三河屋のサブちゃんに似合いそうなバイク@7台目at BIKE
三河屋のサブちゃんに似合いそうなバイク@7台目 - 暇つぶし2ch428:華
07/02/17 20:25:31 VM4iW2kd
「眠ってしまったか…」とイササカ氏は二人を見つめて言った。
「ふふ、大きくなってもまだまだ子供ですよ。」そう言いながら寿司屋店主から毛布を借り、二人へそっと掛けるウラノ氏。

暫く3人で話し込むとそこへ一人の男が宴席に加わる。

「おぅ 久し振りだな。」手を低く挙げ宴席に座ったのはイナダモータースのイナダ氏。
挨拶も終わる頃には、また一人の男が宴席に加わる。

「すまねぇな 仕事が忙しくてよ」そう言いながら大柄の体をドスンと宴席に座るのは海鮮組のウミ氏。
「うん? 難物、何でここに花が居るんだ?」とウミ氏がイササカ氏に質問し事の経緯を話す。
「そうか、それでここに居る訳だな。寝かせておいてやろう。ウチで働きっぱなしで疲れたんだろう」二人を見つめながらウミ氏は言う。

「おぉ~、これはこれは。皆さんお揃いで 娘達は眠ってしまいましたか。」そう言いながら宴席に加わったのは花沢不動産のハナザワ氏だ。
「そういえば磯野と中島は今日はこねぇのか?」とウミ氏。
「中島さんは尺八の発表会らしくてね。磯野さんは辛いでしょう…このメンバーでは…」とイササカ氏は言う。

それぞれの挨拶もそこそこに、昔を懐かしむ様に宴席は盛り上がる。

「しかし、こうやって集まったのは何年振りだ?」イナダ氏は徳利を持ちお猪口に注ぎながら言う。
「あの頃の皆さんは速かった…憧れでしたよ。今もですけど。」嬉しそうにハナザワ氏は言う。

「2,30年も過ぎたかな?皆、随分老け込んだ。」と笑いながらウラノ氏。
「そうだ。もうそんな経つのか…時が過ぎるのは早いね。」と言うイササカ氏に頷くウミ氏。
「あの頃つるんでいた連中で今居ないのは磯野と中島そして<あの人>か…」寂しそうにウミ氏は呟いた。

「………」暫くの沈黙が続いた…

429:華
07/02/17 20:26:10 VM4iW2kd
「あ、あの?皆さんは昔よくバイクで走っていたのですか?」とタナカ氏は重い空気を感じたのか質問してみた。
「あぁ、よくみんなで走ったさ。壊したら源の字がブツブツ言いながら直してくれてね」と笑いながらイササカ氏は言った。
「それを花坊(花子の父)が興味津々で近寄ってきてな」とイナダ氏はハナザワ氏をからかう。
「おぅ!花坊 呑め呑め」と言うウミ氏に「今日は車でしてね。久し振りの再会に酔うとしますよ」と答えたハナザワ氏。

「そんな私達もそろそろ<あの人>の所に近くなってきた…」と複雑な顔をしてウラノ氏は言う。
「そうだな… やはり磯野が一番辛かっただろうな。 上司として兄貴分として磯野が一番は慕ってた…」グイッ飲み干しウミ氏は言った。
「あれ以来、磯野さんはバイクに乗ってないらしくてね。たまに碁を打ちながら話しますよ。」とイササカ氏は言った。

「<あの人>というのは?」恐る恐るタナカ氏は聞く。
「昔ね。よくつるんでいたのさ。 みんなでね。もちろん磯野さんや中島さんそも一緒に…」淡々とイササカ氏は語り出した。

――そしてイササカ氏を中心としてタナカ氏に物語は語られた――

「そうだったんですか…あのグローブの椿にはそういう想いが…それで<バイク乗りはバイクで死んでは駄目だ>と…」悲しそうにタナカ氏は下を向いた。
「ふふふ、椿ラインの走り屋連中からはチャンピョンベルトみたいに思われているがね」と笑いながら言う。
「へっ!ったく、おめぇと波平は昔っから危なっかしい運転しやがってよ」と笑いながら茶化すイナダ氏。

「そうだったんですね…だからいつもそのセリフを言っていたのか…」悲しそうに拳を握り締めるタナカ氏。
「どうしたんだい?ポップ君。」不思議そうにイササカ氏は聞いてきた。

430:華
07/02/17 20:26:52 VM4iW2kd
「えぇ… 昔…近所に自分を弟の様に可愛がっていてくれた人が居ましてね…」淡々とタナカ氏は語る。
「いつもそのセリフを言ってましてね…」そう言うタナカ氏にウラノ氏は「ほほぅ…」と頷く。
「自分が高校卒業して海外のプライベーターチームのメカニックとして働いてましたが、数年は雑用にもならない雑用でしてね…」
「ようやく言葉もコミュニケーションも取れるようになって少しずつメカニックの仕事を貰える様になっていたんです。」
「チームの監督が大使館に怒鳴り込んでビザを取ってくれたり… 仕事を少し、また少しと覚えさせて頂いてました」
「毎日エンジンや車体をバラして組み立てて、またバラして… そんな時でした。その人が亡くなった知らせを聞いたのは…」

「でも、帰るにも仕事が忙しく二束三文で馬車馬の様に働いていた自分にお金はなかったんです。親に勘当同然でしたから頼るに頼れなくて…」
「結局帰国できたのはその人が亡くなって一年以上経ってなんです… 自分は思い出しましたよ。バイク乗りはバイクで死んでは駄目だという言葉を…」
「それからですよ。自分がレースではなく公道を走る人達にと道を決めたのは…」とタナカ氏は語った。

「そうか…おめぇにそんな事があったのか…そりゃぁ初耳だった ポップ…」とイナダ氏は言った。
「今でもCBの名を聞くとたまに辛くなるんですよ」とタナカ氏は言う。
「CBって おめぇ…」驚くようにタナカ氏の顔を覗くイナダ氏。 「えぇ…」と瞳を真っ直ぐにイナダ氏へ向け、首を縦にコクンと下げた。

暫くの沈黙が続いたがウミ氏は言う。

「せっかくの祝いの席だ。パァーっと行こうじゃねぇか!」明るく言う。
「そうだね。枯れた体じゃもう涙は出んだろ?みんな」とウラノ氏。 皆は笑いながら宴は続いた。

――開店祝いの一幕でこの様な出来事があったが花子達は知る事も無く父の運転する車で目が醒める――

431:華
07/02/17 20:28:07 VM4iW2kd
先程気付きましたが、まとめサイトの中の方有難うございます。

今後とも宜しくお願いします…orz

432:774RR
07/02/17 21:47:10 OEbdgeEm
また話が面白くなってきた~
つ④

433:774RR
07/02/17 22:15:43 n9MsLAmz
面白いですね!
いつもご苦労様です!

今思ったんですが、今後の展開、伏線等(未定の部分も含めて)について、一度執筆陣サミットをしてはいかがでしょう。
お互いの作品も気になると思うので、なるべくネタバレしない程度に・・・。
リンクしてるってことはある意味「シバリ」ですもんね。
差し出がましい提案ですみません。

434:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/17 22:50:58 l8M6ZVHT
>>433
何とかします!・・・と個人的には思っていますw
話し合っちゃうと、更なる「シバリ」を産みそうでコワイ・・・というのも理由の一つ。

設定を無言の内に共有しあうというのは、私は結構気持ちよいものと感じています。
現在、主に進行している物語(魔 華 タ)はそれぞれストーリーの年代も異なるので
何かあってもその辺はどうにでもなりそうかな?と。

それに、お二方(+カツオ氏)は読んでいて魔棲雄の世界観を侵害されている感じが
全くしないんです。(それは魔の今後のストーリーを知っている私だけが感じうる感覚なのかも
しれませんが・・・)
それぞれお会いしたことも無いのに、妙な安心感と信頼感を感じつつ読ませて頂いており、
どちらかといえばインスパイアされちゃったりしてw

それに、それぞれ作者の異なる別の物語ですから厳密にリンクしなくても構わないと思ってます。
リンクを楽しんで頂きつつ、細かい点はお目こぼし願えれば幸いです。



435:774RR
07/02/18 00:03:08 uFobmddT
っ④

436:774RR
07/02/18 00:36:53 ek9XHl5q
>それぞれ作者の異なる別の物語ですから厳密にリンクしなくても構わないと

ちょっとくらい違うところがあっても気にならないですから、今まで通りでいいと思いますよ。

つ④

437:433
07/02/18 01:11:59 dmls8IRx
>>434
魔棲雄さま そして作者のみなさま
いつも楽しませていただいてます。
わざわざお返事を聞かせていただいてありがとうございます。
言い訳がましいですが、僕なりに作品群をよいものにしようと、
またスレを活発にしようと考えた上での提案です。
お気を悪くされたらごめんなさい。
しかし「設定を無言のうちに~」のくだりですが、なるほど!って感じなので納得しました。
これは一読者としてのエゴですが、「あぁ、作者さんわかってくれてる」って感じでなんかほっとしましたw
これからも楽しみにしています。
暖冬とはいえ寒い日が続いていますので、ご自愛ください。

長レスすみません。

438:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/18 01:49:53 a0GDhg76
【SCENE106】
マイケルの事故から一週間後の週末。僕とアナゴ君、そして鈴木さんは鮒田食堂でこれから始まる週末はお決まりの
第三京浜での夜の宴を前に腹ごしらえをしていた。
話題はやはりマイケルの事故の件。最終的に軍の病院に搬送されたマイケルを、僕ら日本の一般人はおいそれと
見舞う事すら叶わず、ジョージからその後の顛末の連絡を電話で受けていたのは鈴木さんだった。
心配されたマイケルの容態は、全治5ヶ月の重症。だが、骨折箇所以外は至って健康で、早ければ来月くらいから
少しずつリハビリが始まるだろうとの事だった。
ちなみにレッド以下、その日奥多摩に行った連中は上官からバイクでの外出の一ヶ月禁止を言い渡されたそうだ。

だが、僕とアナゴ君はマイケルの事故から何も教訓を得ては居なかった・・・。それは、マイケルの命に別状が無かった
おかげだったのか、現場で意識を取り戻した後の彼の姿が滑稽だったからなのかは解からない。・・・いや、単に
僕らは若過ぎた為に、一つの事象から多角的に物事を見つめる視野の広さを持ち合わせて居なかったからなのかも
知れない。
・・・僕達は気がつくべきだった。また会おう、と別れた友が次の瞬間にアスファルトで倒れているという「怖さ」を・・・。
そして、運命の歯車を簡単に狂わせかねない代物に自らの命を乗せているという事に・・・。



439:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/18 01:50:37 a0GDhg76
「あいつ、目を開けたと思ったら、よう また会ったな、なんて言うんだぜ?信じられねーよな!」

「そうそう、相手の運転手にもすごい剣幕で叫んでたよね。さっきまで気絶してたのにさ」

僕らの話題はもっぱらマイケルの武勇伝。そこに自らもいつ遭うとも判らない事故への警戒心など微塵も無かった。
やけに浮ついていたその頃の僕ら。だからアナゴ君はうっかりとんでもない事を言い出す。

「おじさん!ビールね!」

すかさず鈴木さんが制する。

「おい!アナゴ君、これからバイクに乗るんだろう!?」

「うおっと!そうだった、そうだった。ゴメ~ン!おじさん、今のなし!」

ハハハと笑うアナゴ君と僕。・・・そんな僕らを鈴木さんは心配そうに見つめていた。
僕もまた、マイケルの事故のときの鈴木さんの様子が気になっていた。が、その時の鈴木さんのあまりにも普段と異なる
様子に、何も問うてはいけない様な気がして聞けてはいなかったのだ・・・。




440:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/18 01:51:20 a0GDhg76
一般車両を掻き分けるように進む夜の第三京浜。アナゴ君が先頭で、やはり鈴木さんは最後尾。近頃の鈴木さんは
切れ味が鈍っている、と僕は単純にそう思っていた。鈴木さんよりも速くなったと自画自賛すらしていたように思う。

僕らの行く追い越し車線上に、軽自動車がいた。その前にはトラックがいた。それら一般車両との相対速度は100km/h
にも達しようとしている。
中央車線に進路変更しそれら二台をパスしようと思った。アナゴ君だってそうするに決まっている。そして次の瞬間に
僕とアナゴ君はシンクロするように中央車線に進路変更した。
すると、その動きにシンクロするもう一台の車両。トラックの後ろを走っていた軽自動車だ。

まだ距離には少し余裕があった。せっかくクリアになったと思った前方の景色を、軽自動車にもう一度塞がれてしまった
わけだが、特に危険を感じるようなシチュエーションではなかった。減速、もしくは左車線にさらに進路変更すれば
やり過ごせる状況だ。

だが、アナゴ君はスロットルを緩める事も、さらなる車線変更も試みなかった。そのままのスピードと位置を保ちながら
真正面の軽自動車と右斜め前のトラックに迫る。そして彼はクラクションを鳴らしながら、あえて軽とトラックの隙間を
駆け抜ける。・・・100km/hの相対速度を保ったまま、200km/hで・・・。
そして僕もまた、同じラインを駆け抜けた・・・。数秒後、ミラーを確認するとそんな僕らに鈴木さんは着いて来ては
いなかった・・・。



441:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/18 01:52:02 a0GDhg76
「ホント、邪魔だよなぁクルマ。こっちは気持ちよく走ってるんだからよ。前に出て来るなってんだよ!」

保土ヶ谷でタバコの煙を吐き出しながらアナゴ君はそう愚痴をこぼす。正直なところ、僕も彼の意見に同意だった。
マイケルの事故によって、僕らの運転に慎重さが生まれることは無かった・・・。
なおも僕らの口からこぼれ出る愚かなる言葉と軽薄な笑いを遮るように鈴木さんが言った。

「・・・二人とも。聞いてくれ・・・。」

鈴木さんの深刻な顔に、僕は「しまった」と思った。今日は少し悪ふざけが過ぎたか?とその時初めて思った。
僕はてっきり、僕らの無謀な運転について怒られると思っていた。主犯格のアナゴ君もそんな空気を察したようで
やや首をすぼめて目線を斜め下に送っていた。・・・が、鈴木さんが語りだした話は僕らの予想とは全く異なるもの
だった。

「・・・僕が群馬の出身なのは知ってるだろ?実家の隣の家に一つ年上の男が居てね・・・」

鈴木さんが群馬は前橋の出身なのは知っていた・・・。しかし、そんな事よりも鈴木さんが突然昔話を始めた事に
僕は驚いていた。


442:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/18 01:52:54 a0GDhg76
「物心ついた頃からいつも一緒に遊んでた。長男で下にしか兄弟のいない僕にとって兄貴みたいな存在だったよ。
いつのまにか兄ちゃん、兄ちゃんって呼んでたよ。」

笑顔で、だが少し寂しそうに、鈴木さんは語った。

「なんでも教えてくれた。木登りも、虫取りも、魚釣りも・・・。本当の兄貴みたいだった。僕がいじめられて泣いていると
いつも助けてくれた。僕はいつも兄ちゃんみたいになりたいと思ってたんだ・・・。」

「兄ちゃんは高校に入ると原付の免許を取ったんだ。そして、半年もしないうちに中型の免許を取って学校に黙って
バイクを買ったんだ。」

僕とアナゴ君は、突然の昔話に違和感を覚えながらも黙って鈴木さんの話を聞いていた。

「兄ちゃんのホークはカッコよかった・・・。僕は兄ちゃんに憧れて、追いつきたくて、バイクの免許を取ったんだ・・・。
休日の朝はいつも赤城に走りに行った。250のKHで兄ちゃんの背中を必死になって追ったよ。」

「東京の大学に進学した彼を追ったわけではないんだけど、僕も同じく翌年に東京に出てきてね。今度は東京に
場所を変えて僕らはバイク三昧さ。楽しかったよ・・・。」

そんな鈴木さんの語る言葉の節々に、僕は一抹の不安を感じ始めていた・・・。それは、「兄ちゃん」に関する表現の
全てが「過去形」だったからだ・・・。

443:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/18 01:53:53 a0GDhg76
「僕が東京に出てきたとき、もう兄ちゃんは限定解除をして大型バイクに乗ってたんだ。いつも僕の前を走っていた・・・。
いつも、いつも僕の憧れだった・・・。」

・・・僕は無意識に、鈴木さんに質問していた・・・。多用される「過去形」にかき立てられた不安感が僕の心を押し潰しそうに
なったからだ。

「・・・あの・・・今、その「兄ちゃん」はどうしてるんですか?」

ここまで語り続けてきた鈴木さんは言葉を止め、哀しすぎる笑顔で僕ら二人に言った。

「二人とも・・・悪いけど、ちょっと付き合ってくれるかな?」

僕とアナゴ君は、不安そうに顔を見合わせた。

444:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/18 01:55:34 a0GDhg76
3台のバイクは保土ヶ谷PAを後にする。鈴木さんは、一般車両の流れよりやや速い程度のペースで僕ら二台を先導する。
横羽経由で首都高へ。料金所では僕ら二人分の料金を支払いながら、鈴木さんは首都高を都心方面へ向かう。
当時、僕もアナゴ君も首都高、特に都心環状線と呼ばれるC1方面は不案内だった。複雑に入り混じるジャンクションと
その度に表示される覚え切れないほどの地名が、地方出身者である僕とアナゴ君が入り込む事を拒否しているようで、
興味こそあったものの、積極的に走りに行く事はほとんどなかった。
そんな複雑に入り組んだ首都高の都心方面へ、鈴木さんは迷い無く僕らを導き走った。

C1 首都高都心環状線に入った瞬間、それまで退屈とも思えていた鈴木さんのペースが上がった。怒涛のペースだった・・・。
着いてゆくのが精一杯・・・。第三京浜とは比べ物にならない曲率でコーナーが迫る。
ほとんど意味を成さないような細い路側帯と左右を圧迫するコンクリートウォール。ジェットコースターのような高低差。
高い密度で存在する4輪車の群れ・・・。僕とアナゴ君にとって、未知の首都高環状線を鈴木さんは凄まじいペースでゆく。
とても鈴木さんが先導してくれなければこのペースでここを走ることは無理だった・・・。そして、鈴木さんより速くなったなどと
思い違いをしていた先刻までの自分を恥じる。
・・・それにしても、鈴木さんは僕らを何処に連れてゆこうと言うのだろうか・・・。まるで憑き物を振り払うかのような鈴木さんの
走りは、何故かとても辛そうに見えた・・・。

環状線を一周しないうちに鈴木さんはペースを落とした。あれは江戸橋付近だったろうか・・・。鈴木さんはコーナーを
立ち上がると左にウィンカーをあげ、道路脇の作業帯にCB1100Rを停めた。僕とアナゴ君もその後ろにマシンを停める。

「どうしたんですか!? トラブルですか!?」

駆け寄る僕とアナゴ君を尻目に、鈴木さんはゆっくりとヘルメットを脱ぐと僕らの後方、たった今立ち上がってきたコーナー
の方を指差して言った。


445:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/18 01:56:29 a0GDhg76
「・・・見えるかい?あそこのコンクリートウォールに着いた痕が。」

鈴木さんの指す方向のコンクリート壁に目を凝らす。それは街灯で照らされた周辺だったが、別時期に付いたであろう
複数の接触痕が確認でき、鈴木さんの指し示す「痕」が正確にどれを指していたのかは判らなかった。

「え?あ・・・はい・・・。それがどうかしたんですか?」

狭い首都高。僕らの至近距離を大型トレーラーや速度の高いクルマが通り過ぎ、その度に尋常ではない風圧が僕らを襲う。
大型車両が通過するたびに訪れる道路の揺れが僕らの不安を増幅させる。アナゴ君は言った。

「鈴木さん!危ないっすよ!こんなところに停まってちゃ!」

鈴木さんは、そんなアナゴ君の呼び掛けに応えず、そして衝撃的な言葉を発した・・・。

「あれがね、兄ちゃんのCB750Fがぶつかった痕さ。・・・兄ちゃんはここで死んだんだ・・・。」

「えっ・・・」

僕とアナゴ君は次の言葉を失った・・・。

446:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/18 01:58:24 a0GDhg76
「僕達は速さを追い求めていた・・・。そして、ここをその場所にしていたんだ・・・。僕が大学3年の時だった・・・。大学4年の
兄ちゃんはここで人生を終えたんだ・・・。」

「僕の目の前だった・・・。兄ちゃんのミスなのか、何かを踏んだのかは解からない。リアの滑ったCBはコントロールを失って、
兄ちゃんと一緒にコンクリートウォールに吸い込まれて行ったんだ・・・。そして、反動で隣の車線まで転がった兄ちゃんは・・・」

僕達は無言で立ち尽くしていた・・・。一瞬言葉を失った鈴木さんは軽い深呼吸の後、言葉を続けた。

「・・・兄ちゃんは、後続車に轢かれたんだ・・・。僕はここで一部始終を見てしまった・・・。二度とここには来ないつもりだった・・・。」

「マイケルの事故のとき、兄ちゃんの事を思い出して体が動かなくなった・・・。同じ形のバイク・・・。アスファルトに流れる
真っ黒な血・・・。兄ちゃんを思い出して僕は動けなかった。・・・僕は・・・僕は・・・ここで兄ちゃんの腸をかき集めたんだ・・・。」

鈴木さんの頬を涙が伝った・・・。そして、それまで憂いを湛えていた鈴木さんの哀しい瞳は、打って変わって僕らを強く真っ直ぐに
見据えて言った。


「いいかい、二人とも。バイク乗りは、バイクで死んじゃいけない・・・。愛するバイクで死ぬなんて、それはとても哀しい事だ・・・。」






447:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/18 01:59:21 a0GDhg76
「残された者の心にも、バイクという乗り物が呪いのよう絡みつくんだ・・・。
バイクに乗らない残された者は、大切な人を奪ったバイクを一生憎しみながら生きていく・・・。バイクに乗る残された者は
愛車に跨る度に辛い過去を思い出し、それでもバイクを降りることの出来ないジレンマに苛まれながら生きていく事になる・・・。
愛するバイクで・・・自分はおろか、家族や仲間をも不幸にする・・・。それはあまりに哀しい事だよ・・・。

僕とアナゴ君は、動けなかった・・・。

「いいかい二人とも・・・バイク乗りはバイクで死んではいけない・・・。どうか・・・どうか、忘れないで欲しい・・・。」

1985年 春。若かった僕らの心に、大切な何かが突き刺さった夜だった・・・。







448:774RR
07/02/18 02:05:19 1FLV8Izz
(´;ω;`)

449:774RR
07/02/18 02:44:22 QNPQ1+SX
つ④・・・涙

450:774RR
07/02/18 02:44:45 ickDxM02
。・゚・(ノД`)・゚・。

451:タラオの中の人
07/02/18 02:56:10 bSuFk/mv
引っ越してネットに繋がってないので携帯からです。

マスオさんの言う通り、基本的には今のままでいけると思ってます。

最近、華さんが登場人物を大きく増やしてきたので、
タラオの方も、プロットにかなり影響を受ける気配がありますが、
既にお二方の進展から微妙な修正は沢山入れて来てますし、
それはそれで、楽しみのひとつです。
じゃんじゃん自由にやってください。


一応、お二方&カツオさんへの参考情報としてあげておきますが、
タラオでは10万字程度を予定しています。
現在、約1/3です。


452:タラオの中の人
07/02/18 03:09:36 bSuFk/mv
ああ…兄ちゃん

453:774RR
07/02/18 05:11:33 kjK42hsD
もう無茶しません…多分…
つ④

454:774RR
07/02/18 05:43:06 o+ncCeaQ
バイクで死んだ仲間を思い出した…(´;ω;)

つ④

455:774RR
07/02/18 06:28:44 LQe+MyzF
>>454
おれも・・・。・゚・(ノД`)・゚・。

456:774RR
07/02/18 08:24:45 ks504iID
>>454 >>455
。・゚・(ノД`)・゚・。オマイラ…

>>魔棲雄氏つ④

457:774RR
07/02/18 08:45:05 io3H9scz
なんでだろ。俺がいっぱいいるT_T




458:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/02/18 09:48:37 1I4MEIek
>>魔棲雄氏
朝っぱらから(´;ω;`)つ④


他の作者各位にも④

459:774RR
07/02/18 13:14:58 J+T3bED6
マスオ氏ありがとう

460:774RR
07/02/18 13:38:46 Wsu8g8BR
心臓麻痺で死んだ友達を思い出した 。゚(゚´Д`゚)゜。つ④

461:774RR
07/02/18 13:45:04 ff4Ahuv0
>>魔棲雄氏
ホントにありがとう。

読み物の『物語』としてでなく、何と言えばいいのかな…
とにかく、感謝です。

462:774RR
07/02/18 13:57:06 IjLWt4pQ
読み物で久し振りに泣きました
なぜか感謝の気持ちでいっぱいです

463:タラオ
07/02/18 15:03:14 erhKF2W9
友人のところから、久々にUpしてみます。

ターンパイクの続きから、です。

464:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:04:03 erhKF2W9
『ドライブイン大観山』
ターンパイクは意外に短く、10分もしないうちに頂上にたどり着いてしまった。
約10km/hの全開走行。互いが直接的に絡むことは無かったにしろ、バトルと言って良いかも知れない。
結局、英一に追いつくことは出来なかったが、彼の背中を完全に視界から見失うことは、最後まで無かった。
大観山の駐車場に滑り込み、エンジンを止めたいまでも、恐怖感を抑制するため放出されているアドレナリンに灼かれた脳が、冷たくくすぶり続けていた。
顔は、まだ少し青いかも知れない。

「おーおー!フグタ速いじゃないか!」
メットをミラーにかけながら興奮気味に言う英一。声でかいって…
「いやいや…英さんのが全然速いじゃんか。がんばったけど、追いつける気がしなかったよ」
「いや、僕も全開だったよ。あれ以上はきついね!…こりゃおもしろいことになってきたよ…」
にんまりと笑う英一。
「…?面白いことって?」
「バトルするに足る相手が出来たってことさ!」

どうやら…無我夢中の俺の走りは、英一に認めてもらえたらしい。
今まで、人の走りと自分の走りを意識したことは無かったが、自分の"速さ"を認めてもらえたことに、こそばゆいうれしさを感じた…



465:774RR
07/02/18 15:04:56 l72jD/5T
リアルタイムキタ━━(゚∀゚)━━!この前起こしてあげれなくてすいません(笑)

466:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:06:28 erhKF2W9

「あっ、英さんちょっと待ってて!」
俺はふと思いつき、メットを地面において小走りで自販機へ。
「ほい!」
UCCの冷えた缶コーヒーを英一に投げ渡した。
「・・・?」
「これからさ、負けたほうが缶コーヒーをおごる…OK?」

一拍おいて、英一は満面の笑みを浮かべた。
「OK!いいね!」

親父とアナゴさんの伝統。
悪くない。
英一ならいいだろう?な、親父…


467:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:07:32 erhKF2W9
観山でしばしの休憩の後、少しだけステダンの効きを強くなるよう調整して出発。熱海箱根線を経て伊豆スカイラインに入る。今度のリーダーは俺。
このあたりは箱根峠や十国峠など、すばらしいパノラマが随所に広がり、ついつい速度もゆっくりになってしまう。

伊豆スカイラインはターンパイクと比べてツイスティな道だった。距離も長く軽快なワインディングが延々と続いていく。
展望の良いポイントはゆっくりと景色をめでながら、森の中を走る場合は全開で…といったように緩急をつけて走る。
全開といっても若干の余裕を残して、というような感じ。
互いに、抜きつ抜かれつを楽しみながら進む。

都会から1時間と少しでこんなにも美しい景色を、道を味わえる…この上無い自由。

真夏の太陽が透明な大気を貫いて、ハンマーのようにアスファルトを叩いている。
空は何処までも高く、影一つ落ちてこない。
視界の端で、空の蒼さ、木々の緑、道の灰色が渾然一体となり、穏やかに交じり合う。

…俺の右を、英一が駆け抜けて行く…俺も右手に力を込める。

森に入れば、道にかぶさる木々のアーチ。
頭上の枝葉を押しのけるように打ち抜いてきた木漏れ日が、数千分の1秒単位で俺の眼を灼き、路面に、数車身前を走る英一の背に、フラクタルな光の迷彩柄を描き、そして刹那に流れて消える。
灰色のアスファルトの上。轟くエキゾーストノート。耳を叩く風の音。
2台は力強く、そして美しく優雅に踊る。

すでに法定速度の倍をゆうに超えている。意識では恐怖を感じるものの、不安は無い。
身体は自然に、何のためらいも無く動く。脛を焼くエンジンの排熱は気にならない。
乗れている。右コーナー。クロスラインで英一をインから一気にパスする。アスファルトがステップを削ってゆく。さらに高鳴るエンジン音。

高原の森を抜け、土の匂いを含んだ涼風がメッシュジャケットを通して身体をなでていく。

俺たちは言葉なき会話をかわしながら、互いにじゃれあうように、走り続けた。


468:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:09:02 erhKF2W9

伊豆。
大観山を出てから1時間と少しで、海に出ることが出来た。相模湾だ。
海沿いを南に向かって下る。ちょうど昼前で、腹が減ったと思っていたとき、国道沿いのアジの開きの看板を出している飯屋、兼土産物屋を見つけた。
休憩もしたかったし、「まずはもう、伊豆といえば、なにしろ相模湾の「アジ」である…」という熱い想いが俺の中に存在しているため、
英一の意見も聞かずに駐車場に直行し、TLを止めた。

「おっ飯か?アジか?」
英一が、ヘルメットをあわただしく脱ぎながら聞いてきた。
「おう、飯だ。アジだ!…畜生…マジ旨そうじゃねぇか…」
土産物屋の店先に並ぶアジの干物のあめ色が、俺の腹の虫を刺激して止まない…

二人して、いそいそと階段を上り2階の食堂へ。
「いらっしゃーい。2名さまね?適当に座って選んで。」
割烹着姿のおばちゃんに促されて卓につき、壁のメニューを一瞥して即決した。

「俺はアジの開き定食にするわ。英さんは?決まった?」
英一はメニューを見ながらまだ迷っている。
「うむ。僕は塩焼き定食にするが、サイドメニューはどうする?」
「ん?他にたのむの?」
「ああ、例えばあの、お任せ刺身大皿盛りなどはどうかい?」
英一は壁の写真を指差した。確かに旨そうだが…5800円…

469:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:09:57 erhKF2W9
「英一殿…高すぎます…」
「フグタよ…先輩として一言忠告しておこう。」
英一はため息混じりに言った。
「カネで経験が変えるなら、そんな経験はすべて買っておきたまえ。
男が大きくなるために金を惜しんじゃだめだ。必要な犠牲と言うものが世の中にはあるのさ…」
―なぜだか、良く判らないが、とてつもない説得力を感じてしまった。
「…英さん、わかったよ…しかしここは先輩として多少なりともご支援を…」
被せる様に英一は小さく首を振り、机に身を乗り出して俺の目を真直ぐ見て囁いた。
「フグタよ。痛みを伴ってこそ、経験は経験たりうるのだよ。」

…もういい。まあ、俺も刺身食いたいし。店員さんを呼んだ。
「えーと、塩焼き定食と、アジの開き定食と刺身大皿盛り合わせ、お願いします。」
英一は満足そうにうなずいて店員にいった。
「おばちゃん、あとサザエのつぼ焼き、2人前追加」
「!?」
「はいな、ありがとうございまーす」
 
 ―もういい…好きにしてくれ…


470:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:11:06 erhKF2W9

腹いっぱい食った。アジの開きはうまかった。刺身も最高で、特に甘エビとイカ、そして刺身のアジは絶品だった。
ちなみに、その後、英一は1階の土産物屋で、アディダスならぬ<アジダス>のTシャツを買った。
アディダスの葉っぱマーク(?)の代わりに、3匹のアジの開きが描かれている。
ネタとしては面白いが、普段、絶対に着られない…恥ずかしくて。。。

「英さん、それ着るつもりか?」
俺の冷たい視線に、英一は堂々と答えた。
「ん?なんで?着るよ?
このアジのつぶらな瞳が可愛いじゃない」

「そうか…いや、いいんだ…」
彼は本気だった。。。

俺にはまだ、こいつが良くわからない。

471:774RR
07/02/18 15:11:54 nfXkVCfr
つ④

472:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:12:21 erhKF2W9

飯の後は温泉と相場は決まっている。
幸いに伊豆は温泉が名物。しばらく南下すると、すぐに小さな温泉旅館を見つけた。
前を走っていた英一のFZが左ウィンカーを出しながら、駐車場に滑り込んでいく。

受付のおばちゃんに2時間の風呂代を払い、われ先にと男湯へ。
少しばかり狭苦しい、古びた木の匂いが漂う脱衣場で汗で張り付いたTシャツを苦労して脱ぐ。ジーンズも重い。
風呂上りに、コレをまた着るのは少し嫌だが、まあ仕方ない。
あっ!!…英一のやつ、そのための<アジダス>か!!
 ―さすがだ・・・

「うはぁぁぁぁ」
「あっぁぁぁぁ」
待ちかねた露天風呂。二人とも思わず、おっさん臭い声を発しながら肩まで湯に沈め、バイクに乗り続けてこわばった腰や首筋を伸ばした。
スポーツバイクであるTLは前傾がきついポジションのため、このように長時間の乗り続けるのは、少々堪える。
英一のFZはもっと楽なはずだが、あれだけのスポーツ走行をこなして来たのだから、やはり多少なりとも疲れているのだろう。

湯船のへりに首を持たせかけ、脱力感に身を任せながら、大きく息を吐くと、
多少ぬるめで、海が近くだからだろう、少ししょっぱい湯に筋肉の疲労が溶かされていく。


473:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:12:59 erhKF2W9
「ところで英さん…」
身体を起こしながら英一に声をかけた。
「ん?なに?」
「ぶっちぎりで俺の勝ちだから、後でコーヒーおごってくれよな?」
英一の下腹部に視線を流し、腕を組んでニヤリと笑ってみせた。
「?…っな!!コレは関係ないだろ!」
「そうかな?まあ、あれだな。経験で男は大きくなるが、もって生まれたものは変えられないという教訓だな…」
「…男は大きさじゃない!硬度と飛距離と思いやりだ!」
「ふむ。コレが俗に言う負け犬の遠吠えと言うヤツか。いやはや、勉強になるわ。」
遠い眼で、竹の垣根越しに海を眺めながら、独白。
 ―飯どきのリベンジ成った…虚しいが、決して譲れぬ勝利だ…

静かに立ち上がる。
露天風呂。太平洋。潮騒。黒潮の香り。
裸の背に、照りつける太陽が熱い。
英一はまだ何かさわいでいる…

474:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:14:08 erhKF2W9
風呂上りの気だるい身体を休憩所で休ませ、アクエリアスで潤してから、俺たちは熱川バナナワニ園へと足を伸ばした。
俺の要望だ。一度、このファンキーな名を持つ場所を訪れたいと思っていたから。

で、結論から言ってしまうと、まあ…バナナとワニだった。。。

二人とも、首をかしげ、いまいち釈然としない思いをかみしめつつ帰途へ。
伊豆半島の東岸、R135を北へ向かって登っていく。観光客の車両で道は混んでいるが、流れはそれほど悪くない。
後方、すでに陽は大きく傾きつつあり、視界はにじむように染み出してくる紅に支配されつつあった。

紅く染まった海には、少し白波が立っている。

熱海ビーチラインを経て真鶴道路へ。
すでに陽は後方に落ち、紫の残滓をおびた東の空には、月がさりげなく存在を主張し始めていた。

早川インターから西湘バイパスへ。長大な砂浜に沿った快適な有料道路だ。
英一を従えて、140km/h程度で流しながら走っていると、熱気と風に飛ばされた塩がヘルメットのシールドに白く堆積してくる。
苦笑。…これは明日、洗車しなくちゃな…


475:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:14:44 erhKF2W9
橘PAで休憩を取った後、更に西湘バイパスを走り、そのままR134に入った。
平塚あたりのガストでゆっくりと夕飯を取り、ツーリングマップをみて帰路を確認した。

「R134から鎌倉あたりで北に向い、横浜鎌倉線で横浜方面へ、でもって第三京浜で玉川まで、って感じでどう?」
「いいよ」
俺にはこのあたりの土地勘が無いため、よくわからない。英一に任せた。

ガストを出て、セルを廻した。
バイクに跨り、低回転で暖機しながら出発。
既に時間は午後10時を回っている。
さっき食べたスパゲッティが、胃に少し、もたれていた。

476:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:36:30 erhKF2W9
横浜、第三京浜、保土ヶ谷インター。
疲労も溜まっているため、途中のコンビニで適宜、休憩を取りながら、たどり着いた。
眼は冴えているが、けして軽くないクラッチを握り続けた左手は、重い。
時計の針は天辺を過ぎようとしている。
英一を前にして、高速のランプを登っていく。この時間だ、道は結構すいていて流れは良い。

英一は60km/hほどで俺の前を走っていた。後方からのクルマが、次々と俺たちをかわして行く。なぜそんなに遅い?
と、彼の左踵が二度動き、エキゾーストが甲高いものになった。後ろを振り向き、俺を見て、赤いグラブに包まれた左の拳を突きつけた!


477:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:37:32 erhKF2W9
…第二ラウンド。やる気だ…
…いいだろう…
俺は受諾のサインとして2度パッシングライトを瞬かせ、ヘッドライトをハイビームに切り替えた。
ギアを一速に落とす。
英一が前を向いたまま、左手を上げ、大きく指を開いた。1泊置いて、親指を折る。カウントダウン!
英一はゆっくりと左手で3までカウントする。手がハンドルに戻された。
後は、心の中で、数える。

…2…1…

「Go!!」

FZのリアが一瞬、白い煙を上げ、それに連動するかのように俺の右手も大きく翻った。
フロントが、少しだけリフトする。スロットルを緩めることなく、ハンドルに体重を預け、押さえ込んだ。
一瞬で120km/hを通過する。2速。確実に蹴り上げる。
英一と俺との距離は十数車身程度か。初期加速で多少出遅れた分、あいだは開いているがまだ、たいしたギャップじゃない。
時間にしてコンマ何秒…その程度だろう。

しかし、そのコンマ何秒が、遠い、俺にとって許せない距離に思えてきた。
・・・距離を、埋めなければならない。


478:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:38:29 erhKF2W9
速度は既に200km/hを大きく超えている。ヘルメットが切り裂く大気の叫びが鼓膜を震わせ、レッドゾーン付近でエンジンは猛烈な鼓動を繰り返している。
モラルも常識も、すべてを背後に置き忘れた、公道では狂気と呼ぶにふさわしい速度。
とても、バイクにのり始めてまだ一年にも満たない、初心者が安寧としていられるスピードではない。
猛烈な勢いで迫り来るコーナー。FZのテールが赤く光る。一瞬遅れて、俺もブレーキを握り締める。前方に飛び出そうとする身体を膝と腕で受け止め、フルバンク。
前輪がバンプに乗り上げてはねるが、前足とステアリングダンパーが何とかそれを吸収した。
コーナーを抜けると、不意に前方に一般車。トラックが併走しているため、あいだが狭い。抜けるか?英一は…速度を緩めない!
俺も…立ち上がりでスロットルを微妙に調整しながら、出来るだけ速度を殺さず駆け抜ける。拳一つ分の、見切り。

まさに狂っている・・・しかし、俺は、何故か奇妙に落ち着いていた。
確かに興奮はしている。でなければこのような高いテンションを、プレッシャーを耐えていられない。
魂は熱い。だが、心は醒めている。冷静に、俺自身を見つめている。決して悪いことじゃない。そんな気がした。

クールラン・・・熱く、冷たく、全力でFZの赤いテールランプを追う。


479:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:39:20 erhKF2W9
俺のがんばりにもかかわらず、彼我の距離は縮まらなかった。しかし離されることも無い。
当たり前だ、俺は英一のラインをトレースしているのだから。

近づくことはあっても抜けない。英一がしっかりとインを閉め、ラインを殺しているのだから。

超高速域では空力の関係か、エンジンの特性か、TLのほうが速度の伸びは良いようだか、一般車が邪魔になって抜くには至らない。
英一のほうが、クルマを、障害物を処理する技術、経験に長けている。

俺には、このストレートの先のコーナーがどんなRを持っているのか、路面のつなぎ目、バンプの有無、それらを知らない。
英一はおそらく熟知しているのだろう。

仮に、俺が彼より前にいたとしても、このペースで走り続けることは不可能だろう。
英一はそんな俺を、苦も無くパスしていくことだろう。

要するに、俺は現時点で、完全に英一に負けていた。認めざるを得ない。

しかし・・・納得できない。
すべきではない。そう思った。

480:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:41:11 erhKF2W9
玉川インターにはすぐにたどり着いてしまった。そのまま高速を下り、北へ。
俺たちは、最初に見えたローソンにバイクを止めた。

「英さん、完敗です」
ミラーにメットを掛け、素直に負けを認めた。
「まぁな!フグタ君も、まだまだだね!
・・・でもさ、フグタは道知らなかったろ?だからまあ、しょうがないよ。」
「しょうがないか・・・」

英一はうなずいて、つづけた。
「そう、しょうがないさ。俺は首都高や京浜は結構走りこんでるからね。
コーナーとか、路面の特長とか、その辺はたいてい頭に入ってる。じゃなきゃあんな速度で走れないよ。」

リアシートに身体を持たせかけながら、英一は言う。
「初めてバイクで京浜走って、あの速度について来ただけでも大したもんだよ。
走ってきた年季が違うんだ。今日、俺が勝つのは当たり前さ。だからコーヒーはいらんよ?」
ウィンクしながら、そう、のたまう。
俺は黙ってタバコに火をつけた。

481:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/18 15:41:48 erhKF2W9
「そうだな、英さん…勝てるわきゃねえよな…全然本気出してなかったろ?
・・・くっそー、このままじゃ済まさんぞ!英一!覚悟しとけよ!!
でだ、コーヒーは付けにしておいてくれ!!」
「おう、わかった!ちなみに言うと、俺コーヒーは甘党だからね」
その言葉に、俺はニヤリと笑ってみせ、宣言した。
「俺が、あんたの好みを知っとく必要はねぇな。…なぜなら次以降、俺がコーヒーをおごる必要はないからね!」
「俺に勝つってか?!おうおう、ぬかすぜ小僧っ子が!!」

英一の言った"しょうがない" , "あたりまえ"・・・
上辺でははしゃぎ合っている俺の、脳の奥底に潜む獣が、その言葉に猛っていた・・・


482:774RR
07/02/18 15:47:29 LU7mkwqm
つ④

483:774RR
07/02/18 16:12:20 KGzYmrEu
URLリンク(kape.cool.ne.jp)

484:774RR
07/02/18 16:14:18 1mu1jtqq
つ④

485:タラオの中の人
07/02/18 16:18:28 erhKF2W9
>>483
よく元ネタがお分かりで!

俺も、実は妹からの伊豆土産で、これ、もってます。
でも一回も着たことないw

486:774RR
07/02/18 16:37:31 KGzYmrEu
>>485
きっと実在するハズっと思って、ぐぐったらすぐに見つかりますたw

487:774RR
07/02/18 18:08:30 RHMRseEn
>>485
確かAjidasと似たような奴で、足のマークでAshidasとか様々なバージョンが
十年くらい前に流行ったような記憶がw

その直後、サザエボンが訴えられたかた影響でその手のパロディ商品は消えたかと
思っていたけどまだ生き残っていたんだw

488:774RR
07/02/18 19:06:42 jnefnk0G
修学旅行でこういうパロディTシャツとかタオルとか買う奴いたっけなぁ
懐かしい
つ④

489:華
07/02/18 21:00:00 vh2+kyK/
>>433
ご提案有難うございます。 私もお二方と同じ意見でございます。

私と魔棲雄さんのストーリーは15年程の歪みがあります。
出来るだけ突っこまないリンクを心掛けてはおります。

ただ、書きづらいのはタラオさんとカツオさんかもしれません…orz
タラオさんは魔棲雄さんや私のストーリーよりも未来の物語になりますし、
カツオさんは同じ時間軸になりますから…orz

保土ヶ谷で集まって話す提案出そうと思いましたが、
更なる縛りが出るかもしれませんね…orz


魔棲雄さん つ④ 。・゚・(ノД`)・゚・。 アニキー

タラオさん つ④ そのTシャツ伊豆で売っていたんですね。知りませんでした…orz

490:774RR
07/02/18 22:45:00 gG4AjQFW
>>489
いいんじゃね、ここはサザエさんとバイクを軸にした
パラレルワールドの集合場所なんだから。

たまに話がリンクして、気が付いた奴がニヤリでいいんじゃね。



491:433
07/02/18 22:51:30 dmls8IRx
>>451
>>489
タラオの中の人様
華様

返答ありがとうございます。
お三方一様に、提案を割と好意的に受け取っていただいたようで、安心していますw
(他読者さまから否定的意見が出たらどうしようかと思っていましたが)
何よりお三方のスタンス第一ですよね。
これからもお三人の“執筆バトル”(競争ではなく競演)を楽しみにしています。
無理なくがんばってください!

>>490
同感です。
なんかいらんことしたみたいで・・・すんませんです。

492:774RR
07/02/18 23:26:35 Y+ZYU/xi
つ④

なんか…、考えが変わりました。昔、バイク屋の親父が
「バイクで事故って逝くのが男の生き様というか、本望だな。
殉職とはちょっと違うが…。死という瞬間を愛機と共に
迎えるのは、この上ない喜びだね。バイクに生き、バイクに死ぬのよ。」
なんて馬鹿なことを言っていた親父を盲目的に
今まで信じていた自分が恥ずかしいです。

493:774RR
07/02/18 23:32:42 Y+ZYU/xi
ミスりました。すみません。

なんか…、考えが変わりました。昔、バイク屋の親父が
「バイクで事故って逝くのが男の生き様というか、本望だな。
殉職とはちょっと違うが…。死という瞬間を愛機と共に迎えるのは、
この上ない喜びだね。バイクに生き、バイクに死ぬのよ。」
なんて言っていました。今までその通りだ、なんて
思い込んでいた自分が恥ずかしいです。

推敲は必要ですね…orz

494:774RR
07/02/19 00:04:25 J+T3bED6
マスオ氏
そしてタラオ氏
二人ともいつもナイス作品ありがとう

感謝してますよ

495:774RR
07/02/19 01:08:24 UjOtnXtn
>約10km/hの全開走行。
ここは突っ込んじゃダメ?w

496:774RR
07/02/19 01:51:11 GfUfC5+f
華氏をどうしてもスルーしたい人がいるみたいですが、自分は華氏も大好きなので
楽しみにしています。もちろんお三方。

マスオさんが大好きでこのスレを見ているんです。
ここだけは外せない。
ファンという言葉で語れない位大好きです。

タラオ氏も、華氏も、ここに新たな風を吹き込んでくれただけでなく
読み物として非常にいいものを送り込んで下さるので感謝です。
今後も、楽しみにしてますのでよろしくお願いします。

497:タラオの中の人
07/02/19 02:27:27 8w4H2Nsi
495
それは突っ込んでくださいw
自分で書いててなんですが、ある意味、全開ですねw

498:774RR
07/02/19 02:55:22 8mNR/EfF
>>496
スルーしてる(されてる?)だけならいいじゃん
難癖つけられて荒れるよりいいと思うよ

そういう書き方は荒れる原因になるから慎んだほうがいいと思うよ


499:774RR
07/02/19 06:54:54 hWJhM27m
いちいち突っかからなくていいよ

500:774RR
07/02/19 13:52:24 nMUg5RLi
500CC!!

501:774RR
07/02/20 01:28:04 IqASWh4y
>>493
己の恥部を晒す蛮勇に感動しました。
アンタは考えが変わったんじゃなくて、
新しく盲信出来る話に乗り換えただけでしょ。


スレ汚しスマン。あと作者の方々乙であります。

502:774RR
07/02/20 04:41:46 apbG39tQ
>>501
スレ汚しって分かってるなら黙ってりゃいいのに…

503:774RR
07/02/20 15:46:49 ekRhA7PQ
9 :774RR:2007/01/27(土) 08:14:53 ID:USs17sLD
前スレより

1000 :774RR :2007/01/27(土) 02:33:03 ID:1wTDbcm/
>>1000なら次スレ>>152は今年免取りケテーイ

このスレの>>152は呪われた…

504:774RR
07/02/20 18:58:22 w3I07Rbg
おお懐かしいなw
最近いろんな場所に警察が居るから気をつけれ

505:774RR
07/02/20 21:45:59 X99+J3xJ
免許が取得できるんだろ

506:774RR
07/02/21 01:11:00 u3hoKD1I
今日は執筆者様方お休みですかね。
いつもご苦労様です。
たまにはゆっくり休んで英気を養ってくださいね!

507:華
07/02/21 20:29:59 c1cwNGoD
「あ、あれ…?とおちゃん…」目の醒めた最初の一言を発した。

「おぉ、起きたのか。 初めてのお酒どうだった?」と後部座席から見える父の横顔は少し嬉しそうだった。
私は叱られるのではないかと思ったのは父の横顔を見た次にそう思った。「おいしかったよ…とおちゃん迎えに来てくれたんだ」と私は聞いた。
「田中さんから連絡頂いてね。 ふふ、田中さんの所でバイク買うのかい?」そう父は聞いてきたが私はまた眠ってしまっていた。

その後、早川さんを送り私は部屋のベットに流れ込む様に寝転び再び睡魔に襲われる。

―…看板の無かったバイク屋は田中さんのお店だった…―

―…異形の者、それは私のよく知る伊佐坂先生であり、初めて知ったもう一人の伊佐坂先生の姿…― 

―…白髭のマスターが磯野君ちの裏のおじいちゃん…― 

―…そして初めてのお酒…―

体に流れる血液が頭の先から足の指先まで重くじる…疲れたのだろうか…酔っているのだろうか…深い深い眠りに付いた…





508:華
07/02/21 20:31:09 c1cwNGoD
私は頭を抱えながら授業を受けたが初めての二日酔いを体験した。教科書を立てて弁当を食べようという食欲がわかなかったが、午後の授業ではようやくもとの調子に戻ってきた。
そして今日から受験勉強と文学さんのゼファーに乗る事が出来る。勉強よりもバイクに乗れる、という事で嬉しくなり二日酔いも授業が終わる頃には気付けば無くなっていた。

「こんばんは~ 今日からお願いします。」仕事の終わった文学さんへ私は挨拶をした。「うん、よろしく。じゃ、早速やろうか!」と文学さんは事務所の椅子を一つ運んできた。
2時間位は経っただろうか?当然容量の少ない私の頭はオーバーヒートし出した。
「いいかい?花、どの教科でもまずは得意な所を徹底的にやるんだ。そこから徐々に進めればいいのさ」という文学さんの言葉に耳を傾けていた事務員の貝塚さんはキラリと尖った眼鏡を光らせて笑みを浮かべる。
「ふ~… よっし!気分転換しよう。 バイク、乗りたいだろ?花。」そう言いながら文学さんは外に出始めた。私は嬉しくなり後を付いていく。

ゆっくりとゼファーを転がし待ち焦がれる様に立っていた私の横にサイドスタンドを出した。無機質な鉄塊の華奢なサイドスタンドが地面にググッと沈み込む。
「キュルル、ヴォォン…」無機質な鉄塊から産まれた低い音が辺りに響き渡った。「さ、乗ってみるといいさ」そう文学さんは言いだした。

「は、はい!」私は右の豚足でゼファーを被せる様に跨ぎ、ゆっくりとステップに蹄を乗せた。「よし、跨ったね。一度アクセル捻ってごらん。」嬉しそうに文学さんは私に勧めた。
ゆっくりとアクセルを捻る。ヴォォオオと無機質な鉄塊が叫ぶ。股下のエンジンからエネルギーが生まれ、集合マフラーからエネルギーを放出する。
さっきまで沈黙していた無機質な鉄塊がアクセルを捻れば応える様に私に呼び掛けている…

「どう?気持ちいいかい?」嬉しそうに腕を組みながら文学さんは聞いてきた。「す…凄い… 生きてるみたい…」素直な感想を言うと「ははは、詩的だね。花は」と笑う文学さん。
サイドスタンドを払い、左の豚足を地につける。160cmの私にはゼファーは少しだけ高く、片足が精一杯だった。
何よりハンドルから伝わる重量感。そして股下から感じるエンジンの鼓動。 この子は…生きてる…そう感じた。

509:774RR
07/02/21 20:31:47 y5sC386g
リアルタイムキタ━(゚∀゚)━!
つ④

510:華
07/02/21 20:31:53 c1cwNGoD
「よし、クラッチ握ってごらん」言われるがままにクラッチを握る。「じゃ、右足を付けてから左足でシフトを下げるんだ。」と指で箇所を説明しながら言われるままに行動した。
「じゃ、左足を付けて右足をステップに乗せるんだ。」私は左の豚足を地に着けた。「アクセルを徐々に開けながらクラッチをゆ~っくり離していくんだ。パッと離しちゃ駄目だよ」
言われるがままにアクセルをゆっくり捻りクラッチを少しずつ離す。 ゆっくりとゼファーが前に動き出す…
「うまい、うまい そのままゆっくりと走ってみるといいよ」と横で歩きながら付いて説明する文学さん。走り出すと私は自然と豚バラをピンと張り姿勢を正しくさせてゼファーを走らせていた。

股下のエンジンがエネルギーを生み出しギアに伝達しリアタイヤを前へ、前へと押し出す。ゆっくりとゆっくりと景色が動いている…
ハンドルから手に伝わる感触が無機質な鉄塊からの生命の鼓動の様な力が伝わり五臓六腑に響き渡る…

「これが…バイク…」


敷地内をゆっくり、ゆっくりとシフトアップ、シフトダウンしながら旋回した。「ん~…エンストしないなぁ 花は」と笑いながら文学さんは見つめていた。
そんな楽しい時間もすぐに終わりの合図となり再び受験勉強が始まった。

「花?バイクは楽しかったかい?」と文学さんは聞く。「はい。」素直に答えた。
「バイクはガソリンが無ければ動かない。キーが無ければ動かない。乗り手が乗らなければ走らない。色々あるけど何事もそうさ。勉強も気持ち次第で動くのさ。頑張ろう、花」
文学さんの勉強の教え方は非常に丁寧でわからない所は徹底的に理解出来るまで時間をかけて教えてくれた。

夜遅くに帰ると父はまた外食ついでに何処かに出かけたのか姿は無かった。私は部屋に入りベットに転がり込む。
初めて乗ったバイクの事を思い出せば自然と手に汗をかいていた。ハンドルから伝わるエンジンからの呼び掛けるような鼓動。
アクセルを捻れば応える様に吼えるエネルギー… 興奮を抑えた頃に私は眠りについていた。

511:華
07/02/21 20:32:35 c1cwNGoD
平日は文学さんと受験勉強とバイク教習。土日はアルバイトの濃厚な一学期を終える頃の期末試験は下から探した方が見つかりやすかった私の校内順位は、一気に120番も上に「花沢花子」の名前があった。
アルバイトのおかげなのか、間食夜食が減ったからなのか160cmの身長が165cmとなりゼファーの足つきも大分楽になっていた。

ついに夏休みが始まる。私達は免許取得に合宿へ向かう準備をし、明日の朝「朝日ヶ丘駅」で早川さんと久し振り会い教習所へと向かう。

充実している高校3年の生活が未知なる世界のジグソーパズルに何かの形を見せ始め、一つ…また一つ…はめ込まれてゆく。

512:華
07/02/21 20:37:38 c1cwNGoD
ね、寝ます…orz

513:774RR
07/02/21 20:38:56 y5sC386g
>>512


514:774RR
07/02/21 21:02:53 XBg8MN+i
つ④

515:774RR
07/02/21 21:33:47 smJjAiPG
華氏乙です

いつも「寝ます」って言って落ちますが、お疲れのようで少し心配です
無理しないでくださいね

つ④

516:774RR
07/02/21 21:35:09 3v4YvEaS
いいですね。相変わらず面白いです。
華さん乙です!!

独り言(文学さんは【誰か】なのか?フルネームまだ出てきてないよね?)

517:774RR
07/02/22 08:23:24 NSLq5iXb
豚バラキタ━(゚∀゚)━!!!
つ④


518:774RR
07/02/22 09:47:03 nOS1mm6z
っ④

519:774RR
07/02/22 13:00:40 fFkwHHLI
文学=勉三さんだろ?

520:774RR
07/02/22 14:09:57 r80+Phog
>>519
そ の 発 想 は な か っ た わ w w w w


勉三さんって浪人生じゃなかったっけ?

521:774RR
07/02/22 16:10:04 WmD5ZFhq
>>520
勉三さんは六浪の末、高尾大学経済学部に入学。
愛車は赤のミニクーパー。サークルはオカルト研究会に所属。
学園祭でニューハーフショーを学友と演じた経験あり。パチンコと酒が好き。
恋人の友紀さんは大学卒業後スッチーになったっす。

522:774RR
07/02/22 21:01:41 WzR4NqsH
勉三さんイカしたクルマに乗ってるなあ

523:774RR
07/02/22 21:26:27 hT96+ZnD
どうしても勉三さんと聞くと「あたたかいナリ」を思い出してしまう。

524:774RR
07/02/22 21:35:45 R79SSpT2
俺も勉三さんかと思ったけど、華さんの思惑次第だな。
楽しみにしております!!

ところで、デフォルトでみんな「さん」付けで呼ぶのって面白いなw
そこまでが固有名詞だって認識されてるんだなw

525:774RR
07/02/22 22:36:23 wCtPJ3XN
ディープにサザエさんを知ってるわけじゃないから、勉三さんなんてキャラ居たっけ?と
思ったらキテレツの勉三さんですか。


そろそろ華さんの投下かな?wktkして待ってるよー。

526:774RR
07/02/22 23:53:16 AWuNAjZZ
ところでのび太氏は!?

527:774RR
07/02/23 22:05:35 ZP0GMa7S
ほっすゅ

528:774RR
07/02/23 23:36:17 aBkOOcK5
>>1
補助輪つきBMX

529:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/24 00:52:01 eCFk5zyN
【SCENE107】


      『バイク乗りは、バイクで死んではいけない』


若く、熱く、そして愚かで真っ直ぐだった僕達に、大切な言葉を残してくれた人がいた。
半人前の僕達に、バイク乗りとして、男として、大人として進むべき道を、教え諭してくれたかけがえの無い人がいた。
第三京浜で、彼はいつも人の輪の中心にいた。彼は、僕らの憧れであり目標だった。強く優しい人だった・・・。
・・・1985年。確かに僕とアナゴ君には共通の「兄」がいた。そこに行けば・・・鈴木さんの笑顔があった・・・。



C1で鈴木さんの涙を見たあの夜以後、鈴木さんはいつもと変わらぬ様子で僕らと共に居た。相変わらずのように僕を
『魔棲雄』と呼び、看板を背負えとからかった。
鈴木さんの秘められた過去を知ってしまったせいなのだろうか?僕はそれ以来、鈴木さんの笑顔に少しだけ哀しい影を
感じてしまう事もあった。しかし、それ以上にそれまで漠然と感じていた鈴木さんの強さの理由が解かったような気がした。
・・・兄と慕う男の死の一部始終を見てしまったその目で優しく笑い、兄と慕う男の血で染まったであろう大きな手でバイクの
メンテナンスを教えてくれた鈴木さん。僕とアナゴくんの「兄」は強い人だった・・・。



530:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/24 00:53:34 eCFk5zyN
年間を通じて最もバイクが快適な春もあっという間に通り過ぎ、湿気疎ましき梅雨のシーズン。
そんな黒く厚い雲が垂れ込める日曜日。僕とアナゴ君、そして鈴木さんはイナダモータースに居た。ツーリングに出ようとして
集まったものの、雨がポツリと落ち始めたので避難を兼ねて店内で井戸端会議。

「オヤジさん。息子さんはいつ帰ってくるんだっけ?」

「あと一年よ。あの野郎、真面目に勉強してるのかねぇ?鈴木さんよ、今度覗きに行ってくれねぇかい。」

「ハハハハ!近いんだから自分で会いに行けばいいのに~。恥かしいのかい?」

「バカヤロッ!!」

イナダのオヤジさんに息子さんが居るのは初耳だった。

「オヤジさん、息子さんが居たんですね。どこかの学校に行ってるんですか?」

「おう。埼玉のメーカー系の整備専門学校にな。俺は店なんて俺の代で潰していいって言ったんだよ。でもどうしても継ぎたいってよ」

オヤジさんはいつものように難しい顔をしながらも、まんざらでもない様に少し笑う。ツーリングがお流れになったのは残念だが
こんなゆっくりした時間の流れもいいものだ。小洒落た喫茶店などではないが、コーヒーの香りの代わりに漂うオイルとガソリンの
香りもまた芳しい・・・。
店の隅にある本棚には、新旧入り交ざったバイク雑誌の数々。CB750やZ1のデビューした時の号まである。興味本位でそれらの
雑誌を取り出してはめくり・・・などとやっていた僕は、その本棚の中に雑誌ではない冊子があることに気が付く。・・・これは、アルバムか?



531:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/24 00:55:11 eCFk5zyN
こんな店内の本棚にあるのだから、見てはばかれるような物ではないのだろう。会話に盛り上がるアナゴ君や鈴木さんを尻目に
僕はその薄いアルバムを捲った。
この白黒写真に写っている小柄な男性は・・・オヤジさんか?若いな~。・・・などと、僕は一人でほくそ笑みながら何の気も無く
それらの写真を眺める。
・・・余談だが、今にして思い返すとオヤジさんの若かりし頃の写真はとんでもない代物だったような気がする。当時の僕は古い
バイクや、その筋の世界で有名な人の知識に乏しかったから見過ごしてしまっていたのだが・・・、あの写真にオヤジさんと一緒に
写っていたバイクは、RCなんとかという60年代のホンダのGPマシンだったような気がする。そしてオヤジさんと親しげに肩を組む
「HONDA」とロゴの入った作業帽をかぶった初老の男性は・・・イナダのオヤジさんよりもっともっと有名な「オヤジさん」だったような
気がする・・・。オヤジさんは、もしかしたら「世界」を知る男だったのかも知れない・・・。
当時は気にせず見過ごしていたその写真。その後もその写真の事自体を忘れてしまい事の真偽は聞けず仕舞いだったが、今度
息子さんにでも聞いてみることにしよう。

アルバムを捲る度、写真は新しくなってくる。写真の色褪せかたや写りこむバイクの年代でそれが窺い知れる。
ん?これは、鈴木さんだ。イナダモータースの前での記念写真。
イナダのオヤジさんや鈴木さんと一緒に写っている学生服を着た高校生らしき少年は誰だろうか?

「この子が息子さんですか?」

僕はアルバムからその一枚を抜き出すと、会話をしている3人の席へ持っていく。

「いやぁ、違うよ。こりゃウチのガキじゃなくてね、田中のボーズだ。」

「おぉ~、懐かしいなぁ~。彼は田中君って言ってね、僕が大学時代に住んでいたアパートの近所に住んでた子さ。」

鈴木さんは目を輝かせて写真を見つめる。そして「彼、元気でやってるかなぁ」と呟いた・・・。


532:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/24 00:56:44 eCFk5zyN
「この前に話した「兄ちゃん」の事故のすぐ後さ。東京で一人ぼっちになった僕の前に田中君は現れたんだよ。」

「いつもアパートからバイクで出発する時に、田中君が向かいの家の窓からこっちを見ているのは知っていたんだけど、
ある時、アパートの前で洗車をしていたら学生服姿の彼が近づいてきてね。バイクの免許って取るの大変ですか?って
聞いてきたんだ。」

その田中君というバイクに憧れる少年は、鈴木さんの元で手ほどきを受け、原付・・・中型とライダーとしてのステップを
踏んでいったという。イナダモータースでバイクを購入した彼は、作業場でのオヤジさんの作業を飽きもせず眺めて
いたという。「やり辛くってよ!ありゃ、もう参っちまったね」と、オヤジさんも懐かしそうに言う。

「彼は僕を慕ってくれてね・・・。兄ちゃんを失った直後だったから、随分救われた。嬉しかったよ。」

鈴木さんは優しい目で写真を見つめながら言った・・・。オヤジさんは腕を組み、タバコの煙を鼻から吐きながら黙っていた。

「オヤジさん、この写真、彼が出発する前の日に撮ったヤツだよね。」

「お、おう。そうだな、確か。」

「え?彼、どこかに行ったんですか?引っ越しかなにか?」

鈴木さんは、目を輝かせながら誇らしげに僕とアナゴ君に教えてくれた。


533:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/24 00:58:05 eCFk5zyN
「彼はね、高校卒業と同時に外国のレーシングチームにメカニックとして渡ったんだ。今頃も世界のどこかで活躍して
いるはずさ。そう思うと嬉しくて嬉しくて・・・。応援しに行きたいけど、遠いよなぁ。」

「そういえば鈴木さんよ。来年か再来年あたりから鈴鹿で日本GPが復活するらしいぜ。あいつも凱旋帰国だな。」

「ウソ!オヤジさん、それホントかい?いや~楽しみだなぁ。絶対応援に行くよ!」

・・・僕達のほかにも、鈴木さんに陽の当たる道を歩く手助けをしてもらった人がいる。僕は素直にそんな鈴木さんと共に
居る事が誇りに思えた。
その会ったことも無い「田中君」もまた、鈴木さんを「兄」と慕っていたであろう事は容易に想像できた・・・。鈴木さんは
たくさんの人達にとってかけがえの無い存在だった・・・。



しかし、鈴木さんが夢見た「田中君」の応援が、叶う事は無かった・・・。その時、残された時間がもうほとんど無い事に
気がついている者など一人も居なかった・・・。

・・・1985年。確かに僕とアナゴ君には共通の「兄」がいた・・・。






534:774RR
07/02/24 01:07:35 LEMEipD0
リアルタイムキタ━━(゚∀゚)━━ !!!!!

鈴木さんはやっぱり逝くのか・・・・・

535:774RR
07/02/24 01:34:52 q6RsZ1uY
マスオ氏最高だぜ!!

536:774RR
07/02/24 02:20:52 /gf3R/Kk
まさかオヤジは、HR○の前身で、ホ○ダの伝説の社内レーシングチーム「ブルーヘルメット」出身?
そして息子はホン○学園!?

537:774RR
07/02/24 13:11:09 wGiePfsC
つ④

エボ8売って、CB1100R買います。

538:774RR
07/02/24 13:55:25 wFAvyDGe
>>537
otoko 漢

539:774RR
07/02/24 15:00:10 wmiGbTd5
>>538
後のRambleのマスターである

540:774RR
07/02/24 17:12:18 KSXWmiin
お、オレもエポ売って重荷用バーディー買うぜ!

541:774RR
07/02/24 17:23:01 X/zMrUWJ
>>540
kotoko

542:774RR
07/02/24 19:41:56 x2E4T8Mo
URLリンク(rasaloader2.net)
URLリンク(rasaloader2.net)

543:774RR
07/02/25 09:56:34 IFXAGpBt
>>542
アナゴさんの立ち位置に吹いたwww

覗きかよww

544:774RR
07/02/25 11:34:31 V5wArnz4
イササカの作品で海鮮家族ってのあったがFlashあんのなwww

URLリンク(oyamitara.hp.infoseek.co.jp)

545:774RR
07/02/25 20:20:36 utiH+QUi
今日のサザエさん、華沢さんの出番が多くてよかった。

546:774RR
07/02/26 15:23:41 Vpuy9ZZN
ほす&つ④

547:華
07/02/26 20:16:43 y7RrCsp9
魔棲雄氏 つ④ 感激デス 。・゚・(ノД`)・゚・。


↓【沈黙の駻馬編】↓

548:華
07/02/26 20:17:21 y7RrCsp9
【沈黙の駻馬編】

――花子達が合宿に向かう日の早朝、一人の男がターンパイクから大観山へと現れる――

ドドドドドドド… ターンパイクを登って来た男は朝霧の濃い大観山ドライブインの駐輪場にバイクを止めた。
「ふぅ…霧が少し濃い…か…」男は幾つか並ぶベンチの真ん中に座り、懐から愛用のパイプを取り出す。

「あっ!翁 お久し振りです。」とパイプを加えた男に一人の走り屋が声をかける。
「おはよう、今日は霧が少し濃いね。」とパイプに火を点し白煙をフゥーっと吹き出す。
「今日はちょっと濃いですねぇ… どうですか?SRXの調子は?」と翁に聞く。
「悪くないさ。ふふ、いいメカニックが居てね。お世話になってるのさ。」嬉しそうに翁は呟いた。

そんな他愛の無い会話をする翁を駐輪場の端で虎視眈々と見つめ鎮座する男が居た。

(あれが椿翁か…ジジイじゃねぇか… ふっ!ちょろいもんだな。俺のFZR1000でぶち抜いてやるぜ)
(くくく…てめぇの右手から椿をひん剥いてやるぜ?)そう男は心で思い、缶コーヒーをグイッと飲み干した。

―30分程経ち朝日が朝霧をかき消す様に霧は徐々に無くなってゆく―

ミーンミンミン…朝霧が晴れれば夏の昆虫達が目を覚ましたかの様に鳴き始め、徐々に蒸し暑さが増してくる。
「さて、そろそろ私は行くとするよ。またここで会おう。」翁はヘルメットを被り、ギュッとグローブをはめる。
「えぇ、また会いましょう。」談話していた男は翁を見送った。

キュルル、トットットットット、ヴァルン、ヴァルン、トットットットットッ 木々に休む鳥達が一斉に飛び立つ。

(行くか! おし、行くぜ!FZR!)虎視眈々と見つめていた男は様子を見ながら翁と同時にメットを被り、少し後方から翁を追い始めた。

549:華
07/02/26 20:19:23 y7RrCsp9
―椿ライン―

翁はSRXで快調に進んでいた。最初の右コーナーを舐める様に曲がる。「うん…さすがポップ君だ。ノイズも無い。」嬉しそうに無線局のヘアピンに突っ込みながらシフトダウンし始める。
(くくく…ぶち抜くぜぇ…ジジイ…)追う男はFZRでSRXに徐々に襲い掛かろうとしていた。パッ!パッ!とハイビームをチラつかせ宣戦布告の合図を送る。

「ふふ…そろそろ花沢君達も免許を取りに行く頃か。」嬉しそうに呟きながら緩めのヘアピンを曲がり下り勾配の厳しい左ヘアピンへ突入しようとしていた。無論、翁は後方から迫るFZRには気付いていない。
(そのヘアピン越えてのストレートでぶち抜いてやるぜ!)追う男も4車輌後方で虎視眈々とタイミングを見計らっていた。

翁がヘアピンをクリアする。追う男はシフトをタンッ!タンッ!と下げ、クラッチでエンブレを少し殺しながらヘアピンをクリアし車輌を立て直す。

 「!!!」 追う男は少し戸惑う。

(な、何故だ!何故あんな先にジジイが居る?! コーナーで俺の無駄は無い筈だっ! チィッ!単発のトルクかっ!)追う男は自分に言い聞かせコーナークリア後に差が開いた翁を追う。
追う男は下りストレートでスロットを捻る。水冷4ストDOHC5バルブ並列4気筒209㎏の鉄塊がサイレンサーから咆哮を上げ猛然と空冷4ストOHC4バルブ単気筒149㎏へ猛追し喰って襲い掛かる。

「また、新しい世代がバイクに乗り、物語は始まるのだろうな…」翁はそう思いながら複合コーナーをクンッ!クンッ!と体を、右に左にと倒し、シシドのヘアピンに向かってゆっくりとシフトダウンをし、ヘアピンにスゥーっと滑り込んだ。
(その先でジジイの生きた伝説も終わりだぜ。もう終わらせてもらうっ!!)追う男は真後ろにピッタリと張り付きストレートでうねりを上げたスピードを殺しながらヘアピンに突入した。

(終わりだっ!ジジイィ!)SRXのアウトから中央線を割らんばかりのライン取りでSRXを145psのパワーでピタリと横に付け一気にスロットルを捻る。

―が…追う男の時が止まる…―

550:華
07/02/26 20:21:07 y7RrCsp9
猛然と襲い掛かるFZR、追う男はスロットルをガバッ!と開く。だがSRXはゆっくりと…ゆっくりと離れてゆく。背中に施された翁の刺繍がケタケタと追う男を嘲笑うかの様にゆっくりと…

(ば、馬鹿なっ!)追う男は焦り出しシシドのヘアピン直ぐの複合は中央線を割り出す。(うわぁぁっ!)対向車のトラックの荷台にミラーをカツンッ!と当て右ミラーが吹き飛びミラーは谷底に叩き落される。
「バカヤロォォ!」とトラックの運転手が怒鳴るも追う男には聞こえていない。 目の前に居た筈のSRXは徐々に離れ始めていく。

(クソッ!クソッ!)追う男が焦り、戸惑うも下り勾配の最も厳しい左ヘアピンがFZRに牙を剥いて襲い掛かる。
(チィィィィッ!!!!!)追う男はタンッ!とシフトダウンしながらブレーキをかけヘアピンに突っ込む。中央線を割るも幸い対向車は無く無事クリアする。
が…翁は先の複合をクリアし緩やかな左コーナーへ入り込んでいた。

「ふふふ、あの子達どんなバイクに乗るのだろうか?ポップ君の所ならきっと素敵なバイクに巡り合えるさ」嬉しそうに、そして軽快な走りで椿ラインを駆ける。

(クソォォ!どうなってやがる?どうなってやがんだ?!)追う男は焦りながら複合をクリアし緩やかな左コーナーへ向けてスロットを捻り出した。
(こんな所で撒かれてたまっかよっ!)更に追う男はスロットを捻る。

椿ライン…それは一見緩やかなコーナーと油断すれば車輌は山肌から離れ始め対向車線に吸い込ませる魔力を持つ。そして幾人もの走り屋がその魔力に吸い込まれ鉄の牙に飲み込まれてしまう。
追う男は焦りからなのか?混乱からなのか?スロットを開きすぎ、遥か先のSRXにしか視界に入っていなかった。
FZRは徐々に山肌から離れ始め中央線を割り始める。

551:華
07/02/26 20:21:59 y7RrCsp9
(し、しまったぁっ!)追う男は自分のラインを取戻す行動に必死になる。対向車線からクラクションが鳴らされ続けている乗用車が襲い掛かる。

シュルッーッ!必死にバンクさせたFZRのリアタイヤと乗用車のリアタイヤがギリギリの所で空気摩擦らしき音を立てて危機一髪の所で追う男は切り抜ける。
(駄目だ…これ以上は… 敵わない…)追う男はSRXを追うのを諦めゆっくりと椿ラインを進み出した…
「化け物め…」追う男は山肌に埋め込まれた椿を見ながらヘルメットの中で呟いた。

追う男は椿ラインを走るには無知すぎた。ここは馬力でもなくスピードでもない。人馬一体となった者だけが椿の女神に微笑を貰える事を…

≪椿ライン≫
そこは人を魅了してならない悪魔の誘惑。そこは人を奈落の底に叩き落す魔の領域。そこは人の感情を剥き出しにする獣道。
一筋の光明から現る椿の女神に微笑まれた者が最速を許される一握りの栄光。



人は言う。椿の女神に愛された漢の名を≪椿翁≫と…




552:華
07/02/26 20:22:36 y7RrCsp9
翁は椿ライン終わりの緩やかな右カーブを下り終え、SRXを民家の横にちょこんと止めて愛用のパイプを懐から取り出した。
(新しい世代がバイクに乗り始める…また私は伝えねばならん…私がバイクを降りるまでずっと…そうでしょう、あなたもそう思うでしょう…)
ジッとグローブの椿を見つめ、白い煙をフゥーっと吐き出す。

(バイクは楽しみながら乗るんだ!ってあなたは良く言ってましたね…私は今でもバイクが楽しいですよ。)早朝の蒼い空を見上げ白い煙をゆっくり吐き出した。
空にはこれから入道雲にならんとばかりに、高く高く雲が昇りはじめていた。

ヴォオオオオン…追う男のFZR1000が翁の前にピタリと止まる。 (ん?誰だ?彼は?)不思議そうにFZRに跨る男を覗き込む。
(クソォ…こんなジジイに…完敗…だぜ……化け物め…)男は翁の顔を見ては直ぐに伊豆方面へと消えていった…

(はて…?何方だったか…?いかんな、歳をとると…)苦笑いをしながらSRXに跨り、翁は箱根をグルッと周り東京へと帰って行った。

―そんな一方的な追う男のやり取りがあった一時間後に、朝日ヶ丘駅で花子と早川は数ヶ月振りに顔を合わせ合宿へ向かうのである―

553:華
07/02/26 20:29:52 y7RrCsp9
ねぎトロ丼食べて… ね、寝ます…orz

554:774RR
07/02/26 20:39:45 amwTSIEu
つ④④④

555:774RR
07/02/26 20:40:11 VuuoXWa4
華乙

556:774RR
07/02/27 00:20:36 CwGvnh9M
昨日(一昨日か)の某スレのオフツーでめがっさカッコいいカスタムSRXを見て以来SRXが気になってしょうがない・・・

557:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/27 00:46:13 Z1twGhTA
つ④

我が家のお隣さんのお庭に、ここに引っ越してきてからかれこれ3年ほどの間、
一度も動いていないSRX600があるのですが・・・。
「いらないなら下さい」と言いたくなってきましたw


558:774RR
07/02/27 00:51:03 ZrD5MgCr
リアルタイムktkr!!

つ④④④④

559:774RR
07/02/27 11:46:54 CwhiN7XT
駻馬(かんば)
気が荒く、制御しにくい馬。あばれうま。あらうま。じゃじゃ馬。

僕自身がわからなかったので調べてみました。
華さん、難しい言葉を知っていますね。
沈黙、ということは、「眠れる獅子」みたいなもんですね。

560:774RR
07/02/27 15:03:21 jKftnOcw
>>522
イカれた車に読めたのはオレだけ

561:タラオの中の人
07/02/28 00:41:34 Qc1cfE9s
いろんなことが、やばくてかけてないでツ。
ありがたくも楽しみにしてくださっている
皆様には申し訳ないですが、もうちっと待っててください。

つか、本日の$の暴落はマジファック…2か月分の給料がとろけたぜ!!

562:774RR
07/02/28 02:04:09 bVka2rdu
いや、君は待ってないよ

563:774RR
07/02/28 02:32:41 EVvEUA+L
>>562
逝ってよし

564:774RR
07/02/28 02:40:53 ZG2GfOhu
>>562
逝ってよし


565:774RR
07/02/28 02:48:01 dRxcNYQT
>544
やっぱマスオはかっこいいな。

566:774RR
07/02/28 07:42:52 5RPLNgFc
>>562
逝ってよし

567:774RR
07/02/28 10:07:16 BHxh7/bD
タラオ氏頑張ってね

568:774RR
07/02/28 12:19:22 4W4gX7cW
>>562
逝ってよし

569:774RR
07/02/28 16:14:22 QYE0ixF2
>>562
逝ってよし

570:774RR
07/02/28 16:19:16 FnKhdz4W
>>1
ホンダ・ジョイが似合うと思う。

571:774RR
07/02/28 17:12:59 PaMZG+92
>>562
この禿!!!!!

572:774RR
07/02/28 21:21:06 /NBvLsEu
>>570
初代スレから読んできなよ。
びっくりするほどサブちゃん出てこないからw

573:774RR
07/02/28 22:15:17 PQFSI5t5
>>561
俺のNZ$も悲惨な事に…orz

574:774RR
07/02/28 23:56:25 D2Aftlcc
群馬編だとかおもた

575:774RR
07/03/01 14:38:20 d3t3ZwkQ
SRXが欲しくなった…

576:774RR
07/03/01 19:06:47 CuCU8wbN
ZRXで我慢しる

577:774RR
07/03/01 22:08:25 lyean+ZZ
URLリンク(www.volks.co.jp)
こいつ?

578:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/02 00:56:00 VQ7A5HWy
【SCENE108】
・・・早く夏が来ればいいと思っていた。梅雨の明ける気配が、来たるべく夏への期待を膨らませてならなかった。
今年も鈴鹿8耐へ行く。灼熱のサーキットであらんかぎりに声をあげて、戦うライダー達を応援するのだ。
そして・・・もちろんその後にはライダーの聖地北海道。これが、僕達の夏のフルコース。若きバイク乗りにとって、
夏こそが青春を燃やすに相応しい季節だった・・・。
あれほどまでに待ち遠しかった1985年の夏。・・・戻りたくても叶わぬあの日・・・。


その年の北海道ツーリングを、僕はそれまで以上に楽しみにしていた。冬の間にいろいろと調べた北海道の
見どころや味覚もさることながら、それ以外にも僕は楽しみにしている事があった。
僕が、歌手坂本九のファンであったことは以前にもお話した事があっただろう。特に内気な中学・高校の思春期を
過ごしていた僕は、その時代々々のヒット曲をほとんど知らなかった代わりに、坂本九の優しく少し寂しげな歌声が
心の愛唱歌だった。一人内に篭りがちだった僕の心が、それでも完全に破綻せずに多感な時期を乗り越える
事が出来たのは、坂本九の歌によるところも少なからずあったかもしれない。



579:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/02 00:58:06 VQ7A5HWy
だから、そんな坂本九ファンの僕が2年も続けて夏の北海道に行っていたにも関わらず、そのテレビ番組の存在を
知らなかったのは、正直悔しいと言ったところ。
なんと北海道ローカルで、毎週坂本九が生出演している番組がある!・・・と、その年の春先に大学で北海道出身の
同級生に聞いたのだ。
その『サンデー九』という毎週日曜放送の番組は、福祉問題を取り上げた情報番組ということで、今さらながら
九ちゃんの人となりや社会的メッセージを伝えていこうとする姿に感服したし、一ファンとして是非その番組を見て
みたいと思ったのだ。
だから僕は、その番組が見られるようにわざわざ部屋でテレビを見られる安宿を探し、オールキャンプを主張する
アナゴ君を説き伏せ、日曜日にあわせて予約まで入れたのだ。あぁ、楽しみだ。

・・・それに、もしかしたらそれ以上に期待していた事もあったかも知れない。
北海道に行けば、もしかしたら・・・未だ忘れられぬ女性、タイコさんに会えるかもしれない、などと僕は妄想していた・・・。

とにかく、そんなわけでその年の北海道はいつにも増して楽しみで楽しみで仕方が無かった。
北海道への充分な軍資金を貯める為、5月頃からはさらにアルバイトにも力が入った。疲れた体をひきずり部屋に
戻ると、万年床で横になりながら壁に掛けたカレンダーを眺め、出発日までを指折り数えながら眠りについた。
だから、夏前の僕は少し勉強がおろそかになっていた。窓の外が梅雨の長雨の授業中でも、頭の中では緑の大地と
スカイブルーの透き通った空が広がっていた。




580:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/02 00:59:52 VQ7A5HWy
「そういえばさ、去年の北海道でキミらに言った事、覚えてるかい?」

鮒田食堂で鈴木さんにそう言われ、僕とアナゴ君はキョトンと顔を見合わせた。
その日は、北海道ツーリング計画会議の第2回目。学校帰りの僕らと、会社帰りのスーツ姿の鈴木さんは、
ここ鮒田食堂で晩飯を喰いながら会議中だった。

「・・・えっと・・・なんの事でしたっけ?」

全く思い出せないと言った様子で、アナゴ君は鈴木さんに聞き返す。鈴木さんは笑いながらガックリと肩を落とす。

「おいおい、忘れるなよ~!就職の事だよ。言ったろ?ウチの会社に来ないかってさ」

・・・あぁ、思い出した。僕とアナゴ君は前年の北海道ツーリングの時に鈴木さんの勤める会社に誘われたんだった。

「・・・あ・・・えっと・・・はい!もちろん覚えてましたですよ!」

「・・・ウソだね!すっかり忘れてたろ!キミら!」

鈴木さんの指摘は、ズバリ当たっていた。僕らは大学3年になっても就職の事など全く頭に無かった。それが、僕達を
他の事など考えられないほどに夢中にさせるバイクのせいなのか、持って生まれた呑気さのせいなのかは解からない。
特に、当時は現在ほど早期に就職活動に向けて動き出す学生は少なかったし、何より翌年から就職活動スケジュールが
前倒しされすぎる事を防ぐ「就職協定」が明確化されるという噂があったので、すっかり先の事のように思っていた。
要は他人事だったのだ。しかし、考えてみれば僕らはもう大学3年生だった・・・。



581:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/02 01:01:02 VQ7A5HWy
「いやぁ~、まだまだ先のことですから~」と、呑気なアナゴ君。

「おいおい、もう来年の事だぞ?そんなのんびりやってて後で後悔してもしらないぜ・・・」

北海道で将来の事を聞かれたときと違い、社会人のスーツ姿の鈴木さんが語る言葉には重みがあるように感じた。
今思えば、鈴木さんは将来の進路に関して全く気の無い呑気な僕らが心配だったのかもしれない・・・。僕らが鈴木さんを
「兄」と慕うように、鈴木さんもまた僕らを弟のように思っていてくれたのだろうか・・・。
そして、鈴木さんは財布から名刺を取り出し、僕達に一枚ずつ渡した。

「これが僕の同期の人事課のヤツの名刺だよ。その気があるなら来年の就職活動の時期に連絡してみればいいよ。
・・・これって青田刈り?まずいかなぁ?ハハハ」


程なくして、梅雨が明けた。1985年の7月が訪れた・・・。生涯忘れえぬ夏が訪れた・・・。
楽しい思い出に満たされるはずの夏だった・・・。しかし、待っていたのは「死」の香りに彩られた、おぞましき夏だった・・・

その時、僕はまだ知らなかった・・・。僕はこの先、楽しみにしていた九ちゃんのテレビ番組を一生見る事が出来ない事を・・・。

そして、この夏もその先の夏も・・・二度と鈴木さんと北海道を走ることが無いということを・・・。






582:774RR
07/03/02 01:02:29 KQ3hSElu
リアル遭遇キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
つ④

583:774RR
07/03/02 01:03:13 xl/gYe2o
うわぁあああぁ鈴木さん逃げてええええ

つ④

584:774RR
07/03/02 01:04:29 d4P3i2wv
鈴木さん逃げるんだ( ´△`)アァ-( ´△`)アァ-( ´△`)アァ-( ´△`)アァ-( ´△`)アァ-( ´△`)アァ-

つ④

585:774RR
07/03/02 01:04:39 SJPZAdIb
ああ・・・日航機か・・・
まだ小学生だったけど、最悪の事故がおきたとすぐに分ったよ。

586:タラオの中の人
07/03/02 01:32:36 uU11Iegg
―4円

日航機、鈴木にいさん・・・

587:774RR
07/03/02 01:36:11 R+48njJC
差し出がましい様で恐縮ですが、

「青田刈り」ではなく、「青田買い」ではないでしょうか?

588:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/02 01:45:46 VQ7A5HWy
おっと、やっちまったか?・・・と思いましたが、同義のようです・・・。

URLリンク(www.kyuujin.jp)
URLリンク(gogen-allguide.com)



589:774RR
07/03/02 01:51:29 Rao2w4Ng
頼む。物語が重大な局面を迎えようとしている。
少々のことは脳内変換でしのいでくれ。空気重視で頼む。

590:774RR
07/03/02 02:35:44 uqhS8pFq
青田刈り…相手の領土の田を、実らないうちに刈り取ってしまい、兵糧攻めにする。
青田買い…まだ実っていない田を買い取る。良さそうな物に早めに唾を付ける。

元々の語源はこうみたいだけど、最近では青田刈りが誤用から慣用になり、同義に。

ま、脳内変換しましょ。


591:774RR
07/03/02 03:25:54 XwEibLn/
鈴木さぁぁぁああん!(;ω;`)

592:774RR
07/03/02 10:27:31 VF3Vj/ja
これはもうだめかもわからんね…

593:774RR
07/03/02 11:26:59 fKyhSUcs
マスオ氏乙つ④

自分の友達も夏にバイクで死んだんだ
劇中に出てくるようなかっこいいリッターバイクじゃないけどさ


594:774RR
07/03/02 15:56:31 StLFaUaR
1985年8月12日 日航ジャンボ機墜落事故

まさか、そんな、やめてくれ。
wikipediaで読んだ。悲惨すぎる。

595:774RR
07/03/02 16:48:52 aWrwklor
>>594

そうか、もうリアルタイムで知らない世代もいるんだな…

596:774RR
07/03/02 17:02:49 L7MY1J0w
なんかもうここのスレ・・・



狂ってる!!!!!

597:774RR
07/03/02 17:58:06 1khrewbQ
>>596はもうだめかもわからんね

598:774RR
07/03/02 20:02:37 StLFaUaR
>>595
生まれてたけど物心ないんすわ。
3歳です。

599:774RR
07/03/02 20:10:33 Rao2w4Ng
ここじゃ「もうだめかもわからんね」ご法度にしね?
なんか、そんな雰囲気じゃないかと・・・

600:774RR
07/03/02 20:29:05 8bK3lOT4
ついでに「雰囲気」とか「空気」もご法度にしね?
なんか、そんな雰囲気じゃないかと・・・

601:774RR
07/03/02 21:01:56 PfXRnaOq
例の、俺の生まれた年の件をWikiで見てきた。
欝になった・・・

602:774RR
07/03/02 22:05:59 yoqhPxgu
上向いて歩けばいいんじゃね?

603:774RR
07/03/02 22:24:05 769Y7sWH
涙が溢れないようにすればいいんじゃね?

604:774RR
07/03/02 22:26:47 g4X14j/X
流れ的にバイクで・・・ということはないと思ってたけど、85年で九ちゃんか。
小学生だったから大変な事がおこったということくらいしかわからなかったが、
大きくなって関連書籍を色々読んだらたまらないよな。フライトレコーダーとかも衝撃的だったし。

605:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/03/02 22:47:21 eUQJjwhx
>>595
とはいえ既に22年も前の話だしねえ。

俺は確か母親の実家に墓参り帰省してたなあ、
夜のテレビ番組でずっとテロップが流れてた印象がある。

>>604
墜落に至る軌跡が地図上でフラッシュになってるのを見た。
ボイスレコーダーとシンクロしてるので内容が生々しく、
改めて大変な事故だったんだなあと思ったよ・・・(´・ω・`)

606:774RR
07/03/02 22:58:54 VvHVmomk
そういやウチの親父の知り合いも無くなったんだよなあ、あの事故で。
前日に会って「気をつけて行ってきなよ」って声かけたらしいんで、余計
に落ち込んでいたっけ。

ところで、 魔棲雄氏の話は面白いんだが、これからの展開を想像する
と読みたいんだか、読みたくないんだかわからない俺ガイル。
なんて言うか、フランダースの犬の最終回を見たくないような感じ。

607:774RR
07/03/02 23:13:53 lsGwsIsS
ネロは浮かばれない人生の典型だもんね。貧乏で、親しくしてくれた
ガールフレンドの倉庫の家事の件では当日、彼女に深夜に贈り物を
したことが原因で放火の疑いかけられて、更には疑いをもたれた状況の
ままに唯一の身内が死んで、大家に追い出され、厳冬に衰弱死。
でも、それと魔棲雄氏の今後の話の展開を重ねちゃぁ、それは野暮って
もんよ。言いたいことはよく分かるが。

ネロよりも老犬パトラッシュの方が可哀想だった俺は、やはり鬼なのか‥

608:774RR
07/03/02 23:15:00 SJPZAdIb
丁度お盆だったもんなぁ・・・
大人になってからボイスレコーダー聞いて泣きそうになったよ。

609:774RR
07/03/02 23:26:36 lsGwsIsS
連投スマン。
墜落事故当日、俺はちょうど当時東京から親戚の長野に向かう途中、ちょうど
安中から軽井沢のあたりだった。親の運転する車の中、「中二病」そのものの
中学二年生だった俺は、国道18号線を右往左往する消防、警察、自衛隊車両の
ただならぬふいんき(なぜ(ry)の割には歯切れの悪い報道に、「ついにソ連が
宣戦布告したか、宇宙人が攻めて来たに違いない!」という糞くだらない自説を
車中で声高に叫んでいた痛い過去を思い出した。
そういえば、その頃からバイクが好きで、高校生になったらガンマ250Hb(ハー
ベー)を買うんだ!と思っていたが、夢かなわずに今はZX12Rに乗っている。ZXは
このスレの影響で買った。それまではSRX-6海苔だった俺は、何かすべきなのか?

610:774RR
07/03/02 23:30:19 3xbESstG
>>609
とりあえず俺に言えることは
「バイクで死ぬな」

611:774RR
07/03/02 23:44:15 yoqhPxgu
>>609
とりあえずSRX買い戻せ
日航機のFLASH貼ろうかと思ったけどこの雰囲気にはふさわしくなさそうだからやめとこうかな

612:774RR
07/03/02 23:59:22 0wnpAmzX
ジェットストリーム聴こ

613:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/03 01:16:39 m8UBNWw5
【SCENE109】
「じゃあ、今年も富良野で合流ってことでいいね。」

第3回になる鮒田食堂での北海道ツーリング会議。
昨年の北海道ツーリング同様、社会人でお盆しか休みの取れない鈴木さんとの合流は富良野近郊のキャンプ場と
決めた。

「じゃあ、その後はどっち方面に行こうか?今年は久しぶりに宗谷岬を制覇したいんだけどなぁ。」

「えぇ~?俺はやっぱり東がいいなぁ~。今年こそ摩周湖が見たいっすよ~。」

「摩周湖なら何度も行ったからなぁ。僕と合流する前に二人で行けばいいじゃないか。」

「ダメっすよ!やっぱ、晴れ男の鈴木さんが居ないと!一緒に摩周湖見に行きましょうよ~。」

喧々諤々。3人それぞれ勝手な事を主張するのでなかなか目指すメインの方向が決まらない。鮒田食堂の古ぼけた
テーブルに北海道の大地図をいっぱいに広げて、ああでもないこうでもない、とルートを思案する。鮒田のオヤジが
厨房から「俺ぁ、今年も鮭トバを頼むわ!」とやかましい。

こんな居心地のよい時間が、僕は大好きだった・・・。柔らかい時間が流れていた・・・。そこには確かに明るく健全な
かけがえの無い「青春」の時間が流れていた・・・。



614:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/03 01:17:36 m8UBNWw5
「あっ!そろそろバイトの時間だ!」

僕は午後10時から、夜間工事現場での交通整理のアルバイトが入っていた。

「じゃあ、今日はこれでお開きだな。アナゴ君が色々と欲張るもんだから、ほとんど何も決まらなかったじゃないか!」

鈴木さんはそう言って笑いながら席を立ち、いつものように3人分の支払いをしてくれた。

「ごちそうさまっす!」

「ごちそうさまです!」

「じゃあ、二人には北海道でジンギスカンでもおごってもらおうかな?」

鮒田食堂の暖簾を出ると、僕は一人だけ別方向。アナゴ君のアパートは駅の反対側だし鈴木さんは電車に乗るから、
二人とも駅のほうに向かうのだ。



615:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/03 01:18:08 m8UBNWw5
「フグタ君、バイト頑張れよ。無理して北海道に行く前に体壊すなよ。」

「はい。どうもごちそうさまでした!おやすみなさい!」

そんな他愛も無い会話で鈴木さんと別れた。その時の会話は、鈴木さんの優しい笑顔と共にハッキリと僕の脳裏に
焼きついている・・・。
何故、そんな他愛も無い会話のことをよく覚えているのかといえば・・・、それが僕と鈴木さんが交わした最後の
会話だったからだ・・・。

二人と別れて僕は自分のアパートの方へ歩き出す。歩き出して十数メートル歩いたところで、背後からアナゴ君の
笑い声が聞こえた。僕は何の気なしに足を止め、駅の明かりのほうへ歩く二人のシルエットを見送ったのを覚えている。
落ち着き無くオーバーアクションで話すアナゴ君と、それを見て笑う鈴木さん・・・。その後に起こる悲劇を知る由も無い
僕が、何故かその二人の後姿を見えなくなるまで見送っていた・・・。そして、それが僕が鈴木さんの元気な姿を見た
最後だった・・・。

・・・最後まで僕の東京での「兄」は、僕を気遣い優しい言葉を掛けてくれた・・・。



616:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/03 01:19:47 m8UBNWw5
北海道への夢想と、それを現実にする為の軍資金稼ぎに没頭していた僕は、まあ当然のことながら勉学がおろそかに
なっていた。そして、それは夏休み前の前期試験の結果に現れる。
ほとんどの教科が赤点ギリギリだった僕は、助教授からレポート課題の提出を命ぜられていた。これを終わらせなければ
僕に夏休みはやってこないのだ。・・・まぁ、自分が蒔いてしまった種であるのだが・・・。

第3回北海道ツーリング会議の翌晩、僕とアナゴ君はやはり鮒田食堂に居た。

「よう、フグタ君。明日、鈴木さんが最終会議をやろうって言ってるんだ、ここで。来るよな?」

「・・・あぁ、悪い。明日は無理だよ。レポート提出しなくちゃいけなくてさ。明日は部屋でカンヅメだよ・・・。」

「そうか。じゃあ、俺と鈴木さんで決めちゃうぜ?」

「そうしてくれるかい?北海道はどこへ行っても楽しいからさ。僕はどこでもOKだよ。」

僕とアナゴ君の北海道への出発予定日まで、一週間をきっていた。



617:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/03 01:22:05 m8UBNWw5
7月もそろそろ月末に入りかけていた週末・・・。薄暗く曇っていて、蒸し暑かったあの日・・・。忘れえぬ、あの日・・・。
僕は学校をサボり、部屋で件のレポートに取り掛かっていた。提出期限は週明けの月曜だ。
普段は宿題の類など全く身に入らない僕だったが、今回は事が事だ。北海道が掛かっている。

地平線まで続く真っ直ぐな道。透き通るような大空。美味い飯。九ちゃんの番組。そして、もしかしたら会えるかも知れない
タイコさんに思いを馳せ、僕は週末の晩のお楽しみである第三京浜にもその日は行かないと決めていた。
テーマと資料は前日に学校の図書館で入手済み。大まかな構想を決め、半分ほどが出来上がったところでふと気がつくと
窓の外はもう暗くなり始めていた。・・・夕立は降らないだろう、きっと。

今頃、鈴木さんとアナゴ君は鮒田食堂で最終調整をしている頃だろうか・・・。小腹の減った僕は、チキンラーメンで腹を
満たすと、再び机に向かう。
もう、7割方は完成しているんじゃないのか?明日の日曜一杯はかかると踏んでいたのだが、思ったより早く進んでいる
じゃないか・・・。第三京浜に行っても大丈夫じゃないか?いやいや、それはマズイ・・・などと集中力が途切れ始めた
僕は、ラジオのスイッチを入れた。



618:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/03 01:23:46 m8UBNWw5
残りは明日やればいいじゃないか・・・などと思いつつ、それでもダラダラと惰性でレポートを書き続けた。気がつけば
もうすぐ日付が変わろうとしていた。ラジオからはニュースが流れていた。

「破産宣告された豊田商事は・・・」、「台風8号は・・・」、「道路情報です。環状八号線はオートバイの事故の為・・・」。
遂にウトウトし始めた僕は、それらラジオの声すらほとんど耳に入っていなかった。鉛筆を持ちながら遠のく意識の中で、
「・・・今晩のオールナイトニッポンは鶴光かぁ・・・」などと呑気な事を考えていた・・・。そして、9割方書き終えたレポートに
突っ伏すようにいつしか居眠りを始めていた・・・。

僕は机の上でふと目を覚ました。何時の間にか降り始めた強い雨の音が外から聞こえる。目覚まし時計を見ると、
午前4時。ラジオからは鶴光の大阪弁が流れていた。
・・・おかしいな、外でバイクのエンジン音がしたと思ったんだけど・・・。そう思いながら用を足そうと立ち上がった時、
部屋のドアをトントンと叩く音がした。




619:774RR
07/03/03 01:25:33 rIBRqspB
つ④

620:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/03 01:26:30 m8UBNWw5
来客など絶対にありえない時間に鳴らされたノックの音に少し驚いた僕は、少し警戒しながら「どなたですか?」とドアの
外の来訪者に尋ねる。

「・・・・・・」

「・・・どなたですかぁ~。」

「・・・俺・・・」

アナゴ君の声だった。

「なんだ。アナゴ君か。」

そう言いながらドアを開けると、そこには雨で頭からつま先までずぶ濡れになったアナゴ君が立っていた。

「どうしたんだよ。こんな時間に。びしょ濡れじゃないか。まぁ、入りなよ!」

そう言いながら、アナゴ君を部屋に招きいれようとした時、アパートの前の路地にヘッドライトが点灯したままで倒れている
アナゴ君のカタナが目に入った。

「おい!アナゴ君、カタナが倒れちゃってるぜ!」

そう言って、アナゴ君の顔に再び目を移した時、僕はギョッとした。・・・そこにあったのは、これまでに見たことの無い
アナゴ君の顔だったからだ・・・。

彼の髪や顎からは雨水が滴り落ちていた。顔色は真っ青で、彼の顔の最大の特徴とも言える唇は紫色に変色していた。
そして何よりも彼の目は視点が定まらず、まるで虚ろだった・・・。体全体が小刻みに震えていた・・・。


621:774RR
07/03/03 01:27:05 PCkriMTE
( ゚д゚ )つ④

622:774RR
07/03/03 01:27:18 GSruUdrd
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

623:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/03/03 01:28:23 m8UBNWw5
僕は、そんな尋常ではない彼の様子に驚き次の言葉を一瞬失っていた。そんな僕を尻目に、バイクが倒れているという
僕の指摘をまるで無視するように彼は何かを言おうと唇を動かす。

「・・・・・・」

しかし、唇が小さく動くだけでまるで言っている事が聞こえない。

「え?なに?」

「・・・鈴木さん・・・が・・・」

アナゴ君が鈴木さんの事を言おうとしているのは理解できたが、それでも強い雨が地面を叩く音に邪魔され、
聞き取る事が出来なかった。

「鈴木さんがどうしたって?」

てんで埒が明かないアナゴ君の様子に少しイライラした僕は、やや強く聞き返す。
・・・すると次の瞬間、アナゴ君の口から信じられない言葉が紡ぎ出された・・・。僕はその瞬間の時間が凍りついたような
感触を今でも忘れることは無い・・・。

「・・・鈴木さん・・・が・・・死んだ・・・」

「・・・えっ・・・」

未明の雨はさらにその強さを増し、唸るような雨音が僕らと倒れたカタナを包んでいた・・・。






624:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/03/03 01:29:05 Fpp4gSnd
リアルタイムktkr


つ④④④④

625:774RR
07/03/03 01:30:00 DxAa4+G7
鈴木さんorz
つ④

626:774RR
07/03/03 01:35:09 rIBRqspB
ずずきさあぁああああああああああああん
つ④

627:774RR
07/03/03 01:37:46 QTkRRhR8
ひさしぶりに読んだらこの展開・・・

628:774RR
07/03/03 01:40:28 SoQVIe8B
>>606
>>読みたいんだか、読みたくないんだかわからない
わかるよ。
なんかな。

629:774RR
07/03/03 01:44:02 pGutMKZA
鈴木さん……
つ④

630:774RR
07/03/03 01:45:28 SoQVIe8B
って、うそだろ。
俺はさっき、>>606を読んで、それで・・・。
うそだろ。

631:774RR
07/03/03 02:02:43 bBQle0iG
さっきから日航機事故の資料を読んでいた。
付属するように85年という時代の資料もくっついてくるわけで、
それが魔棲雄氏の描く時代設定を色鮮やかにしてくれている。
鶴光のオールナイトニッポンに、豊田商事、そして日航機の事故か。
なんだかあの時代が見えてくるみたいで余計にこれからのシーンが辛いなあ。
嗚呼。

懐かしいテレビ欄を見つけたので貼ってみる。
URLリンク(www.geocities.jp)

632:774RR
07/03/03 02:02:52 xfhvmTW+
鈴木さん・・・(´;ω;)ウゥ・・


633:774RR
07/03/03 02:03:36 x2dtehE+


634:774RR
07/03/03 02:33:48 R/ye57QY
>>631
>夏休みロードショー「パンツの穴」

!?

635:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/03/03 02:44:40 Fpp4gSnd
>>631
別のとこで、つい怖いもの見たさの誘惑に負けて
「夢に出てきそうな」当時のグラフ誌スキャン画像を見ちゃったorz

>>634
やっぱそこに目が行くよなあ、今では放映出来ない「つりキチ三平」とかw
「11PM」とか懐かしいなあ・・・('A`)

636:774RR
07/03/03 02:59:21 3FQt8H8s
火曜のサザエさん…

637:774RR
07/03/03 03:05:50 v1kXmrw3
鈴木さぁぁぁぁぁん!!

638:774RR
07/03/03 07:21:24 5j6o3BzB
魔棲雄氏つ④ 

もう涙が止まらない・・・・゚・(つД`)・゚・

639:774RR
07/03/03 09:17:31 YkSQEyPd
泣けてきた(つωT)

つ④

640:774RR
07/03/03 11:36:07 exmLgMFa
>>634
「走れポコチン」はスルーかよ?

641:774RR
07/03/03 12:58:25 gpC+5XqJ
なんで死んだんだろ?

642:774RR
07/03/03 13:14:44 xfhvmTW+
>>641
ちゃんと読めよ


643:774RR
07/03/03 13:27:55 T8AT6Uf1
日航機じゃないんだな・・・いったい何が・・・

644:774RR
07/03/03 13:33:10 cF+fBc0J
ヒント
ラヂオ


つーか よく嫁

645:774RR
07/03/03 15:24:10 gpC+5XqJ
ああなるほど、アナゴさんが轢いたってことか
そりゃあ唇も紫色になるわなぁ orz

646:774RR
07/03/03 15:27:38 DxAa4+G7
苦笑

647:774RR
07/03/03 15:30:50 I70F4wF7
(暗黒微笑)

648:774RR
07/03/03 16:16:18 4PyQbAcQ
>>631
夕やけニャンニャンwww

649:774RR
07/03/03 17:46:08 GSruUdrd
そうか、鈴木さんは台風八号で飛ばされて・・・ウウッ

650:774RR
07/03/03 19:36:33 gpC+5XqJ
ゴメンゴメン、アナゴさんが轢くわけないよね

きっと鶴光のオールナイト聞いて笑い死にしちゃったんだろうな

651:774RR
07/03/03 20:39:56 HLMJ92tT
この空気を華麗にぶったぎってチラシの裏
今日、近所のバイク屋でロスマンズカラーのNSR50を3台見た
ごめん

652:774RR
07/03/03 20:40:38 21o21STB
文章よりも空気が読めてないことは良く分かった

653:774RR
07/03/03 20:41:29 21o21STB
ごめん>>652>>650にorz

654:774RR
07/03/03 20:54:35 HLMJ92tT
>>653
確かに漏れは空気読めてないがしかしレスされるほどかと思ったら
ああ、ビックリした

655:774RR
07/03/03 21:29:36 fmhB1ZLb
>>623読んで鳥肌立ったのにその後の流れにワロタw

656:774RR
07/03/03 21:48:49 UUt4pawD
・「三河屋のサブちゃんに似合いそうなバイク」スレ 4つの掟・

1. 絶対にバイクをノーヘルで乗るな。
2. 絶対に人に迷惑をかけるようなバイク乗りにはなるな。
3. 絶対に困っている人を放っておくな。
3. 絶対にバイクで死ぬな。

657:774RR
07/03/03 22:02:15 lHI4MqKw
それ、誰が決めたのさw何故にノーヘルw
魔も作中でノーヘル経験ありだし、公道200オーバーの物語だしなぁ。
「死ぬな」と「安全運転」て、似ているようで言いたい事は微妙に違う気がする。

いつぞやの、「亡くなった先輩の言葉達」のほうが響いたなぁ。
好きなバイクに乗ってカッカするな云々の。
あれは泣けた。

658:774RR
07/03/03 22:47:37 RiHcHtJ0
不覚にもモニタが滲んだ・・・・・

鈴木さん・・・・・・・・・・・・・・

659:774RR
07/03/03 23:26:20 xsymiUZ8
>>656
がんばれ、色んな意味で

660:タラオの中の人
07/03/04 06:29:48 sRohmHBS
普段さ、俺らは自分や家族や友人が死んだりすることが無いと、
根拠無く漠然と思い込んでいて、
だからこそ、心のバランスを崩すことなく、日々を健全に淡々と送れる訳だけど、
それでも、時に、その思い込みをぶち壊す身近な死がある。それも突然に。

俺の親父が、脳卒中で突然死んで、しばらくは日々の生活が怖かった。
そのころは、バイク乗っていなかったけど。

そんなことを、思い出したよ。

661:774RR
07/03/04 18:30:48 WOZmPrSC
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662:774RR
07/03/04 18:33:39 MCl7gPih
今夜、鈴木さん追悼ランに行ってきます

663:774RR
07/03/04 18:47:28 uE4Bdbk9
夕日を眺める魔棲雄とアナゴ
鈴木さんを偲ぶ風に脳内変換

664:774RR
07/03/04 18:58:20 ukNHctRq
哀愁漂うように脳内補正してしまう俺ガイル


ノリスケさんもバイクと言う名のストレス解消源を無くしたから健康食品だのに走ってしまったのかとww

665:華
07/03/04 20:32:32 RYUfhY0h
魔棲雄氏 つ④

遂に鈴木さんが… 。・゚・(ノД`)・゚・。




↓【沈黙の駻馬編】続き↓

666:華
07/03/04 20:33:10 RYUfhY0h
合宿へ向かう朝6時に朝日ヶ丘駅で待つ早川さんに「久し振り~」と声をかけた。

「えっ?えっ?えっ?は、花ちゃんなの?!」と驚いた表情が印象的だった。
それもその筈で私の身長は5cm伸び、海鮮組で鍛えた筋細胞は背中の背脂が取れてうっすらと筋肉の筋が見え始め、豚乳の様に垂れ下がっていた段々腹は見事にペッコリとへこんでいた。
それだけではない。ぶよぶよだった両腕の肩から手首までは筋肉の筋に覆われ、豊作だった大根足はスラリと細くなり全体的にスラリとした体型になりつつあった。

なにより炎天下で海鮮組の受け持ちであるメイン通りの続きを進行する作業で小麦色に肌は焼けていた。
外見で変わらなかったのはコンプレックスの豚鼻くらいだろうか?早川さんが唖然とする表情に可笑しくなった。

「グフフ、ビックリした?」と自慢気にクルリと一回転して見せた。
「背は伸びるし…凄い痩せたし…小麦色だし…」目を丸くして早川さんは驚く。だが、時間があまり無い事に気付いたのはそれからだった。
急いで電車に飛び乗り、蒸し暑さが増す電車で上野駅へ向かう。

上野駅発の電車に乗り、向かい合える4人席に二人で荷物を横に置いて腰掛ては朝食の駅弁を広げた。なんだかやっと落ち着ける感じで安堵した。

667:華
07/03/04 20:33:48 RYUfhY0h
「花ちゃん、すっごいカッコ良くなった~ 体が引き締まってるよ」と数ヶ月の勉強と土日の過酷な労働の結果の肉体を眺めていた。
「今ね、メイン通りの続きやっててねぇ~ あの道路、春には環八まで繋げるそうよ。」と今のアルバイトの話などして2時間以上かけて那須まで電車に揺られる旅が始まった。
「ふふふ、実は私もバイクの練習したんだ~」そう早川さんが言い出した。「えぇ~!ポケベルじゃ言ってなかったのに~」と私は少し驚いた。

早川さんもアルバイト先の店長のバイクに乗せてもらっては練習を毎日行っていたらしく、この日まで黙って私を驚かせたかったらしい。
私と同じ様に普通に運転できるらしく教習所は余裕かなぁ~なんて冗談を言いながら電車に1時間は揺れていた。
気温は徐々に上がり始め、窓から見えるアスファルトから陽炎がゆらりと見え始めてくる。田園地帯に入れば蝉の大合唱が始まり向日葵が鮮やかな花びらを陽に浴びせ金色に輝く。
私達の額からはうっすらと汗が出始めていたが、お互い話が尽きる事無く楽しく時間は過ぎて行く。

「そう、中島君いるじゃない?大学の推薦固いらしいわよ。」と早川さんは羨ましそうに言った。
「いいなぁ~ 私も大学行けるといいな。早川さんは何処へ行くつもりなの?」と聞いてた。
「私、美大に行きたくって。行ってみたら楽しそうだなぁって思ってね~」窓枠に肘をあて、掌に顎をのせて流れる景色を見つめながら答えた。

(今…花ちゃんには言えないっか… あの3人が中型免許取得してバイク買った事…)早川は景色を見ながらそう考えていた。

「ねぇ?花ちゃんバイク何買う?」そう早川さんは私に聞いてきたが、私は正直何にするか決めていなかった。
「ん~…まだ決めてないのよ。早川さんは決めたの?」私が言うと、待ってましたと言わんばかりの笑顔で早川さんは答える。
「へっへ~ん!YAMAHA・TDR250~」嬉しそうにはしゃぎ出した。
「えぇぇぇぇ?!T…TDR!?」私は驚きを隠せなかった。


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