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前世物語 第二部乱世編 第五十一話 握飯 その二
「わしをぉー、つれにきたかー」
連れに来た?そんなことはない。
「あんしんしーやー、わしゃー、じきそっちへーいくけー」
こっちに来る?私は顔をしかめる。
暫く経った後、坊主の目がまた開き、首を少し動かす。
「そこのーみてみぃー、にぎりめしー、おめーのまごがのー、まいにちぃ、
はこんでくれよー」
米の握り飯。米はおろか、雑穀の一粒もなく、只老人の屍を喰らう村もあ
る。やがて老人もいなくなり、餓鬼同士で喰らい合いをするのだろう。そ
して最後に残った者共は、生きながら物の怪にでもなるのかもしれない。
「おめーに、にーてーよー、きのつえーこぉじゃ」
気が強い?私はあの雨の夜。最後に放った矢が雨に滑り、空しく泥田に落
ちたのを思い出していた。呆然と砦を前に立ち尽くしていたのを思い出し
ていた。一矢報いたかった。
「あんときぃ、わしぁのー、たしかにぃーかんじゃやったー」
そんなことは、浪人の話から知っている。
つづく