07/12/12 15:49:38 GjxfAVyc0
>>801の続き
本社に来てから3ヶ月たった月曜日。 直属の上司に呼ばれて会議室に通されて、
人事部長がわたしを待っていた。「 本社に来て早々にすまないが、関西の営業所に
赴任してくれないか 」。人事部長は東京支店や以前、本社にいた時からのなじみの
ある上司だ。話を聞くと関西の営業所の責任者が病気で倒れたという。会社の3月の
決算月が迫っており、業務に著しい支障がでるという。人事部長は20歳も若いわたし
に頭を下げる。上司も同じだ。平社員に幹部が頭を下げる、この粋な計らいにわたしは
快諾したのだが、そもそも、それがリストラの始まりだとは、まったく気が付かなかった。
詳しい状況を人事部長からきかされて、関西で倒れた社員の名前を聞いておどろいた。
わたしが以前、面倒を見た後輩、それも、細君は東京支店で経理をやっていた方だ。
倒れた彼の病名は骨肉腫。 余命は2ヶ月だという。
これを聴いて覚悟ができた。 3ヶ月の単身赴任も後輩の為ならばなんでもない。
それよりも、彼の病気はどうなんだ、早く会いたくてわたしは週末には身の回りの
ものを車につんで、一路関西に向った。まっていろ、後輩よ。
関西の営業所で後輩はわたしを心待ちにしていたようだ。 10年ぶりに会う彼の顔が
満面の笑みになり、その後、泣き出しそうな彼は、わたしに申しあけありません、と
謝っている。 元気そうで何よりだな、早く病気を治して、俺を本社に返してくれ
よな 」 と冗談を言ってお互いに笑い合った。週明けには本格的に業務にうつり、
決算にそなえて仕事をし始める。そうそうに彼の細君がわたしに会いにみやげを持って
会社に来た。細君の表情から、もう彼は助からない事を知っている。わたしもそれは
感じていた。
仕事は順調に進み、5月の連休明けには東京に帰る見通しがたった、と思ったのもつか
の間、本社から人事異動の発令があった。大規模なリストラに伴う支店統廃合。本社機
構の縮小に、わたしのもどる場所はなかった。行き先なし。わたしは本社のかつての
上司に電話で直談判を繰り返す。約束が違う、どうなってんだこの会社は。ここからわ
たしの人間不信が始まった。