07/08/03 16:25:13 7Z6vQN8a0
同窓会の席で、僕の隣に座っている洋子がこう切り出した。
「ねぇ、但馬幸平って覚えてる?」
その名前を聞いた瞬間、懐かしい思い出がよみがえってくる。
但馬くん・・・ 彼は6年生の途中から転校してきた。
それまで誰ともしゃべらなかった僕に、いつも話しかけてくれた。
休み時間には、学校の七不思議、先生たちのあだ名、
クラスの女子たちの品評・・・。話題が尽きることは無かった。
授業中、二人で窓の外を眺めながら、流れる雲のかたちを見て、
「あれは○○君に似てる あの形は先生の輪郭ソックリ!」
とヒソヒソ話しては、二人でクスクス笑いあったりしたものだ。
それから、まだまだ思い出はある。
今まではただ退屈だった運動会や遠足も、彼のおかげで
楽しく、懐かしいものとなった。
ただ・・・彼は少し変わっていた。
それまでどんなに楽しく話していても、他のクラスメイトから
何かを言われると、急に険しい顔になって押し黙るのだ。
・・・何を言われてそうなっていたんだっけ・・・。
などとボンヤリ考えていると、洋子の向かい側に座っている
田中が身を乗り出し、しゃべり出した。
「おお、覚えてるよ。あいつ、少し変わってたよな。」
「やっぱり? 気味悪かったよね。」
「あいつ、いつも一人でブツブツしゃべってたよな。
一体何と話してたんだろうな…」