07/09/06 10:58:15 vHdKxeR50
巻き取り役の部員が手をくるくるまわすと、糸を結ばれた(ことになっている)Yの手がゆるゆると持ち上がる。
「ほらね!」とYは騒ぐが、どう考えてもYが自ら腕を動かしているようにしか見えない。
「自分で上げてるんじゃないの?」と聞いても、
「違うよ、勝手に持ち上がるの、これは霊が動かしてるんだよ」と言い張るY。
ようはコックリさんみたいなものか。怖がりの怖い物好きであった自分は、何かで読んだコックリさんの正体を思い出し
目の前の遊びと照らし合わせて、密かに納得した。霊が動かすと信じて、無意識に自分で腕を動かしているのだ。
思い込みの激しい、暗示にかかりやすいお年頃ならではの遊び。
そんなことを考えていると、Yが持ち上がって腕をゆっくり降ろしながら
「Oもやろうよ」と誘ってきた。何故すぐに腕を降ろさないのかと思ったら、
『遊びを終えるにはBが最初にしたのと反対方向に手を回して
巻き取った糸を緩め、Aの手を元の位置まで降ろさなくてはならない。
いつまでも巻き取り続けると、持ち上がっていく腕は最終的にA本人の首を絞めてしまう』
のだそうだ。幼稚なようだが、ちょっと気味の悪いルールである。
終了の儀式を終えたYが、改めて自分にまとわりつく。Oもやってみようよ、面白いよと。
今も昔も零感である自分は、霊の存在に興味はあったが半信半疑で、ありえないとは思いつつ、本当に腕が動いたら怖いので遠慮した。
見渡すと、この不思議な遊びはすっかり道場内に浸透したらしく、向かいあって騒いでいる部員がさっきよりも増えている。
みんなして、単純にも程がある。
「ねぇ、Oもやろうってば!」
なおもYが誘う。やめとくよと離れても、腕に抱きついてついてくる。あんまりしつこいのでイラっときた自分は、
「いいってば!」と強くYの手を振り払った。よろけてやっと離れたYをトドメに睨みつけたが、びびったのは自分の方だった。
Yの目の下が紫になっている。寝不足でできるクマみたいな、黒っぽい紫色だ。
さっきまでそんなクマはなかった。驚いて固まっている自分にYがさらに迫る。「一回だけだから!」とか言いながら。