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前世物語 第二部乱世編 第四十七話 荒魂 その二
「さあ、どうやろうねぇ。物の怪でない神さんには会うたことがないから
しらんけどな。たとえおったとしても、相も変わらず人間共は阿呆なこ
とばっかりしとる。人間には興味ないか、嫌っとる神さんやろう。なら、
わしら物の怪といっしょやな」
狢は私がいようといまいと普段と変わらぬ生活をしているようだ。
食材を調達に行く時は、何日も庵を空ける。
私は何故だか知らないが、庵に居ついている。
「幽霊を追い出そうとしても無駄や。引き留めようとしても無駄や」
狢の長い経験がそう悟らせる。
「幽霊自身がなぜいるか、どこ行くか、わかっとらん。そんなもん、そと
から何やったって無駄や。まぁ、別にわしは迷惑しとらんから、好きに
すればええ」
狢の話はいちいち真っ当だ。たしかに私自身判っていない。
ずいぶん長いこと私は庵にいた。一年くらいいたかもしれない。
「ぬしも行ってしまうか」
上階の部屋、枝の隙間の窓から外を見つめて、狢がぽつりと言う。
つづく