06/10/29 01:43:45 PP1zt3NsO
長くなったけど、つづきだ。多分これで終わる。
そうだ。あの日も畑さんはいつものように店に来てくれた。
なにしろこっちはメチャ忙しくて一人一人のお客に丁寧な接
客なんて出来やしない。けど、畑さんは別だ。
常連さんってだけじゃなくて、クルーみんなが大袈裟に言え
ばファンだったからな。畑さんの。
野郎どもだけじゃなく女の子たちも、畑さんを好きだった。
旦那さんに先立たれて、子供を育てるためにろくに休みも取
れない仕事してて、それで、なんであんなに良い人で居られ
たんだろう?オレにはわからない。
寒い日だったよ。ホット商品の補充も半端じゃなく多かった。
いつもなら、おにぎりと惣菜をふたつ位買って帰ってたけど、
その日はレジ横のおでんも買ってくれた。
客が多かったから、二言三言しか話せなかったけど、オレは
いつものように軽口きいて、畑さんも笑ってくれたっけ。
秋口の夕方、駅前は帰宅ラッシュの車の列がずーっと連なっ
てて、それはいつもの風景だった。
畑さんは赤いスクーターに乗って通ってたんだが、いつも、
店の前を通るときに必ず短くクラクションを鳴らしてた。
オレらはクラクションを聞くと、店の中からでも手を振って
見送ってた。
クラクションは鳴らなかった。店のすぐ前の交差点で、畑さ
んは信号無視してきた車にスクーターごと軽く五メートル以
上飛ばされた。