07/05/15 22:13:47 w6WoA3nA
2階席に乗り込んだ従兄弟の有頂天ぶりは半端じゃなかった。
「このビスタはな、連接車と言って、車両の間に台車があって・・・」
鉄分がいくらか濃くなった漏れの説明なんか聞いちゃいなかった。
そのあまりに無邪気な、子供らしい喜びかたに、
漏れは自分が初めて名古屋に行ったときのことを思いだしたりしていた。
奈良に着き、名残惜しげに降車し、記念撮影。
大仏見物もしたが、帰宅してから従兄弟の口から出るたびの報告は、
ビスタのことばかり。
説明を聞いてないと思っていたが、部分的には頭に残っていたようで、
線路のジョイントを通るときの音が、普通の電車とは違ってた、
なんて説明もしていた。
連れて行った漏れも、本当に嬉しかった。
数年後、用事で大阪線に乗った。高安を通過したとき、
漏れは思わず「ああっ!」と声を上げるところだった。
ビスタの連接が、ばっさりと切り落とされ、無惨に外ぼろをさらした2階建て車両があったから。
「楽しかった思い出をありがとう。」
心の中でそうつぶやいて、車窓から消えていくビスタの姿をずっと目で追っていた。