07/01/25 23:20:16 tt6fz1Ih
>>1
乙( ´∀`)rァ);´Д`)
3:774RR
07/01/25 23:22:10 aLd3Sj18
乙
4:774RR
07/01/25 23:23:39 ZXDkBP86
乙!
5:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/01/26 00:07:44 N7YrpPuF
>>1乙!
6:774RR
07/01/26 01:00:28 4G3rXShB
イチモツ
じゃなくて…
1乙
7:774RR
07/01/26 06:27:49 XtsIDxTz
::| ____
::|. ./|=| ヽ. ≡三< ̄ ̄ ̄>
::|. / |=| o |=ヽ .≡ ̄>/
::|__〈 ___ ___l ≡三/ /
::|、ヽ|.|┌--、ヽ|/,-┐| ≡/ <___/|
::|.|''''|.\ヽ--イ.|ヽ-イ:| ≡三|______/
::|.ヾ |.::. .. ̄ ̄| ̄ /
::| ';:::::┌===┐./
::| _〉ヾ ヾ二ソ./ >>1 これは乙じゃなくてスラッガーなんだからね
::||ロ|ロ| `---´:|____ 変な勘違いしないでよね
::|:|ロ|ロ|_____/ロ|ロ|ロ,|`ヽ
::| |ロ|旦旦旦旦旦/ロ/ロ|旦,ヽ
::|ロヽ 旦旦旦旦旦./ロ,/|::旦旦)
::|ヾ旦旦旦旦旦旦,,,/::::|、 旦旦|
8:774RR
07/01/27 01:50:52 k4g4/hST
☆
9:774RR
07/01/27 08:14:53 USs17sLD
前スレより
1000 :774RR :2007/01/27(土) 02:33:03 ID:1wTDbcm/
>>1000なら次スレ>>152は今年免取りケテーイ
このスレの>>152は呪われた…
10:774RR
07/01/27 12:02:13 csSDIWOj
152は免許を取得するってことだな。きっと。
11:774RR
07/01/27 13:13:20 uAakzDy2
んじゃ、今年取る予定の俺は狙うかな
12:774RR
07/01/27 15:58:09 B9RJJILd
「免」許「取り」消し
じゃねーの?
13:774RR
07/01/27 16:05:35 X9Vf+rn8
>>1
∧_∧
(`・ω・´) シュッ
(つ と彡 ./
/ ./
/ ./
/ /
/ /
/ /// / ツツー
/ 乙 /
/ ./
14:774RR
07/01/28 14:16:35 KwALntRG
捕手
15:774RR
07/01/28 14:29:04 VOcRvaqE
ほしゅ
16:774RR
07/01/28 14:31:23 eOWoNJFk
サザエさん見る香具師挙手
ノ
17:774RR
07/01/28 14:38:51 mqc9pllC
今日はマスオさんの「イ~」が聞けるかな?
18:774RR
07/01/28 21:37:32 5VvBjS/t
じゃんけん見逃した
19:774RR
07/01/28 23:20:06 D+qhep3W
>>18
サザエさん見逃した
若本分が不足してきている
20:774RR
07/01/28 23:30:41 YExtH5U3
>>19
URLリンク(www.akibablog.net)
21:774RR
07/01/29 17:22:09 kv1wYaeQ
もうなにも迷わない。走ってくるノシ
22:774RR
07/01/29 20:49:54 kv1wYaeQ
・・・俺は部屋の天井を見つめていた。最近特にぼーっとしている。あぁ、思い返せば
ドラえもんがいたころは毎日が楽しかった。毎日が充実していた。ドラえもんが帰ってから
何年が過ぎてしまったのだろうか。無事に公立高校に進学し、けじめをつけることができる
ようになったのか、漫画を読まなくなったのか、ある程度は勉強できるようになった。そういや
ジャイアンに今度の期末の勉強一緒にしようと誘われてたなぁ・・・。しずかさんは相変わらず
校内順位は一番だし、スネ夫(と出来杉くん)は有名私立。そういや俺はいつから「僕」と言わなく
なったのだろうか・・。まあいいか。勉強でもするか。体を起こしたちょうどそのとき、窓が震えて
ガソリンエンジンだろうと思われる排気音と聞き覚えのある特有のしゃがれ声が聞こえてきた。
「おぉ~い、の~びた~!降りてこいよ~!!」
俺はとっさに窓から身を乗り出し、
「ジャイアン!どうしたのそれ!!」
と叫んで道路に下りていった。
「へへ~ん、すごいだろ!?」
バイクはこんなに近くでは初めて見る。新品の輝きがまだ消せて無く、どうやらバイクを受け取って
そのままここへ来たみたいだ。これはなんというバイクなんだろう・・・それまで興味すらしめさなかった
鉄の馬に初めて興味を示した瞬間だった。タンクと思われる部分に
なにか文字が書いてある・・・Z・・・e・・p・h・・・y・・・r・・・?Zephyr?
「これはな、川崎ってメーカーが出してるバイクでゼファー400ってんだ。ちなみに93年式な!」
「免許もってたっけ??」
「これもみろ!」
彼は手にかざしていた。これも新品同様まだ傷ひとつ入っていない自動車運転免許を。
「へぇ~、いいなぁ!でも学校禁止だよね?」
「気・に・し・な・い!!」
といって俺は屁理屈を言ってしまったわけだがもう昔みたいに殴られはしない。・・・理由は
・・・まあそのうち・・・。
23:774RR
07/01/29 20:51:12 kv1wYaeQ
「俺も取ってみようかな~、免許」
俺がその言葉を発するまでジャイアンの愛車自慢をちょっと前までやってた“リサイタル”並みの
時間聞いていた。だが、“リサイタル”とは違い、ジャイアンの声にずっと耳を傾けていた。
ジャイアンが“リサイタル”をやらなくなった理由を知れたし、ジャイアンのKawasakiに対する
情熱と知識が、(月並みな言い方だが)まるでスポンジが水を吸収するがごとく聞き入ってしまっていた。
「おう、やってみろって!ほら、そう言ったこれをやろうと思ってこれも持ってきた」
そういって差し出されたのは、自動普通二輪免許取得試験問題集と何月か前のバイク雑誌だった。
「ほら、これみて勉強して何買うかも決める参考にしろよ。俺はもう要らないからな」
「う、うん、まあ、ありがと」
そう言うと彼はメットをかぶり、バイクにまたがって、クラクションを一回鳴らしてどっかに行って
しまった。
「バイクかぁ~」
俺はそうつぶやくと部屋に入った。
24:774RR
07/01/29 20:59:18 fTIr0EAF
これはwktkせざるをえない
25:774RR
07/01/29 21:01:29 nx2Td6pf
待ってたよ、新スレ初投稿
紫煙∫
26:774RR
07/01/29 21:20:57 80JPckmV
これはよい・・・
つ④
27:774RR
07/01/29 21:20:58 4fYKLhKg
映画のジャイアンはいい子だとよく言われるが、このジャイアンもなんかいい感じだなw
28:774RR
07/01/29 21:38:38 +RjtBWmm
期待を裏切らないでおくれ
つ④
29:774RR
07/01/29 21:46:45 leYH2qfA
|ω・`)つURLリンク(www.wazamono.jp)
30:774RR
07/01/29 21:50:00 dy+w2pbS
>>29
ワカメの中の人って何で変わったんだ?
31:774RR
07/01/29 22:45:51 Z50fTkSA
>>29
ちょwwwwwなんだこの番組wwwww
ワカメの中の人ももう歳だからな、56だっけ?
カツオが亡くなり、ノリスケが去り、ワカメもまた
今現在で当初からのキャストってサザエと波平とフネさんとタラさんぐらいかね
カツオなんて3代目だよな
32:774RR
07/01/29 22:56:42 7rkli0+b
>>22-23
面白そうだ!
33:774RR
07/01/29 23:03:52 RcO8ZJfh
その次の日から俺は教習所に通うためのお金とバイクを買うお金を貯めるためにはジャイアンの紹介で
放課後からアルバイトをすることになった。昔とは違うものの、基本は運動音痴で体力不足。交通整理で
赤く光る棒を振り回しながらただ立っているのさえきつかったが11時までがんばった。今は4月。外で
バイトするにはいい季節かもしれない。
毎日汗だくになって働いた。交通整理は5月の中頃で終わって人手が足りなくなった工事現場で働いた。
多少、いやかなりきつかったがそばにジャイアンがいて一緒に仕事をしていたことが唯一の励みだった。
ジャイアンは時々早く終わるとうちまでついてきて母の飯を食って、それからしばらくバイクを見させて
もらったり、バイクの話や学校の話をした。
34:774RR
07/01/29 23:04:23 RcO8ZJfh
そして7月の頭、約30万ものお金が貯まった。教習所へ通う前の日に両親に打ち明けることにした。
「父さん、母さん、普通自動二輪免許取りたいから明日から教習所に通うね」
何を言ったかわからないという顔でほおける母ともうそういう年頃か、と納得しているような父がそこにいた。
「あなたお金は?」
「貯めた」
「どうして?」
「乗りたいから」
今はこうしか答えられない。母にはいきなりのことでショックをかくせないようだったが、父は
「母さん、のび太もそういう年頃なんだ、自分で金は出すと言っているんだ。いいじゃないか」
頭の所々に白髪が目立つようになった父はそう言ってくれた。
「まあ、あなたがそういうならいいですけど・・・」
不信感を隠せない母。
「ありがとー、じゃあバイト行ってくるね!」
後に父にこの日の話を聞くとこう語ってくれた。
「あの日ののび太は久々に目が輝いてまるでとなりにドラえもんがいるみたいだった」と・・・。
ともかくも明日から教習所に通う日々が始まる。
35:774RR
07/01/29 23:05:31 kw9T1Upc
>>22
つ④
人生初の単車は6万で買ったゼファー400でした。
36:774RR
07/01/29 23:11:31 OTL5O6LF
のび太が大人になる頃にはのび助が空飛ぶ原チャリみたいのに乗ってるよね
37:774RR
07/01/29 23:15:27 80JPckmV
>>22とか
つ④
コテを付けた方がいいかも知れず。
38:のび太とバイク
07/01/29 23:25:05 RcO8ZJfh
>>37
以後これで行きます
どうかよろしくです!
39:774RR
07/01/29 23:58:03 4fYKLhKg
シンプルなタイトルだね!
楽しみにしてるよ!
40:774RR
07/01/30 00:31:25 uf0G1iIh
つ④age
41:774RR
07/01/30 00:34:59 VtKJwBP8
>>のび太氏
紫煙(・∀・)!
42:774RR
07/01/30 00:40:47 cwC7UaEH
つ④
wktk
43:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/01/30 00:53:01 JDsm2EJv
【SCENE103】
夜の第三京浜に、悪魔の歌声が響いた。
地の底から湧き上がるが如き、野太く不気味な『devil』の排気音・・・。僕はその日、いつものように超高速で駆け抜ける
事はせず、じっくりとその音色に耳を傾けながら走った・・・
弾ける様な高音と、唸るような低音。その和音が心に迫る。僕の・・・いや、男の野性を呼び起こすような、それでいて
包み込まれるような歌声に生まれ変わった愛車Ninjaのエキゾーストノート。
装着直後の走り出した瞬間に、やや低速トルクが失われた事にはすぐ気が付いた。
しかし、玉川ICから第三京浜下り線に駆け上がり、2速全開でこれまでとは異なる速度の「伸び」を体感した時、その失った
低速トルクはご愛嬌ともいえるレベルの話である事に気が付く。
・・・楽しい・・・。獲得した高回転域の絶対的なパワーもさることながら、それ以上にその突き抜けるような滑らかに加速する
感触と魂を誘うが如き排気音がスロットルをワイドオープンする楽しさをもたらす・・・。
笑いながら「50ドルでよい」というレッドに渡した当時の円相場で60ドル程度であろう15000円。この快感がたった
それだけの対価で手に入ったのであれば、それは僕にとって超特価だった。
その力強い加速と快音を楽しみたくて、僕は何度も4速で加速と減速を試した・・・。
保土ヶ谷PAにCB1100Rと鈴木さんがいた。
馴染みの顔と立ち話していた鈴木さんは、いつもと異なる排気音で近づいてくるNinjaに気がつき、駆け寄ってきた。
そのサイレンサーがdevilと知ると案の定、僕をからかいだす。
「ほら!やっぱりキミは『魔』に縁があるのさ。『魔棲雄』のカンバンを背負うべき男なんだよ!」
「いや、もう、ホントに勘弁してくださいよ~」
またアスファルトに小石で『魔 棲 雄』と書き出す鈴木さん。もうホントいいですって!
街灯に照らされたdevil菅装着のNinjaは、以前にも増して、強く、そして凛々しく見えた。
そんな愛車を眺めながら飲む缶コーヒーは格別だった・・・。その日、僕は飽きることなくその勇姿をいつまでも眺めていた。
44:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/01/30 00:54:53 JDsm2EJv
余談であるが、1985年の2月頃。カタナともNinjaとも一線を画す一台の名車が、また日本で産まれた。
基本的にはワンセッティングであるはずのキャブレターという燃料供給装置。その弱点に対する一つの解答をひっさげて
そのマシンはデビューした。
ぶ厚い低速トルクと爆発する高回転域のパワーを、「Vブースト」というシステムで両立した怪物『Vmax』だ。
そのパワー、なんと145馬力。そしてNinjaも霞むようなそのパワー以上に僕を魅了したのはその隆々たるスタイリングだった。
当時の僕が追い求めていたスピードの方向性とは異なるキャラクターであった為、まさかNinjaから乗り換えようなどとは
露にも思わなかったが、こいつのデビューが仮にNinjaと同時期であったならば、僕は大いに惑わされていたであろう・・・。
いつかお話した事があるかもしれない・・・。僕は無骨で力強いものに魅了される節がある。それは自らが持たざるものを
求める人間の自然な心情なのかもしれない。
遂に当時の僕はVmaxに乗る機会すら叶わなかったが、その後、10年以上の時を経てこのマシンを所有し、これまでの僕の
車歴の一台となった事からも、当時の僕のVmaxに対して感じたインパクトがいかに大きかったかという事が伺えると思う。
Ninja・・・そしてVmax。1985年前後のこの頃から、現代に繋がるバイクの超高性能化がハッキリと幕を開けたような
気がする。
遂に手に入れたカスタムマフラー。第三京浜最速の呼び声高い我が愛車。次々とデビューする新型機種・・・。
新しい商品、新しい価値観・・・。後に「バブル」と呼ばれる未曾有の好景気に向かって、浮つき始めた時代だったのかも
知れない。
そして僕もアナゴ君も、新しく手に入れたパワーとそんな時代の空気が相まって、少し浮つき始めていたのかも知れない・・・。
鈴木さんのCB1100Rが少し古臭く感じたのもその頃だった・・・。
・・・時は残酷にその流れを加速していった・・・。大切な「何か」を置き去りにしながら・・・。
45:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/01/30 01:01:12 JDsm2EJv
・・・ということで・・・。
カツオ兄さんを私は心のどこかでまだ待っているんですYO!( ^ー゚)b
46:774RR
07/01/30 01:03:17 nA3IJMZ1
魔棲雄氏ktkr!!!
つ④④④
47:774RR
07/01/30 01:10:40 aYuWdPfs
この時間まで起きてて良かった!
つ④
48:774RR
07/01/30 01:40:28 zqBCKeWU
おいらも!この時間まで起きていて良かった!!!
魔棲雄氏だけでなく、のび太氏にも④
49:774RR
07/01/30 02:38:43 KioxIHIo
マスオ氏乙!
つ④
50:774RR
07/01/30 09:18:42 D4sgyBQo
今起きた。
魔棲雄の旦那乙。
51:774RR
07/01/30 12:41:45 iDB/JvNA
魔棲雄氏、のび太氏、乙です!!
そして僕も「伝説を継ぐもの」、ならびに「血の加速」の続編を期待しています!
“正史”の完成を!
52:のび太とバイク
07/01/30 14:00:07 igq6pucP
その日の朝早く俺は目覚めた。この心の奥底から湧き上がる期待が、戸惑いが、
俺をいつもの深き眠りから呼び続けた結果だ。入校式は昼過ぎかららしいので
朝飯を食べて、早めに家を出た。行きがけに母が、
「はい、お弁当。気をつけてね」
と言って俺を送り出してくれた。昨日はあれだけ心配そうだった母が笑って
見送ってくれたことは本当にうれしかった。
「行って来ます!」
11時半過ぎに教習所に到着した。校内の練習コースを見ると車がところどころ
走っている。俺は受付をすませ休憩所へ足を運んだ。誰もいなかったので弁当を
開き食べていたところに、
「のび太じゃないか!?」
「のび太くんだよね?」
横を見ると見慣れた顔が2人立っている。見間違えようもない頭のツッパリのヤツは
分かるが、横の彼は誰だったか・・・。
「スネ夫!!・・・と誰だっけ?」
するとスネ夫の横の彼はふふふと笑い、
「のび太くんひどいなぁ!僕だよ~、出来杉だよ!」
てめー自身で出来過ぎ、とか言ってるやつはこの世で一人しかいねぇ。中学校の時まで
煮え湯を飲まされ続けたあいつだ。そのくせに、ふらっと私立なんて行きやがって・・・。
だがここで敵意を丸出しにしてはいけない。そう俺の最大の友人から教わったんだ・・・。
「出来杉くん!久しぶりだね!!二人とも何をしてるの??」
そう、ここから俺たちの戦いは始まっていく・・・。
53:774RR
07/01/30 14:37:37 CDFewmea
誤字脱字がこないだの奴ににて(ry
54:774RR
07/01/30 16:17:34 igq6pucP
>>53
すいません;;
>>23の6行目
「おう、やってみろって!ほら、そう言ったこれをやろうと思ってこれも持ってきた」
を以下に訂正してください
「おう、やってみろって!ほら、そう言ったらこれをやろうと思ってこれも持ってきた」
・・・やはり魔棲雄氏の読むと走りたくて走りたくてしょうがなくなりますね!
55:774RR
07/01/30 18:37:52 n/KMRiFX
>>51
>“正史”の完成を!
俺の本名が出てきたから一瞬ビビったよ。
>>52
つ④
56:774RR
07/01/30 18:44:04 A3ZH0T94
>>53
スレ違いで申し訳無いが、町田近辺で美味しい食事処ってある?
よかったら教えて下さい。今度一緒に行きましょう。
57:774RR
07/01/30 19:37:36 aMWhc8f9
>>55
正史!久しぶり~
つ④
58:のび太とバイク
07/01/30 20:31:07 igq6pucP
彼等はバイクの免許を取りに来て、今日2段階まで終えたようだった。
「俺は今日入校式なんだ」
「へえ~、そうなんだ~。早く一緒にツーリングとか行きたいね~!」
こいつのいうことは相変わらず調子がいい。しかし・・・。
「うん!そうだね!!早く俺も免許取りたいな!」
「のび太はバイクとか決めてるのか?」
そう、その問題だ。免許を取るのは10万程度で出来る。しかし、問題は取った後だ。乗らない
なら乗らないでいいかもしれない。だが免許を取った以上はバイクに乗りたい。4月に
ジャイアンからもらった雑誌を暇さえあれば眺め続けた。ホンダ、ヤマハ、ススギ、カワサキ・・・。
手が出るのは国産車のみだ。後々のことを考えると最初の一台は、高校の間は国産車に止めて
おいていたほうがいい。
「ぼくはまだ・・・」
言葉を濁す俺。
「俺はSV400を納車待ちだぜ」
「僕はXJR400Rだよ。親戚から譲ってもらうんだ」
二人はスズキとヤマハ。俺はまだそこまでお金も貯まっているわけではなく、この教習所で10万
ほど使ってしまう。残るは、20万。まだバイトを続けてお金を貯めるしかあるまい。
59:のび太とバイク
07/01/30 20:31:39 igq6pucP
彼等の卒業検定が明日の朝からあるのだという。見に来ないかと誘われた。明日の11時から第1段階の
授業が始まる。まあちょっとぐらい早起きしてもいいな・・・。
「わかった、見に行くよ」
入校式も難無く終わり、俺が帰る時間まで2人は待っていてくれた。気がつけばもう夕方。一緒に飯を食わないか、
ということになり、帰りがけに見かけたいいにおいのするラーメン屋に俺等は飛び込んだ。
「おじさ~ん、トンコツ3つ~」
あいよ~、っという声が聞こえて俺達は昔話に花を咲かせた。だが、彼等は“ドラえもん”という名詞は
絶対に口に出さない・・・。もう立ち直ったんだからいいのに・・・。だが、そのことを口に出来ないのは
まだ心のどこかにひっかかっている証拠だろう。昔話が終わると友人たちの話はジャイアンと一緒で、
スネ夫がスズキ、出来杉がヤマハとそれぞれなぜそのメーカーにこだわり、そのバイクを選んだのか、
延々と聞かされた。苦ではなかった。むしろ発信源を友とするその情報たちは俺の知識と交じり合える
ことを喜んでいるように思えた。
「うまいな」
「うん」
「これは・・・」
しっかりと背油の浮いたスープだが妙にこってりしていない。それでいて主張する味。麺は小麦粉のみで
打ち上げられた細麺で、つるつるとした喉ごしとともに胃に入っていく。彩るは太ネギの青い部分と白い
部分が鮮やかだ。きくらげのシャキシャキ感が食欲をさらに増加させ、舌の上でとろけるチャーシューは
しょうゆ味でうまい。これでもかと言わんばかりに煮卵のトロリとした黄身の部分にニヤケ顔にさせられる。
俺達が次に発する言葉がまったく一緒になるのも何等問題はなかった。
「おじさん替え玉!!!」
彼等と別れた後、俺は空を見上げて家路についた。
60:774RR
07/01/30 20:43:49 JzTV3WLh
>>59
ラーメンの描写詳しくてワラタwwwwwwwwwwwwwwwww四円
61:774RR
07/01/30 21:06:36 xy9nisk4
小池フラグか!?
④
62:774RR
07/01/30 21:35:00 QgcjcLYN
>>60 ふたりの卒検の描写は飛ばしてるのになW
つ④
63:774RR
07/01/30 21:46:08 iDB/JvNA
ついついカップ麺に手を出す僕がいる!!
>>55
ごめんごめんw
正しい物語の時間の流れ、って意味で使いたかったんだ。
この一連のスレの
魔棲雄 → 伝説を継ぐもの(カツオ物語) → 血の加速(タラオ)
のサブ三部作が正史だと思ってる。
ストーリーがリンクしてるしな。
もちろんのび太ストーリーもかなり楽しみにしてる。
作家先生ガンバレ!
長レス申し訳ない。
64:774RR
07/01/30 21:51:29 iGIjHqpc
>62
よく読め。卒検は明日、もう少し待て
65:774RR
07/01/30 22:02:42 uM8K71NY
ジャイアンがのび太に手を出さない理由とは…
ま、まさかジャイ子とのフラグが…Σ(゚Д゚;!
66:774RR
07/01/31 00:02:12 F5iRMJ91
ちょwあるあるwww
ってオイw
67:774RR
07/01/31 00:06:44 hX485zIH
クリスチーネ剛田
68:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/01/31 00:42:45 d4FQyu0s
>>67
ペンネームじゃねーかwww
>>作者様各位
つ④
69:774RR
07/01/31 18:58:22 nNc3Vcw3
のび太くんってば脳内一人称だけが「俺」なんだね。
70:のび太とバイク
07/02/01 00:16:33 CFe4xB1d
次の日、朝早くに起きると昨日と引き続き母の作ってくれた弁当を持って
俺は教習所に向かった。自転車で15分の距離。俺は初めて乗るバイクと
友人たちの卒業検定の様子を思い浮かべ、自転車を急がせた。
「おはよー」
友人たちの姿をロビーで見つけ、話しかける。
「いや~、緊張するね~」
っと出来杉。逆にスネ夫の方は余裕で満ち満ちている。
「早く公道で乗りたいなぁ!」
・・・スネ夫はあいかわらずだな。
しばらくするとアナウンスが流れる。彼等はそれに従い外に出て行った。
時計を見ると9時半。余裕だ。外に出ると彼等はちょうど車庫からバイク
を出している所だった。・・・あれはCB400・・・フォアか。ジャイアン
から貰った雑誌に書いてあったな。ホンダの名車フォア。あれに俺も今日
乗るんだと思うと心が弾む。乗りたいなぁ・・・。
そんなことを考えているうちに友人2人の卒検が始まった。まずはスネ夫
らしい。・・・ヘルメットによく収まるな・・・。しかし、それから行われ
たのは卒検ではなかった。そう例によってジャイアンの雑誌で見たことがある
“ジムカーナ”だった。スネ夫のライディング。卒検なのである程度までしか
スピードは出せないが、早い。隙がない。揺らぎがない。先ほどロビーでの彼の
余裕の表情表れ出でている。彼の特徴とすべき走り、それはコーナーからの自身の
体重の軽さを生かした加速だ。妙に滑らか過ぎる。しかも、S字、クランク共にバイクに
振り回されていない。暴れる鉄馬を軽く押さえ込んでいる感じだ。卒業検定とは名ばかりの
彼のステージ。・・・見せ付けられた・・・。
71:のび太とバイク
07/02/01 00:17:19 CFe4xB1d
スネ夫が終わると同じバイクに出来杉がまたがる。・・・何が緊張する、だ。
出来杉という優等生はここでも、なにをやっても優等生なのか。スネ夫以上に
安定性のある走り。初心者の俺が見ていてもうまいとわかる走り。・・・くやしい。
卒検においてはスラロームは7秒以内でよい。しかし・・・彼はまるで一瞬。
交互に並ぶコーンをひらりひらりとかわし、リズムよく聞こえてくる排気音。
彼は停止位置にバイクを止めると手を挙げて終わったことを試験官に伝える。
メットを脱ぎ、さらりとした髪をかきあげる。・・・くっ・・・。
二人は卒業証明書をもらうと帰っていった。俺は取り残され、11時からの
本番に備えてジュースを飲みつつ、休憩していた。スネ夫と出来杉、正直、
悔しかったが彼等の走りは俺の魂に今まで決して灯る事の無かった炎を
付けてくれた。・・・うまく走りたい、誰よりも速く・・・。
その思いがCB400スーパーフォアを加速させる。今まで自転車しか乗ったことが
無かった俺だが、すんなりと乗りこなすことが出来た。クラッチ機構はジャイアン
から教えてもらっていたし、ジャイアンと共にしたアルバイトが俺の筋細胞を呼び
覚ましておいてくれたおかげだ。ある程度の筋力を持って乗る鉄馬はまるで生きて
いるかのように加速してくれた。
72:のび太とバイク
07/02/01 00:17:51 CFe4xB1d
月日を重ね、もう八月。いつの間にか入った夏休みだが、アルバイトと教習所の
毎日だった。バイト代はいつもの1.5倍増しに貯まり、今日ようやく無我夢中で
通った教習所ともお別れだ。さっきもらった卒業証明書を右手に抱え、元気に
自転車をこいで家路に着く。すると、後ろの方から聞き覚えのあるマフラー音がする。
「ジャイアン!」
自転車を降り、彼はエンジンを切り、帰りがけにあるコンビニに立ち寄った。
「やっと卒業だよ」
そういって卒業証明書を見せびらかす俺。
「おっ、やったじゃん!後は免許センターに行って試験受けて免許もらうだけだな!」
「うん」
「そういや、バイクは買うのか?」
・・・痛い所を突かれた。まだ資金面で問題がある。9月までにはなんとか貯まる算段で
いた。
73:のび太とバイク
07/02/01 00:20:15 CFe4xB1d
>>58
12行目 「ぼくはまだ・・・」
を
「俺はまだ・・・」
に修正してください;;
>>69
確認ミスです。すいません;;次からは無いように努力いたします!
74:774RR
07/02/01 00:21:43 e/9WK7bm
つ④
卒検で使うのがヨンフォアで、教習で使うのがスーフォア?
75:のび太とバイク
07/02/01 00:31:19 CFe4xB1d
>>74
教習所はほとんど私の実体験です。
1段階がスーフォアで卒業検定がヨンフォアでした。
ちょうどバイクの入れ替え時期だったんですかね??
76:69
07/02/01 00:35:12 wE5ruQiS
>>73
すみません、揚げ足をとったつもりではないんです。
なんかの伏線なのかとしか考えませんでした。
気を悪くされたらごめんなさい。
いつも楽しませてもらってます!がんばってください!
77:のび太とバイク
07/02/01 00:38:39 CFe4xB1d
>>76
お気になさらずw楽しんでいただけるようがんばります!!
78:774RR
07/02/01 00:50:34 SqpIKQGs
>>75
そのヨンフォアはNC36(平成ヨンフォア)ですか?
79:のび太とバイク
07/02/01 00:57:06 CFe4xB1d
>>78
勘違いでした;;
スペック3かそうでないかですね;;卒検は後者です;;
私はスーパーフォアもフォアと訳すことがあるので、
そのためのミスです。紛らわしい文章ですいません;;
では>>70の3段落3,4行目の「フォア」を「スーフォア」
に訂正をお願いします。
80:774RR
07/02/01 01:13:40 5JxlBZMo
ごめんなさい、混乱してちょとストーリーが
想像しにくくなっちゃったんですけども
ストーリー上の教習時はすでにCB400SFで卒検もCB400SFで
のび太とバイクさんの実体験では、卒検はヨンフォアだっただけであって、
ストーリーには関係しないということでおkk??
81:774RR
07/02/01 01:20:27 SqpIKQGs
よーするに全部スーフォアでおkってことですね
82:のび太とバイク
07/02/01 01:34:32 CFe4xB1d
>>80,81
おkです;本当にまぎらわしい文章ですいません;;
83:774RR
07/02/01 01:54:13 wE5ruQiS
後で編集できないですからね・・・。
どんまいです!
84:774RR
07/02/01 12:18:46 2YWZ57xc
素直にXJRにしとけば良かったなw
④
85:タラオの中の人
07/02/01 23:35:51 eBdlqhvm
ご無沙汰しとります。
小生、転職と引越しおよび諸々の事情のため、
カナーリ忙しく、手を付けられておりやせん。。。
申し訳ないですが、しばしのお待ちをお願い申し上げます。
86:774RR
07/02/01 23:38:29 yNVXeH97
>>85
汗らんでいいですから、気が向いたときにでもお願いしますね。
その間、アナゴボイスのジャイアンでも見ようぜ。
URLリンク(www.youtube.com)
87:774RR
07/02/01 23:49:56 zs0pS2zj
>>85
待つことにはなれてますからw
気楽にどうぞ。
とゆーかわざわざ連絡どうもです!
88:774RR
07/02/02 00:29:05 yDRZExSk
おー活気があっていい流れだ
>>55
魔叉獅さん乙
89:774RR
07/02/02 00:41:14 T4shzSpg
マサフミ?
90:774RR
07/02/02 02:06:28 eZlMfnS0
マサシ?
91:774RR
07/02/02 10:51:03 br4LGzn2
マサーシー?
92:774RR
07/02/02 11:42:55 31ntYi3q
マイアミ?
93:774RR
07/02/02 12:23:28 GJNBZ2nQ
マイアヒ?
94:774RR
07/02/02 14:26:49 pgy+sU/X
マイアハ?
95:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/02/02 14:56:00 uUgrpRkc
飲ま飲まイエイ?
96:774RR
07/02/02 16:39:40 tUZHm8sh
銀スカさん!ちょっと早いよ!w
もちっと引っ張ろうよ!w
97:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/02/02 16:56:33 uUgrpRkc
だって、>>93と>>94の間が抜けてたんだもん(´・ω・`)
98:774RR
07/02/02 17:37:31 tUZHm8sh
>>98
僕が悪かったです...。
てゆーかレスポンスがあるか試してみたくなっただけですw
99:774RR
07/02/02 17:56:54 QoQ43rym
銀スカさんって廃墟スレにいた人でつか?
100:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/02/02 21:24:06 El3+TSKn
>>99
ぉぅぃぇ> ('A`)ノ
101:774RR
07/02/02 22:00:47 +6DpT/s/
銀スカのレスは、どうでもいいか、つまらんものばかりだから、いっそのことレスするな、といいたい。
102:774RR
07/02/02 22:14:06 3r8AGgUs
今までで一番最低ね
卒検の行を見ていて紅茶を噴き出してしまったわ
まずは日本語を習ってきてから一度話をまとめたほうがいいのではないかしら
103:774RR
07/02/02 22:15:41 IpfHSiEW
>>101
オマエモナー('A`)
104:774RR
07/02/02 22:16:26 1kGEpInx
うるせーですぅ!
105:774RR
07/02/02 22:25:54 br4LGzn2
>>102少しだけ同意
106:774RR
07/02/02 22:42:04 hSY0uOT6
ローゼンのはないのか
107:774RR
07/02/03 07:23:59 x1rIXjLE
作者以外の糞コテが雑談してるとウザいな。
108:774RR
07/02/03 12:22:58 s6CC3PJw
糞コテ叩く以前にいちいちageんなバカ。
109:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/03 14:22:00 eoW9iLQ8
アナゴさんと、初めてツーリングに行って以来、俺は憑かれたように走りに走った。
大学の授業が終わると、(あるいは勝手に終わらせて)ガレージに行き、ほとんど毎日といって良いほど走りまくった。梅雨時期もアスファルトの乾いた短い時を見逃さず、それでも雨が降ったなら降ったなりに走った。
夏までにフロントとリアのタイヤを交換した。今まで、服や、友達付き合いに消えていた金はほぼすべてTLの維持とガソリンにつぎ込み、更にバイトを増やした。
ノートを貸してくれる友人がいなければ、前期の取得単位は悲惨なコトになっていただろうと思う。(ノートを貸してくれた彼には学食の食券の束を進呈する必要があったが…)
バイクにかまけていたおかげで、一応、所属している少林寺拳法部の練習にもほとんど顔を出さなかったため半幽霊部員になってしまっていた。
期末試験終了後に久しぶりに出た部活で、先輩に「タラオ…お前夏休み、特錬な!」と命じられたのは言うまでもない。。。
110:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/03 14:23:15 eoW9iLQ8
俺の大学にはバイクで通学しているやつも多い。必然、都内のキャンパスの、あまり広くない駐車場にはさまざまなバイクがぎっしりと並ぶことになる。
俺は川崎のガレージにTLを置いているので今までどおり電車通学しているが、学内のバイクを見て歩くのが楽しくて、講義の合間などになんとなしに見て回ってしまったりする。
ビッグスクーターやらアメリカン、モタードやらSS、生活感の溢れた感じのスーパーカブからきれいなチタンブルーのマフラーを装着したRSV1000Rまで様々だ(TLはいないが・・・)。
それぞれ、持ち主の趣味が如実に表されていて、実に面白い。
111:タラオ
07/02/03 14:24:45 eoW9iLQ8
中でも、俺の気を特に引く一台があった。
いつも停まっている、ヤマハの新型FZ1だ。ブルーメタリックの車体はタンクの側面を除いて、きれいにワックスがけされている。
オーリンズ、ブレンボ、マルケジーニ、アクラのフルエキマフラーなど一級品のリプレイスパーツをふんだんに装着しているが、俺が興味を持ったのはそんなパーツ類じゃない。
そう、俺の気を引いたのはFZのガリガリに削れたバックステップのバンクセンサーと、肩のとろけたリアタイヤ、
そして…カウルの内側に小さく、わからないように貼られた女の写真のシールと「ミヨちゃんLOVE!」の極々小さな字…どんなやつが乗っているんだ?
112:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/03 14:25:54 eoW9iLQ8
熱帯夜、うだるような8月の夜。
部活の特別練習を終え、組み手で先輩連中にどつかれた熱い身体を引きずりながら、駐輪場に赴く。
夏休み中、しかも8時過ぎなのでさすがにバイク駐輪場は閑散としているが、例のFZ1は太陽の余熱に熱いアスファルトの上に、いまだ、鎮座していた。
夏休みでも、いつもFZは駐輪場のいつもの位置にあったが、この数日の様子から8~9時過ぎくらいにいなくなることがわかっていた。
そういうわけで今日の俺は、このバイクの持ち主がどんなやつか確かめてやろう、という気になっていたわけだ。
自販機でスポーツ飲料を買い、傍の段差に腰掛けてセブンスターを咥える。
暑さと、脳にいきわたるニコチンにボーッとしながらバイクを眺め、
3本目のタバコに火をつけた時、FZに近づく人影を見つけた。
「彼」か?
113:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/03 14:26:59 eoW9iLQ8
彼はFZの傍らで右ポケットをまさぐると、キーを取り出した。間違いない。彼だ。
早足で近寄って早速にも声をかけてみた。
「あの、すいません―このFZの方ですよね」
「ん?ええ、そうですけど…何か?」
怪訝そうにこちらを見直す彼。ざっくりとした短髪に、横に長いスクエアな眼鏡をかけていた。知的さを感じさせるが、どこか神経質そう。
少し、バイクから想像するイメージと違った。
114:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/03 14:27:54 eoW9iLQ8
「いやいや、FZがすごく綺麗にいじってあるもんで、ずっと気になっていたんですよ。
で、偶然通りかかったときに、あなたの姿が見えたもんだからつい声かけちゃいました。」
見張っていたというのも怪しいし、少し恥ずかしいので、偶然ということにしておいた。
「ああ、そういうことですか」
うれしそうに頷く彼。バイク乗りが自分のバイクをほめられて嬉しくない筈はない。
「タイヤとか、ステップとか結構キテますよね」
「うん、首都高上がったり、峠とか走るとどうしてもね」
そうして彼は、FZのカスタムについて軽く説明して見せた。
頃合を見て、俺はしゃがんだままカウルの内側に貼ってある女の子のシールを指差した。
「で、この娘は?」
「―彼女・・・」
恥ずかしそうに、視線をそらしながら言う彼。暗いからよくわからないが、多分、真っ赤だ。
可愛いヤツ。
「で、名前は?」
「―ミヨちゃん・・・笑うなよ!?」
「笑わないさ・・・(ニヤリ)・・・」
115:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/03 14:29:14 eoW9iLQ8
彼は大手英一。工学部の4年だそうだ。ミヨちゃんとは幼馴染らしい。珍しくもバイクに彼女の写真を張るくらいだから、よほど好きなんだろう。
神経質そうな初印象に反して案外くだけたヤツで、彼のほうが年上ながらタメ口で話すことを許してくれた。
「同じ学部じゃないだろ?いいんじゃない?」とのことだ。
俺が今年免許を取得し、TLに乗っていることを告げると、
「TLかよ…」とつぶやきニヤリと笑いやがった。
「TLだよ」ニヤリと笑いかえしてやった。
連絡先を交換して・・・
その日から、英一と友人になった。
バイクを通じて得た、初めての友人だ。
116:774RR
07/02/03 14:41:36 L/yeQG8r
タラオさんが久しぶりに読めて、昼間からテンションあがりまくり。
117:774RR
07/02/03 15:38:49 olJShiyV
タラオ乙
118:774RR
07/02/03 15:40:16 ZF2YEizb
タラオ氏 しえん
119:774RR
07/02/03 15:55:27 QoeqTjP9
キテレツなり~
120:774RR
07/02/03 16:12:03 6qmnLfAa
木手か?
121:774RR
07/02/03 16:59:42 OudviaMi
キテレツか・・・
122:774RR
07/02/03 17:09:40 GMUJKFVX
「ミヨちゃんって誰だっけ・・・聞いたことあるよな」
ってずっと考えながら読んでた。
>>115を読んではっとした。
そうきたか!
123:774RR
07/02/03 17:12:58 RjmfX7Qw
ミヨちゃんと言われてミヨキチが思い浮かんだ俺はもうだめかもわからんね
124:774RR
07/02/03 17:15:55 4eCJ/pSi
サブ=オッス、オッスでアーッ!
125:魔 棲 雄~マスオ物語~
07/02/03 17:27:27 R4MibJyJ
つ④
126:774RR
07/02/03 22:12:37 iIeTeLIO
つ④
>>102
一番最低って言葉を見て紅茶を噴き出してしまったわ
まずは日本語を習ってきてから一度話をまとめたほうがいいのではないかしら
おまいらすまんな
ヌルーできんかった
127:774RR
07/02/04 00:47:24 NjNPlv7x
>>126
志村ー、ローゼン、ローゼン
128:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/04 01:17:16 Shqg/Qn+
【SCENE104】
暖かい日が多くなってきた1985年3月。僕はどうやら無事に大学3年生になれそうだった。
桜のつぼみは大きくほころびはじめ、バイク最適シーズンが近づいていることは明白。
今年はどこにツーリングへ行こうか?などと、暖かい風に吹かれていると心は躍る。
・・・しかし、陽気とともに迷惑な輩もまた活動を開始し始めるのも世の常・・・。それはそんな春先の夜の出来事だった。
例の如く、バイトで疲れていた僕は六畳一間に帰りつくと万年床に身を横たえた。
すぐに睡魔が襲って来る・・・。明日は週末だな・・・。
アルバイトの作業着姿は眠るには心地の良いものでは無かったが、週末の夜の第三京浜でのお楽しみに備え、僕は
そのまま睡魔に身を委ねる事にした・・・。
外では暴走族がけたたましく街を行き来しているのが聞こえた・・・が、それが僕の眠りを妨げる事は無かった。
尿意に襲われ目が覚めた。寝ぼけ眼で目覚まし時計に目をやると、日付をまたいで30分ほど経っていた。
・・・便所に行こうか、行くまいか。ハッキリしない意識の中に僕は居た。
129:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/04 01:18:19 Shqg/Qn+
部屋の外から物音が聞こえたような気がした・・・。ボソボソと話し声が聞こえたような気もした。
しかし、己の尿意すら誤魔化そうとするほど眠気に支配されていた僕の脳は、それらの音に対してそれ以上の反応を
する事は無かった。
それから数分。ダメだ、トイレに行こう、と布団を抜け出そうとしたとき、一際大きな『パキン』という金属音がした。
そしてその直後・・・。
『キュゴゴゴゴゴ ヴォン!ヴォン!ボボボボボボボボ』
という、よく聞き慣れた内燃機関の始動音。
「まさか!」
反射的に僕は布団の上に跳ね起きると、靴も履かずにドアを開き外に出た。そこには信じられない光景が・・・。
そのヘッドライトも眩しく起動した大型二輪車は、我が愛車GPZ900R Ninjaに他ならなかった・・・。
「おい!人が来たぜっ!ヤベーって!」
「ヤベっ!おらっ!早く行くぞ!」
何者かが乗車する我が愛車は、中型らしき暴走族仕様のバイクを2台引き連れ、フラフラと路地に出て行く。
「ま・・・待て!!!!」
そんな僕の叫びはDevilに掻き消された。
僕は走った。靴下のまま無我夢中に盗人達の走り去った方へ走った。・・・が、その後ろ姿に追いつくことはもちろん
出来なかった・・・。
僕は、表通りで人目もはばからずへたり込み、茫然自失でNinjaが走り去ったであろう方角を見つめていた・・・。
130:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/04 01:19:04 Shqg/Qn+
・・・やられた・・・。そんな・・・何かの間違いだ・・・。Ninjaが僕の前から姿を消すなんて・・・。
混乱した頭が現実逃避を試みようとするが、愛車は僕の目の前で走り去ったのだ。それは厳然たる事実だった。
真っ白になってしまった頭でも、まず始めに何をしなくてはならないかはかろうじて解かっていた。
僕は、手近な電話ボックスから警察へ通報する。・・・初めて、赤い緊急連絡ボタンを押した。
相当に混乱していた僕は、伝えるべき内容と順番も無視して受話器にまくし立てた。
僕自身は、その時に何と言ったのか今となっては覚えていないが、相手の警察にとっては単なるバイク盗難事件に
過ぎない。すぐに向かうと言われたので、僕もフラフラと部屋へ向かった・・・。靴下で踏みしめるアスファルトが、
ことのほか硬いものであることに、その時初めて気が付いた。
アパートに帰っても、もちろんそこにNinjaの姿などあるはずも無い。駐輪場には切られたチェーンロックとチェーン
カッターが空しくそこに転がっていた。
それを見て、愛車盗難の事実が現実のものとして僕の心に押し寄せる・・・。知らず呼吸は荒くなり、胸は押し潰され
そうに痛い・・・。
半年に及ぶ必死のアルバイトと、現在も続くローンの結果手に入れたNinja・・・。最高の相棒であり、今の僕の全て。
それが、突然にどこかのガキどもの手によって奪いさらわれた・・・。
僕はなす術もなく、頭を抱えてその場にしゃがみこんだ・・・。なおも激しい動悸が僕を襲った・・・。
131:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/04 01:20:20 Shqg/Qn+
程なくして、真っ赤な回転灯が近づいて来た。僕が呼んだパトカーだ。
第三京浜では疎ましい存在である白と黒に塗り分けられた警察車両が、その時ばかりは心強い味方に見えた。全く
調子よいものだと自分でも思う。
すぐに現場で警察官からの事情聴取が始まった。もう一人の警官は、駐輪場周囲の検証を行う。
「じゃあ、カギとチェーンは掛けてあったんだね」
「・・・はい」
パトライトの灯りに誘われて、何事かと近所の視線が深夜にも関わらず集まる。被害者のはずの僕は、まるで犯罪者
のように俯きながら警察官の質問に答えた。
「もしかしたら、そのうち出てくるかも知れないけど・・・でも、どうかなぁ・・・」
警官は他人事のようにそう言った。若い僕はその言葉に少々苛つきを覚えたが、そもそも他人事だ。無理も無い。
当時のバイク盗難は、現在主流の売買を目的としたプロの窃盗団によるものとは毛色が異なり、今回のような暴走族や
未成年者が、自らが乗る為に行うというのがほとんどだった。
その場合、幸運にも手元に戻ったところで傷だらけの廃車寸前という事が多かったし、そもそも手元に戻る確立だって
相当に少ない。
132:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/04 01:21:16 Shqg/Qn+
「カバーはしてなかったんでしょ?ダメだよ~。見えなくするだけでも抑止効果はあるんだよ?」
警官の言う事はいちいち最もで余計に腹が立つ。確かにバイクカバーを買う金が無かったわけではない。しかし、
チェーンロックは掛けてあるから・・・、自分だけは大丈夫・・・、などという甘えがあったことは否定できない・・・。
当時、盗難対象は中型が主流であった為、大型は狙うまいという心の隙もあったかも知れない・・・。
僕は絶望のどん底に居た・・・。もはやこの世に生きている意味すら無いなどと思い始めていた・・・。
しかし、この盗難騒動は発生から一時間もしないうちに実にあっさりと終了するのだ。一人の男の手によって・・・。
現場検証と僕からの聴取も終わりかけていた頃、警官の一人がパトカー無線でなにやら連絡を取り始めた。
「・・・当該車両発見・・・被疑者少年確保・・・了解。」
「はい。直ちに所有者同行し現場に車両確認に向かいます。・・・了解。」
そして、その警官は僕の方に歩いてきて言った。
「見つかったってさ。キミのバイク。品川○○-○○。これキミのバイクのナンバーだろ?」
盗まれた時と同じように、わけもわからず頭が真っ白になっている僕が居た。
133:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/04 01:21:55 Shqg/Qn+
バイクを動かせる装備を持っていくように促された僕は、とりあえずヘルメットとグローブを手にパトカーへ乗った。
期待と不安に落ち着かない僕に警官は言う。
「よかったね~。お兄さん。こんなにすぐに出てくるなんて珍しいよ~」
パトカーは、僕のアパートを出発して15分後、川崎手前のコンビニエンスストアに滑り込んだ。そして、僕は感動の
再会を果たす。
・・・あった・・・。コンビニの明かりに照らされ光り輝く我がNinja・・・。もはやバイクに傷が付いているかどうかなど
どうでも良く、車体が僕の手元に戻っただけでこれ以上望むことなど無かった・・・。
僕は警官に「ありがとうございます」と言ったが、先に現場に到着していた別の警官が言った。
「礼ならこのお兄さんに言いなさい。体を張って取り返してくれたんだから」
警官が目配せする先には、僕がよく知っている男が立っていた・・・。鈴木さんだった・・・。
134:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/04 01:22:59 Shqg/Qn+
「よっ」
「え?あれ?鈴木さん?なんで?」
頭が混乱する事が実に良く続いた日だった・・・。再び落ち着いてあたりを見回すと、CB1100Rがあった。
「明らかにキミのNinjaなのに、明らかにキミじゃないヤツが乗ってたからね~。まさかと思ったけど、尾けてよかったよ」
鈴木さんは笑いながら言った。
鈴木さんと警官の話によると、怪しんだ鈴木さんは数キロの追尾の後、コンビニに立ち寄った暴走族を問い詰めたそうだ。
その内、中型に乗った二人は逃走したそうだが、主犯格のNinjaに乗った少年をその場で取り押さえたらしい。
少年は抵抗したが、鈴木さんは少年を組み倒し、腕をひしぎ、駆けつけた警察に引き渡した。
取り押さえる際、鈴木さんも少年に一撃を見舞われたそうだ。
「大したこと無いさ」
そう言って笑う鈴木さんの左目周辺は紫色に腫れ上がっていた・・・。
135:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/04 01:24:08 Shqg/Qn+
簡単な聴取の後、僕のNinjaは正式に僕の手に戻った。全ては僕の油断が招いた出来事であり、全ては鈴木さんに
よって救われた出来事であった・・・。
・・・僕はこれまでの人生の中で、これほどまでに頼りになる兄貴分を知らない・・・。実の兄には申し訳ないのだが・・・。
CB1100Rを駆るその男は、僕の人間的目標だった。アナゴ君だってそうに違いなかった・・・。カッコ良かった・・・。
Ninjaは破壊されたキーシリンダー以外、全くの無傷だった。
明日は上野に行こう。チェーンロックを3本くらい買おう。そしてもちろんバイクカバーも買おう・・・。オヤジさんのところ
に行って、新しいキーシリンダーも頼まなきゃいけないな。おっと、その前に・・・。
「鈴木さん、腹減りませんか?ラーメン食いに行きましょうよ。僕が奢ります!」
「おっ!いいねぇ!キミの奢りなんて初めてだなぁ。チャーシュー麺頼んでもいい?」
「えぇ~?」
・・・NinjaとCB1100Rは、東京方面に向かって走り出した・・・。
1985年、春。その頃、僕とアナゴ君にはもう一人の「兄」が、確かに居た・・・。
136:774RR
07/02/04 01:27:03 86WXYaer
つ④
137:774RR
07/02/04 01:27:42 86WXYaer
つ④
138:774RR
07/02/04 01:27:59 0/T2uSHk
つ④
139:774RR
07/02/04 01:28:12 86WXYaer
二重スマソ
140:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/02/04 01:36:50 +slnya2A
>>131
>その時ばかりは心強い味方に
わかるわかる・・・調子いいよなあw
というわけで魔棲雄氏他作者各位に
つ④
141:774RR
07/02/04 01:39:21 If5IiRBy
今自分のバイクを見に行ってきた。無事だった。
つ④
142:774RR
07/02/04 01:40:16 NjNPlv7x
鈴木さんテラGJ!
143:774RR
07/02/04 01:53:47 yo8pEi5h
つ④④④④
やっべ!俺もカバーかけてくる!!
144:774RR
07/02/04 02:13:50 Xu2tbcdm
3台目登場か?と思ったけど、鈴木さんGJ
145:774RR
07/02/04 02:40:06 r0ezQnbL
>>134まで読んだときの感想が、そのまま>>135に書いてあった。
僕は兄貴いないんだけど、兄貴いない人が憧れて思い描く兄ちゃんってこんな感じだと思う。
146:774RR
07/02/04 07:18:10 zulZVeQG
鈴木さんオメガカッコヨス!④
147:774RR
07/02/04 08:37:11 4f5HsXt8
ハラハラドキドキだったw つ④
俺のバイクなんて珍にも窃盗団にも目を付けられないけどね。
148:774RR
07/02/04 09:04:20 YlD19Cky
suzukiさんに! つ④
149:774RR
07/02/04 10:02:06 NDr/j6cM
カタナと忍者の次は、バイクカバーが売れそうな予感
150:774RR
07/02/04 10:14:23 b3a9kJyZ
鈴木さん・・・
151:774RR
07/02/04 14:25:09 v7qIjyjb
つ④
俺もNinja見に行った。あったよ~(´Д⊂)バイクカバーかけてロック二つでも心配orz
152:774RR
07/02/04 15:07:19 dtnZYUwY
鈴木さんとの別れが刻一刻と・・・泣けてきた
153:774RR
07/02/04 15:51:59 VGfuZKL6
まさか鈴木さんの魂がNinjaにパイルダーオンしてGSX-R1100になっちゃうのか
154:774RR
07/02/04 17:23:34 6bMn7bv6
こんな時間に泣いたぞ
マスオ乙
155:774RR
07/02/04 18:01:56 Yaz9ne67
>>その時ばかりは心強い味方に
これホントそうだよなぁw いやー身につまされるわ。
156:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/04 18:02:18 m0uktPD2
英一と出会ってから一週間と少し、8月も半ばに入り、俺の部活の練習も後3日で終わる。
ちなみに英一は工学部の4年で、院に進学するので夏休みは基本的に無いらしい。
彼とは不思議とウマが合った、と言えば良いか。俺は人見知りの激しいほうではないが、こんなにもすぐに馴染めるのも珍しい。
バイクと言う共通の話題があったことも理由の一つだが、英一の屈託のなさにどこか安心できるのだ。
「で、フグタのTLはどっかいじったりしないのかい?」
英一は学食のB定食の味噌汁をご飯にぶっかけながら言った。彼は基本的に几帳面な男だが、顔に似合わず、時々そんな豪快なことをする。
「ん~どうだろう?でも俺、英さんみたいにいじれるほど金ないよ?」
そう、英一は学生のくせに何故かまったく金に困っていないらしい。ちょっとした特許の権利を持っていて、ライセンス料が入ってくるとのコトだ。
―正直…うらやましい。
157:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/04 18:03:41 m0uktPD2
「まあ、金が無くても、無いなりにいじれるもんさ。自分のバイクがだんだんオリジナルに変わって行くってのはさ、やっぱ嬉しいよ。
単なるモノじゃなくなっていくって感じ・・・わかるだろう?」
わかる。確かにそれはあるだろう。
「そうだな…どうせなら、見た目や音より、走りが変わるようなカスタムがいいな。足回りとかステダンとか変えてみるかな…」
俺は、うどんをすすりながら答える。TLは高速コーナーは良いが、待ち乗りや回り込むような低速コーナーではハンドリングが重く、
その点がしばらく前から引っかかっていた。
「ステダンか・・・面白いかもしれないな」
「ちと考えてみるよ。そのときは手伝って。」
「OK!フグタのバイク見てみたいし、喜んでてつだわさせていただきまする」
「よろしくたのんます」
158:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/04 18:05:19 m0uktPD2
自宅に帰って、インターネットで調べてみるとオーリンズから適合するステダンが出ていた。減衰を任意にアジャストできるらしい。
値段はネットショップで6万円ほど…正直、俺にとって安くは無い。しかし手が届かない値段でもない…
買うべきか、買わざるべきか…15分ほど髪の毛をかき上げながら迷ったすえ、俺は購入ボタンをクリックした。やはり欲望には逆らえない。
まあ、とりつけて何か問題が出たらヤフオクで売りに出してしまえば、そんなに大きな損にはならないだろうと言う打算もあったわけが。
英一に電話した。
「あ、英さん?俺です。買ったよ、オーリンズのステダン」
「早っ!もうかよ!なんと決断の早い・・・フグタよ、君は男だな!」
「まーね。でさ、週末には来るらしいんだけど、とりつけ手伝ってくれる?」
正直、作業自体は手伝ってもらうまでもないことだが、英一に俺のバイクを見せておきたいのであえて手を貸してもらうことにした。
「OK、じゃどっかで待ち合わせする?俺、バイクで行くけど。」
俺はウチの近くのジャスコを待ち合わせ場所に指定した。ランドマークとしてわかりやすいはずだ。
「英さんさ、ついでにツーリング行こうよ。近場で箱根か伊豆あたり」
「いいよ!じゃあ、朝7時に待ち合わせにしよう!」
「OK!」
―そういうことになった。
159:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/04 18:07:20 m0uktPD2
6時50分。この時間でも残暑の「残」が小憎らしく思えるほどに暑い。休日のこの時間だから道はすいているだろうが、渋滞にはまったら…きつそうだ。
ジャスコの自販機のコーラで喉を潤しつつ、セブンスターを灰にしながら英一を待つ。
タバコが半分も灰にならないうちにFZ1の滑らかな、かつ重厚な排気音が聞こえてきた。
英一。時間通りだ。縁石から腰を上げた。
「おはよ。待った?」
「いや、ばっちり時間通りだよ、英さん。早速行こうか。環八から246を川崎方面に…あとはおいおいナビするよ」
「OK」
俺はメットをかぶり、グラブをはめるとタンデムステップを引き出して跨った。
英一は俺の膝を左手で一つ叩くと小さく前を指差し、ゆっくりとクラッチをつないだ。
実は、バイクの後ろに乗るのはこれが初めてだ。FZのリアシートは広く、英一の操縦はタンデムを意識した十分に滑らかなものであったが、
人の操縦に自分の身体がゆだねられていると言う違和感が、どうにも俺を不安にさせた。
タイミングや判断が、少しずつ違うのだ。クルマの場合、人の助手席に乗っていてもあまり気にならないが、バイクでは一挙手一投足が気になってしまう。
より危険な乗り物だからだろう。英一の運転はおそらく俺よりも上手いが、それでも、自分で運転したほうがいい。
やはり自分の命は自分で握っていたいから。
160:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/04 18:12:04 m0uktPD2
「おお!こいつはすごいな!」
数十分後、いつものガレージ。ハヤブサ、カタナ、R750、そして俺のTL。
4台のバイクが整然と並ぶ光景を見て、英一が歓声を上げた。
「バイクファミリーだな!特に全車スズキというところが、怪しいこだわりを感じさせるね!!」
「うん、R750が兄貴ので、カタナが親父の友人の、で…ハヤブサが死んだ親父のバイク」
「あれ?フグタのお父さんって亡くなったの?」
「うん、癌でね…」
「そうか…じゃ、まあ、さらっとTLいじっちゃおうよ」
英一は微妙な空気を読み取って、すぐに話題を変えてくれた。こういう機微に反応してくれるのは、正直、助かる。
ステアリングダンパーの交換は、基本的には純正をはずし、新しいものを装着するだけのため、20分もかからなかった。
簡単なカスタムではあるが、純正から交換されたオーリングのステダンは強く存在を主張するように光って見えた。
TLがまた少し自分のものになった気がして、陣割とした喜びが浮かび上がってくる。
跨って、ステアリングを左右に振ってみた。
おお、軽い!これは良いかも知れない!実走が待ちきれない!
161:774RR
07/02/04 18:15:30 6bMn7bv6
タラオ乙
162:774RR
07/02/04 18:17:52 4f5HsXt8
>>160
> TLがまた少し自分のものになった気がして、
あるあるw
163:774RR
07/02/04 18:26:45 r0ezQnbL
物語も加速していくぜ。
キテレツはやっぱなんかの特許持ってるのかw
164:774RR
07/02/04 18:28:25 WMiEJO+D
コロ助じゃか?AI搭載されてるし。
「ちょっと」どころでも無い気がするがw
165:774RR
07/02/04 18:34:39 v7qIjyjb
このスレのせいでサザエさんを素直にみれないwww
あのうだつのあがらないマスオさんが隼乗りとは…
166:774RR
07/02/04 18:36:55 r0ezQnbL
>>164
あれが世に出てたら英さんは社会でも有名人になってるんじゃないか?
なら、タラオも気づはずなんではないかと深読みしてみるw
167:774RR
07/02/04 19:00:38 HYk89wW/
タラオは盆栽に目覚めるのか
パーキングでの薀蓄バトルが始まる
168:774RR
07/02/04 19:11:21 qwy150/+
なんか擬人化系のキモオタ漫画っぽくなってきた
169:華
07/02/04 22:14:49 2pq0Kc90
私は五度目の失恋を迎えた日、高校2年も終わる春を迎えていた。
いつも通り家へと向かい、暗く落ち込んだ顔を夕日に向けて顔を上げて家のドアを引いた。
「とうちゃん、ただいま~」といつもと変わらない元気な声で言葉を前に出した。
私は演技派なのかもしれない。5度目の失恋を2時間前にしたばかりで、今度ばかりはと心の底から落ち込んでいた。
そんな私の空元気を父は気付いたか気付いていなかったかはわからない。
もしかしたら気付いていたのかもしれない…
すぐに父は「2丁目の田中さんが駐車場探してるみたいでね、ウチに良い場所ないかと電話があったんだよ 急ぎらしいから田中さんのことろへ急いでやってくれないか?」と父は言い出した。
私は頭の中によぎる彼の事を忘れ…いや、忘れたい一心で頭の中を切り替えた。
「へぇ~ 田中さん車買ったんだね。いいわよ!私、田中さんのご自宅に行って物件紹介してくるわ」
父は3,4つの物件である場所を地図に書き、着替え終わった私に手渡した。
田中さんのご自宅へ電話を入れ「夕飯時で申し訳ないですがこれから伺いますね。」と伝えた。どうやら本当に急ぎらしく
失礼な時間帯にも関わらず「すぐに来て欲しい」と言われ私は田中さんのご自宅へ沈みかけの夕日を見ながら急いだ。
5分ほど歩いただろうか?すでに陽は落ちていた。
暗くなった空を見上げれば、ふと2時間前の出来事を思い出してしまった。そして本当はわかっていたのかもしれない…
「私の未来はきっと彼と…でも…」
人間の脳と言うのはなんて残酷なのか、あの一瞬の出来事をスローモーションの様に思い出させてくる。
私は正直美人ではない。 近所では元気で明るい面倒見の良い娘さんと言われている。
違う、それは違う 私はそんな女では無い。
悩み苦しむ私をよそに朝日ヶ丘駅から聞こえるベルの音が遠くからでもハッキリと耳に入ってきていた。
170:774RR
07/02/04 22:58:31 UzFCBVMt
ここからどう発展するか
私怨
171:華
07/02/04 23:02:21 2pq0Kc90
悩み苦しみ、時にはもだえ、口からはため息しか出てこなかった事を私は今でもあの気持ちは忘れていない。
「一途な女は迷惑なの?」「男勝りな女はダメなの?」「ブタ鼻だから?」
でもあの刹那を目撃した私にとって7年越しの恋は心を打ち砕くかのようにボロボロと、そして溢れる感情と共に涙が流れていった。
どの位時間が過ぎたのかさえわからなかった。ふと気付けば目の前には田中さんの自宅の前に辿り着いていた。
真っ先に目に映ったのは街灯に照らされた真新しい車が田中さんちの前に横付けされていた。
「ごめんくださ~い」と悩み苦しむ私を見せたくない一心でいつもより大きな声でドアを叩いた。
すぐに田中さんがドアから出てきては「ごめんね。わざわざ来てもらっちゃって。早速物件教えてくれないかな?」と急いだ様子だった。
聞けば今日の朝に自宅前に横付けした車を見れば駐車違反の札が丁寧にミラーにぶら下げられていたそうだ。
今までは厳しくなかった取締りも厳しくなり、車購入時には車庫証明が必要になったのはこの出来事から数ヶ月の事だった。
自宅から歩いて1分も満たない場所に田中さんは即決で決め、早速車を移動させる。書類関係は明日の夕方にウチへ記入するとの事だ。
15分も満たない出来事だったが私にとっては彼の事を思い出さずにすんだ時間だった。
挨拶も程々に私は家路へと足を進め出した。街灯が灯る道をトボトボを肩を下げ、タメ息を出しては脳裏に浮かぶあの一瞬を思い出してしまいながら私は歩いていた。
朝日ヶ丘という街は俗に言うベットタウンとして多くの住宅街がある。もちろん数々の商店もあるし小さいながらもデパートだってある。
私の父が経営する不動産屋もそんな街のに構えている。 店は駅から近く家からすぐ裏手には都心から朝日ヶ丘駅へと続く線路があり、
夜間の線路工事には毎度悩まされている。 小・中学校の頃にクラスメイトから「電車の音うるさくない?」なんて事はよく聞かれた。
見慣れた街、見慣れた街路樹、そして家路へと急ぐサラリーマン達 私は少し遠回りして朝日ヶ丘駅から続くメイン通りを歩いて家路に付きたくなった。
この何気ない行動が私にとって再会とそして未知なる世界へのジグソーパズルのピースがはめ込まれていくのを私はまだ知らなかった…
172:華
07/02/04 23:05:39 2pq0Kc90
不動産屋もそんな街のに構えている→×
不動産屋もそんな街に構えている→○
嗚呼…orz
173:774RR
07/02/04 23:39:34 65GlgAIy
>172
キニスンナ イイヨイイヨー
174:774RR
07/02/05 01:24:11 RiF7CmsF
これは!・・・つ④
175:774RR
07/02/05 05:06:59 XRG8PejN
>>華
女としてグッときたよ。
今後に つ④
176:華
07/02/05 09:31:32 efZBU74w
朝日ヶ丘のメイン通りを歩きながら行き来する人やお店、そして通りを走り抜ける車を何考える訳でもなく私は眺めていた。
そうやって私はあの出来事の事を考えない様に無意識に見慣れた風景を眺めていた。
朝日ヶ丘駅から続くメイン通りは距離は短いが片側ニ車線で広い道だ。街路樹が歩道に均等に並べられ、
ビルや商店の間から所々に細い路地が幾つかメイン通りから左右に分かれてゆく。そろそろメイン通りも終わりに近づき、私はメイン通りを左へと路地に曲がった。
すると50mほど先にスラリと長身でベリーショートの女性が私の瞳に写った。その女性はうっすらと照らされたショウウィンドウを眺めていた様子だった。
40m、30m、20m…私はその女性が誰であるか近づくにつれ確信へと変わっていった。
「早川さ~ん」
と10m離れた先から手を振りながら早川さんへ駆け寄った。
「や~!花ちゃ~ん、ひさしぶり~」と言いながら左手に持っていた何かを後ろへ隠しながら右手で手を振ってきた。
「ほぉんと久しぶりねぇ早川さん」というと早川さんも「花ちゃん元気してる?」と気さくに聞いてきた。
177:華
07/02/05 09:32:07 efZBU74w
早川さんとは小学校からの仲で高校からは別々の高校へ歩む事になり中学卒業以来、約2年振りの再会だった。
彼女は中学の頃から長身が170cmを越え細身でスラッとしたスタイル。もちろん私の豚足の様な足では無く、細くてきゃしゃな足。
そのスタイルは高校生になっても変わらず、お洒落でわずかに甘い香りのする女性へと変わっていた位だった。
中学の頃、私達仲良し3人組の中でお洒落に関しては全て彼女のセンスを聞いたりしたくらいで、お洒落には敏感な子で決して流行ものに流されること無く
落ち着いたファッションをいつも気にしていた。
性格は大人しい方で気取る事は無く可愛らしいべリーショートの髪型と広いおでこがチャームポイント。
中学の頃から男子女子共に好かれ人当たりが良く、勉強も中より上くらいでスポーツが得意で活発的な一面を持つ女の子だった。
久しぶりの再会だった。中学を卒業して以来は私は地元の高校で、早川さんは他区の私立高校へ電車通学をしていた。
「なにしてるの?」と私が声を掛けると早川さんは少し戸惑った様子で目をそらしはじめた。
その目線の先には、まだ看板も掲げていないバイク屋のショウウィンドウに薄暗い光に照らされたバイクが飾られていた…
まさか今日の出会いが、まだ看板すらも掲げていないこのお店から始まる未知なる世界のジグソーパズルのひとつのピースに過ぎなかったのは私も早川さんもこの時は知る由も無かった…
178:華
07/02/05 09:33:06 efZBU74w
また夜に書きにきます…orz
179:774RR
07/02/05 09:42:59 /E6EhQ9h
おいおい、気になるよ~
つ④④④④④④④
楽しみにしてま~す☆
180:774RR
07/02/05 14:25:56 gaYCcHQN
つ④
181:774RR
07/02/05 16:16:25 4L/3UUmf
マスオさんが早稲田卒ってのは知ってたが、穴子さんは京大卒らしい...。
URLリンク(ja.wikipedia.org)
海山商事は大手か。
182:774RR
07/02/05 16:17:05 4L/3UUmf
しもた。
直リンしてしもーた。
すんません。
183:774RR
07/02/05 16:47:12 mQISeGAI
直リンしようがしまいがどっちでもいいよ
専ブラ使ってるんだろうし
184:華
07/02/05 18:24:17 fSD1t3iC
そんな彼女を見て「えぇっ!早川さんバイクに乗るの?!」と、咄嗟に声が出た。
「え、い、いや違うの。ちょっと通り掛かって何のお店かな?と思ってたのよ」早川さんは慌ててそう言い出した。
すると立て続けに彼女は落ち着きを取り戻しつつ「久し振りだし、コーヒーでも飲まない? 私ね、この先にある喫茶店によく行くんだぁ」
話を逸らすかのようにも見えたが私も久し振りに会う早川さんともっと話したくなり、早川さんの薦める近くにあるという喫茶店へと歩き出した。
途中、公衆電話から父に電話をして田中さんの件と早川さんとこれから喫茶店に向かう事を伝え帰りが遅くなる事を父に説明した。
父は何やら嬉しそうに「そうか あまり遅くならないようにな とおちゃん夕飯は外で食べてくるから」と言い残して電話を切った。
ウチは父子家庭で母は私が幼少の頃に突然の病気で約1年闘病生活を送ったが、父の拳に1滴…2滴…と流れる涙と共に幼い私と父を残してこの世を去ってしまった。
小学校のいつ頃か忘れてしまったが私は家事を自分からするようになっていた。掃除、洗濯、食事そして父の手伝い。
中学生の頃には近所の子供達の面倒をみてたりしていた時期もあった。
私は父が好き。 母が亡くなってから、がむしゃらに働いて幼い私の面倒を一生懸命してくれた。幼いながらもその父の愛情は伝わってきた。
歩き出して100メートル程の所に喫茶店「珈琲・浦野」という小さなお店に着く。小さなテーブルが4,5つとカウンター席が6席ほどの小さなお店で入ってすぐのカウンターからコーヒーの香りが漂ってくる。
朝日ヶ丘の土地事情に詳しい家柄(仕事柄)と言えども隅から隅まで知り尽くしているわけではない。こんな細い路地裏にモダンな雰囲気の喫茶店があるとは知らなかった。
流石は早川さんと言ったところか…
店内に入るとカウンターを横切りながら「ブルマン2つお願い」と白髭のマスターへ言葉を交わし奥のテーブルへ腰掛けた。
185:華
07/02/05 18:25:05 fSD1t3iC
コーヒーの香り、モダンな作りの店内、ゆったりとしたJazzが小さく流れる… 今まで体験したことの無い雰囲気で、意外にも私はこの雰囲気にすぐ落ち着いた。
店内には白髭のマスターがニコニコした表情で私達のコーヒーを煎れている。カウンターには60代くらいの男性がコーヒーを啜りながら夕刊を見ている。顔は開いた新聞紙で隠れてハッキリとは見えなかった。
印象的だったのが奥に座った私達の壁際にはマスターと思われる人がバンダナを頭に巻いてアメリカンバイクに跨り何処までも続く地平線をバックに笑顔で写っている写真が飾られていた。
写真はどの位前のものだろうか?随分と古ぼけ、そして色褪せていたが決して笑顔が色褪せる様な写真には見えなかった。
「ふふ 良いところでしょ?」と首に巻かれたマフラーをたたみながら早川さんは私に聞いてきた。
朝日ヶ丘にこんな素敵なお店がある事は知りもしなかった。やはり早川さんのセンスは何処か人とは違う。そんな話をすると照れくさそうに早川さんは「そ、そんなことないよ~」
なんて言って恥ずかしそうにしていた。 「はい。おまたせぇ~」と野太く低い声の白髭マスターからブルマンが届けられた。
小さな小さなミルクカップやお口直しの炭酸水まで付いて、眺めているだけでもそれは楽しく感じられるコーヒーだった。
「うわぁ~、こういうの初めて~」と私は素直に言葉に出すとマスターはニコニコしながら野太く低い声で「ゆっくりしていって。 ふふ…二人とも大きくなったね」と言い出した。
驚いた私と早川さんは声を合わせて「えぇ!?」と発してしまった。 マスターはニコニコしながら、ゆっくりとカウンター内に戻り、もう一人のお客に珈琲豆をひきはじめた。
186:華
07/02/05 19:35:05 fSD1t3iC
お互いマスターが誰なのかを思い出してみた。ところが喉の所まで出掛かっていたが結局この日はマスターが誰だったかは思い出せなかった。
久し振りに再開した仲良し三人組の一人、早川さんと2年振りに会った事もあり、すぐに話は高校生活の事やファッションの事を中心に話題は進んでいった。
2時間ほど話し込んだだろうか?話に夢中になり、ふと気付けば店内にはカウンターに座っていたお客は既に居なくなり、私と早川さん、そして流しでカップや器具を洗うマスターの3人だけだった。
お互いの高校生活やファッションの話も終わりかけ早川さんが別の話題を切り出してきた。
「花ちゃん、かおりちゃん覚えてる?」と切り出してきた。
私は「かおり」という女の名前を聞いた瞬間に数時間前の刹那を思い出し、先程まで開いていた豚鼻が小さくキュッと締まって下に顔をうつむけてしまった。
その行為に早川さんは全てに気付いて「あ…ご、ごめん もしかして知ってたの…?」と重く声を前に出してきた。
弱く、そしてなんとも情けない声で「…うん…」と答えた。「…そっか…」と重く返す早川さん。今思えばどんな慰めの言葉よりも「…そっか…」と返してくれた早川さんには感謝している。
変に並べられたありきたりの言葉をいくつも並べられるより「…そっか…」と言ってくれた事にどんなに感情を我慢出来たことか…
どの位私は小さなテーブルに泣き崩れていたかはわからなかった。早川さんはマスターに「アップルパイまだありますか?」と聞いていたのは憶えていた。
泣き疲れてしまった私は、豚っ面を上げた。早川さんはマスターに頼んだ2つのアップルパイの一つを頬張りながら「おいしいよ」と声をかけてきた。
私はアップルパイを手にしようとするが、こみ上げてきた感情が全て流れ出すかのように今日の出来事を全て早川さんに弱く細々とした声で話し始める。
コポッ…コポッ…コポッ…とコーヒーを煎れる音が店内を小さく響き渡っていた…
187:華
07/02/05 20:24:02 fSD1t3iC
数時間前の出来事。
私はいつも通り学校から公園を通り抜け家路に着こうとしていた。広い公園でベンチがいくつか置かれており、広場では子供達が無邪気に紙飛行機を飛ばしていた。
そんな広場を抜け細い並木道を通り抜けようとすると、並木の裏に置かれているベンチに7年越しの想い人「磯野カツオ」と仲良し三人組のひとり「大空かおり」が抱き合っていた。
ベンチ脇には小さなロスマンズカラーのNSR50のヘッドライトが沈黙したまま二人を見守るように鎮座していた。
二人は抱き合い、そして優しい眼差しで見つめ合い唇を交わす。再びお互いを優しい目で見つめ合い小さく名前を呼び合う。
ギュッとカツオはかおりを抱きしめると、カツオの胸に顔をうずくまるように沈めカツオの背中に手を回し優しく包む。
二人は目を細めた。そして、その瞬間、瞬間を大事にするかのように目を閉じる。
私は立ち尽くした…
まだまだ若かった高校二年の私には何が起こったのか?そして何故抱き合っているのが「かおり」なのか? 混乱した…
その時だった! 抱き合い目を閉じていた二人、カツオの胸に顔を沈め目を閉じていたかおりの目が開いた。
その眼差し、その眼光は他ならぬ私に向けられ眉間にシワを寄せるような目つきで睨み付け始めた。
産まれて初めてだったかもしれない。唯一私の人生において「蛇に睨まれた蛙」という体験をさせた女は後にも先にも「かおり」だけだった。
私は更に混乱した…
動こうにも体が思うように動かない。「この場を逃げなくちゃ」という一心だったが足が動かない… かおりは眼光を緩めカツオの唇に再び唇を交わし始めた…
どうにも出来なかった。
そして、おもむろに私のほうへかおりは顔を向け口元でニヤリと笑みを浮かべ始めた。私は走った。何故体が動いたのかはわからなかったが、カバンで豚っ面を隠し走った…
混乱した。錯乱した。恐怖した。 そして…泣いた…
店内では、コポッ…コポッ…コポッ…と、まだコーヒーを煎れる音が響き渡っていた…
188:774RR
07/02/05 21:12:46 SbqIP5+W
淹れる
189:華
07/02/05 21:21:02 fSD1t3iC
話をじっと黙って聞いていた早川さんが、私のタメ息を見計らって声を出した。
「アップルパイ冷めるとおいしさ半減しちゃうよ?」
ようやく人にこの事を話せてホッとしたのか? いや、違う。早川さんに聞いて貰えた事でホッとしたのかもしれない。薦められたアップルパイをでかい口に押し込んだ。
そんな仕草が面白かったのか、早川さんは「クスッ」と笑みをこぼす。「花ちゃん 一口で食べちゃうなんて」と可笑しそうに笑い始めた。
私もそんな早川さんの笑いに釣られてアップルパイが残った口で「グフフ」と笑った。
あの出来事から初めて普通に笑えた瞬間だった。 心が暖かくなった。そして安堵した。たった数時間前の出来事を話しただけなのに安心感が私を包んだ。
そんな笑顔が取り戻せたタイミングを伺うかのように白髭のマスターがコーヒーを私達に差し出してきた。「青春…だね ふふ」とテーブルにコーヒーカップを置くと白髭をいじりながらカウンターに戻ってゆく。
「あ、あの?私達コーヒー頼んでいませんけど?」と早川さんはカウンター内に戻ったマスターに言う。
マスターは右手を開きニコニコしながら「シッシッ」と横に振る。マスターからの差し入れのようだ。落ち込んでいた豚っ面の私を見てコーヒーを煎れてくれたみたいだ。
二人して「ありがとう」と言うとマスターはニコニコしながら流しの食器を洗い出した。
その後「かおり」について溜まり溜まっていた気持ちを吐き出し始めた。その気持ちは温厚な早川さんも中学から豹変したかおりに対して私と同じ様な感情を持っていた事に驚いた。
そこから1時間くらいは「かおり」について語り合っただろうか… どのような話かは今後の出来事に少しづつ、そしてゆっくりと未知なる世界のジグソーパズルのピースとしてはめられていく事になる。
190:華
07/02/05 21:22:33 fSD1t3iC
「やっぱり噂本当だったんだぁ」と急にあっけらかんとした顔で早川さんが言い出す。そして私はまたキュッと豚鼻が締まる。「違う違う。かおりの事じゃなくて磯野君がバイク乗っている事よ」
意外な事だった。 別段、磯野君がバイクに乗っている事など今更どうでもよかった。あの温厚で気さくな早川さんの口から「バイク」という言葉が出て来た事に驚いたのである。
「早川さん、やっぱりバイクに興味あるの?意外~」コーヒーを啜った。 「隠すつもりは無かったんだけどね…私、中型免許取ろうと思っててさっき見かけたお店眺めてた時に花ちゃんに声かけられたんだぁ」と早川さんもコーヒーを啜った。
早川さんがバイクに乗ろうと思った理由は始めてのツーリングの時に聞く事になる。何故かこの時は早川さんの話を聞きたかった気持ちがあった。私は正直バイクという乗り物が嫌いだ。
そんな気持ちを早川さんに言いたくなかったし、自分の話を聞いてくれた早川さんに対してその気持ちは出さない様にする事に徹していた。
当時の私は随分とバイクに対して偏見を持っていた。今でこそ、その話をすると早川さんはお腹を抱えて笑い出してしまうが…(苦笑)
私のバイク嫌いの理由は単純明快だった。「あんな乗り物、不良の乗り物」たったコレだけだった。
191:華
07/02/05 21:23:08 fSD1t3iC
夜も更け時計は午後10時を回っていた。「そろそろ行こっか」と私が言うと早川さんが「花ちゃん、ベル番いくつ?」とポケベルの番号を交換し合った。
会計を済ませ白髭のマスターにコーヒーのお礼を言い店を出ようとした。店を出る前に入り口の壁真上に吊るされた一枚の革ジャンが目に入ってきた。
その革ジャンは古ぼけた感じを見受けられたが黒光りし、何かを感じさせるようなオーラを女ながらに感じた。首襟の真下に拳ほどの刺繍が施されていた。
私は目を細め、その刺繍に目を向けた。日本の伝統文化である「狂言」などに使われる「翁」の能面が施されていた。
早川さんが扉を出ると私も続いて店を出た。喫茶店の閉店時間もあってかマスターも外に出て路上看板を店に入れ始めた。「わたしこっちだから 家に着いたらベル入れとくね」「うん、わたしこっち方面だからここでバイバイだね」
私は店から右へ、早川さんは左へと久し振りの再会を楽しみ別れた。 辺りは暗く寒かったが、全てを話せた私にとって気分は晴れやかだった。
そして私の片隅に残るあの「翁」の革ジャンは数日後に運命的な再会を果たす始まりのピースの一つだったに過ぎなかった…
192:774RR
07/02/05 21:23:35 SbqIP5+W
淹れる煎れる入れるって色々あるけどどれが正しいの?
どれも正しいみたいなんだけど。
と書こうとして送信していた。
193:華
07/02/05 21:24:07 fSD1t3iC
ね…寝ます…orz
194:774RR
07/02/05 21:49:40 J+DC0vHL
>>192
一般的には「入れる」
お茶を「淹れる」
豆を「煎る・炒る」※煎れるとはあまり言わない
195:774RR
07/02/05 21:58:41 k1hucPhR
コーヒーやお茶も
「入りましたよ」
って言うしな・・・
日本語って難しい
196:タラオの中の人
07/02/05 22:26:53 G6SQCUPS
華さんおつ!
筆、はやいね。
俺もがんばりまする。
皆様、すんませんが誤字脱字は脳内変換によってスルーしてもらえませんでしょうか?
俺の文にも多いのは認めますし、出来るだけ気をつけますけど、
そんなに素人文書にて校正に心を配れませんので・・・
私事ながら、本日、部長に辞意を表明してきたです!
どうなることやら・・・
197:774RR
07/02/06 01:51:27 u6nEFvgD
ナニィー!!タラオの中の人の人生にも私怨
198:774RR
07/02/06 02:49:54 3Y1pIaky
豚っ面w
199:774RR
07/02/06 03:32:08 fhmFEtYq
定期あげ
200:774RR
07/02/06 09:47:33 T5PVY7mX
マスオ乙
タラオ乙
201:774RR
07/02/06 11:42:01 FDlEV80c
ハナ乙
202:774RR
07/02/06 16:26:45 8dqo6ICW
>>196
つ④
ついに念願の職業作家デビューですな。
203:華
07/02/06 20:27:35 oPpmbMjd
「煎れる」は「入れる」でしたか…orz
以後気をつけます。
タラオの中の人ありがとうございます。
↓という事で続き↓
204:華
07/02/06 20:28:19 oPpmbMjd
私は喫茶店から暗い夜道をまっすぐと家路に向かった。先程早川さんと出会った看板の掲げられていないバイク屋の前を無意識に通り過ぎた。
ふと早川さんがバイクの免許を取るという言葉を思い出し、バイク屋の前に足を戻した。暗い夜道に店先の街灯とショウウィンドウの小さな灯りにうっすらと光を当てられる様に一台のバイクが置かれていた。
フロントタイヤの脇には説明文の様なプレートが置いてあり私は目を向ける。 そのバイクは「SUZUKI RGV250γ-SP」という名前だった。
「ふ~ん…早川さんがバイク…ねぇ…」と呟いた。不良になりたいのか?などと少しばかり早川さんを心配するお節介な自分がそこに居た。
私にはバイクに何一つ魅力を感じることなく看板の掲げられていないバイク屋を立ち去り家へと向かう。
余談だが、この「RGV250γ-SP」は後に「鬼才・堀川」の愛機として私と一騎討ちを展開する事となる。
家に帰るとまだ父は帰ってない様子だった。私は部屋に戻りベットに流れ込むように寝転んだ。後頭部に両手を組み足を組んで「自分」という人間を考え出した。
カツオとは付き合っていた訳ではない。むしろ毎年バレンタインデーにはチョコを渡し中学2年から毎年告白しフラれること4回目、そして今日で5回目の無言の失恋を迎えた。
高校でみんなと別々の高校へ進学してから私には何かが欠けていた。 何かが失われていた感触があった。そして私はひとつの事に気付き出した。
「弱くなった…」
漠然とした結論に達した。そこから何故弱くなったかを考え出した。30分程考えているうちに睡魔に襲われ始める。その弱さの原因が「正義感」という結論に達して目をゆっくり閉じた。
ポケベルには早川さんから「ファイト」とメッセージが送られていた。
205:華
07/02/06 20:28:49 oPpmbMjd
学校の授業は正直ダルイ。教科書を立てて如何に弁当をバレずに喰うのかが私の日課だった。ボーっと外を眺めたり、舎弟共とたわいの無い話をして下校する。
しかしそんな退屈も家に帰り着替えてから向かう「珈琲・浦野」に向かい、早川さんとコーヒーを啜るのが楽しみとなってきた。
色々な事を話したり軽食メニューを楽しんだり毎日が楽しかった。そんな楽しい日を一週間を過ぎるか過ぎない頃に運命の日を迎える。
随分と話し込んでしまい気付けば閉店の10時を過ぎていた。白髭のマスターと早川さんにおやすみの言葉を交わし暗い夜道へと歩き出した。
あの出来事の事も吹っ切れていたのか気分よく安っぽいポーチをグルグル回しながらテンションはハイだった。
ビィィィィ~ンと後ろから原付が迫っていたが気分の良い私は気付きもしなかった。その時、グルグル回していたポーチが原付にあっさり奪われた。原付に二人乗りした茶髪の高校生達に奪われてしまったのだ。
「あ~ひゃっひゃっ 見たかよ?あの間抜けな豚面~」と言う声と共に原付は抜き去ってゆく。何が起きたのかわからなかった。
カバンが無い事に気付いたのはそれからだった。「ヤラレた…」と手を膝に被せ、うつむいた時ダダダダダダと歯切れの良い音が猛スピードで近づいてくる。
「なんなの…バイクって結局不良の乗り物じゃない…」そう思い顔を上げると後ろから迫っていた歯切れの良い音と共に猛スピードで黒い塊が私を抜き去っていく。「なんなのよ…もうバイクなんてうんざり」そう呟き前方に目を向けた。
206:華
07/02/06 20:30:35 oPpmbMjd
するとガシャーンという音と共に茶髪の二人乗りは蜘蛛の子を散らす様に逃げていった。そこには黒い塊からぼんやりと光る赤いテールランプと横たわった原付が転がっていた。
何が起こったのか理解できず暗い夜道で立ち尽くすことしか私には出来なかった。
暫くすると黒い塊がUターンしてゆっくりとトトトトトという可愛らしい音を立ててコチラに向かって来た。私は怖くなり目をつぶってしまう。そのバイクは私の前に止まり出す。「怖い…」これがその時の素直な気持ちだったのを覚えている。
ゆっくりと一歩一歩近づいてくる… ギュ、ギュというレザーの音と共に… 私は怖いもの見たさで目を開けた。
目の前の人間の姿に恐怖した。全身黒の革で覆われヘルメットは骸骨のような黒のヘルメットだった。シールドはミラーシールドで中は誰だかわからず私の怯える豚っ面が映り込んでいた。異形とも感じる姿の人間はギュっと音と共に右手から私のポーチを差し出してきた。
その右手のグローブには、異形な姿にはとても似つかない真っ赤な色が鮮やかな椿のワッペンが縫い付けられていた。
震え上がる私を見てその異形な姿の人間はそっとポーチを足元に置きゆっくり振り向きバイクに跨り出す。すると襟元には「翁」の刺繍が施されていた。気付いた時にはタタタタタという音と共に走り去っていってしまった。
それが私と≪椿翁(つばきおう)≫との最初の出会いであり、私と早川さんの師父となる人との出会いだった…
207:華
07/02/06 20:34:04 oPpmbMjd
長ったらしくてスミマセン…orz
【出会い編】はこれで終わりです。次からは【海鮮組バイト編】になります…orz
208:774RR
07/02/06 20:43:01 i0GSFwxc
いえいえ、なかなかオモロイよ。④
209:774RR
07/02/06 20:53:20 lPHtRsgs
華さんも紫煙私怨!
続き楽しみです
210:774RR
07/02/06 22:07:09 B4XE1m3O
オモロイ!
211:774RR
07/02/06 23:13:03 PlTF3yId
つ④
いいんじゃないの~
212:774RR
07/02/06 23:43:33 G1N4GSLq
>>203
煎れるでも間違ってないんだよ。
なんかとにかくググレば分かると思うけど
お茶とかの種類とかいれかたによって漢字が違う。
コーヒーの場合は抽出方法でちょっと違うらしい。
お茶の場合は点れるとかって書く場合もあるし
気にすることじゃないよ。
213:774RR
07/02/07 00:05:36 XOUusNwE
イイヨイイヨ~
214:774RR
07/02/07 00:56:00 1JVWWOno
松本イーヨ
215:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:06:30 eLANBHm+
水道で手を洗い、ウーロン茶で喉を潤し、タバコを一服するとツーリングの準備に取り掛かった。
とはいっても日帰りのため余計な荷物は無く、念のためバイクの各所を点検するだけだ。
「ルートはどうするか?」
チェーンの張り具合を確かめながら英一が聞いてきた。
「ん~そうだな、東名と小田厚で箱根まで行って、ターンパイクから伊豆スカとおって後は時間見て適当に…って感じでどう?」
「それでいいよ。帰りは、海沿い来て、西湘バイパスから湘南とおって、後は適当に高速とか16号でいいな」
「それでいこう。あ、バナナワニ園が見たい。これ覚えといて」
「…OK…」
大まかな計画だがこんなもので十分だ。バイクならではの機動性で、いかようにも変更できる。
そんな風にして、俺たちは出発した。
216:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:07:34 eLANBHm+
走り出して、すぐにステダンの交換による効果がわかった。
ものすごく軽い!街乗りの倒しこみがすごく楽で、小回りも今までよりも遥に良くなった気がする。左右に小さく、何度も蛇行してみたりして、軽快な動きを楽しむ。
TLの本来のハンドリングはこういうものか…小さなカスタム一つでこんなにも変わるとは…乗り始めてから数ヶ月たち、自分のバイクをある程度理解したつもりだったが、
それでもまだ色々な顔が隠されていて、ちょっとしたことからそれが覗けたことが、なんとなくうれしかった。
217:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:08:33 eLANBHm+
しばらくして、東名に乗った。リーダーは俺が取る。英一は右後方へ。
ベンチレーションから吹き込む熱風は肺に熱く、エンジンの廃熱がジーンズを通して下半身を焼くが、「これがバイクだ」と割り切ってしまえば何とでもない。要は気の持ちようだ。
クルマの流れは休日としては悪くなく、140km/h程度で巡航することができた。
しばらくすると、車群を抜けた。
前方車はるか遠く、車種の判別はもちろん、その色すらわからない。俺は右後方を振り返りながら一気にギアを3つ落とし、前に向き直ると、一気に右手首を翻した!
一瞬、リアタイヤの空転に車体を悶えさせ、TL1000Rは弾かれたように加速していく。右ミラーに視線を飛ばすと、一瞬遅れて英一のFZ1が追尾してくるのがわかった。
180…シフトアップ…200…シフトアップ…240km/h…、真夏の太陽に熱せられたアスファルトから立ち昇る陽炎を吹き飛ばし、2台は加速する。
FZは、右ミラーの中でほとんど位置を動かさない。さすがに…速いな。
オーリンズのステダンは、この速度では軽すぎ、安定性に欠ける気がした。状況に合わせてアジャストするべきなのだろう。
しばらくすると、前方をおそらく100km./h以上の速度で走っているはずのクルマが、まるでこちらに向かってバックしてくるかのように、みるみるうちに接近してきた。
FZのライトがハイビームに切り替わる。同様に俺もハイビームにすると、俺たちの存在に気がついたライトバンがウィンカーを出しながら、中央車線へと緩慢に逃げ始めた。
与えられつつあるわずかな車線、わずかな空間を、黒と蒼の弾丸が切り裂いてゆく…
218:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:09:37 eLANBHm+
厚木インターで東名から小田原厚木道路につないだ。
ここからは俺に代わり英一が前に出る。軽快な道路ではあるが覆面パトカーや白バイの非常に多いルートであることを、英一もわかっているらしく、120km/hほどでセダンに気を配りながら淡々と流していく。
途中、高速上にもかかわらず牧場の牛糞の匂いが漂ってきたりして、一瞬ごとに都会の喧騒から遠ざかっていることを再認識させられる。
ヘルメット越しに感じる風のにおい…これもバイクならではの体験か。
219:774RR
07/02/07 01:10:25 g5kktIJO
リアルタイムktkr!!!
つ④
220:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:10:58 eLANBHm+
小田原厚木道路を走り、20分程度で終点の風祭まで達する。
一瞬だけ一般道を通り、給油した後、箱根ターンパイクへ…はじめて走る道。今日は贅沢に有料道路三昧。
ターンパイク前の小さなパーキングで小休止した。
「ふ~フグタ、結構飛ばすじゃないか?」
と、耳栓をはずしながら言う英一。
「東名だろ?危なっかしかったか?」
「いや、異常と言えば異常だけど…まあ絶対に無理な速度ってわけじゃなかったし、路面もよくて交通量も少なかったからな。
後ろから見ていても不安は感じなかったよ」
苦笑気味に言う英一。
「だけど、フグタさ、免許とってから4ヶ月しかたってないだろ?僕なんかそのころは怖くて200キロなんて出せなかったからな!」
「俺だって、怖くないわけじゃないけど、まあ、ちょっと遊んでみたくてさ。
新しくつけたステダンの高速域での動きも確認しておきたかったしね。
それに初心者と言ったって、俺もう7千キロは走ってるぜ?」
そう、怖くなかったわけじゃないが、なんとなく大丈夫であることが”わかって”いた。あくまでなんとなくで、理由は無いが…
「そか、で、ターンパイクはどうする?フグタが前走る?」
「いや、英さん先走ってよ。俺は先輩殿のラインを盗ませていただきますだよ。ただ…ちんたら走ってると…ぶち抜くぜ?」
セブンスターを咥えてニヤリと笑って見せた。
「…おう、やって観やがれ!小僧っ子がっ!」
カルピスサワーを口に当てながら英一が返す。
彼はタバコを吸わない。
221:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:12:06 eLANBHm+
ターンパイクの料金所を過ぎると、すぐに上りになっている。
傾斜はそれなりにあり、路面も一般道よりは綺麗なため平均速度も高いため、すぐに耳が痛くなる。頻繁につばを飲み込んだ。
料金所から数キロは周囲に畑もあるが、すぐにそれも途切れ、手の入っていない原生林の中を走る一本道になった。
綺麗な空気を吸いたくて、RR4のシールドを上げる。
標高が高くなるにつれて冷えてくる風が顔に当たり、かすかな草いきれの香りを鼻腔に届ける。気持ちいい…
英一のFZはリプレイスマフラー特有の低い音を響かせながら、80~90kmをほどで淡々と走っていた。ブレーキランプはほとんど点灯しない…
222:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:13:40 eLANBHm+
俺がついていくのを感じて、英一は徐々にペースを上げ始めていた。
人それぞれの個性や性格が走りに現れるのだろうか。
英一のライディングは非常に滑らかで、ロスのない、まさに教科書的な美しいものだったが、時にびっくりするほど大胆なラインをとることもあった。
ブラインドコーナーの手前では十分に減速し、対向車線にも絶対にはみださないが、
クリップを過ぎコーナーの先の視界を得たならば対向車線まで含めた道幅いっぱいを使って全開加速。
スローイン・ファストアウトの基本?リアをスライドさせながら莫大な運動エネルギーを蓄積していくFZを観ていると、教習所で習った言葉など頭から吹き飛んでしまう。
ジャッジャァァァ・・・英一が自作したステップに取り付けられたバンクセンサーから飛び散る火花。
旋回により生じる遠心力とバンクするバイクとライダーの自重、アスファルトから伝えられる垂直抗力、路面を喰う両輪の摩擦、エンジンが生み出す推進力…前へ!
すべての力が、一つの力点においてバランスしていた。綺麗だった。
美しいから、速い・・・
―そう,感じた。
223:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:14:52 eLANBHm+
英一のライディングを悠長に眺めている余裕がなくなってきた。彼のペースがとんでもなく上がってきたからだ。
クソッ!速い!喰らいつく。あっという間に迫り来る左コーナーにフル加速から一気にフルブレーキ。右手の中指と薬指を絞り込む。スネーキング。リアが少し振られる。一つシフトダウン。
体勢を作り、踵と右足の内腿でバイクをホールドしつつコーナーの先に視線を飛ばす。短いストレートの先に英一の背中が見えた。ステップをこする。ようやく回頭。我慢していたスロットルを開放した。
インジェクションから供給されたガソリンに呼応して二つのピストンは膨大な回転力を生み出し、チェーンを経てタイヤを歪ませ、そしてアスファルトへと伝達されていく。
加速!
コーナーからコーナーへと、作業の繰り返し・・・しかし状況は一つとして全く同じ処理を許さない。
ヘルメットを叩く風が運んでくる恐怖を押し殺し、バンプに小さく弾かれて空転するリアタイヤから背に走る悪寒をなだめ、FZを追う。
少しずつ遠くなる英一の背…だめか…あきらめかけて左コーナーを曲がったとき
― 紺碧の空へ突き刺さるかのごとく伸び上がるストレートがそこにあった・・・
快晴の蒼さに溶け込む、はてしなく長い天国への階段。その先にはなにがあるのか・・・
中ほどを、空よりも蒼いFZが突き進んでいく・・・まだそれほど離されていない・・・
― もう少しだけ…
俺はスロットルを握りなおし、3速から4速へシフトアップしながら、スクリーンに深く身を隠した。
224:タラオの中の人
07/02/07 01:18:08 eLANBHm+
明日出張で朝早いのに、こんな時間までカキコしている意志の弱い俺に乾杯。
誰か、起こしてくれる人もとむ。
225:774RR
07/02/07 01:19:50 g5kktIJO
リアルタイムのお礼に起こしてあげたいがw
226:タラオの中の人
07/02/07 01:23:01 eLANBHm+
お心頂いておきまする。
おやすみなさい。。。
227:774RR
07/02/07 01:24:52 kMVcy8LN
どうやって起こせとw
中の人はTLオーナーだったのかな
それにライディングの腕前もなかなかのものなのであろう、実際に走る人でないとああいう文章書けないよね
228:774RR
07/02/07 01:24:54 g5kktIJO
この前のカキコ見たかぎり大変そうだけど仕事がんがれ!
また続き期待してます、ではオヤスミ ノシ
229:774RR
07/02/07 03:31:28 9gMFgx55
ちょwwwカルピスサワーwww
飲酒運転www
230:774RR
07/02/07 03:51:46 knuI8zLG
は?
231:774RR
07/02/07 04:20:52 71VniDfS
そこはソーダに脳内変換するところだろ…常識的に考えて…
232:774RR
07/02/07 11:10:13 ds4JDP+v
ソーダソーダソーダ!!
タラオ乙
233:774RR
07/02/07 12:25:19 44XjmbRn
サワーだソーダだグチャグチャうるせえなぁ!
素直にプラッシーに汁!
234:774RR
07/02/07 12:36:24 3NYMiUF2
ちょ、米屋で休憩か
つ④
235:sage
07/02/07 13:46:45 6tcTY5IN
数十年前のあの日、父親が確かに見たあの光景を
時を経て息子が目の当たりにしたんですね…
心が震えました!
236:774RR
07/02/07 15:00:11 s+E/vWkA
>>235
それなんてラピュタ?
237:774RR
07/02/07 16:32:59 9cp00owJ
>>236
確かにw
238:774RR
07/02/07 20:21:50 5wWZbNtv
>美しいから、速い
名言だね。
239:華
07/02/07 20:38:43 Ac13A9UU
>>212
補足有難うございます。 今後から「入れる」で表記して読み易くします…orz
タラオの中の人
今気付きましたが…辞表っすか…orz
Easy Go!
↓続き↓
240:華
07/02/07 20:39:25 Ac13A9UU
【海鮮組・バイト編】
自宅に無事帰ると今日も父は外食ついでに何処に出かけているのか、家には居なかった。
部屋に入ると机の椅子を引いて腰掛けていた。あの後、足元のポーチを手に取ってから不思議と恐怖感は無く別の感情が湧き出ていた…その感情が何なのかを考え込んでしまう。
突然ポーチを奪われ風の様に現れた異形の者。私の嫌いな不良とはまた違う… その姿、その行為からは「正義」が感じられた。
世間一般的に「正義」と言えば警察だろう。だが私は警察には良いイメージが無い。何処か「正義」という言葉を巧みに使い弱者をいたぶる偏見が私には当時からあった。
しかしどうだろうか?あの異形の者からは「絶対正義」という今の私に「失われたモノ」が、「絶対正義の形」が、そして「行為」とし、あの瞬間にはあった。
そして私は一つの決心をし、部屋を出て電話を手にし「*2*2…」と早川さんへ深夜遅くに決意のメッセージを送る。
そう、「私もバイクに乗る」と…
一つの決心をしベットに潜り込み目を閉じる。浮かび上がってきたのは能面の「翁」 バッと飛び起き異形の者が誰だか理解した。
喫茶「珈琲・浦野」の白髭のマスターである事に私は気が付いた。明日学校が終わったらお礼を言いに真っ先に向かおうと決意し、ベットに入り目を閉じた。
241:華
07/02/07 20:40:11 Ac13A9UU
学校の授業が純粋にかったるい…特に英語は嫌いだ。そんな英語の授業中に早川さんからバイブレーションでポケベルが震える。「見せたいものがあるんだ」というメッセージだった。
退屈な授業が全て終わり、帰り際に「いつものところで」と学校の公衆電話から早川さんへメッセージを送る。急いで帰宅しカバンを放り投げ、スグに家を飛び出した。
ふと我に返り「とおちゃん、ごめん今日も遅くなる」というと父は「あぁ、わかった」と微笑しながら私を見送った。
喫茶店に入るや否や白髭のマスターにデカイ声で豚足をピンと伸ばし「昨日は有難うございました!」と全身全霊を込めて深くお辞儀をした。
白髭のマスターは不思議そうな顔をして野太く低い声で「んん? 花ちゃん、どうしたんだい?」と言ってきた。咄嗟に私は「えっ?!」と声を出し、入り口真上に吊るされている革ジャンを確かめる様に目を向けた。
が、革ジャンが無い…
えぇ?っと混乱する私は昨日の事を細かく白髭のマスターに話すと「カッ!カッ!カッ!」と野太く低い声で笑う。更に私は混乱すると白髭のマスターはもう一言添える。
「そうかい、花ちゃん。アレはね 古い友のモノなんだよ」と優しく言う。誰なのかと聞くと、いつものニコニコした顔で流しのコーヒーカップを洗い出していた。当然昨日の異形の者は白髭のマスターとばかり思い込んでいた私は呆然とした。
その呆然としたタイミングで早川さんが「やっほ~二人とも~、マスタ~ブルマンお願い~ あ、あとアップルパイまだ残ってたら2つ~」と声をかけてきた。
242:華
07/02/07 20:40:41 Ac13A9UU
いつもの奥の小さなテーブルに腰掛け、私は昨日の出来事を早川さんに話し出した。すると早川さんは「へぇ~、カッコイイ!素敵な事じゃな~い」と瞳をキラキラさせていた。
「そうそう、見せたいのってコレコレ!ジャ~ン」と間髪いれずカバンから取り出したのは、ヨレヨレになった今月出たばかりの「オートバイ」という本だった。
実は早川さんはバイクに乗る事を親にはまだ言ってないそうだ。それもそうだ。もうすぐ高校3年になる私達が進路を決めなければならないこの時期にバイクに乗るなんて、まして女の子がバイクに乗るというのは親として目をつぶる訳には行かないからだ。
そういう理由から常にカバンの中にこの本を忍ばせていたし、私と久し振りに出会った時右手に持っていたこの本を後ろに隠したそうだ。
私は近所には顔が広いのは周知の事だが、その顔の広さと情報量から中学生までは人間拡声器と呼ばれるくらいでそんな理由からだと思うが、あの時早川さんは慌てて雑誌を隠したんだろう。
そんな人間拡声器の私も高校にあがってから父に「他人の家の事情や出来事をあまり噂するもんじゃない」と本気で叱られた事があり、父の言葉を守り人間拡声器の異名もいつしか近所から消えていた。
ヨレヨレになったオートバイという本を二人で広げアレコレ話が弾む。全く興味の無かったバイクにのめり込んだ瞬間だった。国産4メーカーを知り排気量によって免許が違う事もこの日初めて知った。
夢中になったし今までに無い楽しさを味わい、そしてコーヒーを味わった。白髭のマスター手作りのアップルパイを二人で頬張りつつ、中型免許取得の話に盛り上がりはピークに達した。
そして未知なる世界のジグソーパズルのひとつのピースが、またはめ込まれて行く…
243:華
07/02/07 20:50:54 Ac13A9UU
うぅ…
家に帰り着替えてから向かう「珈琲・浦野」に向かい、早川さんとコーヒーを啜るのが=×
家に帰り着替えてから「珈琲・浦野」に向かい、早川さんとコーヒーを啜るのが=○
嗚呼…反省して寝ます…orz
244:774RR
07/02/07 21:31:22 VzdTJGW3
細かい事は木に竹刀、続きGo!
245:774RR
07/02/07 21:49:57 Cq3aBoJi
脳内で自動補正されてるから気付かない♪
246:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/02/07 22:33:26 ezWAUsaE
>>242
人間拡声器にワロスwwwでもまっとうな親としてはやはり叱るだろうな。
つ④
247:774RR
07/02/07 23:25:43 1JVWWOno
イイヨイイヨ~
248:774RR
07/02/07 23:52:08 KIHFxklQ
花ちゃんイイ
249:タラオの中の人
07/02/07 23:53:09 eLANBHm+
華さんいいね。展開が楽しみです。
>>227
俺は、物語の中でまだ一度も走らせたことがない、
カツオ兄さんのバイクに乗って魔棲。
ちなみにタイヤの端っこはあまっとりまつw
250:774RR
07/02/08 00:29:59 YQ+Kv2O/
>>220
飲酒運転?
251:774RR
07/02/08 00:34:25 n6S8w4U1
>>諸作者方
つ④
俺も小説を書いてみたが、なかなか難しい。
思うように話が進まないというか・・・。
そのうちうpします。
252:774RR
07/02/08 02:03:23 WWzZftVr
>>251つ④
どんな話だろ~な~wktkwktk
253:774RR
07/02/08 02:53:37 gLabw3lj
華沢さん
254:774RR
07/02/08 03:39:34 FbNojpVu
ちょっとちょっと華さん、巧すぎませんか?
ベル番…
同世代ですね
本職ですか?女性?でもマスオさんの世界観ととても似てるし
255:774RR
07/02/08 09:41:54 wX52153j
>>254
華さんも魔棲雄さんも、アニメサザエさんを見ても全く違和感ないくらいキャラをつかんでいて、
なおかつキャラのおっている経験なんかにグッときたり共感出来たりするんですよね。
256:774RR
07/02/08 10:17:00 FizoKU4c
花ちゃん豚豚言い過ぎw
いい意味で。
257:774RR
07/02/08 19:34:49 v98Az5m+
作者の皆様、いつも楽しく読ませていただいてます。
良い作品ばかりで、こんなところで言いたくは無いの
ですが、出来ればもう少し改行を考えて頂けませんか?
せっかくの良い作品が読み辛くて・・・
258:タラオの中の人
07/02/08 19:49:27 kOU1mnSV
>>257
これでも改行は考えているです。
しかしながら、文脈等や、個々人のPC環境により、
なかなかご期待に沿うのは難しいのであります。
それなりのところで、妥協していただきたく。。。
文字のサイズを小にすると読みやすくなるかもです。
259:華
07/02/08 20:02:06 lzT1tyvH
>>251
早川「ファイト」
>>257
改行は考えてはおりますがタラオの中の人氏の言われる通り、
妥協して頂くしか…orz
ご期待に沿えれば何よりですが…宜しくです…orz{ゴメン)
260:華
07/02/08 20:13:43 lzT1tyvH
↓続き↓
261:華
07/02/08 20:15:08 lzT1tyvH
中型免許を取るには2つの難関がある事を早川さんは真剣に言い出した。楽しい話に浮かれていた私に急に現実に戻された感じだった。
ひとつはバイクに乗るのに親に隠して乗る訳にはいかない為、親を説得しなければならない。そしてもう一つは免許とバイクのお金だった。
明日の休みにでも早川さんは親を説得する事を試みるらしく、私も明日父を説得してみる事にした。コレさえ乗り切れば後はお金の問題だけだ。
そのお金の工面は既に早川さんは去年の秋頃から動き出していたらしく既に免許取得するまでのお金(合宿込み)は今も続けているアパレル関連の土日のアルバイトと少しずつ貯めたお小遣いで用意できているとの事。
免許取得は夏休みの合宿を使っての取得を考えているらしく私もその考えに便乗した。 しかし問題は私にあった。
私は憧れ始めたバイクにはお小遣いだけでは到底免許とバイクには手が届かなかった。「花沢不動産の一人娘」と聞けば、いかにも持っていそうなイメージがあるかもしれないが
父はお金には厳しい人で小さい頃からお年玉をくれる福島の叔父さんや親戚の方々の多額なお年玉は全て私の花嫁資金として別口座に預金していた。
ならばと私は本格的にアルバイトをしようと考え始めた。明日、父にバイクの事とアルバイトの事を正直に話そうと決意した。
262:華
07/02/08 20:15:48 lzT1tyvH
中型免許取得に夢中になるあまり、異形の者が誰なのか?と、考える事をずっと忘れてしまう事になる。
「そうだ!思い出した!」と早川さんは突然話題を切り替えてきた。「この間、磯野君と中島君がピザ屋の配達やってるの見たよ」と言ってきた。
もう磯野君の事は吹っ切れたし、バイクに夢中な私は早川さんと「珈琲・浦野」でバイクの事を話すのが楽しくて仕方が無かった。
どうやらピザ屋で相変わらず無茶をしているらしく、バイクを壊して今はカブでピザ配達をしているらしい。 プライベートでは磯野君がNSR50、中島君がモンキーに乗っているという事も早川さんの友人情報から初めて知った。
まだ彼らも中型免許を取得してないが、後に「磯野カツオ」「中島ひろし」 そして…あの女「大空かおり」が首都高に名を轟かせるのはまだまだ先の話になる。
バイクの免許を取る。アルバイトをする。なんだか胸がドキドキし始めると同時にワクワクしてきた。早川さんも同じらしく二人で顔を微笑ませながら「オートバイ」を開いては知識を詰め始めてゆく。
モダンな雰囲気の店内で小さく流れるJazz。カウンターには60台位の男が夕刊を広げていたり、近所の主婦連中がドリフの笑い声を発しながら談笑していたり、
店内を優しい瞳でニコニコ見つめながら白髭のマスターは珈琲豆を焙煎している。この喫茶店は本当に安らぐ場所だと改めて感じ、10日ほどの出来事が退屈な高校2年を埋めるかのように充実していた。
胸躍る感情と容量の少ない私の脳に対して膨大なバイクの知識が抑えきれないまま「珈琲・浦野」を後にし、早川さんと別れ家路に着いた。相変わらず父は今日も私が眠りに付くまで帰ってくる事はなかった。