07/04/16 23:01:24 7xzTAMny0
前世物語 第二部乱世編 第四十六話 死霊 その一
「人でも獣でもええが、幽霊になってから死に立ち会うたことがあるか」
「はい」
「そんときどうやった」
「頭から白いもやもやしたものが出てきてちょっと戸惑ったような動きし
て、霧が晴れるように薄くなって消えていきました」
狢はぐいっと呑み、また椀に酒を注ぐ。
「魂、霊魂、思念、気持ち、心、まぁいろいろ言い方はあるが、どれも同
じもんや。ぬしが見た白いもんがそれや」
狢はなんだか楽しそうである。
「もちろん、生身のもんには見えん。わしにも見えん。ぬしが幽霊やから、
感じることができるだけや」
狢は立ち上がり、肉の塊が見えた部屋に行き、鉢をもって戻ってくる。
「わしはこれが好物でな。なんの汁かは言わんでおこう」
「わかります」
「せやな。幽霊には隠し事もできん。ぬしも生前はいろんな獣を喰うたや
ろう。かと思えばわしに餌をくれたりする。同じ事や。恨まんでくれ」
つづく