@DEATH NOTE】
[状態]:健康、冷静
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、
    眠り火×9@落第忍者乱太郎、タワー内放送用マイク
[思考]:出ませんね……。
第一行動方針:太一と連絡を取りたいが……。
第二行動方針:キルアの帰りを待つ。
第三行動方針:弥彦、またはキルアたちが首輪を持ってくるのを待って、解析作業
第四行動方針:メロまたは、ジェダの能力を探る上で有用な人物と接触したい
基本行動方針:自分では動かず、タワーを訪れる参加者と接触して情報や協力者を集める
最終行動方針:殺人ゲームを阻止する
[備考]:
盗聴器、監視カメラ等、何らかの監視措置がとられていると考えています。
そのため、対ジェダの戦略や首輪の解析に関する会話は、筆談で交わすよう心掛けています。
ジェダを時間移動能力者でないかと推測しました。
キルアと太一の声・性格を大方理解しました。彼らが首輪探知機を持っていることを知りました。
カツオのことを「のび太」ではないかと誤って推測しています。
[備考]:タワーのエレベーターは、2機とも緊急停止状態で動きません。

【B-7/住宅地/1日目/午後】
【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:右腕に火傷(軽度だが悪化する恐れあり)、疲労(小)、精神的疲労、強い焦り
[装備]:楼観剣@東方Project、サラマンデルの短剣@ベルセルク
[道具]:基本支給品一式、首輪(美浜ちよ)
[服装]:道着(ドロ塗れで血が結構隠れた。右腕部分が半焼け)
[思考]:どこにいるんだあっ!
第一行動方針:チアキを探し出して保護する。「犯人『バンコラン』」らしき人物と先に遭遇したら取り押さえる。
第ニ行動方針:パタリロを完全には信用できないが、信用したいとは思っている。
第三行動方針:ニアの力量は認めるが考え方には反対(強い不信感)。
第四行動方針:のび太とカツオがどうなったか不安。
第五行動方針:出来ればあの子たち(しんのすけ・ちよ・よつば・藤木)を埋めてやりたい。
基本行動方針:ジェダ達を倒す。一人でも多くの人を助ける。
[備考]:パタリロと簡単に情報交換済み。
  よつばと藤木の死について、パタリロが語った最初の仮説をほぼ信じきっています。
  C-7住宅街の西半分はある程度調べ終わりました。次はB-7住宅街を虱潰しに調べていくつもりのようです。

【C-7/裏路地/1日目/午後】
【南千秋@みなみけ】
[状態]:疲労小、顔面打撲(軽度)、額に切り傷(支障はない)、
人間不振&精神衰弱(見た目は普通)。
[装備]:ロングフックショット@ゼルダの伝説/時のオカリナ、
祝福の杖(ベホイミ残1回)@ドラゴンクエスト5、
首輪探知機、核鉄(シルバースキン)@武装錬金(展開せずポケットに)
[道具]基本支給品x2、ルーンの杖(焼け焦げている)@ファイナルファンタジー4、コンチュー丹(容器なし、2粒)@ドラえもん
青酸カリ(半分消費)@名探偵コナン、的の書かれた紙(5枚)@パタリロ!、太一のゴーグル(血がついている)
[思考]:今は、誰にも合いたくないな……。
第一行動方針:下がってしまった“殺し合い”のモチベーションを上げたい。
第二行動方針:パタリロとの合流はできれば避ける。
第三行動方針:自分を人殺しと疑う者がいれば排除したい。
第四行動方針:全て終わったら、八神ヒカリに形見のゴーグルを渡したい(自分が殺した事実は隠す)。
基本行動方針:誰も信用せず、いつもの自分を演じてみんなに殺し合いをしてもらう。
最終行動方針:このゲームを知るもの全員に死んでもらって家に帰る


【八神太一  死亡】
※フライパン、コンチュー丹(7粒)@ドラえもん、は太一の死体が持っています。
※太一のランドセル(基本支給品、包丁、殺虫剤スプレー、着火用ライター、調理用白衣、水中バギー@ドラえもん、調味料各種(胡椒等))
 は太一の死体の傍に放置されています。


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