07/05/12 10:28:11
>>753
芥川竜之介ではなくて江戸川乱歩の小説だった。
作品名は「蟲」。
あらすじ→人間嫌いだが実は人に恋焦がれ、ふとしたきっかけで少年時代に恋心を抱いた
新劇のスター女優に思いを寄せる主人公。その身勝手な恋はついには犯罪となって悲劇的
な結末になっていきます。しかも死体となった恋人を幻想世界の中で愛していく。果たして
主人公の思いはかなったのか、このオタクの愛こそ「愛せないのに愛されたい」という、
乱歩・究極の愛の姿なのでしょうか。
死体愛は人形愛と密接に結びついたテーマであると云えるだろう。愛する対象を死に至らしめ、人形とし、我がものとするのだから。
意志を失ったその白い肉体は、もう僕を嫌ったりなどしない。僕の口づけも黙って受け入れるし、××を××××するのにも抵抗する
ことはない。その肉体を思うがままに弄び、まさに永遠にその対象を我がものとすることが出来るのである。
だが、全面的に所有権を手に入れたと考えるのは錯覚でしかない。死してなお、その肉体は抵抗を止めようとはしない。無数の蟲をその
硬直した肉体に這わせ、略奪された所有権から逃れるかのごとく肉体を腐敗させて行く。
これを異常性欲だと一言で片づけるのは、ごく簡単なことだ。だが、我々が「異常」だとしているものは、飽くまで量的な違いでしかなく、
質的な違いではないのである。
死体愛を純粋な愛情の凝縮されたものと考えることは出来ないだろうか。そういった意味で、この作品は美しい輝きを放っている。