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解雇金銭解決導入に向けての産業競争力会議・法務省・厚労省、裁判所の気になる動き
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夜明け前の独り言弁護士 水口洋介 2014年7月 4日 (金)
解雇金銭解決制度の導入に向けて、裁判所の労働審判記録や訴訟記録を、産業
競争力会議の意を受けて、裁判所の協力のもとで、厚労省ないしその受託機関
が閲覧調査をする作業が進められています。
(中略。全文はソースにて)
要するに、裁判所の労働審判や民事訴訟の事件記録を、厚労省ないし受託機関
が閲覧して、解雇事件の金銭解決水準を、属性等を含めて調査をするというこ
とが決まり、裁判所がそれに協力することを決めたということです。上記萩本
法務省民事局官房審議官は裁判所から法務省に出向している裁判官ですから、
裁判所とはツーカーなはずです。
■調査の問題点
●誤ったデータの分析になる可能性が高い
解雇の金銭解決水準については、解雇が有効か否かという判断が最も重要な要
素です。解雇が無効と判断される場合には、金銭解決の水準は当然にあがりま
す。解雇が有効の場合には、当然水準は低くなります。調停や和解の際に、解
雇が有効か無効かという裁判所の心証をもとに双方が妥協して、金銭解決の水
準が決まるのです。
訴訟記録をいくら厚労省が見ても、この重要な要素は判断がつきません。
したがって、この要素が抜け落ちたデータ整理は、極めてミスリーディングな
データになります。分かりやすく言えば、勝ちスジ事件も負けスジ事件も一緒
にして解決金額の平均値を出すことになりかねません。当然、金銭水準は低く
なりますよ。
●中立公平な立場ではない者の調査
また、解雇金銭解決制度について中立公平な立場での学術的研究ならいざ知ら
ず、解雇金銭解決制度の導入を推進する立場に立つ、産業競争力会議の意を受
けた厚労省ないしその受託機関の調査は、信用性にかけるというものです。世
界一、企業が活動しやすい日本を目指す以上、その金銭解決水準は低い水準が
狙われる可能性が高いわけです。
●労働審判は非公開手続
訴訟記録は閲覧が可能です(民事訴訟法91条)。しかし、労働審判は非公開です
(労働審判法16条)。したがって、産業競争力会議や法務省、厚労省とはいえ、
労働審判記録は閲覧できないはずなのです。裁判所としては、産業競争力会議、
法務省、厚労省であれば許可するのでしょうか。その場合の法的根拠は難で
しょうか?
■慎重な対応を
以上のとおり、解雇金銭解決制度導入ありきのこの調査は、極めて問題が大き
いです。この調査が最も労働事件が多く専門の労働部がある、東京地方裁判所
労働部を対象に行われることは明白でしょう。
「最高裁の協力のもと東京地裁労働部で集めたデータ」となれば、一般国民に
は、「間違いない」ものとして受けとめられる可能性が高い。しかし、解雇が
有効か無効の観点を落としたデータであり、重大な欠陥があります。
このような調査を安易に行うべきではありません。