07/08/19 00:10:27 LUVP2wzC0
午前九時、昼一時、夕方六時。
私が息子のために食事を用意する時間だ。今日も部屋のドアを皿の通る隙間だけ空けて、部屋に入れておく。
この身は、消防署を定年退職しもはや年金暮らし。経済的にはかなり辛い。
最近は悪いことが続いている。年金削減が国会で議論され、耳も聞こえづらく、妻も先日死んだ。
ガンだった。妻は「あなた、愛してるわ。あと、あの子もどうにかしなくちゃ。」と息を引き取った。
その葬式の翌日、自分の部屋から広い妻の部屋に移る、と置き手紙があった。
ある日私は、息子が引きこもって何をしているのかを知りたくなった。
人生をだめにしてまで、一体何に熱中しているのか。
私もそう長くは生きられないし、このままではもう先が見えていることを教えなくては。
私もあんな息子でも愛せずにはいられないし、妻の遺志もある。
そう思って、部屋のドアを開けた。
今日の今朝置いた林檎が、妻の仏壇の前に備えてある。
しかし息子はいなかった。それどころか、ここで生活している痕跡もなかった。
不思議に思って私は、こんどは以前の息子の部屋を、一週間前の食事以来、初めて開けてみることにした。