07/01/30 20:43:13 XLpPLeyC
「すっげー、つまんないよ。」
彼の言葉が、勝手に胸に広がって
”お前といる事がさ”とまで言ったように聞こえた。
額の生え際に嫌な汗が、じわり、と。
早くここから逃げ出したい、と心から思った。
「ね、だから、○○さんはどーなの」
彼が、机に手をついたから。
その顔と目が合ってしまった。
綺麗な男の顔は、今、ここにいる自分の存在を
それだけで拒絶してしまっていた。
「あた、あたし、は」
「あ、それ。」
薄い唇が、にやり、孤をかいた。
笑うと途端に、子供みたいになる。
いつか同じバイトの子が言っていた言葉が耳によみがえる。
その時は、私は笑顔なんて見たことない、と
嫌な気持ちになっていたのに。
今、彼はその少年のような笑顔を私に向けて
角ばった人差し指で、私の言葉を止めている。
「くせ、だよ。○○さんの。」
「・・・へ?」
「言葉につまった時は、私じゃなくて”あたし”になる」
子供の頃、自分の事あたし、て呼んでたんでしょ。
どう?あたってる?
男の声で、至極楽しそうに
私に向けられた言葉が、心臓を打って
私の頬を、林檎みたいに赤くした。
つづきます。