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聖婚の起源は二千年以上前にさかのぼる。古代エジプトで聖職に就いていた男女が、
女性の生殖能力を湛える為に執り行なっていた。
聖婚とはエロティシズムとは無縁であり、それは崇高な意味を持つ行為だ。
歴史をひもとけば、性交とはそれを通じて男女が神にふれるための営みだったことがわかる
古代には、男性は精神的に未完成であり、聖なる女性との交接によってはじめて完全な存在になると信じられていた。
女性との肉体的結合は、男性が精神的に成熟し、
ついには霊的―神の知恵―を得る為の唯一の手段だった。
古代における性の観念は現代の考え方と対極をなしていた。
セックスは新しい生命を創り出し―それこそ奇跡の最たるものだ。
奇跡をなしうるのは神だけだった。子宮から命を産み落とすその能力ゆえに、女性は神聖視された。
まさに神だ。性交とはふたつに分かれた人間の魂の―すなわち男性と女性の尊い結合であり、
それを通じて男性は無欠の精神を手に入れ、神との交流を果たす事ができる。
カトリック教会の異端審問官が著したある書物は、人類史上最も血塗られた出版物と呼ぶべきものだ。
『魔女の鉄槌』は“自由な思想を持つ女の脅威”を世に知らしめることや、そういう女たちを見つけ出し、
拷問し、抹殺する方法を聖職者たちに説き明かすことを目的としていた。
教会によって“魔女”と見なされたなかには、女性の学者、祭司、ジプシー、神秘主義者、自然崇拝者、
薬草収集家、さらには“自然と一体化した疑いのある”あらゆる女性が含まれていた。
魔女狩りが行われた三百年のあいだに、教会が焚刑に処した女性の数は、実に五百万人に達する。
かつて崇められていた聖婚―男女間の自然な性交は恥ずべき行為とみなされた。
教会はごくあたりまえの性欲を、悪魔とその腹心である女性の所業と見なして恐れるようになった。
―女神の時代は終わった。振り子は大きく揺れた。母なる大地は男の世界に様変わりし、破壊と戦いの神々が多くの人命を奪い続けた。
こうして現代の生活から聖なる女性が一掃された結果、アメリカ先住民の言う“平衡が崩れた社会”が訪れた。
男性ホルモンのたぎる戦争や、女性への度を超した嫌悪や、母なる大地を軽んじる風潮が不安定な状況を形作っているというわけだ。