14/07/29 00:47:32.29 0
(>>1の続き)
政治とは「敵」を「味方」に変えていくゲームである。いかに多数を形成していくか。安倍首相のやり方は「味方」との間に対立軸をつくり、
「敵」を増やしている。
安保闘争で国論を二分し、その後、憲法改正論議をまったくできなくしてしまった祖父・岸信介首相と瓜二つだ。
株価が政権の支持率と連動しなくなった今、安倍政権の「切り札」は北朝鮮拉致問題を打開することだ。しかし、交渉相手は、世界で
最も信用してはいけない指導者、金正恩第1書記である。
拉致被害者を取り戻すことは急務だが、前のめりになりすぎることは極めて危険である。
安倍首相の目の前には3つのアクセルペダルがある。「アベノミクス」「ナショナリズム」「安全保障」。絶対に踏んではいけないのは
「ナショナリズム」のアクセルだ。
「アベノミクス」が成就するかどうかは、成長戦略をどれだけ軌道に乗せられるかにかかっている。女性活用、農業、大学改革など
成果が出るのに時間はかかるが、着実に取り組んでいく以外に日本が進む道はない。
その上で、安全保障をじっくり固めていくのが賢明な政権運営だ。韓国と中国との関係改善は、NHKが集団的自衛権をめぐる
閣議決定をどう報道したかより、はるかに重大な問題である。
支持率の低下に伴って政権がガタガタし、さらに支持率が低下するという悪循環に陥れば、安倍首相だけでなく、日本にとっても
大きなマイナスになる。それこそ、中国の習近平国家主席の思う壺だ。
安倍首相は「性急」ではなく「慎重」に、「対立」ではなく「より大きな多数」を目指すべきだ。
聞いていて気分のいい話をしてくれる取り巻きより、耳の痛い話をしてくれる現実主義者をそばに置くことだ。「支持率が下がったら、
ナショナリズムのアクセルを踏みなさい」とささやくような人物は絶対、政権に近づけてはいけない。
(おわり)
●木村 正人 在英国際ジャーナリスト
ロンドンを拠点に活動する国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。日本国憲法の改正問題(元慶応大学法科大学院
非常勤講師=憲法)や日英両国の政治問題、国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部で大阪府警・
司法キャップを務めるなど大阪で16年間、事件記者を務め、東京で政治部や外信部を経験。2002~2003年、米コロンビア大学
東アジア研究所客員研究員。2012年7月、独立してフリーに。