07/09/01 22:10:09 OG5jz6kKO
わたしがひとり、薄暗い路地裏を歩いていると。
通りかかった家の門扉の前に、十代半ばの少女と中年の母親が並んで立っているのが見えた。
二人とも口許を閉じた無表情のまま、微動だにせずただじっと前方を見つめている。
何をしているのだろう。誰かを待っているのだろうか。
いったんは通りすぎたが、妙に気になり、踵を返してみた。
けれど路地裏は思った以上に入り組んでいて、来たはずの道がわからない。
あの家はどこだったか。どうしてこの路地裏はまるで迷路みたいなのだろう。
あてどなくさまよっていると、次第に得体の知れない胸騒ぎが募ってくる。
あたりはだんだん暗さを増していく。いや、最初からずっと暗かったのだったか。
そのうちに、以前にもこれと同じことがあったような気がしてきた。
そう、まるで同じことが。しかも一度ではない。
気がつくと震えている。だめだ、やはり行ってはならない。
そしてふいに思い出した。
あのあと、娘が何をするか。母親がどうなるか。わたしはよく知っている。
なぜなら、あれはわたしだから。あの母親と娘、二人ともがわたしだから。