07/04/18 22:26:17 vaTrZKxS0
前世物語 第二部乱世編 第四十八話 和魂 その二
幾度かの季節が過ぎ、長雨の後、私は農村を通りかかっていた。
見渡す限りの田圃に水が張られ、村総出で田植えをやっている。
中には首が据わったか据わらないかの赤子を背負った百姓女もいる。
私の最初の子供は年明けのまだ寒い時期に生まれ、一月も経たないうちに
死んだ。加由は年の暮れ、寒さが一番厳しい時に生まれ、首がまだ据わる
前に村を焼け出された。
百姓女の亭主らしき男が女と赤子を気遣う。気の弱そうな、でも優しそう
な亭主。
あの時、村が東の馬鹿者共の焼き討ちに会わなかったら、私もああやって
赤子を背負って田植えをしたのだろう。
それにしても、動きがぎこちない。産後、日が経っていないのか。そんな
ことはない。百姓に育ったものならあんなへろへろの腰つきはしない。
町娘が百姓に嫁いだのだろうか。戦いに敗れ、武士を捨て、百姓に戻るも
のもいる。その縁者かもしれない。
案の定、泥田に足を取られ、倒れそうになる。亭主が女を支える。意外に
しっかりと受け止める。女は顔を上げ、亭主に笑顔を見せる。
つづく