07/08/12 11:12:21 iDeJAC0OO
あれは確か、兄弟の不和で傷害罪にまで発展した裁判だった。
「おまえがソフランいれへんからや」
とかしょうもないことで、その場で被告人が証人席にいた弟と言い争いを始めた。
裁判長は手に持った木槌でカンカンと叩く。
その後は当然「静寂に」と言うと誰もが思っていた。
だが、違った。裁判長の言葉はこうだった。
「おまえらもうやめーや。見てみ、母さん泣いとるやないか。
おまえらその人に産んでもらえたから、そうやって元気に喧嘩もできるんやろ。
なに泣かしとんねん。あんな腰曲がっとんのに、大事にしたれや。
ってなんやおれ、裁判官やのに近所のおっさんみたいに語ってもうとるやないか、わけわからへん」
裁判長はゆっくり立ち上がると、そのままその場を後にした。
その言葉に心を打たれたのだろう、兄弟は泣き出し、競って母親のそばに駆けつけていた。
傍聴席の俺たちもみんなもらい泣き。
もう泣いていない者は誰ひとりとしていなかった(記録係の人がなぜか鼻水まで流し、いちばん号泣していた)。
そしてそのまま、閉廷となった。つまり、それ以上何も必要としなかったわけさ。
こんな感動的な裁判は後にも先にもこれだけだ。
ただ、それ以来その裁判長は見なくなったけどな。