前世の記憶がある人集合その2at OCCULT
前世の記憶がある人集合その2 - 暇つぶし2ch240:99 197
07/06/21 02:18:17 xuPWJU4qO
>>239
あれから、数日が経っても、依然、師の言った言葉は離れそうに無い。
滑車を利用して、石版の上部に文字を打つにも一字、一字が躊躇ってしまう。
近くで作業している他の彫文師達が、またあの子の噂をしている。耳を塞ぎながら、仕事をしたら、少しは捗るだろうか。

俺とあの子が、異父兄妹か若しくは、本物の兄妹かもしれないだって?
神様もふざけんのもいい加減にしろよ。
打つ手が働かない。なんで動かないんだ。魔法でもかけられたのか?

「おい、そこの役立たず!、文字が打てないんだったら降りろ!」
師の罵声が響き、昔なら意地でも打ち込んでいたが、まるで気力さえ、失われたようだ。
降下して、地面に降り立つ。工具を腰脇に差し込んで溜め息をつく。
ドンっと背中を突かれて、振り向く。絶対、冴えない顔をしてる。
「冴えない顔だな。」
目の前には師が立っていて、顎で後ろを指す。
師の後方を見ると、海沿いの鍛冶屋の店主の奥さん、つまりは俺の母親と思わしき人が立っていて、こちらを見つめている。
師の話では、鍛える必要の無い新品の工具を返しに来たのだそうだ。
「話はつけておいてやるから、お前は仕事に専念しろ。母親とは、遅かれ早かれ、気づくものだ。」
俺は黙っていた。聞き流したかった。それでも、師の言うとおりに、仕事を全うせねばならない。
文字を彫る最中も、サボっていないように見せかけて、振り返り、師と女性が話し合う姿を見た。
顔付きを見れば、単に工具を返しに来たついでの世間話とは思えない。
真剣な内容に決まっている。途中で女性は悲壮感を漂わせ、口元を押さえた。
何故か文字を打つ手に力が入る。
夕方、仕事が終わり、師が近付いてくる。俺は黙々と後片付けをする。何故か、母親と思わしき人の姿が無い。
袋を結ぶ手に力が入る。
「今度の休みの日に会いたいそうだ。…お前の生まれた浜辺で。」
俺は黙って聞いていた。聞き流したかった。



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