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前世物語 第二部乱世編 第五十話 童霊 その二
一人の子供が駆け足で私を追い越していく。私にまるで気付かない。
ちらりと見た横顔が気になり、私は子供が駆け去った後をふらふらと追っ
ていく。
まるで男の子のような出で立ち。体つきは女の子だ。五歳か六歳か。
村はずれの丘を登り、丘の向こうにその子は消えていく。
「じーさん。めしだ、めしー」
丘を登りきると目の前に粗末な掘っ立て小屋。そのすぐ先はもう山の森。
「なんだよ、のこして。ちゃんとくわんと元気でんよ」
掘っ立て小屋の中に子供ともう一人、弱々しい人の気配。
私は小屋のすぐ前に立つ。
「すまーよー。おまえのじーさんの・・・・・・」
細々とした声。そうとうの老人。半分以上何を言ってるか判らない。
「またそのはなしかよ。会ったこともないじーさん、ばーさんの話聞かさ
れても・・・わかってるって・・・だから飯くって元気だせって」
子供の声は大きい。村まで聞こえそうだ。
いきなり、入り口の菰が跳ね上がる。
つづく