【破滅 - 梅川昭美と三菱銀行人質事件の真実】at MIDDLE
【破滅 - 梅川昭美と三菱銀行人質事件の真実】 - 暇つぶし2ch100:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/10/19 07:32 EAHPxE1e
<<1979年1月27日 11時4分>>

おふくろきてるって・・・おふくろも死んでもらわなあかん・・・

101:伊藤忠郎 ◆UME/seXGGA
02/10/19 07:33 EAHPxE1e
お母さんが君に電話ででも話したいと言っているが、どうするね?

102:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/10/19 07:34 EAHPxE1e
いや、おふくろとは話しまへん。

おふくろに言うとくんなはれ、ワシを見捨ててくれって・・・。

おふくろ来たらワシの目の前で殺す。

どうせワシが面倒みなければ、おふくろは孤独や。

おふくろ来たらワシの目の前で殺す。

そのほうがおふくろも楽や。

103:伊藤忠郎 ◆UME/seXGGA
02/10/19 07:35 EAHPxE1e

・・・昼めしなどどないや?

104:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/10/19 07:36 EAHPxE1e

おふくろに言うとくんなはれ・・・。

親でも子でもない。

ワシは鬼や!

鬼になったんやと!

105:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/19 07:39 EAHPxE1e
少ないですが午前の分はここまでです。

仮眠を取りますので、午後の再開(時間未定)までは、
書き込みしてくださってOKです・・・。

106:大人の名無しさん
02/10/19 07:48 uJekLkNe
お疲れ様、ずっと読んでました。

107:大人の名無しさん
02/10/19 08:53 l9qzMcU2
迫真のレポート、非常に興味深いです。でも、あまり無理はなさらずにw

108:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:38 RWUS2gUb
大阪府警の持久作戦は着々と進んでいた。

まず1月27日未明、行員に命じて下ろさせたシャッターにドリルで穴を開けた。
あとに犯人に気づかれ内側からふさがれてしまったが、東側の自動支払機の
キャビネットをはずし、スキ間をつくった。梅川はわずかな物音にも興奮して発砲した。
店内の要所に張り番させられた女子行員らは警官が近づくのを見つけるなり「こないでっ」と叫んだ。
「あなたたち警察の人でしょ。何回言ったらわかるんですか」とも。猟銃により強制された、
梅川と人質との奇妙な連帯だった。自動引き出し機に近づくのにも、足音を消すため、捜査員は靴を捨てた。
キャビネットをはずした隙間からは日光が内部に漏れる。気づかれてはと外から毛布をつるした。
苦心の末に作った隙間は露見せず、ここから内部の様子がほぼつかめ「現地指揮本部の目」となった。

「本部の耳」はマイクと、二階と階下をつなぐ内線電話。梅川との「ホットライン」が効果を発揮したのは
27日午前1時半からだった。かたくなに対話を拒絶していた梅川が、電話で食事の差し入れを要求してきた。
ほかにコーヒー、タバコ、酒。そのたびに操作幹部は、通話時間を10秒、20秒と引き延ばし、
敵の心理状態を読むのに必死だった。差し入れも要求の半分。そして三分の一に分けた。
「店での調達が間に合わない」と言い訳しながら、梅川からの催促電話を待ち、通話回数を増やしていった。

声の抑揚、会話のテンポのわずかな変化から、梅川の胸中を分析した。

109:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:39 RWUS2gUb
よう覚えとけ!警察はこんなもんや。
お前らのことなんか何にも考えてへんのや!

110:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:40 RWUS2gUb
冷えたビールの代わりに生ぬるいのが一本だけ差し入れられた時、梅川は怒鳴り散らした。
そして、救出を待ち望む人質の気持ちを警察から切り離し、自分に引きつけようと図った。

密室での支配者と、包囲する側の、それぞれの心理作戦が、人質をはさんで目に見えぬ火花を散らした。

111:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:43 RWUS2gUb
ともあれ、東側と北側のシャッターに七つの覗き穴が作られた。
図面はよく検討したはずなのに実際はドアが邪魔したり、死角になって犯人が見えなかったり、無駄な箇所もあった。

最初の穴が開いたのは、26日18時半すぎであった。その報告を受けるとすぐに、坂本は観察孔の前に立った。
ある程度の異常な状況は予想していた。

だが目の前に展開された光景は、想像をはるかに超えたすさまじいものであった。
幾多の血生臭い現場を踏んできた坂本も、思わず眼を剥き息を詰めた。

カウンターの外側には警官が二人、のけぞった格好で伸びている。
床には、黒々とした血溜りができていた。周囲には長椅子がいくつもひっくりかえっている。
灰皿や雑誌が散らばっている。紐の切れた婦人靴の片方が転がっている。
それらは事件発生後時の客たちの動転ぶりを示すものであった。

坂本は事務所内に目を移した。床には体中を血まみれにした男が四人、あちこちに芋虫のように転がっていた。
もはや動いている者はなかった。

さらに目を疑う光景・・・最初坂本は、白い仏像が並んでいるのかと錯覚した。
だがよく見ると、それは・・・全裸女子行員の列であった。
支店長のデスクの前には、全裸の女性三人がこちらを向いて立っていた。
周りの机にも、白い女体がズラリと並んでいる。

27日13時時点で、全裸のままの女子行員は十名。
梅川の銃口は人質たちの頭や背中にぴたりと向けられ、梅川はタバコの煙を吐き出している。
急に「ワーッ!」と大声を出して、女子行員たちを震え上がらせたりという奇行が目立ってきたことが、
工作監視班から作戦部に伝えられた。

その一方で、いまだ全裸女子行員の一人に、タオルを絞らせ、顔を拭かせたり、肩を揉ませたり、
密室の”絶対支配者”として振舞う梅川。工作班から梅川の様子を聞くたびに、
坂本は「コイツは、人間じゃない!」と吐き捨てた。

112:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:44 RWUS2gUb
<<1979年1月27日 11時15分>>

人質の女子行員が、現地指揮本部に電話する。

113:女子行員 ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:46 RWUS2gUb
私ら殺されてもいいんですか?

ビールの二本ぐらいなんで入れてくれないんですか。

警察は私らは味方なんですか?私らどんな目にあっているのか
わかっているのですか?

私らの気持ちになってください。早く頼みます!

114:女子行員 ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:47 RWUS2gUb
<<1979年1月27日 11時22分>>

(注=再度現地指揮本部に電話)

ビールを早く入れてください!

115:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:48 RWUS2gUb
女どもが騒いでガタガタしとるぞ!

今な、女らはあんたらを目のかたきにしとるぞ!

それはな、ワシにビール入れんからや!

116:女子行員 ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:49 RWUS2gUb
<<1979年1月27日 11時24分>>

絶対に犯人の要求は聞いてくださいね・・・皆のお願いです。

117:女子行員 ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:51 RWUS2gUb
<<1979年1月27日 11時28分>>

(注=梅川の側近にいた女子行員が電話に出る)

もしもし、何やってるんですか?

ビール二本や一本やて、いいかげんにしてください!

118:伊藤忠郎 ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:52 RWUS2gUb
あんた誰?

119:j女子行員 ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:53 RWUS2gUb
うるさいわねえ!もう何言うてんの!

もうこちらはねえ、必死なんですよ。

犯人は要求を守ってるのですよ。

警察さえ来なければ撃たないと言ってるし。

なのになんですか、そっちは!

ビール二本といってるでしょう!何が一本ずつですか!
いいかげんにしてくださいよ!!

120:伊藤忠郎 ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:53 RWUS2gUb
わかりました。

121:女子行員 ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:54 RWUS2gUb
何がわかりましたですか!

いいかげんにしてください!!

122:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:55 RWUS2gUb
<<1979年1月27日 11時39分>>

(大阪府警監視)
五名の人質女子行員、カウンターのところで服を着装している。

123:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/19 15:58 RWUS2gUb
皆様申し訳ありません。本日私の都合により今日はここまでです。
後は皆様に開放いたしますので普段どおりに投稿ください。

今日は基本的にこの後はROMで済ませたいですが、重要なご意見には
可能な限りレスしたいと思います。

明日は予定通り、夕方から夜にかけて再開予定です。ではageます。

124:野次馬
02/10/19 16:24 lLtW0w16
御疲れ様でした。今覗いてみたら丁度書き終わった所だったんですね。
昨日の続きで、銀行内でこんな事が起こっているとはつゆ知らず、
一向に進展のないニュースを時折気にしていた当時の僕の記憶をたどります。
事件の翌日だったと思う。速報で、犯人が乗りつけたと思われるライトバンの所有者が判明
と流れる。しかしこれは後に盗難車であり、共犯を持ちかけられた友人の自白により、
犯人の名前が発表された。「犯人は梅川あきみ30歳」随分可愛い名前だな!僕の第一印象である。
ところが続報で犯人の名前が二転三転する。「梅川てるみ」??昭をてる(照)と読むのか?
そして最終的に「梅川昭美 うめかわあきよし」と断定に至る。
当時僕はこの度重なる誤報を慌てた記者の単純ミスと考えていたが、
民法のみならず、この手のフライングに最も慎重なNHKまでもが誤報を流した事に
いささか引っ掛かるものがあった。
最近になって出版された「破滅」の中で、この名前に関する妙が詳細に書かれている。
単純なる誤報ではなかった事が今になって分かって来た。

125:大人の名無しさん
02/10/19 16:50 LJK4XNaw
>124
単純な誤報でなかったのは、梅川の少年時代の犯罪歴が関わっているのでしょうか?

126:野次馬
02/10/19 17:36 lLtW0w16
>>125
梅川の出生届は「昭美」となっているが、幼稚園から小学校にかけての
知人にとって梅川は「てるちゃん、てるみちゃん」と呼ばれていた記憶がある。
小学校の卒業アルバムには「梅川照美」と書かれている。
梅川自信も中学の寄せ書きに「照美」と直筆している。
そして125氏ご指摘の、15歳で犯した強盗殺人事件の捜査記録では
「昭美(あきよし)異名として、てるよし、別名あきみ」などと記されている。
「破滅」では犯罪を機に、易者である父親の姓名判断による改名説を唱えているが
私的には、母親がほとんど文盲に近いという点に注目している。
いずれにせよ、憶測の域を出ないが、詳しくは幻冬社アウトローの「破滅」の55ページに
「昭」と「照」として書かれています。立ち読みできるほどの短い内容ですので
興味があればぜひ!

127:野次馬
02/10/19 17:44 lLtW0w16
126に追加
「ドキュメント新聞記者」読売新聞大阪社会部 角川書店によると
銀行内に立てこもる梅川が要求したラジオから、「犯人は梅川てるみ」と流れたことに
激昂し2階の特捜本部に自ら電話をかけ「俺の名前はアキヨシじゃ」と怒鳴り
人質の一部を解放するときも「アキヨシだと報道の奴らに言っておけ」と大声を上げた
とある。
ここまで彼を名前に執着させるものはいったいなんなのか?

128:125
02/10/19 21:26 KLrFsVNT
>126・127
ありがとうございます。
「破滅」を読んでみます。

129:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/19 23:55 ETufRKiJ
警察板にこんなスレがありました。参考までに・・・

【三菱銀行】 大阪府警 vs 梅川昭美 【人質事件】
スレリンク(police板)l50


130:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/20 22:42 /kPmIyPn
ルポルタージュ再開は、本日は深夜となります。
あらかじめご了承ください。

131:大人の名無しさん
02/10/21 01:22 bqi3AJpa
楽しみすよーage

132:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/21 01:24 hxSD/3oC
<<1979年1月27日 9時30分>>

人質の島光増太郎(57)が、このとき開放された。

島光は大阪府警捜査一課の刑事を長くつとめ、三年前、南署を最後に退職した。島光は26日の事件当時、
行内の中央長椅子に座っていた。夜6時から警察OBの新年会があり、そのための小遣いをおろしに来て
順番待ちしていたのだ。

島光は警察官在勤中は大和銀行に預金していた。だが勧める人があって退職金は全部、三菱銀行北畠支店に
預金していたのだ。

「わしも三十年警察にいて、ピストルの音も知っとるし、たいていのことには驚かんけど、散弾銃というのは
ものすごい。ピストルの音は低くパンという感じやが、散弾銃はパーんと音が高い。そら、ごっつい音や。」

散弾銃・・・梅川が発射した散弾は、通常の銃弾とは全く異なるものであった。広範囲に弾の破片が猛スピードで
飛び散ることで、強烈な殺傷能力があるのだ。営業係員・萩尾博(20)が致命傷を負った散弾もその内の一つで、
銃口から激しく放たれた散弾の破片は、萩尾の近くで机の下に隠れていた貸付係・吉谷邦彦(26)の左側即頭部
にも命中。頭蓋骨に張り巡らされた多数の血管を切り裂き左後頭部多発性盲管銃創による重傷。同行員は頭を抱え、
転がり回って苦悶した。

預金窓口カウンター下で身を伏せていた○○真貴子(26)は、突然左腕に焼かれたような激痛が走った。
机の一部ではねかえった跳弾が筋肉と血管を切り裂き、上腕挫傷という重傷を負った。

島光増太郎は言う。

133:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/21 01:27 hxSD/3oC
「・・・目の前で警官が二人も撃ち殺されるのを見たら、元警官のわしかて、もうあかん。腰が抜けたようになってしもうて、
よう手も足も出せへんかったわ。その恐さは、体験したもんやないと絶対に判れへん。密閉されとったせいか、銃声がドーンと
腹に響くようでな。そのとたんに警官が床にたたきつけられ、もうピクリともせえへん。ごっつい迫力やで。
人質事件が起こるたびに、人質が力をあわせて犯人の隙を衝き、なんとかでけへんもんやろか、と言われる。わしも、そんな
無責任なことを考えとった一人やけど、今度の経験でようわかったわ。みんな自分の生命を守ることを考えるだけで精いっぱい
なんや。

それに梅川ちゅうやつは、いったん口に出したことは絶対に実行する男やという事が、まもなく判ってきたから、余計に気味が悪かった。
刑事時代にいろんな凶悪犯を取り調べたけど、強盗殺人犯で一人だけ手に負えんのがいた。何ぼ威しても、機嫌とっても、
石の地蔵さんやと思うとったら、急に灰皿を?んで投げつけたり、箸で目玉を突こうとしたりするんや。梅川はそいつによう
似てると思うた。もし捕まったかて、恐らく天井向いて鼻歌うとうとるだけやろな。人間の皮をかぶっとるけど、中身は猛獣や。
人間の言葉は通じへん。
それに妙に落ちついとるというか、頭の回るところがあってな。人質にいろいろ質問したりして、その反応をみるんや。
質問の中に職業があったんや。
わしは考えた。もと刑事などと正直に答えたら、間違いなく殺されたやろ。それで、大工の手伝いしとる、と言うた。やつは、
なんや、それ、と気にもとめへんかったんで、助かったんやが、そのうち、ラジオが差し入れられたんで、ぞーッとしたね。万一
ラジオで客の中にもと刑事がいるなんて言われたら一巻の終わりや。ニュースのたびにひやひやしとった。

27日の朝九時頃やった。梅川は突然わしを手招きして、オッサン、お前の番じゃ、と言うた。体中に冷や水を浴びたような気がした。いよいよやられる思うたんや。
わしの顔色を見て、梅川は、二回へあがる番や、ビクつくんやない、と言うて笑うとるんや。それでほっとして、すぐさま二階へ行こうとすると、呼び止められた。

134:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/21 01:28 hxSD/3oC
あわてるな、いま、コーヒーを注文したがな、と言うんや。わしはこの年になるまで、コーヒーは嫌いで飲んだことはない。けど断ると、どないなイチャモン
つけられるか判れへん。へえ、言うて椅子にかけたんやが、そのコーヒーがなかな来んのやな。コーヒーを待ってた時間のほうが、監禁されていた時間より
ずっと長いように思えた。やっとコーヒーがきた。わしは気がせくし、すぐに飲んでしもうた。すると梅川は冷やかすように、オッサン、そうあわてて帰らんかて
ええやないか、と言うんだ。いよいよ階段を上がりはじめた。格好つけてできるだけゆっくり上がろうとしたんやが、上のほうにくると、
ひとりでに足が早う動き出してな、最後はやはり駆けとった。

十九時間ぶりの解放やったが、解放されたという実感はなかった。頭の中はカラッポで、ものを考えるいうことができなんだ。
二階へ上がったら、ワシらの後輩がいて、『島光さん、あんたもはいっとったんですか』いうて、びっくりしとった。

改めて言いたいことは、行員たちの団結力の強さや。とくに女子行員たちは立派やった。なんぼでも逃げ出す隙はあったけど、
同僚の安全を考え、みんなで協力して梅川を怒らせんよう、うまく最後まで頑張った。やはり、三菱の従業員ちゅう誇りがあった
んやろな。普通の会社なんかやったら、ああまでうまくいったかどうか、わかれへんと思いますな」

135:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/21 01:30 hxSD/3oC
<<1979年1月27日 11時頃>>

東京霞が関は警察庁・・・記者会見が行われていた。

加藤捜査一課長は、徹夜の疲労をにじませた顔で、
「人質の救出と強行制圧の両立が困難である状況を説明、事態は持久戦に入った」と語る。

同じ頃、大阪の現地本部には、三菱銀行の高雄靖副頭取が姿を見せていた。事件が長期化する様相を見せはじめたため、
首脳陣もじっとしてはいられなくなったのである。諏訪頼定総務部長と二人で、27日朝、羽田発7時15分の日航
101便、大阪行き一番機に搭乗し、現地に向かった。

「事件が26日中に解決しない場合は、27日早朝、副頭取を現地へ派遣する」

という前日夕刻の四首脳会議の決定を受けて、出発したわけである。未曾有の「不測事態」に対する三菱銀行最高首脳の
状況判断は結果的にも甘く、危機対処法も命令伝達も、不明確、不徹底であったという。

最高責任者である山田春頭取を東京に置く「指揮官後方」態勢をとり、第一陣に権限のない庶務課長を現地へ送った。
続いて常務、総務部副部長、翌日になって副頭取、総務部長と、権限の少ない人間から順送りした。
当然権限が少なければ少ないほど「当事者意識」も乏しく、交渉力も低くなる。

27日の8時15分、伊丹空港に着いた高雄副頭取、諏訪総務部長は、事件現場の北畠支店に直行しないで、中之島の
三菱銀行大阪事務所へまず立ち寄った。

136:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/21 01:31 hxSD/3oC
「高雄が(北畠支店に)着いた頃、人質になったお客さんの解放や、ケガ人搬出が始まっていました。もちろんお客さんの
安全救出、それから行員の安全が第一で、それから銀行業務の早期復旧が重要ですが、高雄が大阪入りしたのは、山田
頭取に代わるものとして、こういう事態の全権を取り仕切るためです。」

ある行員の説明だが、人質解放・ケガ人搬出は、27日午後3時を過ぎてからだから、全権委譲された高雄は、大阪入り
してから6時間以上も大阪事務所を動かなかったことになる。

高雄副頭取に続いて、人事部長、管理部長、事務部長、支店部長などが次々と東京から到着、大阪事務所へ終結した。
これに総務部長を加えれば、本社の中枢5部長がそろった事になる。

高雄はどんな使命を受けて大阪へ飛んだのか?

「それは、いろいろ、お答えするしかないんです。日曜日の朝、犯人が逮捕されたらすぐ犠牲者のところへ
お見舞いに上がりました。関係官庁にも挨拶に上がりました(総務部副部長)。」

どうも佐藤常務・高雄副頭取とも、現場到着前の事件解決を期待していたようである。彼らは想像を絶する危機的状況
にあった事件への対処よりも、銀行業務の早期再開に最大の”威力”を発揮した。中枢の5部長を大阪にシフトした
ことも、結局は事後対策であって、進みつつある事態に対応する布陣といえるものではなかったようだ。

実際、三菱銀行側は、事件の起きた1月26日、早々に業務再開のための準備を開始、北畠支店の二階にテレックス
等の機材を搬入し、捜査員を呆れさせたという。

そして事件が解決すると、今度は現場検証の最中に「内装を変えたい」と警察に申し出て、捜査員の顰蹙を大いに
買ったようである。

現場検証の真っ只中での業務再開については、「ひとえにお客様にご迷惑をかけないため」と説明するが、現場の
捜査員の中にはこんな感想もあったらしい。

「たいした銀行や。検証も待たずに再開やなんて、いくら仕事があるとはいえすごい鼻息やで・・・」

137:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/21 01:37 hxSD/3oC
>>131サン

楽しみにさせておいて申し訳ありません。
実は今夜はこれだけなのです。

来週はお休み、次回は・・・11月2日、3日、4日の予定(時間未定)ですが・・・

お許し願えますでしょうか?もしこの場で何か聞きたいことがありましたら、
どうぞご遠慮なく。

138:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/21 01:39 hxSD/3oC
>>137続き

実は準備期間の間に、もっといろいろ練り直したいと考えてますので。
ひとえにここの板の皆様のレベルが高度なせいです・・・w

139:131
02/10/21 02:33 /3m+fWy1
おつかれさまです!
ゆっくり楽しみに待ってますよー。
>そして事件が解決すると、今度は現場検証の最中に「内装を変えたい」と警察に申し出
…スゴイな(w

140:Pooh
02/10/21 03:04 TUYlmoFd
じっくり読ませていただきました。

わたしは当時、小学生でした。おぼろげながら、梅川の写真や
射殺されて運び出される彼の姿を覚えています。

ふと思いました・・・今、全く同じ事件が起きたらどうなる、と。
銀行や警察は、ちゃんと対応策を整えているのでしょうか?

141:大人の名無しさん
02/10/21 03:07 TtBpb5Xv
本物のルポライター?
プロならタダで書いちゃダメでしょ。

142:野次馬
02/10/21 12:58 s9EXjLmM
132,133は興味深いです、人間がどのような経緯でストックホルムシンドロームに陥るのかが
凝縮されているかのようです。

暴力的な男から逃れられない美女  身近にいませんか?
何であんな男と付き合うの? 絶対不幸になるよ! 貴女だったらもっといい人がいるって!
そんな、周囲の忠告に耳を貸さず、ひたすら貢ぎ続ける女。

逆に何故この男がもてるの?この男のどこがいいの?っていう男もいますよね?

この不思議な現象を悪用し、マインドコントロールやストックホルムシンドロームを
お手本にすることで、女に持てる方法を研究した男がいました。
結果はそこそこの所まで行くけれど、そこから先に進まない。
やはり、アメと鞭の使い方は付け焼刃ではうまくいかないようです。
計算ではなく、本能として強弱を操る事ができない限り、
アメと鞭を手にするべきではありません。
何を隠そうそんな馬鹿な事を研究した男とはこの私です。



143:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/21 23:09 Q31uanXX
では今夜も参ります。

>>140 Poohサン
ありがとうございます。私は正直不謹慎の極みですが、職場や近所(東京都世田谷区)
の銀行をしげしげ眺めて、「今ここで仮にオレが銀行強盗を起こした場合、ここは大丈夫
なのか?」といったような事、実はよく考えます。'79年にこの事件がおきて以来、
防犯カメラ設置が急速に普及したといいますし、おそらく現在の東京三菱銀行は、この事件
をかなり教訓にしていると思いますが・・・万が一、事件の模倣犯が現れて同様の事態となった
場合、それは過去の愚を繰り返すことになりますね。それは正直・・・見てみたいと言うのが、
大胆な私の本音です。
ただ>>139サンがレスしてくれた内容通り、「お客様の為」という大義名分の元にコンテンジェンシー・
プラン策定を十分に策定していなかった場合・・・今度は社会的制裁が待っているに違いありません。

>>141 大人の名無しさん
残念ながら私はアマチュアです。本業を別に持ちます。
しかし・・・何という誉め殺しの言葉w。プロの書くものと比較しては失礼ですよ。
一応いっておきますが、過去の出版物や雑誌、新聞記事を元に事実を類推し、
自力で可能か限り再構成しているのが私のルポです。まだ事実そのもののインパクトと、
上記書物の書者たちの仕事ぶりには遠く及びません・・・。

>>142 野次馬サン
わかるな、なんか。
梅川の事件直前までの内妻は、まさに、
>暴力的な男から逃れられない美女  身近にいませんか?
>何であんな男と付き合うの? 絶対不幸になるよ! 貴女だったらもっといい人がいるって!
>そんな、周囲の忠告に耳を貸さず、ひたすら貢ぎ続ける女。
その典型だったようです。
(『TATTOO<刺青>あり』などを見ると、関根恵子がその女役を、もう最高に艶かしく演じている)

しかしながら私は、研究というところまでいった事はないのですが。
どちらかというと私は、女性に蹂躙されるタイプですので・・・。

144:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/21 23:47 Q31uanXX
>>124-128
遅くなってスミマセン。
晩聾社「破滅」p.14に、梅川の戒名("智月寂照信士")についてこんな風に出ていますね。

「俗名を偲ばせる一字は、『昭』ではなく、なぜか『照』だった。」

で、「ドキュメント新聞記者」も今は入手困難なようですね。私も持っていません。
野次馬サンには、この本の他のものとの違いをコメントいただけると非常にありがたいです。
新聞記者側からの視点が中心とは聞いていますが・・・。ageますね。

145:野次馬
02/10/22 10:19 XLRbt2n5
>>で、「ドキュメント新聞記者」も今は入手困難なようですね。私も持っていません。
野次馬サンには、この本の他のものとの違いをコメントいただけると非常にありがたいです

わかりました。破滅に関してはざっと読み返したんですが、ドキュメント新聞記者も読んで見ます。
「ドキュメント新聞記者」は読売新聞の黒田清率いる黒田軍団の取材を中心に書かれたもので、
どちらかというと、記者の苦労話などが中心となって編集されています。
一方、毎日新聞社会部の「破滅」は、やや劇画チックに描かれてみたり、主観的な憶測が含まれているので
私は少し引いた位置で読む姿勢をとりました。物語としては「破滅」のほうが面白いです。
ただ、全てが真実かどうか?尾ひれの部分を楽しむ余裕を持って臨んだほうがいいかもしれません。


146:奉先の一睨み
02/10/22 12:55 MPgeqsG3
事由を奪われ、生殺与奪の権限を握られる立場としては、籠城事件の人質、戦争捕虜、今回のような北朝鮮拉致被害者、テロリストによる人質、身代金目的の誘拐犯による人質など、様々なケースがありますね。
この中で、最も恐怖心とストレスが高いのは、犯行者の動機、目的が明確でない場合の人質ではないかと思う。
動機、目的が分かっていれば、自分の置かれた立場を認識し、今後の振る舞い方に方針を持つこともできる。
しかし、それが分からないと、状況判断も行動方針も見極めることができない。

詳細を覚えていないので断言できないが、梅川のケースはこれだったのではないかと思う。
他の犯行者のように、一定の目的の達成度によって犯行者の心情がくみ取れるというケースではなく、その時々の気まぐれな梅川の言動や表情から、感情の動きや心情を洞察して、逆なでしないように振る舞うしかない。
そのため常に神経を張りつめ、緊張状態が続くので、人質にとっては、かなりストレスの高い状況ではないかと推測する。
その緊張を和らげるような一言が、梅川の口から出れば、人質は瞬時の安堵に感極まって、たちまちにして精神的隷属状態に至るのだろう。

147:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/22 21:50 q5yc0dIQ
>>145 野次馬サン
ありがとうございます。いづれ触れますが、この事件を扱った他の本のみならず、
当時の新聞・週刊誌までもが、ひとつの事実に全く異なる指摘があったりするので、
まとめる者としてはウンザリすることも多いです。

>>146 奉先の一睨みサン
実際女子行員たちは、梅川が声をひとつ上げるだけで、背中越しにわかる位に
「ビクッ!」と反応していたようですしね。耐え難い恐怖であったことがよくわかります。


148:大人の名無しさん
02/10/23 00:17 Xifukv/o
この時ウルトラセブン見たさに朝早く起きてTBS付けたら事件のLIVE放送してて
落胆した覚えが・・・。俺はこの年北チョソに拉致られて、最近一時帰国してる
けど、もう一度ウルトラセブン見てーよ。

149:Ken ◆GaudiCj2IE
02/10/23 03:49 gbJxplgY
 =12です。

 暫く見ない間に、こんなにてんこ盛りに・・・(苦笑)

 じっくり読ませていただいて、また感想なども書かせて
いただきたいと思います。

 ルポライターさん、大変でしょうが期待してます!  

150:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/23 08:09 +X5aVFw5
>>148
今「遊星より愛を込めて」をみる方法はありますかね(笑 

>>149
ありがとうございます。
これからますます質量ともに濃くなりますので、読む側も大変になりますよ・・・。

151:奉先の一睨み
02/10/23 14:49 Xi7Wr9yD
ルポライターさんの記述は、情景が目に浮かんでくるので臨場感と迫力があります。
お陰で、ビジュアル的な情報が得られることから、行間が透けて見えるようで面白い。
今後も期待しています。

152:大人の名無しさん
02/10/23 21:21 4IX7tSa8
早く次ぎくれ!

153:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/23 22:19 yxxzQT5W
>>151
奉先の一睨みサンは、わりかし厳しい評価を下しそうな方だと思っていたのですがね。
本心からおっしゃっているとしたら恐縮の極みですよ。
ビジュアル的・・・まぁ先人のルポの力が大きいですが、とても映画化されそうにない、
この事件の映像が目の前に浮かぶくらいまでの境地は目指したいですねw
>>152
残念ながら11月にならないと再開できませんね。身分不相応な私が、実力不足を
承知でやってますから・・・けど次はもっと進化させるつもり。

154:奉先の一睨み ◆lBEsxJsHCY
02/10/24 00:25 u9wxb+eL
真の評価は、ルポさんの全記述の後に、多くの閲覧者によって……

155:野次馬
02/10/24 16:48 wGPdiJA5
132にある最初の人質数名が解放された後、梅川は自宅マンションの一階にある
行きつけの喫茶店「ダービー」の主人に篭城する銀行内から電話を入れている。
その時の会話の内容を「ドキュメント新聞記者」より抜粋します。『』が梅川「」は主人他
『俺や、梅川や』  「今どこにおんねん?」
『わかってるやろ!銀行や』   「ホンマにあんたか?」
『そや、ワシや、やってもうた、もうあかんわ』  「何でこんな事しよったんや?」
『聞かんといてくれ、それより5、6千円あんたんとこにツケあったな?あれきちんとするさかいな』
「そんなもんどうでもええがな!」
『いや、ちゃんと銀行から払わしに行かすて』
この間、数人の常連客がかわるがわる電話に出て、梅川と会話をしている。
最後に出た人が「もうこれ以上馬鹿なマネはよしなさい」と言うと梅川は
『もう言わんとってくれ、今度の事はずっと前から考えとった事なんや』
『その結果こうなってしもうたんや』と思いつめたように言って電話を切ったという。


156:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/24 22:41 s+0tHQrl
今夜(か明日か土曜日)は、また深夜になってから、事件当時の1979年の思い出について、
少々語ってみたいと思います。

先に何か語りたい方がいれば、どうぞご遠慮なく。

157:38生まれ
02/10/25 02:51 /m5GFu9b
ルポライター ◆UME/seXGGA さん
興味深く拝読しました。
リアルタイムの事件としては
浅間山荘事件とならぶ凄惨で衝撃的な事件でしたね。
私は当時高校生くらいで
仲間とよく「少年法に守られている身」を語り合い
時代錯誤なザル法と認識しておりました。

昔から「少年法改正論」は出ては消え
まともに論議されてないような気がするのですが
これはどこからか圧力でもかけられてるのでしょうか。

158:野次馬
02/10/25 11:52 CYtAhuee
「ドキュメント新聞記者」読みました。
ルポライターさんと同時進行の時間的経緯で
邪魔にならぬ程度に特異的抜粋事項を書いてみます。

梅川が銀行に向かう当日の昼、行きつけのすし屋に寄っている。
そのすし屋の店主、西村範夫さん(30)の証言から、全文ママ
「いえね、昨日の丁度昼頃やったと思いますけどな、
あいつが一人でふらっとウチの店に入って来ましたんや。
メシかいなと思うてたら、酒つけてんかと言いまして、
いつもの特級を一合つけると、アテにナマコを注文して、一人でチビチビやってました。
確かに1時前でしたな、今から思うたら強盗に行くちょっと前ですがな。
一杯やりながら何考えてましたんやろうねぇ」

159:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/25 19:14 NbbJ0bw2
>>157
>>158

家に帰ったら深夜にレスします。特に野次馬サン、いつもありがとうございます・・・
age

160:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/26 01:12 6PKBT5EM
いきます。
>>157
私の勉強不足により憶測の域を出ないのですが、「人権派」の団体
(弁護士等々からなる)が頑なに少年法改正を拒んでいるということでしょう。
ですが最早認識を改め、少年だからこそ「人権」を清く認め、殺人を犯かした者は
無期懲役なり死刑の判決を下す。または肉親による仇討ちを認めるべき。
まるで私の愛読する呉智英みたいだな・・・w

>>158
野次馬サンは最早、奉先の一睨みサン同様(最近そういえば195◆IyApGKf56Qサン
来ないな。内容に不満だったのかも・・・ご覧になってたらなんでも意見言ってください。)、
私の貴重なサポーター?です。
それ、飯干晃一のルポにも出ていましたね。友達から借りた映写機返しにいくとか、
アリバイ工作のため、店主に言ってたらしいですが。

161:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/26 17:19 6PKBT5EM
今夜また少々語りますので、関心ある方はどうぞ。
いったんageます。

162:野次馬
02/10/26 17:49 AXCMAJER
>それ、飯干晃一のルポにも出ていましたね。友達から借りた映写機返しにいくとか、
アリバイ工作のため、店主に言ってたらしいですが。

エッ!銀行襲撃前にすし屋に行ったのは、アリバイ工作のためだったんですか?
と言う事は、その前のパーマ屋もアリバイ工作?
前々からこの襲撃直前の行動にいくつかの疑問点があったので、
僕なりに別の推論をたてていました。
でも、これらの行動が全てアリバイ作りとなると、僕の推論はハズレって事になるな・・
そ~かぁ、う~ん、この辺りの僕の見解発言は少し先延ばしにしましょう。

誤解が解けていくのも面白いものです。今夜、楽しみにしています。


163:実香
02/10/26 19:12 9TZf2E2g
感想や意見はかきませんが、
読ませてもらってます。

164:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/27 01:14 IFR//OjO
では参ります。

>>162 野次馬サン
<梅川昭美は、そのあと近くのスシ屋『紀州』にはいる。ここで彼はニギリずし
一皿と清酒一本を注文。
「さいきん昼間はよう眠れへんのや。これから港区の友だちのところへ映写機を
返しにいこうかと思うとるんや」
 彼はスシ屋の主人・西村範夫さんととりとめのない雑談をしながらも、自分が
”港区のほうへ行く”といくことを相手に印象付けている。>

(アサヒ芸能S54.3.29号 三菱銀行猟銃人質事件 飯干 晃一 
 梅川 昭美 「凶悪の42時間」 p.71より一部抜粋:原文ママ)

この前の記述では、喫茶『ダービー』で、マスターの籠本喜久雄に、やはり同じ
ように「港区の友だちのところに映写機を返しにいく」と、自分から告げています。

襲撃前に、喫茶に寄ったのも鮨屋に寄ったのも、それ自体がアリバイ工作ではないのですが、
意図的に店主にアリバイを告げているところが、梅川なりのアリバイ工作であったということでしょう。

165:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/27 01:16 IFR//OjO
>>163
ありがとう。いつか感想や意見を書いてくれたら、とてもうれしいですよ。
それにより私が学ぶこともあるのですから。

一旦おちます。

166:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/27 10:48 OhTu1Unr
朝日新聞1979年1月29日朝刊・天声人語からです。これを元に今日は語りましょうか。

大阪の三菱銀行人質事件では、深夜、現場に押しかけた野次馬たちが「警察は何をやってるんだ」
「はやく突っ込め」とテレビのアナウンサーにいっていた。いっぱいやりながらテレビを見ていて、
おもしろ半分に現場にかけつけたいう様子だ。テレビカメラに向かって、人々は愉快そうに騒いでいた
▼何よりも人質の生命重視と人々はいう。人質に同情するとヤジ馬たちもいう。しかし恐らくは、
目の前で銃撃戦が起こることを期待し、ドラマを見るようなつもりで集まった人もいるだろう。
期待して来たけれど動きがない、寒くてやりきれないから早くやってくれ、といった調子の表情が
画面に写っていた▼銀行内でどれほど残忍なことが続いたかは断片的にしかわからないが、テレビの
生中継を見ながら「現実」と「劇」について考えた。テレビ中継は血なまぐさい事件を茶の間に流す
ことで、劇的な現実を劇そのものに仕立て上げているのではないか。現実の劇化、あるいはテレビ
ショー化がますます進んでいるように思う▼血だらけの犯人がたんかで運ばれる時、一瞬、画面を
静止させたのはこの衝撃的なテレビショーをしめくくるみごとな演出だった。それはちょうど、
ボクシングでKOされた選手の姿を最終画面で静止させるのに似ている▼「現実そのものを、よくできた
迫力あるドラマとして見る。この傾向が強まれば日本人の現実感覚が変わるのではないか」と南博氏は
いう。確かにその通りだ。ショーが終われば、人々はたちまち事件を忘れ、また新しい刺激的なショー
を求める。いまに、政治問題も、社会問題も、現実を劇化し、ショー化しないと人々は興味をしめさなく
なるのではないか▼射殺された支店長の遺族の悲しみの表情をテレビは執拗に追う。ライトを浴びせる。
あるいはまた、救助された銀行員との記者会見で、遺体の頭はどちら向きになっていたか、見取り図を
賭けと迫る。少し無神経すぎないか。報道するものの一人として、自省をこめてそう思った。
                                        (原文ママ)
また夜に来ます。たぶん深夜にはならないと思いますが。

167:野次馬
02/10/27 17:15 PKqsTRYw
>>166 !!
さすがは天声人語ですね。
この後の時代に起こる劇場型犯罪の数々を予見したかのような内容。

僕は自分の中で梅川事件を「最後の力づく犯罪」という位置づけにしています。
暴力的に制圧し、力づくで物を奪う。その目的達成のためにはいかなる事もする。
この原始的な犯罪は、今現在もあるにせよ大きな事件に発展する事は稀です。
むしろこの梅川事件を最後に犯罪の形態は知能犯罪、もしくは異常犯罪へと変化していく。
そしてそれらをゲームのように楽しみながら、
あるいは、楽しませる余裕を見せつけながら事件そのものを創作していく。
グリ森事件に代表されるように、血を流さず、脅迫状に風刺を利かせ、
メディアと一体となり進行していく劇場型犯罪へと形態が変化していった大基には、
犯罪者側の心理に与えたこの梅川事件の教訓が大きくかかわっていると私は確信している。

168:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/28 02:13 RN6bWhvz
遅くなりました・・・始めます。

>>166。ここで名前の出てくる南博というのは社会学者です。著書などについては、
ここでは触れませんが、当然南博の話の要は、現実の事件がまるでドラマか映画を
見るような感覚が進むと、現実に行われている残酷な出来事(今現在ですと、
モスクワ人質事件でしょうか)に対する感覚が鈍磨化し、さらにはより強い刺激を
求めるようになって、多少の殺傷事件であれば無関心になってしまうのではないか、
ということです。
ですがここで仮説を立てて見ましょうか。三菱銀行人質事件は、いまだ類を見ない
残忍さを持った犯罪であるがゆえに、劇やショーの域さえ超えたまま、今に至るが
故に、多くの人々の心に刻まれているのではないかと。

70年代の「戦争級事件」といえば他に"あさま山荘事件"がありますが、皆さん
ご存知の通り、"あさま山荘事件"は映画化されています。ですが、まだ当分、いや
下手をすると、今後永久に事実に忠実な映像になどならないかもしれません。

理由はお分かりになるかと思います。梅川ならびに三菱銀行猟銃人質事件には、
とても再現など許されないほどの残虐さがあるのです。過去スレのルポにあったとおり、
梅川は男子行員にジャンケンをさせて、勝ったものに「おまえから殺したる」と通告、
行員は思わず、涙ながらに「やるなら、ひと思いに殺してくれ」といったらしい。

無論男子行員の耳を同僚に切らせる、泣いて嫌がる女子行員を全裸にして思いのままに
操るという残虐さもありますが、単に血を流したりする残酷さとまた少し違う、人間の心
というものを知った上での残忍さ。

私はこれが映像化を躊躇わせる原因となり、また私が梅川に対する関心がいまだ収まらない
理由なのではないか、と思ったりもするのです。無論仮説ですがね。

いづれまた、この話は折に触れて・・・。

169:奉先の一睨み ◆lBEsxJsHCY
02/10/28 12:57 pYVWVNMY
>>168
そう考えると、梅川は猫型ですね。
豹でも猫でも、捕らえた獲物をなぶり、弄ぶ習慣があります。
反して、犬科は余分な労力を使ったりせず、捕らえた獲物はいち早く食らい尽くしてしまいます。

現金要求に止まらずに、蛮行を繰り返した梅川の心理に関心が持たれます。
銀行制圧によって、梅川の胸中につかの間の帝王気分が生じたのでしょうか。
何しろ、庶民がアカの他人を絶対的な支配下に置くということは、終生あり得ないことで、仮にこれ(逮捕・監禁)を行えば、法的に処罰されます。
もっとも、法的に禁じられているからこそ、誘惑もあるのかも知れません。

あるいは、凄惨な事件現場と梅川の様子は、まさに処罰・拷問により、死にきれずに血みどろで苦しむ文官らを眺めながら宴を催した梟雄・董卓さながらです。
のみならず、その義子・呂布も、その光景を薄笑いを浮かべながら平然と見ていたとのことです。
そうした神経の太さは、戦乱の中で死線をくぐる人間ならではのものと思います。
その意味では、梅川は戦場にいる人間のような精神状態になったのでしょうか。

170:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/28 22:52 ju+imC5X
>>169
深いですね・・・そして鋭い。相変わらず。

そう、梅川は「ソドムの市」の影響もあって、自分が殺されると認識するやいなや、
背徳に溺れたかった。人間の皮を被った者なら犯すべからざるタブーを軒並み犯して。
それを如実に証明する発言が、篭城中の、

「おれは、精神異常やない。ただ、善悪と道徳をわきまえとらんだけや」
                (福田洋 『三菱銀行人質強殺事件』p.289より引用 原文ママ)

です。これについても、ルポ本編でその時の梅川の心理に迫ってみたいと思います。

あとお詫びですが、>>160に補足です。

>野次馬サンは最早、奉先の一睨みサン同様(最近そういえば195◆IyApGKf56Qサン・・・

ですが、別板にも参加されてる播磨町交差点サンが抜けていましたね。
いつでも投稿に来てください。お待ちしています。

171:櫻澤 ◆HYDE/OJQqg
02/10/29 10:15 iDdQnNEA
ROMしてますー
でも重い内容なのでROMしかできません(鬱

172:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/29 19:16 LsyIUvB6
>>171
ありがとうございます。
ROMだけでも価値あるものであれば、私にとって何よりですよ。

173:奉先の一睨み ◆lBEsxJsHCY
02/10/30 15:42 jyXkDHco
他者の記帳がないので、続けて感想を書いてみます。

>「おれは、精神異常やない。ただ、善悪と道徳をわきまえとらんだけや」

この言葉は、あの事件現場のシチュエーションで聞くと、まさに戦慄すべきものです。
この場合、精神異常であれば、まだ救いがあります。
なぜなら、精神異常者の精神はスキだらけですから、本能的な弱みを探り出してつけ入ったり、あるいは欺くことも可能となるでしょう。
うまくいけば、犯人をマインドコントロールすることさえ可能です。

しかし、精神異常でないということは、あくまでも理性と思考に基づく意思によって残虐行為を行っていることを意味しますね。
そして、今後とも確信を持って、事に臨むと宣言していると解釈できます。
これは、いかなる説得工作も通用しないことを意味している思います。

刑事事件の取り調べに置いて、最も自白させ難いのは、コミュニストなどの思想犯であると言われます。
彼らは、思想に基づく理論武装と、それに対する強固な確信を持って犯罪を犯しているだけに、いかなる状況、立場に置かれようとも国家に対する批判力を失わない。
このため、陽動にも脅迫にも扇情にも全く動じることがないとのことです。
(もっとも、警察側が特定の日共党員を買収し、骨抜きにして逆スパイとして利用している事例を紹介しているルポもありますが…)

はたして、過去の記述によると、梅川はその母親の説得すらも退けてしまったとありますね。
梅川母子がどんな関係であったのかは、分かりませんが、通常なら里心がよぎったり、罪悪感に襲われて攻撃的な精神に怯みが生じ、迷いを覚えるところです。
彼は、何を求めて善悪と道徳をこれほどまでに徹底して放棄したのか。
何故、ここまで冷酷になりきれたのか。

事件について無知な私は、その背景などを全く知りません。
ルポライターさんによる後述が待ち遠しいところです。

174:野次馬
02/10/30 17:28 sEXIzY8k
>>173
警察が梅川の母静子を説得要請のため、大阪に連れて行く場面で、
読売と毎日の受け取り方の違いが面白いので抜粋しておきます。

先ずは毎日新聞「破滅」より
ほどなくやってきた警察署員が、梅川が大阪で起こした大事件の全てを静子に聞かせ
大阪府警のヘリコプターが引田町の総合グラウンドに来るからそれに乗って欲しいと告げた。
静子は「郵便局へ行って、貯金をおろしてくる」と言って家を出た。がなかなか戻ってこない。
中略 二時間近くたって静子は戻ってきた。乱れていた髪が綺麗にセットされている。
郵便局で貯金を引き出して帰る途中、美容院に寄ってきた、と言うのである。
近所の人たちは、静子の冷静さに唖然とした。
少なくとも「髪振り乱して息子をたしなめに駆けつける」という世間の平均的な母親像ではない。

175:野次馬
02/10/30 17:48 sEXIzY8k
一方の読売新聞「ドキュメント新聞記者」では同じ場面を近所のタカエさんの談話としてこう書いている。
「そのうち警察の人が来てな、本当の事言わんわけにはいかんじゃろうということになって」
『あのな、おばさん、息子さんが大阪で強盗やってたてこもっとんや、おばさんが説得してくれんか』
と、刑事さんが話したんやが、何人も殺してるゆう事はよう言わなんだ。
「おばさんは大阪では金が要るやろうと箪笥の引き出しから郵便貯金の通帳を取り出そうとしよった」
「ピンとこんかったみたいやった。」中略
「そのうちおばさん、だんだん事の重大さが分かって来たんじゃろう、通帳を捜そうとするんやが、
「引き出しを開けては閉め、別の引き出しを開けたり、部屋の中をあっちこっち歩いて・・・。」
「見てられんかった。しばらくしておばさんはこう言ったんよ」
『私は学もないし、年寄りやけん、十分な事は言えんかもわからんがな』
タカエさんはこの時、涙を流しながら更にこう言った。
「私、気をつけて、としかよう言わなんだ」
思わずこの時、取材記者ももらい泣きをしてしまったと言う。





176:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/30 22:25 0Lhnz7Np
>>173-175
必ずコメントします。しばしお待ちを。
ageます。

177:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/31 03:21 5AVEhJcv
では夜も更けて参りましたので、マターリいきましょう。

>>173-175 これについては、私の愛蔵資料からの抜粋で、レスとしたいのです。
では平凡社『犯罪の同時代史』より。

 「金銀なくしては人間に生れた甲斐もない」(『西鶴織留』)という金銀崇拝的発想を一歩超えて、梅川には
「金銀」に対する蔑視、反感があったような気がする。あたかも、銀行員を痛めつけることを自己目的化したか
のごとくみえるあのサディスティックな振舞いには、「金銀」への呪詛、あるいは「金銀」を扱うことを業とする
行員への蔑視が背後に横たわっていたのではあるまいか。
 「クラブの集金係」という仕事は、ある意味では「金がすべての世の中」の裏表が、よく見通せる仕事だろう。
水割二、三杯で数万円の請求に応じられる社用族や成上り者を横目で見ながら、たぶんホステスの半分以下の給料
で都会の一隅で不如意をかこつ、梅川はそういう生活を10年以上も続けてきていたのだ。梅川に「金銀」への蔑視、
怨嗟があったとすれば、それはむろん金銭への限りない崇拝、羨望を裏返したものに違いない。
(中略)
 そういう意味では、梅川は自らの嫌悪すべき三〇年の人生に区切りをつけることを望んだ、と言えるかもしれない。
つまり、五000万円手に入れて「階級上昇」するか、さもなくば(計画が頓挫すれば)これまでの抑圧感を爆発させ、
この世とおサラバするのかの最終的投機をしたのだと思われる。そして、梅川はこの賭けに敗れたのだった。
 この事件の全体像を浮かび上がらせるには、さまざまな角度からスポットが当てられなければならない。「暗い三〇年」
といわれる梅川の生活史、その中で、その中での母との関係やら犯罪歴・・・。
 「片親のもんいるか?」と梅川は行員に問い、手をあげた女子行員に「おまえは脱がんでもええ」と指示、後にこの
行員に「自分みたいな子をもったら、母親としてどうするか?」と問うている。行員が「叱ります」と答えると、梅川は
「それがええ」と実にうれしそうな表情をみせたという。(p.47~49 原文ママ)

178:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/31 03:23 5AVEhJcv
>>177続き

・・・平凡社『犯罪の同時代史』は、他のどの著書とも違う、私が目指す視点で書かれています。コメントもしたいのですが、
少し夜が更けすぎたのと、上記引用だけでレスとして耐えられる内容と勝手に思いましたので、続きは明日にします。

あと・・・申し訳ない。私的メッセージお許しください>>ALL

>>今都内で入院生活を送っている貴女

 まじめに心配していますので、現状を教えてください。
このレスだけがageになっているのは意味があります。どうか一度、今の経過について、教えてください。
念のために述べておきますが、掲示板には書かないでくださいね・・・。

179:38生まれ
02/10/31 03:57 r9T/+wAt
銀行の中でも元財閥系の三菱を襲ったというのは
関係があるのでしょうかね。
後で触れられるのかもしれませんが
梅川の生い立ちや出生が気になります。

180:野次馬
02/10/31 11:55 S69ZNnwx
177をうけて162で先延ばしにした、私の推論をここで書いておきます。
私もかねてよりこの梅川事件を考えるに当たって、不可解な面や、疑問点が数点あったのですが、
その一つが「目的と動機」でした。
一般的には、強盗目的で侵入し、計算外に警察の到着が早く、自暴自棄になって行った行為。
とされていますが、むしろ僕は、篭城ありき ではなかったのかな?と感じたのです。
梅川は当初、友人の鍋島を強盗計画に誘っていますが、これを断られ単独犯行に至った経緯があります。
もし、単独で現金強奪に成功したところで、鍋島経由ですぐに足が付く事は眼に見えています。
もう一つの疑問は強盗の心理として、できるだけ目立たぬように手早く仕事をする。
という鉄則を見事に覆した、あの独特のスタイル。アフロヘアにハットをかぶり、
おもいっきりおしゃれに決め込んで強盗に行くなんて聞いた事がありません。
174にある梅川の母親が、この非常時に髪をセットしに行ったという現実と、
その元で育った彼なりの美学に、なにか因縁めいたものを感じないでもないですが・・。


181:野次馬
02/10/31 11:56 S69ZNnwx
そして追い詰められて、切羽詰った状況で立てこもりを決めた男が、
あたかも計画していたかのような行動の数々を冷静に残虐に遂行している。
ソドムの120日を例えに出す辺りでは、現金強奪よりむしろ篭城が第一目的ではなかったかと
疑ってしまうかのようなシナリオさえ感じられる。
猟銃にしたって自分のものを使用している。
仮に、最初の発砲の瞬間、彼の目的が強奪から篭城へと方向転換したにしては、
後の流れがあまりにできすぎてはいないか?
つまり私なりの推論とは、友人の鍋島に共犯を断られた時点から、
梅川の動機に変化をもたらしたのではないか?
現金強奪よりも15歳で犯罪に手を染め、その15年後と言う節目の時期に
自らを小説の主人公に仕立てて、ナルシストとしての有終の美を全うしようとしたのではないか?
そのように考えざるを得ない点が多々あるのですが・・。


182:奉先の一睨み ◆lBEsxJsHCY
02/10/31 16:39 atQUau9F
なるほど、いろいろと考えさせられます。

ナルシシズムの充足を、犯罪によって達成しようとする発想が不思議ですね。
おそらくルポライターさんの記述にあるように、「金銀への呪詛」という思念がそれを選択させたのでしょう。
私財を持てる者の振りまく華々しさを、多年にわたって見せつけられたことによるコンプレックスが原因なのでしょう。
おそらく、かなり口惜しい思いを胸中に鬱屈させ、募らせてきたのに違いない。
この点は庶民感覚としても、理解できない感情ではありません。
もしも自分の従事する職務に、誇りや充実感を感じていたなら、また精神のあり方も違っていたのかも知れませんね。
しかし、夜の世界は実業ではなく虚業として、虚構の要素が多い。
どんな仕事であれ、人は喜びを見いだして精を出すものだが、梅川の場合は、空しさを覚えながら日々を過ごしていたのかも知れません。

一方、新聞報道に見られる母親の頼りなさから察するに、彼女は十分な躾・訓育というものを、我が子にしてこなかったのではないかと推察します。
また、この時代はたとえ今日のような情報・通信手段はなかったにしても、テレビ、ラジオ、電話、新聞など最低限の情報手段は十分に普及していたわけです。
ところが、警察の事情説明と説得依頼を受けるまで、全く事態を知らなかったというのは、その世界観が閉じていることの証左でしょう。
そして事情を知った後、資金準備や整髪を行うという悠長な行動を取るあたりは、社会とは疎遠な生き方をしてきた結果だと思います。
けれども、身辺を整え、資金準備を行うというのは、母親なりに緊張感と覚悟の必要性を感じていたのでしょう。

親子関係において、梅川は片親である身上への割り切れない感情と、母に親らしさを求めて、それが見られなかったことへの不満が垣間見られます。
行員への質問・回答、それに対するリアクションに、それが現れていると思いました。
一方、母親は自分の息子でありながら気後れを感じたり、手の届かぬ縁遠い存在と感じ、その管理・監督においては無力感を覚えているとの印象があります。
その意味では、この親子関係は破綻していたのだろうと想像します。

おっと、あまり私が出しゃばると叱られるので、ここで引っ込みます(苦笑)。
失礼しました……。

183:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/31 21:56 5AVEhJcv
>>179 38生まれサン

梅川昭美は、三菱レーヨンの社宅でこの世に生を受けた。
そして父は、三菱レーヨンで退職に追い込まれるまでに体を壊し、
易者に転職しました。

・・・続きはまた深夜に・・・


184:野次馬
02/10/31 21:57 qLUcUvuq
>>179
梅川の父親は、三菱レイヨンの前身である新興人絹会社の大竹工場で配管工として勤めており、
梅川はその社宅で幼少期を過ごしています。三菱の社宅で生まれた梅川が、三菱銀行で事件を起こした。
これには何か関連があるのか、それとも単なる偶然なのか・・
>>182
>身辺を整え、資金準備を行うというのは、母親なりに緊張感と覚悟の必要性を感じていたのでしょう。
そうなんですよね、僕はどうもこの母と息子に共通した、事ある前の「整髪」に興味があります。
この「整髪」には兜の緒を締めるという意味合いがあったのでしょうかね?
あと事件当時、警察が母親を呼んだことに対して、電話で激昂する梅川の録音テープが
放映された記憶があります。どこの局か忘れましたが、スクープ的扱いでした。
内容は不正確ですが、梅川が警察に「おどりゃぁ何でお袋呼んだんや、ぶち殺したろかワレェ」
とドスの利いた広島訛りの関西弁でまくし立てる様が妙に迫力あったのを覚えています。
梅川にとって母静子は聖域であった。守るべき母を晒し者にされた事が彼の逆鱗に触れたのでしょう。



185:野次馬
02/10/31 22:13 qLUcUvuq
>>183
おっと失礼!同じことを書いちゃいましたね!
ルポライターさんに質問があります。
この母静子の生い立ちについて何かご存知ですか?
僕は、変な意味合いでなく、彼女が被差別地域の出身のような気がするのです。
何かの書物にそれを匂わせたような事が書かれており、梅川もそこの部分を引きずっていた。
無学で文盲というのは、この静子の時代、なにも被差別地域に限った事ではなく、
貧農であれば珍しいことではなかったようにも思います。
ただ梅川がこの母を守るべき聖域であると僕が書いた裏には、
小学校もロクに出ていない字も満足に書けない母親を、世間の好奇な目から守り、
また隠すべき存在であったとも受け取っているのですが、どうでしょうか?

186:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/10/31 22:38 5AVEhJcv
>>185
静子の出生等については、残念ながら明るくありません。
まぁ、梅川自身は親孝行な面もあったと認識はしていますがね。

・・・でも、旗揚げ以来、初の対話型進行ですかねぇ(笑)。


187:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/01 00:07 n4MaIWaB
>>ALL
本日体調不調ならびに11/2,3,4予定のルポ準備のため、本日は
これにて失礼いたします。

>>野次馬サン、奉先の一睨みサン
申し訳ありません、続きは明日です・・・。

188:櫻澤 ◆HYDE/OJQqg
02/11/01 00:12 vKlYeSLF
ルポライターさんお大事になさってくださいねえー!!
楽しみに(というと語弊があるんですけれども)お待ちしています

189:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/01 00:24 n4MaIWaB
>>188
ごめんなさいね・・・。
でも貴方、どこかで見たような・・・?

190:奉先の一睨み ◆lBEsxJsHCY
02/11/01 10:23 ARUADQ7+
父は三菱レーヨンの元配管工で、後に体調を崩し易者に転職。
母は、あるいは被差別地域出身。
息子は後に、三菱銀行を襲撃。

点と点が妙にダイレクトに結びつきそうです…。
野次馬さんの仮説に、重要なポイントがありそうですね。
少年期に犯罪を犯した梅川は、幼少期には一瞬たりとも家庭の幸福に浴したことはないのでしょうか…

191:野次馬
02/11/01 11:56 krMKPwEW
>>190
僕が梅川事件に興味を持ったきっかけは多々あります。
全てにおいて劇画チックなストーリー
ビジュアル面を含めた悪役としての梅川のキャラクター
そして最後は射殺というかたちで幕を下ろす完結な展開
起承転結がはっきりしているんですね。
しかし今、最も僕の心に残っているのは、警察に付き添われ説得に来た老母静子の哀れな姿です。
最後に「もうこれ以上迷惑はかけられん、息子を殺してください」と言った老母。
危篤の梅川が運ばれた病院の廊下でぽつりと「もう息子はあかんのですかいのぉ」と呟いた老母。
歳をとってからの一人息子の説得に書けぬ文字を必死で手紙にしたためようとした老母。
この老母の気持ちを慮ると、今でも心が痛くなってきます。
映画Tatooありのオープニングで、老母が遺骨を抱え独り駅に佇むシーンを見た頃からでしょうか
僕の静子に対する気持ちが強まって来たのは。


192:野次馬
02/11/01 15:24 bFvt4XAh
>>191
失礼
TatooではなくTattoo
あの映画、ビデオ化されていないんでしょうか?
なんだか無性に見たくなってきました。

193:奉先の一睨み ◆lBEsxJsHCY
02/11/01 16:03 ARUADQ7+
切なくなる映画ですよね。特に、竜童のテーマソングが良い。
あのシングルCDでも手に入らないものか……

194:195 ◆IyApGKf56Q
02/11/02 00:26 UBcRBodd
ええ、ずーっと読んでるんですよ。

195:195 ◆IyApGKf56Q
02/11/02 00:26 UBcRBodd
195

196:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 00:30 xb+Yr+Iw
>>195 ◆IyApGKf56Qサン

・・・深夜また書くので、濃厚な内容にしてくださいw
あ、でも195getおめでとうございます!きしくも、ですね。

いや、読んでくれているだけでも、私にとっては何よりです。
・・・も少し夜更けたら、書きますよ。

で、明日は・・・ルポルタージュ再開します!!>ALL

197:195 ◆IyApGKf56Q
02/11/02 00:33 UBcRBodd
例えばね、立てこもり。
金嬉老と連赤がありますね。
私、金の場合の民族的理由付けはあとからとってつけたようなもんだと思っております。
梅川は他の立てこもりと自分を比較して、なんか言ってますかね?
比較対照すると、なんか面白そうです。
他にも立てこもりってありましたかね?有名事件・・・。

198:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 00:38 xb+Yr+Iw
>>197 195 ◆IyApGKf56Qサン
1970年の瀬戸内海でのシージャック事件や、
1977年長崎市内でのバスジャック事件などは?

199:195 ◆IyApGKf56Q
02/11/02 00:43 UBcRBodd
こういう感じ。
ゴルフ始めた奴がひょんな事から激レアの骨董的名クラブを手に入れる。
その後、そいつはゴルフじゃなくゴルフクラブ収集が目的になっちまう。

梅川の場合はどうだったんでしょうかね?
ってことを聞きたかったのです。
自慰的な示威行為が目的化していったのはどの段階からでしょうかね?
ってな感じ。

200:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 00:48 xb+Yr+Iw
>>199 195 ◆IyApGKf56Qサン

・・・銀行周辺が完全に包囲され、逃げ場がなくなった段階、と、
私は認識していますよ。「死」が現実のものとなった段階。

梅川自身は他者との比較よりも、30代に突入した焦りから、
何であれ大きなことをしたい、と思っていた事が行動原理の一つでは
なかったか、というのは・・・さんざん既出ですかね?

201:195 ◆IyApGKf56Q
02/11/02 00:54 UBcRBodd
金嬉老事件
金は実弾1200発とダイナマイト13本を車に積んでおり、どこかに篭城して積年の怨みを晴らそうと考えた。そこで、「ふじみや旅館」に目をつけた。それは、前が広場になっていて、見晴らしがよく、下から登ってくる者がよく見えたからだった。
午後9時すぎ、金は「ふじみや旅館」に入り込み、旅館の家族6人と宿泊客10人の計16人を2階に集めて人質にとった。
その後、清水署に電話をかけ、「さっき、クラブ『みんくす』で起こった事件は俺がやった。名前は言えないが、処置は自分でつけるから安心しろ」と言った。
翌21日午前0時10分ごろ、再び、清水署に電話を入れ、自分の居場所を教えた。
午前2時すぎ、静岡新聞にも、「俺は清水で人を殺した金だが・・・・・・」と電話し、経緯を説明した。このとき、知り合いの掛川署の大橋巡査と清水署の西尾刑事部長となら会ってもいいと言った。
午前8時、大橋と西尾の2人の警察官が「ふじみや旅館」に入って話し合った。金の要求は、清水署の小泉刑事が朝鮮人差別発言をしたことについて謝罪することと、静岡新聞とNHKの記者と会見させることの2つであった。
金は「生きるのには、もう嫌気がさしてる。2つの要求を聞いてくれれば、死をもって、騒動を起こした責任をとる」と言った。




202:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 00:57 xb+Yr+Iw
>>201
ありがとうございます。
2時くらいにまたきますね・・195◆IyApGKf56Qサン。

203:195 ◆IyApGKf56Q
02/11/02 00:57 UBcRBodd
わけもわからず引用したけど、こういう展開と梅川展開をちょっと比較してみたく思ったのであります。

204:Ken ◆GaudiCj2IE
02/11/02 03:22 chrwb0eX
 全発言をプリント・アウトし、改めて読み返してみました・・・疲れた~(w

 で、その中で個人的興味を引いたのは、犯人のプロファイルや関わった様々な人間の
心理描写はさて置き、「危機管理」と言う点です。

 ロシアの篭城事件で突入の結果、100名以上の一般市民が亡くなると言う痛ましい
顛末になったのは記憶に新しいところですが、例えば当時、説得と言う政治的を取り
つつも、反面大阪府警は強行策に対しどういう作戦立案をしていたのか?その時の
損失率(FBIの場合だと約10%と見積もっている、と聞きますが)はどの程度、予測
していたのか?まさか「無血開城」なんてお目出度い事を考えていたのではあるまい
な?等々。

 とかく犯人の心理や生い立ちなどがクローズアップされがちなこの事件(たしかに
それだけで本が書けると思うが)ですが、テロ事件(あえてこう言う表現をとります)と
捉えた場合、セオリーである犯人の目と耳を奪う(情報統制、マスコミの報道規制等)
と言う点において、大阪府警は見事としか言い様が無いくらいに後手を踏んでいた&
基本を逸脱していたと思うのですよ・・・実際に犯人はラジオを聞いていたのですから。

 この点は先日2ちゃんで大騒ぎになった「西鉄バス ハイジャック事件」でも改善
されている雰囲気は無く、もしこの手の事件が再度起こった場合、警察が取るべき
及第点の解決方法は(最善は無いと考えますので)?不測の事態が起こった場合、
企業としての危機管理システムは?また取るべき行動は?考えただけで寒気を
覚えます。

 現在のこのスレの主流とは外れますが、是非この点もお話いただければ幸いです
<ルポライター殿。しかし、当時の三菱銀行の対応・・・通常の企業運営として捉え
れば正常な判断かもしれませんが、状況判断や人道的側面を考えると・・・最低を
通り越して、笑いしか出ませんね(苦笑)。

205:Ken ◆GaudiCj2IE
02/11/02 03:27 chrwb0eX
訂正です。

「政治的を」 → 「政治的手法を」

失礼致しました。

206:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 06:50 xb+Yr+Iw
>>204-205 Kenサン
ありがとうございます。ご希望の点については折に触れて。
>ALL
申し訳ありません・・・2時に来られませんでした事をお詫びいたします。
言い訳しても仕方ありません。もうルポルタージュの準備に入ります。

開始は恐らく、深夜にならぬ程度の夜中になると思います。

207:奉先の一睨み ◆lBEsxJsHCY
02/11/02 09:53 bz14N2S7
この事件が、戦史に見られる籠城戦のようなものであれば、攻め方もいろいろとあったでしょう。

しかし、人質の無傷解放を大前提にした上で、自死も辞さぬ覚悟をした犯人を相手にしたのでは、解決は容易ではないでしょう。
その意味では、ペルー大使館人質事件での突入作戦は、参考になるのではないかと思うのですが。

208:野次馬
02/11/02 11:33 SpnSAbdB
>>197 私、金の場合の民族的理由付けはあとからとってつけたようなもんだと思っております。

そうですよね?僕の中で金嬉老事件は、借金の取立てに来た暴力団員を殺し、
逃亡の末立てこもったという極私的な事件と言った認識しかないのですが、
間違っていれば教えてください。
むしろ近年、金嬉老が釈放されるに当たって、
韓国では民族運動の英雄的扱いをされている事を知り、逆に驚きました。
さぞかしあの金嬉老も人畜無害の爺さんと化して出てくるのかと思いきや、
颯爽とした足取りと、ランランと光る眼を見た時は、ぞっとしました。
何かを仕出かしそうな迫力を感じました。
こんなの出して大丈夫なのか?という不安は誰もが感じたと思います。
その後、韓国にてその不安は傷害事件という形で見事的中しました。
テレビに映し出された顔面血まみれの金嬉老には狂気すら感じました。
脱線してすみません。


209:大人の名無しさん
02/11/02 14:23 TNQp2Q1Q
長期篭城事件では、浅間山荘が戦後最大の事件のように語られるが、昭和39年
生まれ今年37歳の俺にとってはこの事件のほうがリアル厨房で接しただけに
強い印象が残っている。ちなみに俺は横田めぐみさんと同じ歳なわけだが彼女は
この事件を知らないんだな。

210:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 14:25 Vg17q/rv
>>209
ありがとうございます。
・・・ただし次回はsageでお願いします。よろしければ。

211:大人の名無しさん
02/11/02 14:30 ix7ssrGB
この事件に関しては読売新聞阪神支局社会部の部長だった黒田清氏(故人)
の著作が詳しいです。書名失念。

212:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 14:33 Vg17q/rv
>>211
「ドキュメント新聞記者」読売新聞大阪社会部 角川書店。
当スレ>>127あたりからいろいろ触れています。

213:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 21:44 9XadsMSu

>ALL
大変申し訳ありません。

今夜のルポルタージュ開始は、0時直前となる予定です。

私の遅筆ゆえにお待たせして申し訳ございません・・・

214:大人の名無しさん
02/11/02 22:52 4ffxMy7w
待ってるよ~ん!!

215:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 22:58 9XadsMSu
『「激情」に関連して重要な反動が更にもうひとつある。裏切りと失望の傷痕を心の奥深くで味わっ
た人はまた、人生を憎みはじめ得るということである。信ずるに足る人や物がなく、善と正義に対
する信頼感がすべて愚かな妄想に終れば、人生が神よりむしろ悪魔の支配を受けているように思わ
れ――その結果、人生は憎むべきものとなり、もはや失望の苦痛にたえがたくなる。人生は悪で、
人間は悪で、自分自身は悪だ、と誰にでも証明したくなる。人生を信じ愛することに失望した人
は、こうして世にすね世間を破壊する人に変わる。この破壊性は絶望感の一種であり、人生に対す
る失望感が人生を憎悪するという結果を導いたのである。』
                          (エーリッヒ・フロム『悪について』より)

※ 今回のルポルタージュ進行は、大変緩やかなものとなります。ご了承ください。

216:大人の名無しさん
02/11/02 23:00 T1qE5uzT
--------------復讐屋・駆込み寺・悩み相談------------
●復讐・貴方に代って恨み晴らします!★★★別れ工作★★★
騙された・捨てられた・弄ばれた・相手に誠意がない・債権トラブル・不倫疑惑・証拠収集・電話番号から住所などの調査・等など★何でも気軽に相談OK!
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●下記記載のURLがジャンプしない場合には・コピ-してファイルから開いて下さい!    -----私刑執行人組織-----
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---------------------------------------
リンク→(秘密探偵社)URLリンク(www.okudaira.co.jp) 
----------------------------------------


217:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:04 9XadsMSu
<<1979年1月27日>>

三菱銀行北畑支店二階にある大阪府警の前線本部では、吉田六郎府警本部長以下、全員が不眠のまま、事件発生二日目を迎えていた。
前線本部は梅川昭美に、トランジスター・ラジオという武器を与えざるを得なかったが、一方では、それ以上の武器を手にしていた。

それは梅川に関する全犯罪記録と一階における梅川の行動分析である。警察庁から送られてきた犯人像を示す犯罪記録により、
梅川という男の性向はほぼ完全につかむ事ができた。
行動分析はノゾキ孔から観察し、数秒単位で集積された。人質犯の捕捉は、わずか1秒か2秒のスキをどう突くか、にかかっている。
カップラーメンを食べるとき、梅川は左手に銃を持ち、右手のハシで一口食べては目を上げた。その間0.1秒。電話は支店長机の下に置き、
電話係の女子行員にダイヤルをまわさせ受話器をとる。0.2秒しかスキがなかった・・・。

30分、1時間単位くらいの行動パターンも、ノゾキ孔から克明に観察されて記録された。

警備陣を別にすれば、人員配置は「捕捉班」と「観察班」に二分され、この両班の連携プレーで、
犯人に対処する。観察班は前夜7時すぎから7つのノゾキ孔にへばりついたままだ。捕捉班は一階
非常口や二階の階段降り口で待機した。防弾チョッキをつけて、引き金に指を掛けてピストルを構えていた。
靴は音がするので脱いだ。

大阪府警捜査一課は120人という大所帯だが、100名が現場へ投入された。事件発生後、捜査一課は
5つの捜査本部をかかえていたが、26日夕刻、犯人が自首した貝塚署元ホステス殺人事件捜査本部を一つだけ残し、
全員が投入された。

218:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:09 9XadsMSu
ある女子行員が証言する。

「銀行のある上司と私たちとの交換の話が、犯人の方から出ました。私たちはそのとき助かるなと思いましたけど、その人からは
ノーの返事が来たようです。犯人は『お前ら、恨むんなら偉いやつらを恨め』といって、それから『最後はオナゴは助けてやる。
心配すな』と私たちの味方になってくれました。もうあんなとこ、絶対にいや」
 
彼女は極度の興奮状態に襲われ泣き出した。
 
梅川が支店長席の電話で声高に話しているのを、人質たちがは絶望の中で聞いた。一階の全員を「運命共同体」にしていた梅川は、
その連帯感をより強めただけでなく、人質たちを完全に味方にさえした。図抜けた管理術といっていい。以後女子行員たちは、二階の
階段降り口の階段を注視し、少しでも捜査員の靴がのぞくと、「こないでェ!!」と絶叫して、梅川の援護にまわった。

 以下は大阪府警・仲三男捜査官の証言である。

「梅川の銃砲歴などが判明し、これは容易ならぬ相手だと認識しました。上下二連の猟銃で、シシ弾が入っていることもほぼわかり、
ヘタな手出しはできないと思った。ピストルは素人では命中率が低いが、銃身の長い上下二連銃は命中率がきわめて高く、しかも殺傷力も
強い。一発で何人も殺せますからね。」

 前線本部がショット・ガンの威力と共に警戒したのは、梅川昭美の尋常でない性格だ。15歳のとき起こした若妻殺しに関する記録には、
こんな識別結果が付されていた。

 『知能は普通域(IQ101)にあるが、その性格は内向的で情緒が蓄積すると爆発する傾向にあり、短気かつわがままで、主観的判断に
基づいて短絡反応を示しやすい。また同情、哀れみ、良心などの高等感情に乏しい情緒欠如性の精神病質者である・・・』

前線本部は梅川の犯罪歴等のデータを入手・分析したのを境に突入態勢を一時解き、持久戦に切り替えた。

219:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:14 9XadsMSu
<<1979年1月27日 13時20分>>

【大阪府警監視】

人質の男子行員庄司逸雄<27>が、行内のトイレに現れた。
庄司は工作員に伝言する。
「犯人は非常に落ち着きを見せ、現金500万円を母親にどのように
して渡してやろうかと検討中です。拳銃は四発残っている」

220:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:23 9XadsMSu
<<1979年1月27日 13時45分>>

10時20分に、梅川静子と叔父(梅川の亡父の弟)を乗せた大阪府警のヘリコプターが現場近くの長浜公園に着陸したのを確認し、
捜査一課の伊藤忠郎管理官が梅川を呼び出し、母親が大阪へついたと知らせた。

午前に続き、2回目の説得工作がこのとき始まる。

221:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:27 9XadsMSu
年寄りのお母ちゃんが一番好きや。

せやけどな、こんなとこに連れて来てゴチャゴチャいわせたら、人質を皆殺しにしたるで。

222:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:28 9XadsMSu
梅川は異様に興奮した。伊藤管理官が梅川を電話に出す。

223:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:30 9XadsMSu
あんた、なんべんいうたら、わかるんや?

ワシに警察を近づけやがったな?

224:伊藤忠郎 ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:32 9XadsMSu
どこへや?

225:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:34 9XadsMSu
階段の下や!

226:伊藤忠郎 ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:35 9XadsMSu
そんなこと、絶対ないよ。

227:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:36 9XadsMSu
ワシが見とるやないか。ここの銀行員は、みんなあんたらを目の仇にしておるで。

ワシがわめき散らすと帰りよる。狙撃隊かなんか知らんが、ちゃんと見えるんやぞ。

228:伊藤忠郎 ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:37 9XadsMSu
ビールを置きに行ったんだよ。

229:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:38 9XadsMSu
アホなこと言うな貴様!

230:伊藤忠郎 ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:39 9XadsMSu
もしもし・・・あのね、あんたのお母さんが声だけ聞かしてくれというのや。
ちょっと聞いてくれるか?

231:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:44 9XadsMSu
・・・そりゃ、切るわ。

232:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:47 9XadsMSu
静子が受話器をとり、何度も「もしもし」と呼んだが、電話は切られていた。梅川は結局、母親と一言も話しをしなかった。
大阪府警は静子に手紙を書かせたがそれも受け取らなかった。こうして母親による説得工作は失敗した。

以下は、静子による手紙の全文である。

233:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:53 9XadsMSu
昭美

お母さんが来ていますのよ

朝のてれびで知ったのですが、おまえどうしたことをしたのです

いま、でんわをかけてもらったけれど、なんですぐ、きってしまったのか

いまそこにいるおかたを、わけをはなして、母上のたのみですから、ゆるしてあげてください

早く(人質を)だしてください、母上のたのみです、母より

234:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/02 23:56 9XadsMSu
私情(PCならびに接続状態不調等)により、いったん中断します。
再開は深夜~早朝の予定です。

235:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/03 07:24 eG8LbJ80
人質たちを監禁してから、じつに二十一時間ぶりのことだった。大きい方は前日の
夜から許していたが、ほとんど行くものはいなかった。
梅川は、セブンスターに火をつけ、一服してから、人質たちにいった。
「小便したいの、いるか」
「私も、もうがまんできんかったので、『用をたしたい』いうたら『カウンターの外側でせい』
といわれ、ロビーへ出て、かがんでしました。お客さんの人質の目の前ですけど、ああなったら
恥もなんもありません。お客さんの人質が最初にしたら、女子行員たちもしました。素っ裸で裸足
ですので、ひどく寒かった。すぐ目の前ですからおしっこの音、聞こえるし、足にもつくんです。
臭いもしましたけど、もう汚いなんていっておられません。何人かがするとたまって、流れていく
こともありませんから、そのままカウンターの下をまわって、こっち側へ流れてくる。お客さんは、
右足上げたり、左足上げたりしてよけていきましたけど、何や悲しゅうなって」
(人質の女性A子)

236:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/03 07:26 eG8LbJ80
アンモニアと死臭が暖房のよく効いた1階に充満してきた。梅川が電話をとった。

237:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/03 07:28 eG8LbJ80
今すぐ借金を払いたいところがある。500万円用意しろ。容易せんと人質を順番に殺したる。
弾丸はなんぼでも持ってるんや!

238:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/03 07:31 eG8LbJ80
<<1979年1月27日 14時45分>>
業務係長・嶋崎博<40>が501万円(注=銀行の金)を袋に入れ現地指揮本部に出頭。
「犯人の借金先7~8ヶ所に500万円を配れと命令されています。借金先から金の届いた旨の連絡がないと、
人質全員を殺すと言われています」

239:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/03 07:45 eG8LbJ80
 二階の中田幸雄支店次長<48>は当初、梅川の>>237の要求を断った。曰く「今日は土曜日だから無理だ」と。
女子行員の話では、支店内に「5000万円以上」あった。梅川は”味方”の女子行員を使い一階の現金を集めさせた。
840万円があっという間に梅川の目の前に積まれた。梅川は嶋崎を呼んだ。
「これをワシのいうところへ持って行け。警察には言うなや。いうたら人質を殺したるからな」
メモには十箇所の支払先が書かれている。梅川の借金先でバー、寿司屋などが多く、最低が5万5千円。
全部合わせて約300万円だった。
 結果的には嶋崎を使いに出した事が梅川の命取りになった。梅川がこの事件で犯した最大のミスだった。

240:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/03 07:46 eG8LbJ80
誠に勝手ながら、続きはまた夜とさせていただきます。通常通り投稿にお使いくださって結構です。

241:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/03 07:49 eG8LbJ80
>>238-240は、HNはルポライター◆UME/seXGGAの間違いであった、ということで、
ご了承願います。

242:萌 ◆gAgMIQIX.w
02/11/03 16:16 pnrmxwvg
ルポライターさん、お久し振りです。
今日は病院を抜け出して漫画喫茶に来たので立ち寄らせていただきました。
スレッド、頑張ってますね。嬉しいです。
あまり見には来られませんが、これからも頑張ってくださいね。

243:243
02/11/03 20:12 TuOP1lbN
俺は当時13だが、77年のソマリアのドイツ機ハイジャツクみたい
に特殊閃光弾をいつ投げ入れるのかと、あのころは考えていた。

244:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 01:30 hcXJmBtz
今夜は準備までもう少しかかりそうです。
すぐに開始される事を期待せずお待ちください。

245:読売新聞1979年1月28日(日曜日)朝刊1面 ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:35 hcXJmBtz
ろう城二晩、必死の説得 ― 大阪猟銃強盗
人質を小刻み解放  行員25人いぜん人質

【大阪】 三菱銀行北畠支店(大阪市住吉区万代東町一の十五、森岡浩司支店長)の猟銃強盗殺人、人質事件は、二番目の二十七日夜になってもこう着状態を続け、
三日目に突入した。犯人の殺人など前科二犯、梅川昭美(三〇)は、同日午後、新たに負傷した行員など十一人を解放したが、更に行員二十五人を人質に、武装警官隊と
にらみ合っている。この間、興奮した梅川に命令された人質行員が、仲間の行員の左耳を半分切りそぐ異常な事態も発生、事件はかつてない陰惨な様相を帯びてきた。
大阪府警の捜査本部は、警察庁の指示で、人質全員の無事救出を第一に、根気よく説得工作を続ける方針だが、梅川はこれまで三十時間を越えた二十八日になっても、
はっきりした要求をしてきていないため、解決の糸口はつかめていない。また、二十七日夜、死亡した行員は森岡支店長と萩尾博さんと判明した。
(関連記事と写真3・.22・23面に.)

246:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:39 hcXJmBtz
<<1979年1月27日 12時半頃>>

事件発生以来二十二時間が経過したこの頃、梅川は中年以上の男子行員三人を、一人ずつ手招きして近くへ呼んだ。
性的妄想そのままを現実世界に移し変えたようなサディスティックな行為の合間にも、梅川は金銭に関しては奇妙なまでの現実感覚を持ち実務的に対処している。
自分の死後あるいは逮捕後サラ金の借金のツケが母親に回ることを恐れて、法律的問題が残らぬ形で何とか借金が処理できないか、腐心している。人質の一部と
重傷者解放を条件に五〇〇万円要求した上で、梅川は人質の行員たちを集めてどうすれば「合法的」に債務弁済が完了した形にできるか次々に質問を浴びせた。
いい加減な事を言えば撃たれて左耳を同僚にそぎ落とされた竹内貞夫のように何をされるか知れたものではない。人質の行員たちも懸命に知恵を絞った。
そしていろいろ出た意見を集約して梅川は最終的に判断した。

最終方針、それはまず梅川昭美名義の預金口座を設ける。そこへ五〇〇万円を振り込ませる。あるいは自ら預け入れる。その上ですぐに全額払戻しを受ける。
後はその五〇〇万円を人質の行員を使ってサラ金各社へ返済に行かせる。

梅川は警察側・銀行責任者に対し、このような取引を持ちかけてきたわけである。銀行側はこの取引に応じたが、このような突飛な借金返済は、梅川の見栄っ張りな
性格を示す一面であったが、借金返済も梅川の銀行襲撃の目的の一つであったとするならば、梅川は非常に現実的な提言をしたとは言えるだろう。

かくして梅川は二階の現地本部銀行責任者に念を押し、五〇〇万円を用意した旨の返事を聞くと、梅川は得意満面に人質行員におのれ名義の預金通帳を作らせ、
五〇〇万円の預金の数字のチェックライターを打たせ、同時に同額払戻しのチェックも打たせた。念の入った事に梅川は借金返済が済んでいるかどうか、サラ金各社に
電話をかけて確認までしている。

ただしこの五〇〇万円は事件後、直ちに警察によって回収されている。

247:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:43 hcXJmBtz
こないになったんは、金を出さんかった銀行のせいや。銀行がいちばん悪い。その次に悪いのは、おれを生んだお袋やな。

万事金の世の中いうが、おれかていろいろ借金があるし、金が欲しいんや。

お前ら見たところええ齢してるし、銀行のことは何でも知っとるやろ。実はな、お袋への遺産として500万、おれの借金返済分として500万、金が欲しいんや。

金は銀行に出してもらうが、あとで警察に没収されてはなんにもならへん。それでな、没収でけへんような合法的な方法を、お前らが考えるんや。ええな?

248:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:45 hcXJmBtz
そんな方法があるわけがないのだが、頭から否定すると殺されるかもしれない。
三人の行員は止む無く、銀行が融資したという形にしたらどうかと提案したわけである。

249:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:46 hcXJmBtz
それでいこ。人質を解放するお礼として、銀行側が自由な意思で金を出したことにすれば、
恐喝や強盗にはならんやろ。お前、この線で上司の決済もらってこい。

500万円の普通預金通帳を、オレの名義で二通つくるんや。頼んだで。

250:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:48 hcXJmBtz
梅川に指示された一人が二階へあがっていった。五分後戻ってくると、中田支店次長の了解をとった旨を報告した。
梅川は頷くと送受器を取り上げ、二階の中田を呼び出して、上のように口座作成を命じた。

中田は了解の返事をした。

251:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:49 hcXJmBtz
<<1979年1月27日 13時13分>>

弁当33人分が差し入れられた。
10分後梅川はその見返りとして、会社員内海節子<24>を解放した。

252:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:51 hcXJmBtz
<<1979年1月27日 14時過ぎ>>

喫茶店『ダービー』に電話を入れた頃から梅川の態度は軟化しつつあった。それまで放射し続けていた狂気が消えたのだ。24時間におよぶ緊張が梅川の精神を徐々に
弛緩させてきたのかもしれない。人質たちは微妙な変化を機敏に嗅ぎわけ少々ほっとした気分になった。
健康雑誌『壮快』を愛読し、毎日腕立て伏せを欠かさず、マンションの自宅に”ぶら下がり健康器”を備えた男の体力も、一昼夜にわたる緊張の連続で疲労が積もっていたのか。
あるいはすでに死を予感していたのか。

無論篭城を決め込んだ時点で、梅川が死を覚悟した事は間違いない。何度も叫び続けた以下の言葉は、文字通り「ほんまもん」だろう。

253:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:52 hcXJmBtz
どうせオレは死刑や、そうなったらな、何人殺しても、いっしょやで!!

254:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:54 hcXJmBtz
<<1979年1月27日 14時20分>>

電話が鳴った。電話係が出てクドクド喋っていたが、梅川は横から受話器を奪い取ると大声で怒鳴った。柔らぎかけていた人質の心は、一瞬で凍りついた。

255:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:55 hcXJmBtz
なんべんいうたら判るんや?お袋とは絶対に話をする気はない。帰らせえ!

256:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:55 hcXJmBtz
本部は再び説得工作に入ろうとしているらしい。はじけるような声が続いた。

257:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:56 hcXJmBtz
そないなことしたら、人質は皆殺しや。

258:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:57 hcXJmBtz
なお説得が続いたためか、梅川は冷然として言い放った。

259:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 03:58 hcXJmBtz
おれは精神異常やない。

ただ、善悪と道徳をわきまえとらんだけや。


260:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:01 hcXJmBtz
梅川は荒々しくも受話器を机上に投げ出し、発砲の態勢をとった。垣間見せた温和な表情はあとかたもなく消え、頬は引きつっている。女子行員の悲鳴が室内にこだました。
集音マイクに金切り声がビンビン響いてくる。梅川は再び受話器を取り、>>261のように喚いた。

 電話を切ると銃を構え、そこらじゅうを動き回った。机を蹴飛ばしたり、椅子を蹴り倒したりし始めた。傷ついた野獣のように梅川は苛立っていた。
この様子を見て、坂本房敏捜査一課長は説得を止めさせた。どうせ最初から結果は見えているのだ。定石通りの手続きとして行っただけなのだ。だが折角連れてきた以上、
梅川の母親・静子には気の毒だが、このまま帰すわけにはいかない。もう、坂本の胸には湿った感情はなかった。捜査官としての乾いた計算が生まれていた。

 坂本は肩を落として座っている静子の前に、便箋とボールペンを用意した。静子は坂本に促されてペンを取った。手紙など書いた事は少ない。平仮名だけはどうやら書けるが、
漢字はほとんど知らない。その上厳めしい警察官に取り囲まれている。骨ばった指はこわばり、動かなくなった。義弟(梅川の叔父)が覗き込み、小声であれこれ教えてくれた。
ノロノロとペンが動き出した。十分近くもかかってやっと一枚の便箋を書き上げた。

 書き損じであちこち黒ずんだ手紙を受け取った坂本は、梅川に電話を入れた。

261:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:02 hcXJmBtz
弾丸はなんぼでもあるんや。お袋と話をさせようとしたり、ポリを近づけたりしたら、
人質は皆殺しや。覚悟しとけ!

262:坂本房敏捜査一課長 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:03 hcXJmBtz
お袋さんに話をするのを嫌がってる言うたら、せめて手紙を渡してくれ言われて、ことづかった。
後で届けるさかい、読んでくれへんか?

263:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:04 hcXJmBtz
梅川は、唾でも吐くように言った。

264:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:05 hcXJmBtz
そんなの読む気はないで。やめとけ!

265:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:06 hcXJmBtz
人情劇もお涙芝居も通用しない相手だった。だができるだけのことはやった。
そう坂本は気持ちの整理をつけることができた。

266:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:08 hcXJmBtz
<<1979年1月27日 14時30分>>

 事件発生からまる一日が経過した。

 坂本は大阪府立病院からの連絡を受けた。同病院では医師・看護婦20名が待機、輸血用血液の準備も完了、緊急電話回線も仮設し、受入れ態勢は充分である、
という内容であった。

<<1979年1月27日 14時40分>>

 梅川が二階の中田次長に電話をかけてきた。



267:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:09 hcXJmBtz
さっき言う取った金、500万円だけ現金で用意してくれ。すぐにな。

268:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:10 hcXJmBtz
中田が了承の返事をすると電話を切り、次は外線電話のダイヤルを回し始めた。

相手は浪速区の34歳のスナック店主だった。

269:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:12 hcXJmBtz
梅川や。いまからこの銀行の人に500万持たせてやる。その金でオレの借金を清算したいんや。
あんたなら借金の先はたいていわかっとるはずやから、銀行の人を案内してやってくれへんか?

270:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:13 hcXJmBtz
店主は唐突な依頼に戸惑った声を出した。

271:スナック店主 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:13 hcXJmBtz
そないなこと、ようでけると思うてんのか?

272:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:14 hcXJmBtz
こっちはうまくやるさかい、言うとおりにしてくれ。そしたら、人質は必ず釈放する。ええやろ?

273:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:15 hcXJmBtz
人質の件もあるし、スナック店主は仕方なく承知した。

受話器を置くと、梅川はあたりを見回し、男子行員の一人を手招きした。

274:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:16 hcXJmBtz
お前や。お前はこれから二階へ行って、500万円の現ナマを受け取れ。
そしておれの言うところへ持っていけ。届け先を言うからメモしろ。

275:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:20 hcXJmBtz
ここで指名されたのが業務課長の嶋崎である。命令に逆らう事は許されない。緊張した顔で頷くとメモの用意をした。梅川は内ポケットから手帳を取り出し、バー、鮨屋、
レストランなどの名前と借金の額を言った。
 最低5万5千、ほとんどが20万から30万台で、合計は250万余りだ。その他にサラ金関係の借金が同額くらいあった。返済先は全部で10ヶ所である。繰り返しになるが、
梅川がいったん預金通帳をつくらせ、そこから引き出す形を取ったのには、梅川なりの計算がある。こうすれば借金の返済を受けたものが後日、この金は梅川の金で返してもらったと
主張できるだろうというわけであった。

 これらの空しい努力は梅川の几帳面な性格から出ていた。その几帳面さは劣等感の倒立した虚栄が生んだものであった。いずれ終焉が来る。そのときに借金を残したままだったと
知人友人に後ろ指を指されたくなかったのだ。十円の借金も翌日返しに行く誠実さと同じものだった。
 さらに梅川は母親に迷惑がかかるのを恐れていた。借金取りに母が苛められるのを予防したかった。それで遺産まで用意したのだ。

 嶋崎がメモを終わるのを待って、梅川は乾いた口調でいった。

276:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:22 hcXJmBtz
届先はサツには言うな。相手に金を受け取らせるかどうかは、お前らの腕や。
それで、人質の安全は決まる。サツに漏らしたり、金を渡すのに失敗したりしたら、人質を全員殺す。

うまくやるこっちゃな。金を渡したら、そのたびに電話で報告せい。

277:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:24 hcXJmBtz
梅川は受話器を取り二階を呼び出した。嶋崎の行動を何も聞かずに黙過しろ、と申し込んだ。

坂本は、金の要求もあったし、梅川の意図はだいたい見当がついていた。そこでこれ以上人質を殺傷しないこと、
負傷者を運び出す事を条件に要求を許可した。

278:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:26 hcXJmBtz
<<1979年1月27日 14時45分>>

 嶋崎が二階に上がってきた。坂本は手短に事情を訊いた借金返済のために動かされていることがはっきりした。現金を受け取り皮鞄に詰めた嶋崎は、10分後西側通用口から出て、
呼んでおいたハイヤーに乗り込んだ。車は厳重な包囲網をフリーパスして巷の雑踏に消えていった。
 嶋崎は知らなかったが、坂本はハイヤーの後を覆面パトカーに追わせていた。行先を知れば知人や友人がわかる。その中に共犯者がいる可能性もある。そうなればなにか別の効果的な作戦も考えられるのだ。
報道陣もこの奇妙な動きには気づいていた。包囲網の中にハイヤーが入っていて、銀行員とおぼしき背広の男が皮鞄を抱いて走り去っていったのだ。警察が傍観している以上、なにかの黙契があることは察知したが、
内容は検討もつかなかった。追い詰められた犯人が借金返済を考えるなど、さすがの記者連中も想像できるわけはなかった。この取引は事件解決後まで極秘にされた。

 梅川は借金先に次々と電話を入れていた。

279:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:27 hcXJmBtz
オレや。ごっついヤマを打ってるんは知っとるやろ?これから金を返しに人をやるさかい、待っててや。

280:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:29 hcXJmBtz
<<1979年1月27日 14時45分~15時27分>> 

 女子行員を通じリポビタンDを三本入れろ、代わりに人質を出す、という連絡が梅川から入った。
坂本は要求の品を差し入れさせ、ついでに静子の手紙も届けさせた。梅川は手紙を女子行員に代読させた。行員は読みづらい字なので、時々、首をかしげて言葉を切る。

 それを見て梅川は自嘲するように言った。

281:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:31 hcXJmBtz
お袋は、そないな字しか書けへんのや。そんなお袋やけど、俺にはお袋だけしかいてへん。

子供の頃から一緒に苦労したもんや。お袋は大好きや。一緒に暮らしたいと思うてたんやが・・・

282:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:33 hcXJmBtz
続いて、少年時代の強盗殺人、今回の事件の計画やその挫折の経緯を矢継ぎばやに喋り、そのあと、
リポビタンDの見返りに会社員・篠原八重美<19>を開放した。

梅川が喋りまくっている時は、かなり機嫌がいいと見てよかった。1日以上の接触で、感情の動きを読み取れるようになっていた男子行員の1人が思い切って申し出た。

「負傷者だけは、出してやってくれまへんか」

梅川はその行員を睨みつけ、あかん、とどなった。

その時、竹内貞夫が引きつるような声を上げた。

283:竹内貞夫 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:33 hcXJmBtz
出してくれ。たのむ。

284:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:34 hcXJmBtz
梅川はさっと銃を向けて言った。

285:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:35 hcXJmBtz
お前、まだ生きとったんか?殺したる。

286:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:36 hcXJmBtz
梅川は、竹内に銃口を向けた。
あわや惨劇か、と思われたとき、数人の男子行員が一斉に前に出た。

「お願いします。なんとか出してやってください」
「お願いします。助けてやって・・・」

いままで何の抵抗もできなかった男子行員たちの胸には、やはり後ろめたい思いが充満していたようである。
それが勇気ある一人の言動に触発され、同時に噴出した。ずらりと並んで頭を下げている行員たちを見て、梅川の気持ちも動いたようだ。

287:梅川昭美 ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:36 hcXJmBtz
よし・・・三人を出したれ。

288:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:39 hcXJmBtz
 電話係がその旨を捜査本部に連絡した。細かな手順の打ち合わせの後搬出作業が始まった。

 三人の男子行員とは、平尾小一郎、吉谷邦彦、竹内貞夫の三人。

 特に竹内は、梅川の命令により,同僚の営業課長・西島友男<44>の手で左耳を半分切り取られ、特に重傷であった。

 吉谷は負傷にもめげず歩いて外に出た。竹内・平尾は府立病院、吉谷は阪和記念病院へそれぞれ救急車で運ばれた。

289:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 04:42 hcXJmBtz
 今回はここまでです。申し訳ありませんが、明日はルポルタージュはできません。
その代わり通常の投稿はさせていただきます。

 次回は2週間程度の間をおきたいと考えています。詳細決定時に、また連絡させていただきます。

 よろしくお願いします・・・

290:大人の名無しさん
02/11/04 05:23 3LR12NZk
田口トモロヲが梅川事件をモデルにした短編漫画書いてた

291:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 05:25 hcXJmBtz
>>290
ぜひ詳細をお教えください!きっとあちこちに知りたい方がいるはず。

292:大人の名無しさん
02/11/04 05:33 3LR12NZk
>>291
早・・
90年中頃のガロに載ってました(80年ぐらいのエロ漫画に載ってた
再録) ルポライターさんの期待に添えるものかはわかりませんが・・
その作品についてのインタビューもあったはず

293:大人の名無しさん
02/11/04 05:34 3LR12NZk
>90年中頃
90年代中頃です

294:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 05:44 hcXJmBtz
>>292-293
SpecialThanxです。今度調査します。
また書いてくださいね。

295:大人の名無しさん
02/11/04 08:54 mIanxqMR
ルポライターさん、長文の書き込み大変お疲れ様でした。

296:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 09:01 hcXJmBtz
>>295 ありがとうございます。じっくりお読みくださいね・・・。

297:195 ◆IyApGKf56Q
02/11/04 10:56 paf1ywnd
遅ればせながらアウトロー文庫買ってきましたので、あわせながら読んで行きます。

298:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 11:08 hcXJmBtz
>>297 195 ◆IyApGKf56Qサン
おはようございます。幻冬社文庫の『破滅』ですね。
今回展開分は、重複分は殆どないかも。ですので、併読はかなりイイ!かもしれません。

299:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 20:31 5lXgbgGD
遅ればせながら。
>>191-193 野次馬サン&奉先の一睨みサン
 【Tattoo<刺青>あり】はTSUTAYA等大規模レンタルビデオ店には
置いてますよ。宇崎竜堂のオープニング曲とエンディングの<ハッシャバイ・シーガル>は、
今では簡単に手に入らないと思われます。
 【Tattoo<刺青>あり】は実にいい映画です。ご存知の方も多いかと思いますが、
銀行襲撃シーンはほとんどなきに等しいですので(襲撃の最初と、篭城時の母親との電話のシーンのみ)。

>萌ちゃん
 元気そうで良かったよ。来年には復帰といった話は聞いてるので、ひとまず安心した。

 本日は風邪気味のため、ここまでです。また、明晩に・・・

300:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/04 20:35 5lXgbgGD
 蛇足ながら一言。
 文章量が多大なスレですが(今日遂に、Mobileから見ることが不能になりました。
たしか512Kb超になるとスレストですよね)、内容を踏まえた、また、「読んでます」と
いった、簡単な投稿も私は歓迎しております。どうか皆さん、ご遠慮なく。

 では。

301:桜子 ◆X1SakuraTc
02/11/05 12:54 /q1LRDtq
地下のマイナー住人ですが、拝見させていただきますた。
お気に入りに登録して、ゆっくり読ませて頂きます。

302:野次馬
02/11/05 17:22 DearKkUn
>>299
ほんとですか?TUTAYAはよく行くけど見たことないなぁ、今度真面目に捜してみます。
>>288
耳をそぎ落とされた竹内さんが、救急車で病院に搬送される映像ははっきり覚えています。
ストレッチャーにのせられ、耳から顔にかけ、大量の血糊が付いた状態でしたが、
当の竹内さんは、気丈にも平然とした顔で意識もハッキリしていました。
とても耳を切断された重傷人とは思えなかったほど、しっかりした表情だったのが印象的でした。
まるで取り乱す事のないこの冷静さには、ちょっとしたかっこよさを感じました。

303:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/06 00:43 BZHnNWNa
 参ります。

>>301
来ていただいて光栄です。その一言。
>>302
後述で竹内氏のインタビューを、後続のルポルタージュ内で載せます。

304:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/06 00:43 BZHnNWNa
 最近思うのですが、ここのスレッドのタイトルで言う真実とは何を意味しているのか?
最近私は、いろいろ考えてしまいます。最初は私も、様々な資料を入手したことで得意になり、
事実と真実とをない混ぜにして、ただの事実列挙に陥っている事は無いか、と、自分で言うのも
何ですが真剣に考えてしまいます。

 当たり前の事でお叱りを受けかねないのですが、真実は我々自身の中にあります。残虐・不謹慎と
いいながら、多くの人は、取り扱った出版物でさえ少ないこの事件(ご存知のとおり、あさま山荘
事件は、この事件の何倍も著書が存在する)の真相に、多かれ少なかれ興味を抱くはずです。
 私の中ではその理由は明白です。誰しもが日常生活には存在し得ない、または決して許されない
背徳とその実行に、関心を全く持たないはずはないのです。どこで見たか忘れましたが、ダウンタウン
の松本か浜田かが中学生当時にこの梅川の三菱銀行人質事件をリアルタイムで体験し、梅川射殺のニュ
ースを聞くやいなや、校内放送で、「梅川!何で死んだんや!」と喋ってしまったらしい。さらには、
校庭で、黙祷まで捧げる輩もいたらしい。

 白状しますと、私にとってもやはり、梅川はピカレスクヒーローの一人であることを認めます。と
いうか最早ネタでも何でもなく、梅川はもう一人の自分である、とも言い切れます。

 どうか皆さん、この意味を曲解なされぬよう。

 私も格好つけて言うわけではなく、このスレにてルポを書き綴る上で、それ相当の覚悟は決めています。
模倣犯が登場すると真っ先に疑われる人間、それは他ならぬこの私でしょう。

 ハッキリ申し上げますが、私はこのスレで。「悪とは何か」を真剣に、とことん、語りたいのです。

 次回からのルポこそは、その私の願望が前面に出たものにするつもりです。

 では又、熱が出てきた模様ですので、寝床につきます。おやすみなさい。

305:大人の名無しさん
02/11/06 02:11 iQAOwRMX
初めて書き込みします。304を読んだところ何となく安心できたので初めて書き込みます。




306:38生まれ
02/11/06 18:34 NMtWQ4g5
>>304
おっしゃる意味はよくわかります。
自分の内面にも梅川が存在する部分があるような気がします。
ひょっとしたら誰にでもあるのかも。
性悪説信者ではないのですが。


307:ルポライター ◆UME/seXGGA
02/11/06 23:45 BZHnNWNa
 古い話で恐縮なのですが、>>180の野次馬サンの投稿に対してレスです。
 
 確かに梅川は、42時間の間に食料や酒などの要求、またはヘリコプターを要求して、
逃走を図ることを考えたりもしたようですが、実際のところ篭城中は、篭城状態から
脱却するための、前向きな要求など何一つしてこなかった。
 初めから死ぬために事件を起こしたのではないかと推測する意見が少なからずあったようです。
(心理学でいうところの拡大自殺、刑法的には「間接(正犯的自殺)」)
ですが梅川は、現場から500メートル離れたところに、エンジンキーを差し込んだままの愛車・
マツダコスモを用意しており、銀行に乗りつけたのは共犯の鍋島に盗ませた焼肉屋のライトバン
だった。しかもその車首はコスモを止めている場所の方に向けて乗り付けている。
 プランは金を奪取して逃げることを想定して、杜撰ながらも緻密に練ろうとした形跡が見られます。
恐らく脱出不可能になって、梅川自身の脱出と生への道が閉ざされた辺りから、本人も考えもしなかった方向に、
梅川は突き進んでいったに違いありません。

 恐らく篭城後半くらいから、本人も人質達同様、自分が何をしているのかわからなくなって来たのではないでしょうか?
なぜ自分たちが全裸なのか?なぜ自分達が梅川に協力しているのか?なぜ自分が支店長席に座り、外との戦争をしているのか・・・

 梅川は結局、目的さえ見失ってしまった気がするのです。これは私の、完全な憶測なのですが。

308:38生まれ
02/11/07 10:07 Q+2e93/l
梅川は生涯の上で主役になりたいと思ったのでしょうか。
でかい事件を踏むと公言した以上
それが自分だと公にならなければ意味がなかったのではないでしょうか。
ソドムの市を再現するというより
後々、自分の行動や言動を伝え残すためにも
人質を生かす必要があったのではと推測します。
目的があったとするなら
それは自分のアイデンティティーに沿うものと思います。

309:野次馬
02/11/07 10:57 Hlr3ZTIK
>>307
ありがとうございました。
このことに関して、皆さんの見解を聞きたかったんです。
僕がこの目的を想像するに当たっては、想像の中で自らを梅川の立場に置き換えて考えています。
すなわちそれは306でご指摘のとおり「誰の内面にも梅川が存在する部分がある」と言う事です。
大変不謹慎ながら当時自分の学校を占拠し、クラス中の女子生徒を全裸にさせ辱める想像をしたりしました。
無論そんな事は想像や妄想の範疇に留まっていましたが、おそらく多くの男性は少なからず
このような想像をした経験があるに違いありません。
人の心に潜む残虐性や非行性、一般の人はこれらの鬱憤を、日常生活の中で無意識のうちに
何らかの代償行為によってガス抜きをしている術を身につけている。
あるいは教育や思想主義によって火種を封印してしまっている。
社会との接点が希薄になった現在、隣人知人もしくは自分の中に梅川は存在する。
・・・と、今日はちょっと恐い事を考えてみました。




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