07/02/04 01:24:08 Shqg/Qn+
簡単な聴取の後、僕のNinjaは正式に僕の手に戻った。全ては僕の油断が招いた出来事であり、全ては鈴木さんに
よって救われた出来事であった・・・。
・・・僕はこれまでの人生の中で、これほどまでに頼りになる兄貴分を知らない・・・。実の兄には申し訳ないのだが・・・。
CB1100Rを駆るその男は、僕の人間的目標だった。アナゴ君だってそうに違いなかった・・・。カッコ良かった・・・。
Ninjaは破壊されたキーシリンダー以外、全くの無傷だった。
明日は上野に行こう。チェーンロックを3本くらい買おう。そしてもちろんバイクカバーも買おう・・・。オヤジさんのところ
に行って、新しいキーシリンダーも頼まなきゃいけないな。おっと、その前に・・・。
「鈴木さん、腹減りませんか?ラーメン食いに行きましょうよ。僕が奢ります!」
「おっ!いいねぇ!キミの奢りなんて初めてだなぁ。チャーシュー麺頼んでもいい?」
「えぇ~?」
・・・NinjaとCB1100Rは、東京方面に向かって走り出した・・・。
1985年、春。その頃、僕とアナゴ君にはもう一人の「兄」が、確かに居た・・・。
136:774RR
07/02/04 01:27:03 86WXYaer
つ④
137:774RR
07/02/04 01:27:42 86WXYaer
つ④
138:774RR
07/02/04 01:27:59 0/T2uSHk
つ④
139:774RR
07/02/04 01:28:12 86WXYaer
二重スマソ
140:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/02/04 01:36:50 +slnya2A
>>131
>その時ばかりは心強い味方に
わかるわかる・・・調子いいよなあw
というわけで魔棲雄氏他作者各位に
つ④
141:774RR
07/02/04 01:39:21 If5IiRBy
今自分のバイクを見に行ってきた。無事だった。
つ④
142:774RR
07/02/04 01:40:16 NjNPlv7x
鈴木さんテラGJ!
143:774RR
07/02/04 01:53:47 yo8pEi5h
つ④④④④
やっべ!俺もカバーかけてくる!!
144:774RR
07/02/04 02:13:50 Xu2tbcdm
3台目登場か?と思ったけど、鈴木さんGJ
145:774RR
07/02/04 02:40:06 r0ezQnbL
>>134まで読んだときの感想が、そのまま>>135に書いてあった。
僕は兄貴いないんだけど、兄貴いない人が憧れて思い描く兄ちゃんってこんな感じだと思う。
146:774RR
07/02/04 07:18:10 zulZVeQG
鈴木さんオメガカッコヨス!④
147:774RR
07/02/04 08:37:11 4f5HsXt8
ハラハラドキドキだったw つ④
俺のバイクなんて珍にも窃盗団にも目を付けられないけどね。
148:774RR
07/02/04 09:04:20 YlD19Cky
suzukiさんに! つ④
149:774RR
07/02/04 10:02:06 NDr/j6cM
カタナと忍者の次は、バイクカバーが売れそうな予感
150:774RR
07/02/04 10:14:23 b3a9kJyZ
鈴木さん・・・
151:774RR
07/02/04 14:25:09 v7qIjyjb
つ④
俺もNinja見に行った。あったよ~(´Д⊂)バイクカバーかけてロック二つでも心配orz
152:774RR
07/02/04 15:07:19 dtnZYUwY
鈴木さんとの別れが刻一刻と・・・泣けてきた
153:774RR
07/02/04 15:51:59 VGfuZKL6
まさか鈴木さんの魂がNinjaにパイルダーオンしてGSX-R1100になっちゃうのか
154:774RR
07/02/04 17:23:34 6bMn7bv6
こんな時間に泣いたぞ
マスオ乙
155:774RR
07/02/04 18:01:56 Yaz9ne67
>>その時ばかりは心強い味方に
これホントそうだよなぁw いやー身につまされるわ。
156:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/04 18:02:18 m0uktPD2
英一と出会ってから一週間と少し、8月も半ばに入り、俺の部活の練習も後3日で終わる。
ちなみに英一は工学部の4年で、院に進学するので夏休みは基本的に無いらしい。
彼とは不思議とウマが合った、と言えば良いか。俺は人見知りの激しいほうではないが、こんなにもすぐに馴染めるのも珍しい。
バイクと言う共通の話題があったことも理由の一つだが、英一の屈託のなさにどこか安心できるのだ。
「で、フグタのTLはどっかいじったりしないのかい?」
英一は学食のB定食の味噌汁をご飯にぶっかけながら言った。彼は基本的に几帳面な男だが、顔に似合わず、時々そんな豪快なことをする。
「ん~どうだろう?でも俺、英さんみたいにいじれるほど金ないよ?」
そう、英一は学生のくせに何故かまったく金に困っていないらしい。ちょっとした特許の権利を持っていて、ライセンス料が入ってくるとのコトだ。
―正直…うらやましい。
157:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/04 18:03:41 m0uktPD2
「まあ、金が無くても、無いなりにいじれるもんさ。自分のバイクがだんだんオリジナルに変わって行くってのはさ、やっぱ嬉しいよ。
単なるモノじゃなくなっていくって感じ・・・わかるだろう?」
わかる。確かにそれはあるだろう。
「そうだな…どうせなら、見た目や音より、走りが変わるようなカスタムがいいな。足回りとかステダンとか変えてみるかな…」
俺は、うどんをすすりながら答える。TLは高速コーナーは良いが、待ち乗りや回り込むような低速コーナーではハンドリングが重く、
その点がしばらく前から引っかかっていた。
「ステダンか・・・面白いかもしれないな」
「ちと考えてみるよ。そのときは手伝って。」
「OK!フグタのバイク見てみたいし、喜んでてつだわさせていただきまする」
「よろしくたのんます」
158:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/04 18:05:19 m0uktPD2
自宅に帰って、インターネットで調べてみるとオーリンズから適合するステダンが出ていた。減衰を任意にアジャストできるらしい。
値段はネットショップで6万円ほど…正直、俺にとって安くは無い。しかし手が届かない値段でもない…
買うべきか、買わざるべきか…15分ほど髪の毛をかき上げながら迷ったすえ、俺は購入ボタンをクリックした。やはり欲望には逆らえない。
まあ、とりつけて何か問題が出たらヤフオクで売りに出してしまえば、そんなに大きな損にはならないだろうと言う打算もあったわけが。
英一に電話した。
「あ、英さん?俺です。買ったよ、オーリンズのステダン」
「早っ!もうかよ!なんと決断の早い・・・フグタよ、君は男だな!」
「まーね。でさ、週末には来るらしいんだけど、とりつけ手伝ってくれる?」
正直、作業自体は手伝ってもらうまでもないことだが、英一に俺のバイクを見せておきたいのであえて手を貸してもらうことにした。
「OK、じゃどっかで待ち合わせする?俺、バイクで行くけど。」
俺はウチの近くのジャスコを待ち合わせ場所に指定した。ランドマークとしてわかりやすいはずだ。
「英さんさ、ついでにツーリング行こうよ。近場で箱根か伊豆あたり」
「いいよ!じゃあ、朝7時に待ち合わせにしよう!」
「OK!」
―そういうことになった。
159:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/04 18:07:20 m0uktPD2
6時50分。この時間でも残暑の「残」が小憎らしく思えるほどに暑い。休日のこの時間だから道はすいているだろうが、渋滞にはまったら…きつそうだ。
ジャスコの自販機のコーラで喉を潤しつつ、セブンスターを灰にしながら英一を待つ。
タバコが半分も灰にならないうちにFZ1の滑らかな、かつ重厚な排気音が聞こえてきた。
英一。時間通りだ。縁石から腰を上げた。
「おはよ。待った?」
「いや、ばっちり時間通りだよ、英さん。早速行こうか。環八から246を川崎方面に…あとはおいおいナビするよ」
「OK」
俺はメットをかぶり、グラブをはめるとタンデムステップを引き出して跨った。
英一は俺の膝を左手で一つ叩くと小さく前を指差し、ゆっくりとクラッチをつないだ。
実は、バイクの後ろに乗るのはこれが初めてだ。FZのリアシートは広く、英一の操縦はタンデムを意識した十分に滑らかなものであったが、
人の操縦に自分の身体がゆだねられていると言う違和感が、どうにも俺を不安にさせた。
タイミングや判断が、少しずつ違うのだ。クルマの場合、人の助手席に乗っていてもあまり気にならないが、バイクでは一挙手一投足が気になってしまう。
より危険な乗り物だからだろう。英一の運転はおそらく俺よりも上手いが、それでも、自分で運転したほうがいい。
やはり自分の命は自分で握っていたいから。
160:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/04 18:12:04 m0uktPD2
「おお!こいつはすごいな!」
数十分後、いつものガレージ。ハヤブサ、カタナ、R750、そして俺のTL。
4台のバイクが整然と並ぶ光景を見て、英一が歓声を上げた。
「バイクファミリーだな!特に全車スズキというところが、怪しいこだわりを感じさせるね!!」
「うん、R750が兄貴ので、カタナが親父の友人の、で…ハヤブサが死んだ親父のバイク」
「あれ?フグタのお父さんって亡くなったの?」
「うん、癌でね…」
「そうか…じゃ、まあ、さらっとTLいじっちゃおうよ」
英一は微妙な空気を読み取って、すぐに話題を変えてくれた。こういう機微に反応してくれるのは、正直、助かる。
ステアリングダンパーの交換は、基本的には純正をはずし、新しいものを装着するだけのため、20分もかからなかった。
簡単なカスタムではあるが、純正から交換されたオーリングのステダンは強く存在を主張するように光って見えた。
TLがまた少し自分のものになった気がして、陣割とした喜びが浮かび上がってくる。
跨って、ステアリングを左右に振ってみた。
おお、軽い!これは良いかも知れない!実走が待ちきれない!
161:774RR
07/02/04 18:15:30 6bMn7bv6
タラオ乙
162:774RR
07/02/04 18:17:52 4f5HsXt8
>>160
> TLがまた少し自分のものになった気がして、
あるあるw
163:774RR
07/02/04 18:26:45 r0ezQnbL
物語も加速していくぜ。
キテレツはやっぱなんかの特許持ってるのかw
164:774RR
07/02/04 18:28:25 WMiEJO+D
コロ助じゃか?AI搭載されてるし。
「ちょっと」どころでも無い気がするがw
165:774RR
07/02/04 18:34:39 v7qIjyjb
このスレのせいでサザエさんを素直にみれないwww
あのうだつのあがらないマスオさんが隼乗りとは…
166:774RR
07/02/04 18:36:55 r0ezQnbL
>>164
あれが世に出てたら英さんは社会でも有名人になってるんじゃないか?
なら、タラオも気づはずなんではないかと深読みしてみるw
167:774RR
07/02/04 19:00:38 HYk89wW/
タラオは盆栽に目覚めるのか
パーキングでの薀蓄バトルが始まる
168:774RR
07/02/04 19:11:21 qwy150/+
なんか擬人化系のキモオタ漫画っぽくなってきた
169:華
07/02/04 22:14:49 2pq0Kc90
私は五度目の失恋を迎えた日、高校2年も終わる春を迎えていた。
いつも通り家へと向かい、暗く落ち込んだ顔を夕日に向けて顔を上げて家のドアを引いた。
「とうちゃん、ただいま~」といつもと変わらない元気な声で言葉を前に出した。
私は演技派なのかもしれない。5度目の失恋を2時間前にしたばかりで、今度ばかりはと心の底から落ち込んでいた。
そんな私の空元気を父は気付いたか気付いていなかったかはわからない。
もしかしたら気付いていたのかもしれない…
すぐに父は「2丁目の田中さんが駐車場探してるみたいでね、ウチに良い場所ないかと電話があったんだよ 急ぎらしいから田中さんのことろへ急いでやってくれないか?」と父は言い出した。
私は頭の中によぎる彼の事を忘れ…いや、忘れたい一心で頭の中を切り替えた。
「へぇ~ 田中さん車買ったんだね。いいわよ!私、田中さんのご自宅に行って物件紹介してくるわ」
父は3,4つの物件である場所を地図に書き、着替え終わった私に手渡した。
田中さんのご自宅へ電話を入れ「夕飯時で申し訳ないですがこれから伺いますね。」と伝えた。どうやら本当に急ぎらしく
失礼な時間帯にも関わらず「すぐに来て欲しい」と言われ私は田中さんのご自宅へ沈みかけの夕日を見ながら急いだ。
5分ほど歩いただろうか?すでに陽は落ちていた。
暗くなった空を見上げれば、ふと2時間前の出来事を思い出してしまった。そして本当はわかっていたのかもしれない…
「私の未来はきっと彼と…でも…」
人間の脳と言うのはなんて残酷なのか、あの一瞬の出来事をスローモーションの様に思い出させてくる。
私は正直美人ではない。 近所では元気で明るい面倒見の良い娘さんと言われている。
違う、それは違う 私はそんな女では無い。
悩み苦しむ私をよそに朝日ヶ丘駅から聞こえるベルの音が遠くからでもハッキリと耳に入ってきていた。
170:774RR
07/02/04 22:58:31 UzFCBVMt
ここからどう発展するか
私怨
171:華
07/02/04 23:02:21 2pq0Kc90
悩み苦しみ、時にはもだえ、口からはため息しか出てこなかった事を私は今でもあの気持ちは忘れていない。
「一途な女は迷惑なの?」「男勝りな女はダメなの?」「ブタ鼻だから?」
でもあの刹那を目撃した私にとって7年越しの恋は心を打ち砕くかのようにボロボロと、そして溢れる感情と共に涙が流れていった。
どの位時間が過ぎたのかさえわからなかった。ふと気付けば目の前には田中さんの自宅の前に辿り着いていた。
真っ先に目に映ったのは街灯に照らされた真新しい車が田中さんちの前に横付けされていた。
「ごめんくださ~い」と悩み苦しむ私を見せたくない一心でいつもより大きな声でドアを叩いた。
すぐに田中さんがドアから出てきては「ごめんね。わざわざ来てもらっちゃって。早速物件教えてくれないかな?」と急いだ様子だった。
聞けば今日の朝に自宅前に横付けした車を見れば駐車違反の札が丁寧にミラーにぶら下げられていたそうだ。
今までは厳しくなかった取締りも厳しくなり、車購入時には車庫証明が必要になったのはこの出来事から数ヶ月の事だった。
自宅から歩いて1分も満たない場所に田中さんは即決で決め、早速車を移動させる。書類関係は明日の夕方にウチへ記入するとの事だ。
15分も満たない出来事だったが私にとっては彼の事を思い出さずにすんだ時間だった。
挨拶も程々に私は家路へと足を進め出した。街灯が灯る道をトボトボを肩を下げ、タメ息を出しては脳裏に浮かぶあの一瞬を思い出してしまいながら私は歩いていた。
朝日ヶ丘という街は俗に言うベットタウンとして多くの住宅街がある。もちろん数々の商店もあるし小さいながらもデパートだってある。
私の父が経営する不動産屋もそんな街のに構えている。 店は駅から近く家からすぐ裏手には都心から朝日ヶ丘駅へと続く線路があり、
夜間の線路工事には毎度悩まされている。 小・中学校の頃にクラスメイトから「電車の音うるさくない?」なんて事はよく聞かれた。
見慣れた街、見慣れた街路樹、そして家路へと急ぐサラリーマン達 私は少し遠回りして朝日ヶ丘駅から続くメイン通りを歩いて家路に付きたくなった。
この何気ない行動が私にとって再会とそして未知なる世界へのジグソーパズルのピースがはめ込まれていくのを私はまだ知らなかった…
172:華
07/02/04 23:05:39 2pq0Kc90
不動産屋もそんな街のに構えている→×
不動産屋もそんな街に構えている→○
嗚呼…orz
173:774RR
07/02/04 23:39:34 65GlgAIy
>172
キニスンナ イイヨイイヨー
174:774RR
07/02/05 01:24:11 RiF7CmsF
これは!・・・つ④
175:774RR
07/02/05 05:06:59 XRG8PejN
>>華
女としてグッときたよ。
今後に つ④
176:華
07/02/05 09:31:32 efZBU74w
朝日ヶ丘のメイン通りを歩きながら行き来する人やお店、そして通りを走り抜ける車を何考える訳でもなく私は眺めていた。
そうやって私はあの出来事の事を考えない様に無意識に見慣れた風景を眺めていた。
朝日ヶ丘駅から続くメイン通りは距離は短いが片側ニ車線で広い道だ。街路樹が歩道に均等に並べられ、
ビルや商店の間から所々に細い路地が幾つかメイン通りから左右に分かれてゆく。そろそろメイン通りも終わりに近づき、私はメイン通りを左へと路地に曲がった。
すると50mほど先にスラリと長身でベリーショートの女性が私の瞳に写った。その女性はうっすらと照らされたショウウィンドウを眺めていた様子だった。
40m、30m、20m…私はその女性が誰であるか近づくにつれ確信へと変わっていった。
「早川さ~ん」
と10m離れた先から手を振りながら早川さんへ駆け寄った。
「や~!花ちゃ~ん、ひさしぶり~」と言いながら左手に持っていた何かを後ろへ隠しながら右手で手を振ってきた。
「ほぉんと久しぶりねぇ早川さん」というと早川さんも「花ちゃん元気してる?」と気さくに聞いてきた。
177:華
07/02/05 09:32:07 efZBU74w
早川さんとは小学校からの仲で高校からは別々の高校へ歩む事になり中学卒業以来、約2年振りの再会だった。
彼女は中学の頃から長身が170cmを越え細身でスラッとしたスタイル。もちろん私の豚足の様な足では無く、細くてきゃしゃな足。
そのスタイルは高校生になっても変わらず、お洒落でわずかに甘い香りのする女性へと変わっていた位だった。
中学の頃、私達仲良し3人組の中でお洒落に関しては全て彼女のセンスを聞いたりしたくらいで、お洒落には敏感な子で決して流行ものに流されること無く
落ち着いたファッションをいつも気にしていた。
性格は大人しい方で気取る事は無く可愛らしいべリーショートの髪型と広いおでこがチャームポイント。
中学の頃から男子女子共に好かれ人当たりが良く、勉強も中より上くらいでスポーツが得意で活発的な一面を持つ女の子だった。
久しぶりの再会だった。中学を卒業して以来は私は地元の高校で、早川さんは他区の私立高校へ電車通学をしていた。
「なにしてるの?」と私が声を掛けると早川さんは少し戸惑った様子で目をそらしはじめた。
その目線の先には、まだ看板も掲げていないバイク屋のショウウィンドウに薄暗い光に照らされたバイクが飾られていた…
まさか今日の出会いが、まだ看板すらも掲げていないこのお店から始まる未知なる世界のジグソーパズルのひとつのピースに過ぎなかったのは私も早川さんもこの時は知る由も無かった…
178:華
07/02/05 09:33:06 efZBU74w
また夜に書きにきます…orz
179:774RR
07/02/05 09:42:59 /E6EhQ9h
おいおい、気になるよ~
つ④④④④④④④
楽しみにしてま~す☆
180:774RR
07/02/05 14:25:56 gaYCcHQN
つ④
181:774RR
07/02/05 16:16:25 4L/3UUmf
マスオさんが早稲田卒ってのは知ってたが、穴子さんは京大卒らしい...。
URLリンク(ja.wikipedia.org)
海山商事は大手か。
182:774RR
07/02/05 16:17:05 4L/3UUmf
しもた。
直リンしてしもーた。
すんません。
183:774RR
07/02/05 16:47:12 mQISeGAI
直リンしようがしまいがどっちでもいいよ
専ブラ使ってるんだろうし
184:華
07/02/05 18:24:17 fSD1t3iC
そんな彼女を見て「えぇっ!早川さんバイクに乗るの?!」と、咄嗟に声が出た。
「え、い、いや違うの。ちょっと通り掛かって何のお店かな?と思ってたのよ」早川さんは慌ててそう言い出した。
すると立て続けに彼女は落ち着きを取り戻しつつ「久し振りだし、コーヒーでも飲まない? 私ね、この先にある喫茶店によく行くんだぁ」
話を逸らすかのようにも見えたが私も久し振りに会う早川さんともっと話したくなり、早川さんの薦める近くにあるという喫茶店へと歩き出した。
途中、公衆電話から父に電話をして田中さんの件と早川さんとこれから喫茶店に向かう事を伝え帰りが遅くなる事を父に説明した。
父は何やら嬉しそうに「そうか あまり遅くならないようにな とおちゃん夕飯は外で食べてくるから」と言い残して電話を切った。
ウチは父子家庭で母は私が幼少の頃に突然の病気で約1年闘病生活を送ったが、父の拳に1滴…2滴…と流れる涙と共に幼い私と父を残してこの世を去ってしまった。
小学校のいつ頃か忘れてしまったが私は家事を自分からするようになっていた。掃除、洗濯、食事そして父の手伝い。
中学生の頃には近所の子供達の面倒をみてたりしていた時期もあった。
私は父が好き。 母が亡くなってから、がむしゃらに働いて幼い私の面倒を一生懸命してくれた。幼いながらもその父の愛情は伝わってきた。
歩き出して100メートル程の所に喫茶店「珈琲・浦野」という小さなお店に着く。小さなテーブルが4,5つとカウンター席が6席ほどの小さなお店で入ってすぐのカウンターからコーヒーの香りが漂ってくる。
朝日ヶ丘の土地事情に詳しい家柄(仕事柄)と言えども隅から隅まで知り尽くしているわけではない。こんな細い路地裏にモダンな雰囲気の喫茶店があるとは知らなかった。
流石は早川さんと言ったところか…
店内に入るとカウンターを横切りながら「ブルマン2つお願い」と白髭のマスターへ言葉を交わし奥のテーブルへ腰掛けた。
185:華
07/02/05 18:25:05 fSD1t3iC
コーヒーの香り、モダンな作りの店内、ゆったりとしたJazzが小さく流れる… 今まで体験したことの無い雰囲気で、意外にも私はこの雰囲気にすぐ落ち着いた。
店内には白髭のマスターがニコニコした表情で私達のコーヒーを煎れている。カウンターには60代くらいの男性がコーヒーを啜りながら夕刊を見ている。顔は開いた新聞紙で隠れてハッキリとは見えなかった。
印象的だったのが奥に座った私達の壁際にはマスターと思われる人がバンダナを頭に巻いてアメリカンバイクに跨り何処までも続く地平線をバックに笑顔で写っている写真が飾られていた。
写真はどの位前のものだろうか?随分と古ぼけ、そして色褪せていたが決して笑顔が色褪せる様な写真には見えなかった。
「ふふ 良いところでしょ?」と首に巻かれたマフラーをたたみながら早川さんは私に聞いてきた。
朝日ヶ丘にこんな素敵なお店がある事は知りもしなかった。やはり早川さんのセンスは何処か人とは違う。そんな話をすると照れくさそうに早川さんは「そ、そんなことないよ~」
なんて言って恥ずかしそうにしていた。 「はい。おまたせぇ~」と野太く低い声の白髭マスターからブルマンが届けられた。
小さな小さなミルクカップやお口直しの炭酸水まで付いて、眺めているだけでもそれは楽しく感じられるコーヒーだった。
「うわぁ~、こういうの初めて~」と私は素直に言葉に出すとマスターはニコニコしながら野太く低い声で「ゆっくりしていって。 ふふ…二人とも大きくなったね」と言い出した。
驚いた私と早川さんは声を合わせて「えぇ!?」と発してしまった。 マスターはニコニコしながら、ゆっくりとカウンター内に戻り、もう一人のお客に珈琲豆をひきはじめた。
186:華
07/02/05 19:35:05 fSD1t3iC
お互いマスターが誰なのかを思い出してみた。ところが喉の所まで出掛かっていたが結局この日はマスターが誰だったかは思い出せなかった。
久し振りに再開した仲良し三人組の一人、早川さんと2年振りに会った事もあり、すぐに話は高校生活の事やファッションの事を中心に話題は進んでいった。
2時間ほど話し込んだだろうか?話に夢中になり、ふと気付けば店内にはカウンターに座っていたお客は既に居なくなり、私と早川さん、そして流しでカップや器具を洗うマスターの3人だけだった。
お互いの高校生活やファッションの話も終わりかけ早川さんが別の話題を切り出してきた。
「花ちゃん、かおりちゃん覚えてる?」と切り出してきた。
私は「かおり」という女の名前を聞いた瞬間に数時間前の刹那を思い出し、先程まで開いていた豚鼻が小さくキュッと締まって下に顔をうつむけてしまった。
その行為に早川さんは全てに気付いて「あ…ご、ごめん もしかして知ってたの…?」と重く声を前に出してきた。
弱く、そしてなんとも情けない声で「…うん…」と答えた。「…そっか…」と重く返す早川さん。今思えばどんな慰めの言葉よりも「…そっか…」と返してくれた早川さんには感謝している。
変に並べられたありきたりの言葉をいくつも並べられるより「…そっか…」と言ってくれた事にどんなに感情を我慢出来たことか…
どの位私は小さなテーブルに泣き崩れていたかはわからなかった。早川さんはマスターに「アップルパイまだありますか?」と聞いていたのは憶えていた。
泣き疲れてしまった私は、豚っ面を上げた。早川さんはマスターに頼んだ2つのアップルパイの一つを頬張りながら「おいしいよ」と声をかけてきた。
私はアップルパイを手にしようとするが、こみ上げてきた感情が全て流れ出すかのように今日の出来事を全て早川さんに弱く細々とした声で話し始める。
コポッ…コポッ…コポッ…とコーヒーを煎れる音が店内を小さく響き渡っていた…
187:華
07/02/05 20:24:02 fSD1t3iC
数時間前の出来事。
私はいつも通り学校から公園を通り抜け家路に着こうとしていた。広い公園でベンチがいくつか置かれており、広場では子供達が無邪気に紙飛行機を飛ばしていた。
そんな広場を抜け細い並木道を通り抜けようとすると、並木の裏に置かれているベンチに7年越しの想い人「磯野カツオ」と仲良し三人組のひとり「大空かおり」が抱き合っていた。
ベンチ脇には小さなロスマンズカラーのNSR50のヘッドライトが沈黙したまま二人を見守るように鎮座していた。
二人は抱き合い、そして優しい眼差しで見つめ合い唇を交わす。再びお互いを優しい目で見つめ合い小さく名前を呼び合う。
ギュッとカツオはかおりを抱きしめると、カツオの胸に顔をうずくまるように沈めカツオの背中に手を回し優しく包む。
二人は目を細めた。そして、その瞬間、瞬間を大事にするかのように目を閉じる。
私は立ち尽くした…
まだまだ若かった高校二年の私には何が起こったのか?そして何故抱き合っているのが「かおり」なのか? 混乱した…
その時だった! 抱き合い目を閉じていた二人、カツオの胸に顔を沈め目を閉じていたかおりの目が開いた。
その眼差し、その眼光は他ならぬ私に向けられ眉間にシワを寄せるような目つきで睨み付け始めた。
産まれて初めてだったかもしれない。唯一私の人生において「蛇に睨まれた蛙」という体験をさせた女は後にも先にも「かおり」だけだった。
私は更に混乱した…
動こうにも体が思うように動かない。「この場を逃げなくちゃ」という一心だったが足が動かない… かおりは眼光を緩めカツオの唇に再び唇を交わし始めた…
どうにも出来なかった。
そして、おもむろに私のほうへかおりは顔を向け口元でニヤリと笑みを浮かべ始めた。私は走った。何故体が動いたのかはわからなかったが、カバンで豚っ面を隠し走った…
混乱した。錯乱した。恐怖した。 そして…泣いた…
店内では、コポッ…コポッ…コポッ…と、まだコーヒーを煎れる音が響き渡っていた…
188:774RR
07/02/05 21:12:46 SbqIP5+W
淹れる
189:華
07/02/05 21:21:02 fSD1t3iC
話をじっと黙って聞いていた早川さんが、私のタメ息を見計らって声を出した。
「アップルパイ冷めるとおいしさ半減しちゃうよ?」
ようやく人にこの事を話せてホッとしたのか? いや、違う。早川さんに聞いて貰えた事でホッとしたのかもしれない。薦められたアップルパイをでかい口に押し込んだ。
そんな仕草が面白かったのか、早川さんは「クスッ」と笑みをこぼす。「花ちゃん 一口で食べちゃうなんて」と可笑しそうに笑い始めた。
私もそんな早川さんの笑いに釣られてアップルパイが残った口で「グフフ」と笑った。
あの出来事から初めて普通に笑えた瞬間だった。 心が暖かくなった。そして安堵した。たった数時間前の出来事を話しただけなのに安心感が私を包んだ。
そんな笑顔が取り戻せたタイミングを伺うかのように白髭のマスターがコーヒーを私達に差し出してきた。「青春…だね ふふ」とテーブルにコーヒーカップを置くと白髭をいじりながらカウンターに戻ってゆく。
「あ、あの?私達コーヒー頼んでいませんけど?」と早川さんはカウンター内に戻ったマスターに言う。
マスターは右手を開きニコニコしながら「シッシッ」と横に振る。マスターからの差し入れのようだ。落ち込んでいた豚っ面の私を見てコーヒーを煎れてくれたみたいだ。
二人して「ありがとう」と言うとマスターはニコニコしながら流しの食器を洗い出した。
その後「かおり」について溜まり溜まっていた気持ちを吐き出し始めた。その気持ちは温厚な早川さんも中学から豹変したかおりに対して私と同じ様な感情を持っていた事に驚いた。
そこから1時間くらいは「かおり」について語り合っただろうか… どのような話かは今後の出来事に少しづつ、そしてゆっくりと未知なる世界のジグソーパズルのピースとしてはめられていく事になる。
190:華
07/02/05 21:22:33 fSD1t3iC
「やっぱり噂本当だったんだぁ」と急にあっけらかんとした顔で早川さんが言い出す。そして私はまたキュッと豚鼻が締まる。「違う違う。かおりの事じゃなくて磯野君がバイク乗っている事よ」
意外な事だった。 別段、磯野君がバイクに乗っている事など今更どうでもよかった。あの温厚で気さくな早川さんの口から「バイク」という言葉が出て来た事に驚いたのである。
「早川さん、やっぱりバイクに興味あるの?意外~」コーヒーを啜った。 「隠すつもりは無かったんだけどね…私、中型免許取ろうと思っててさっき見かけたお店眺めてた時に花ちゃんに声かけられたんだぁ」と早川さんもコーヒーを啜った。
早川さんがバイクに乗ろうと思った理由は始めてのツーリングの時に聞く事になる。何故かこの時は早川さんの話を聞きたかった気持ちがあった。私は正直バイクという乗り物が嫌いだ。
そんな気持ちを早川さんに言いたくなかったし、自分の話を聞いてくれた早川さんに対してその気持ちは出さない様にする事に徹していた。
当時の私は随分とバイクに対して偏見を持っていた。今でこそ、その話をすると早川さんはお腹を抱えて笑い出してしまうが…(苦笑)
私のバイク嫌いの理由は単純明快だった。「あんな乗り物、不良の乗り物」たったコレだけだった。
191:華
07/02/05 21:23:08 fSD1t3iC
夜も更け時計は午後10時を回っていた。「そろそろ行こっか」と私が言うと早川さんが「花ちゃん、ベル番いくつ?」とポケベルの番号を交換し合った。
会計を済ませ白髭のマスターにコーヒーのお礼を言い店を出ようとした。店を出る前に入り口の壁真上に吊るされた一枚の革ジャンが目に入ってきた。
その革ジャンは古ぼけた感じを見受けられたが黒光りし、何かを感じさせるようなオーラを女ながらに感じた。首襟の真下に拳ほどの刺繍が施されていた。
私は目を細め、その刺繍に目を向けた。日本の伝統文化である「狂言」などに使われる「翁」の能面が施されていた。
早川さんが扉を出ると私も続いて店を出た。喫茶店の閉店時間もあってかマスターも外に出て路上看板を店に入れ始めた。「わたしこっちだから 家に着いたらベル入れとくね」「うん、わたしこっち方面だからここでバイバイだね」
私は店から右へ、早川さんは左へと久し振りの再会を楽しみ別れた。 辺りは暗く寒かったが、全てを話せた私にとって気分は晴れやかだった。
そして私の片隅に残るあの「翁」の革ジャンは数日後に運命的な再会を果たす始まりのピースの一つだったに過ぎなかった…
192:774RR
07/02/05 21:23:35 SbqIP5+W
淹れる煎れる入れるって色々あるけどどれが正しいの?
どれも正しいみたいなんだけど。
と書こうとして送信していた。
193:華
07/02/05 21:24:07 fSD1t3iC
ね…寝ます…orz
194:774RR
07/02/05 21:49:40 J+DC0vHL
>>192
一般的には「入れる」
お茶を「淹れる」
豆を「煎る・炒る」※煎れるとはあまり言わない
195:774RR
07/02/05 21:58:41 k1hucPhR
コーヒーやお茶も
「入りましたよ」
って言うしな・・・
日本語って難しい
196:タラオの中の人
07/02/05 22:26:53 G6SQCUPS
華さんおつ!
筆、はやいね。
俺もがんばりまする。
皆様、すんませんが誤字脱字は脳内変換によってスルーしてもらえませんでしょうか?
俺の文にも多いのは認めますし、出来るだけ気をつけますけど、
そんなに素人文書にて校正に心を配れませんので・・・
私事ながら、本日、部長に辞意を表明してきたです!
どうなることやら・・・
197:774RR
07/02/06 01:51:27 u6nEFvgD
ナニィー!!タラオの中の人の人生にも私怨
198:774RR
07/02/06 02:49:54 3Y1pIaky
豚っ面w
199:774RR
07/02/06 03:32:08 fhmFEtYq
定期あげ
200:774RR
07/02/06 09:47:33 T5PVY7mX
マスオ乙
タラオ乙
201:774RR
07/02/06 11:42:01 FDlEV80c
ハナ乙
202:774RR
07/02/06 16:26:45 8dqo6ICW
>>196
つ④
ついに念願の職業作家デビューですな。
203:華
07/02/06 20:27:35 oPpmbMjd
「煎れる」は「入れる」でしたか…orz
以後気をつけます。
タラオの中の人ありがとうございます。
↓という事で続き↓
204:華
07/02/06 20:28:19 oPpmbMjd
私は喫茶店から暗い夜道をまっすぐと家路に向かった。先程早川さんと出会った看板の掲げられていないバイク屋の前を無意識に通り過ぎた。
ふと早川さんがバイクの免許を取るという言葉を思い出し、バイク屋の前に足を戻した。暗い夜道に店先の街灯とショウウィンドウの小さな灯りにうっすらと光を当てられる様に一台のバイクが置かれていた。
フロントタイヤの脇には説明文の様なプレートが置いてあり私は目を向ける。 そのバイクは「SUZUKI RGV250γ-SP」という名前だった。
「ふ~ん…早川さんがバイク…ねぇ…」と呟いた。不良になりたいのか?などと少しばかり早川さんを心配するお節介な自分がそこに居た。
私にはバイクに何一つ魅力を感じることなく看板の掲げられていないバイク屋を立ち去り家へと向かう。
余談だが、この「RGV250γ-SP」は後に「鬼才・堀川」の愛機として私と一騎討ちを展開する事となる。
家に帰るとまだ父は帰ってない様子だった。私は部屋に戻りベットに流れ込むように寝転んだ。後頭部に両手を組み足を組んで「自分」という人間を考え出した。
カツオとは付き合っていた訳ではない。むしろ毎年バレンタインデーにはチョコを渡し中学2年から毎年告白しフラれること4回目、そして今日で5回目の無言の失恋を迎えた。
高校でみんなと別々の高校へ進学してから私には何かが欠けていた。 何かが失われていた感触があった。そして私はひとつの事に気付き出した。
「弱くなった…」
漠然とした結論に達した。そこから何故弱くなったかを考え出した。30分程考えているうちに睡魔に襲われ始める。その弱さの原因が「正義感」という結論に達して目をゆっくり閉じた。
ポケベルには早川さんから「ファイト」とメッセージが送られていた。
205:華
07/02/06 20:28:49 oPpmbMjd
学校の授業は正直ダルイ。教科書を立てて如何に弁当をバレずに喰うのかが私の日課だった。ボーっと外を眺めたり、舎弟共とたわいの無い話をして下校する。
しかしそんな退屈も家に帰り着替えてから向かう「珈琲・浦野」に向かい、早川さんとコーヒーを啜るのが楽しみとなってきた。
色々な事を話したり軽食メニューを楽しんだり毎日が楽しかった。そんな楽しい日を一週間を過ぎるか過ぎない頃に運命の日を迎える。
随分と話し込んでしまい気付けば閉店の10時を過ぎていた。白髭のマスターと早川さんにおやすみの言葉を交わし暗い夜道へと歩き出した。
あの出来事の事も吹っ切れていたのか気分よく安っぽいポーチをグルグル回しながらテンションはハイだった。
ビィィィィ~ンと後ろから原付が迫っていたが気分の良い私は気付きもしなかった。その時、グルグル回していたポーチが原付にあっさり奪われた。原付に二人乗りした茶髪の高校生達に奪われてしまったのだ。
「あ~ひゃっひゃっ 見たかよ?あの間抜けな豚面~」と言う声と共に原付は抜き去ってゆく。何が起きたのかわからなかった。
カバンが無い事に気付いたのはそれからだった。「ヤラレた…」と手を膝に被せ、うつむいた時ダダダダダダと歯切れの良い音が猛スピードで近づいてくる。
「なんなの…バイクって結局不良の乗り物じゃない…」そう思い顔を上げると後ろから迫っていた歯切れの良い音と共に猛スピードで黒い塊が私を抜き去っていく。「なんなのよ…もうバイクなんてうんざり」そう呟き前方に目を向けた。
206:華
07/02/06 20:30:35 oPpmbMjd
するとガシャーンという音と共に茶髪の二人乗りは蜘蛛の子を散らす様に逃げていった。そこには黒い塊からぼんやりと光る赤いテールランプと横たわった原付が転がっていた。
何が起こったのか理解できず暗い夜道で立ち尽くすことしか私には出来なかった。
暫くすると黒い塊がUターンしてゆっくりとトトトトトという可愛らしい音を立ててコチラに向かって来た。私は怖くなり目をつぶってしまう。そのバイクは私の前に止まり出す。「怖い…」これがその時の素直な気持ちだったのを覚えている。
ゆっくりと一歩一歩近づいてくる… ギュ、ギュというレザーの音と共に… 私は怖いもの見たさで目を開けた。
目の前の人間の姿に恐怖した。全身黒の革で覆われヘルメットは骸骨のような黒のヘルメットだった。シールドはミラーシールドで中は誰だかわからず私の怯える豚っ面が映り込んでいた。異形とも感じる姿の人間はギュっと音と共に右手から私のポーチを差し出してきた。
その右手のグローブには、異形な姿にはとても似つかない真っ赤な色が鮮やかな椿のワッペンが縫い付けられていた。
震え上がる私を見てその異形な姿の人間はそっとポーチを足元に置きゆっくり振り向きバイクに跨り出す。すると襟元には「翁」の刺繍が施されていた。気付いた時にはタタタタタという音と共に走り去っていってしまった。
それが私と≪椿翁(つばきおう)≫との最初の出会いであり、私と早川さんの師父となる人との出会いだった…
207:華
07/02/06 20:34:04 oPpmbMjd
長ったらしくてスミマセン…orz
【出会い編】はこれで終わりです。次からは【海鮮組バイト編】になります…orz
208:774RR
07/02/06 20:43:01 i0GSFwxc
いえいえ、なかなかオモロイよ。④
209:774RR
07/02/06 20:53:20 lPHtRsgs
華さんも紫煙私怨!
続き楽しみです
210:774RR
07/02/06 22:07:09 B4XE1m3O
オモロイ!
211:774RR
07/02/06 23:13:03 PlTF3yId
つ④
いいんじゃないの~
212:774RR
07/02/06 23:43:33 G1N4GSLq
>>203
煎れるでも間違ってないんだよ。
なんかとにかくググレば分かると思うけど
お茶とかの種類とかいれかたによって漢字が違う。
コーヒーの場合は抽出方法でちょっと違うらしい。
お茶の場合は点れるとかって書く場合もあるし
気にすることじゃないよ。
213:774RR
07/02/07 00:05:36 XOUusNwE
イイヨイイヨ~
214:774RR
07/02/07 00:56:00 1JVWWOno
松本イーヨ
215:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:06:30 eLANBHm+
水道で手を洗い、ウーロン茶で喉を潤し、タバコを一服するとツーリングの準備に取り掛かった。
とはいっても日帰りのため余計な荷物は無く、念のためバイクの各所を点検するだけだ。
「ルートはどうするか?」
チェーンの張り具合を確かめながら英一が聞いてきた。
「ん~そうだな、東名と小田厚で箱根まで行って、ターンパイクから伊豆スカとおって後は時間見て適当に…って感じでどう?」
「それでいいよ。帰りは、海沿い来て、西湘バイパスから湘南とおって、後は適当に高速とか16号でいいな」
「それでいこう。あ、バナナワニ園が見たい。これ覚えといて」
「…OK…」
大まかな計画だがこんなもので十分だ。バイクならではの機動性で、いかようにも変更できる。
そんな風にして、俺たちは出発した。
216:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:07:34 eLANBHm+
走り出して、すぐにステダンの交換による効果がわかった。
ものすごく軽い!街乗りの倒しこみがすごく楽で、小回りも今までよりも遥に良くなった気がする。左右に小さく、何度も蛇行してみたりして、軽快な動きを楽しむ。
TLの本来のハンドリングはこういうものか…小さなカスタム一つでこんなにも変わるとは…乗り始めてから数ヶ月たち、自分のバイクをある程度理解したつもりだったが、
それでもまだ色々な顔が隠されていて、ちょっとしたことからそれが覗けたことが、なんとなくうれしかった。
217:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:08:33 eLANBHm+
しばらくして、東名に乗った。リーダーは俺が取る。英一は右後方へ。
ベンチレーションから吹き込む熱風は肺に熱く、エンジンの廃熱がジーンズを通して下半身を焼くが、「これがバイクだ」と割り切ってしまえば何とでもない。要は気の持ちようだ。
クルマの流れは休日としては悪くなく、140km/h程度で巡航することができた。
しばらくすると、車群を抜けた。
前方車はるか遠く、車種の判別はもちろん、その色すらわからない。俺は右後方を振り返りながら一気にギアを3つ落とし、前に向き直ると、一気に右手首を翻した!
一瞬、リアタイヤの空転に車体を悶えさせ、TL1000Rは弾かれたように加速していく。右ミラーに視線を飛ばすと、一瞬遅れて英一のFZ1が追尾してくるのがわかった。
180…シフトアップ…200…シフトアップ…240km/h…、真夏の太陽に熱せられたアスファルトから立ち昇る陽炎を吹き飛ばし、2台は加速する。
FZは、右ミラーの中でほとんど位置を動かさない。さすがに…速いな。
オーリンズのステダンは、この速度では軽すぎ、安定性に欠ける気がした。状況に合わせてアジャストするべきなのだろう。
しばらくすると、前方をおそらく100km./h以上の速度で走っているはずのクルマが、まるでこちらに向かってバックしてくるかのように、みるみるうちに接近してきた。
FZのライトがハイビームに切り替わる。同様に俺もハイビームにすると、俺たちの存在に気がついたライトバンがウィンカーを出しながら、中央車線へと緩慢に逃げ始めた。
与えられつつあるわずかな車線、わずかな空間を、黒と蒼の弾丸が切り裂いてゆく…
218:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:09:37 eLANBHm+
厚木インターで東名から小田原厚木道路につないだ。
ここからは俺に代わり英一が前に出る。軽快な道路ではあるが覆面パトカーや白バイの非常に多いルートであることを、英一もわかっているらしく、120km/hほどでセダンに気を配りながら淡々と流していく。
途中、高速上にもかかわらず牧場の牛糞の匂いが漂ってきたりして、一瞬ごとに都会の喧騒から遠ざかっていることを再認識させられる。
ヘルメット越しに感じる風のにおい…これもバイクならではの体験か。
219:774RR
07/02/07 01:10:25 g5kktIJO
リアルタイムktkr!!!
つ④
220:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:10:58 eLANBHm+
小田原厚木道路を走り、20分程度で終点の風祭まで達する。
一瞬だけ一般道を通り、給油した後、箱根ターンパイクへ…はじめて走る道。今日は贅沢に有料道路三昧。
ターンパイク前の小さなパーキングで小休止した。
「ふ~フグタ、結構飛ばすじゃないか?」
と、耳栓をはずしながら言う英一。
「東名だろ?危なっかしかったか?」
「いや、異常と言えば異常だけど…まあ絶対に無理な速度ってわけじゃなかったし、路面もよくて交通量も少なかったからな。
後ろから見ていても不安は感じなかったよ」
苦笑気味に言う英一。
「だけど、フグタさ、免許とってから4ヶ月しかたってないだろ?僕なんかそのころは怖くて200キロなんて出せなかったからな!」
「俺だって、怖くないわけじゃないけど、まあ、ちょっと遊んでみたくてさ。
新しくつけたステダンの高速域での動きも確認しておきたかったしね。
それに初心者と言ったって、俺もう7千キロは走ってるぜ?」
そう、怖くなかったわけじゃないが、なんとなく大丈夫であることが”わかって”いた。あくまでなんとなくで、理由は無いが…
「そか、で、ターンパイクはどうする?フグタが前走る?」
「いや、英さん先走ってよ。俺は先輩殿のラインを盗ませていただきますだよ。ただ…ちんたら走ってると…ぶち抜くぜ?」
セブンスターを咥えてニヤリと笑って見せた。
「…おう、やって観やがれ!小僧っ子がっ!」
カルピスサワーを口に当てながら英一が返す。
彼はタバコを吸わない。
221:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:12:06 eLANBHm+
ターンパイクの料金所を過ぎると、すぐに上りになっている。
傾斜はそれなりにあり、路面も一般道よりは綺麗なため平均速度も高いため、すぐに耳が痛くなる。頻繁につばを飲み込んだ。
料金所から数キロは周囲に畑もあるが、すぐにそれも途切れ、手の入っていない原生林の中を走る一本道になった。
綺麗な空気を吸いたくて、RR4のシールドを上げる。
標高が高くなるにつれて冷えてくる風が顔に当たり、かすかな草いきれの香りを鼻腔に届ける。気持ちいい…
英一のFZはリプレイスマフラー特有の低い音を響かせながら、80~90kmをほどで淡々と走っていた。ブレーキランプはほとんど点灯しない…
222:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:13:40 eLANBHm+
俺がついていくのを感じて、英一は徐々にペースを上げ始めていた。
人それぞれの個性や性格が走りに現れるのだろうか。
英一のライディングは非常に滑らかで、ロスのない、まさに教科書的な美しいものだったが、時にびっくりするほど大胆なラインをとることもあった。
ブラインドコーナーの手前では十分に減速し、対向車線にも絶対にはみださないが、
クリップを過ぎコーナーの先の視界を得たならば対向車線まで含めた道幅いっぱいを使って全開加速。
スローイン・ファストアウトの基本?リアをスライドさせながら莫大な運動エネルギーを蓄積していくFZを観ていると、教習所で習った言葉など頭から吹き飛んでしまう。
ジャッジャァァァ・・・英一が自作したステップに取り付けられたバンクセンサーから飛び散る火花。
旋回により生じる遠心力とバンクするバイクとライダーの自重、アスファルトから伝えられる垂直抗力、路面を喰う両輪の摩擦、エンジンが生み出す推進力…前へ!
すべての力が、一つの力点においてバランスしていた。綺麗だった。
美しいから、速い・・・
―そう,感じた。
223:タラオ~Acceleration of The Blood~
07/02/07 01:14:52 eLANBHm+
英一のライディングを悠長に眺めている余裕がなくなってきた。彼のペースがとんでもなく上がってきたからだ。
クソッ!速い!喰らいつく。あっという間に迫り来る左コーナーにフル加速から一気にフルブレーキ。右手の中指と薬指を絞り込む。スネーキング。リアが少し振られる。一つシフトダウン。
体勢を作り、踵と右足の内腿でバイクをホールドしつつコーナーの先に視線を飛ばす。短いストレートの先に英一の背中が見えた。ステップをこする。ようやく回頭。我慢していたスロットルを開放した。
インジェクションから供給されたガソリンに呼応して二つのピストンは膨大な回転力を生み出し、チェーンを経てタイヤを歪ませ、そしてアスファルトへと伝達されていく。
加速!
コーナーからコーナーへと、作業の繰り返し・・・しかし状況は一つとして全く同じ処理を許さない。
ヘルメットを叩く風が運んでくる恐怖を押し殺し、バンプに小さく弾かれて空転するリアタイヤから背に走る悪寒をなだめ、FZを追う。
少しずつ遠くなる英一の背…だめか…あきらめかけて左コーナーを曲がったとき
― 紺碧の空へ突き刺さるかのごとく伸び上がるストレートがそこにあった・・・
快晴の蒼さに溶け込む、はてしなく長い天国への階段。その先にはなにがあるのか・・・
中ほどを、空よりも蒼いFZが突き進んでいく・・・まだそれほど離されていない・・・
― もう少しだけ…
俺はスロットルを握りなおし、3速から4速へシフトアップしながら、スクリーンに深く身を隠した。
224:タラオの中の人
07/02/07 01:18:08 eLANBHm+
明日出張で朝早いのに、こんな時間までカキコしている意志の弱い俺に乾杯。
誰か、起こしてくれる人もとむ。
225:774RR
07/02/07 01:19:50 g5kktIJO
リアルタイムのお礼に起こしてあげたいがw
226:タラオの中の人
07/02/07 01:23:01 eLANBHm+
お心頂いておきまする。
おやすみなさい。。。
227:774RR
07/02/07 01:24:52 kMVcy8LN
どうやって起こせとw
中の人はTLオーナーだったのかな
それにライディングの腕前もなかなかのものなのであろう、実際に走る人でないとああいう文章書けないよね
228:774RR
07/02/07 01:24:54 g5kktIJO
この前のカキコ見たかぎり大変そうだけど仕事がんがれ!
また続き期待してます、ではオヤスミ ノシ
229:774RR
07/02/07 03:31:28 9gMFgx55
ちょwwwカルピスサワーwww
飲酒運転www
230:774RR
07/02/07 03:51:46 knuI8zLG
は?
231:774RR
07/02/07 04:20:52 71VniDfS
そこはソーダに脳内変換するところだろ…常識的に考えて…
232:774RR
07/02/07 11:10:13 ds4JDP+v
ソーダソーダソーダ!!
タラオ乙
233:774RR
07/02/07 12:25:19 44XjmbRn
サワーだソーダだグチャグチャうるせえなぁ!
素直にプラッシーに汁!
234:774RR
07/02/07 12:36:24 3NYMiUF2
ちょ、米屋で休憩か
つ④
235:sage
07/02/07 13:46:45 6tcTY5IN
数十年前のあの日、父親が確かに見たあの光景を
時を経て息子が目の当たりにしたんですね…
心が震えました!
236:774RR
07/02/07 15:00:11 s+E/vWkA
>>235
それなんてラピュタ?
237:774RR
07/02/07 16:32:59 9cp00owJ
>>236
確かにw
238:774RR
07/02/07 20:21:50 5wWZbNtv
>美しいから、速い
名言だね。
239:華
07/02/07 20:38:43 Ac13A9UU
>>212
補足有難うございます。 今後から「入れる」で表記して読み易くします…orz
タラオの中の人
今気付きましたが…辞表っすか…orz
Easy Go!
↓続き↓
240:華
07/02/07 20:39:25 Ac13A9UU
【海鮮組・バイト編】
自宅に無事帰ると今日も父は外食ついでに何処に出かけているのか、家には居なかった。
部屋に入ると机の椅子を引いて腰掛けていた。あの後、足元のポーチを手に取ってから不思議と恐怖感は無く別の感情が湧き出ていた…その感情が何なのかを考え込んでしまう。
突然ポーチを奪われ風の様に現れた異形の者。私の嫌いな不良とはまた違う… その姿、その行為からは「正義」が感じられた。
世間一般的に「正義」と言えば警察だろう。だが私は警察には良いイメージが無い。何処か「正義」という言葉を巧みに使い弱者をいたぶる偏見が私には当時からあった。
しかしどうだろうか?あの異形の者からは「絶対正義」という今の私に「失われたモノ」が、「絶対正義の形」が、そして「行為」とし、あの瞬間にはあった。
そして私は一つの決心をし、部屋を出て電話を手にし「*2*2…」と早川さんへ深夜遅くに決意のメッセージを送る。
そう、「私もバイクに乗る」と…
一つの決心をしベットに潜り込み目を閉じる。浮かび上がってきたのは能面の「翁」 バッと飛び起き異形の者が誰だか理解した。
喫茶「珈琲・浦野」の白髭のマスターである事に私は気が付いた。明日学校が終わったらお礼を言いに真っ先に向かおうと決意し、ベットに入り目を閉じた。
241:華
07/02/07 20:40:11 Ac13A9UU
学校の授業が純粋にかったるい…特に英語は嫌いだ。そんな英語の授業中に早川さんからバイブレーションでポケベルが震える。「見せたいものがあるんだ」というメッセージだった。
退屈な授業が全て終わり、帰り際に「いつものところで」と学校の公衆電話から早川さんへメッセージを送る。急いで帰宅しカバンを放り投げ、スグに家を飛び出した。
ふと我に返り「とおちゃん、ごめん今日も遅くなる」というと父は「あぁ、わかった」と微笑しながら私を見送った。
喫茶店に入るや否や白髭のマスターにデカイ声で豚足をピンと伸ばし「昨日は有難うございました!」と全身全霊を込めて深くお辞儀をした。
白髭のマスターは不思議そうな顔をして野太く低い声で「んん? 花ちゃん、どうしたんだい?」と言ってきた。咄嗟に私は「えっ?!」と声を出し、入り口真上に吊るされている革ジャンを確かめる様に目を向けた。
が、革ジャンが無い…
えぇ?っと混乱する私は昨日の事を細かく白髭のマスターに話すと「カッ!カッ!カッ!」と野太く低い声で笑う。更に私は混乱すると白髭のマスターはもう一言添える。
「そうかい、花ちゃん。アレはね 古い友のモノなんだよ」と優しく言う。誰なのかと聞くと、いつものニコニコした顔で流しのコーヒーカップを洗い出していた。当然昨日の異形の者は白髭のマスターとばかり思い込んでいた私は呆然とした。
その呆然としたタイミングで早川さんが「やっほ~二人とも~、マスタ~ブルマンお願い~ あ、あとアップルパイまだ残ってたら2つ~」と声をかけてきた。
242:華
07/02/07 20:40:41 Ac13A9UU
いつもの奥の小さなテーブルに腰掛け、私は昨日の出来事を早川さんに話し出した。すると早川さんは「へぇ~、カッコイイ!素敵な事じゃな~い」と瞳をキラキラさせていた。
「そうそう、見せたいのってコレコレ!ジャ~ン」と間髪いれずカバンから取り出したのは、ヨレヨレになった今月出たばかりの「オートバイ」という本だった。
実は早川さんはバイクに乗る事を親にはまだ言ってないそうだ。それもそうだ。もうすぐ高校3年になる私達が進路を決めなければならないこの時期にバイクに乗るなんて、まして女の子がバイクに乗るというのは親として目をつぶる訳には行かないからだ。
そういう理由から常にカバンの中にこの本を忍ばせていたし、私と久し振りに出会った時右手に持っていたこの本を後ろに隠したそうだ。
私は近所には顔が広いのは周知の事だが、その顔の広さと情報量から中学生までは人間拡声器と呼ばれるくらいでそんな理由からだと思うが、あの時早川さんは慌てて雑誌を隠したんだろう。
そんな人間拡声器の私も高校にあがってから父に「他人の家の事情や出来事をあまり噂するもんじゃない」と本気で叱られた事があり、父の言葉を守り人間拡声器の異名もいつしか近所から消えていた。
ヨレヨレになったオートバイという本を二人で広げアレコレ話が弾む。全く興味の無かったバイクにのめり込んだ瞬間だった。国産4メーカーを知り排気量によって免許が違う事もこの日初めて知った。
夢中になったし今までに無い楽しさを味わい、そしてコーヒーを味わった。白髭のマスター手作りのアップルパイを二人で頬張りつつ、中型免許取得の話に盛り上がりはピークに達した。
そして未知なる世界のジグソーパズルのひとつのピースが、またはめ込まれて行く…
243:華
07/02/07 20:50:54 Ac13A9UU
うぅ…
家に帰り着替えてから向かう「珈琲・浦野」に向かい、早川さんとコーヒーを啜るのが=×
家に帰り着替えてから「珈琲・浦野」に向かい、早川さんとコーヒーを啜るのが=○
嗚呼…反省して寝ます…orz
244:774RR
07/02/07 21:31:22 VzdTJGW3
細かい事は木に竹刀、続きGo!
245:774RR
07/02/07 21:49:57 Cq3aBoJi
脳内で自動補正されてるから気付かない♪
246:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/02/07 22:33:26 ezWAUsaE
>>242
人間拡声器にワロスwwwでもまっとうな親としてはやはり叱るだろうな。
つ④
247:774RR
07/02/07 23:25:43 1JVWWOno
イイヨイイヨ~
248:774RR
07/02/07 23:52:08 KIHFxklQ
花ちゃんイイ
249:タラオの中の人
07/02/07 23:53:09 eLANBHm+
華さんいいね。展開が楽しみです。
>>227
俺は、物語の中でまだ一度も走らせたことがない、
カツオ兄さんのバイクに乗って魔棲。
ちなみにタイヤの端っこはあまっとりまつw
250:774RR
07/02/08 00:29:59 YQ+Kv2O/
>>220
飲酒運転?
251:774RR
07/02/08 00:34:25 n6S8w4U1
>>諸作者方
つ④
俺も小説を書いてみたが、なかなか難しい。
思うように話が進まないというか・・・。
そのうちうpします。
252:774RR
07/02/08 02:03:23 WWzZftVr
>>251つ④
どんな話だろ~な~wktkwktk
253:774RR
07/02/08 02:53:37 gLabw3lj
華沢さん
254:774RR
07/02/08 03:39:34 FbNojpVu
ちょっとちょっと華さん、巧すぎませんか?
ベル番…
同世代ですね
本職ですか?女性?でもマスオさんの世界観ととても似てるし
255:774RR
07/02/08 09:41:54 wX52153j
>>254
華さんも魔棲雄さんも、アニメサザエさんを見ても全く違和感ないくらいキャラをつかんでいて、
なおかつキャラのおっている経験なんかにグッときたり共感出来たりするんですよね。
256:774RR
07/02/08 10:17:00 FizoKU4c
花ちゃん豚豚言い過ぎw
いい意味で。
257:774RR
07/02/08 19:34:49 v98Az5m+
作者の皆様、いつも楽しく読ませていただいてます。
良い作品ばかりで、こんなところで言いたくは無いの
ですが、出来ればもう少し改行を考えて頂けませんか?
せっかくの良い作品が読み辛くて・・・
258:タラオの中の人
07/02/08 19:49:27 kOU1mnSV
>>257
これでも改行は考えているです。
しかしながら、文脈等や、個々人のPC環境により、
なかなかご期待に沿うのは難しいのであります。
それなりのところで、妥協していただきたく。。。
文字のサイズを小にすると読みやすくなるかもです。
259:華
07/02/08 20:02:06 lzT1tyvH
>>251
早川「ファイト」
>>257
改行は考えてはおりますがタラオの中の人氏の言われる通り、
妥協して頂くしか…orz
ご期待に沿えれば何よりですが…宜しくです…orz{ゴメン)
260:華
07/02/08 20:13:43 lzT1tyvH
↓続き↓
261:華
07/02/08 20:15:08 lzT1tyvH
中型免許を取るには2つの難関がある事を早川さんは真剣に言い出した。楽しい話に浮かれていた私に急に現実に戻された感じだった。
ひとつはバイクに乗るのに親に隠して乗る訳にはいかない為、親を説得しなければならない。そしてもう一つは免許とバイクのお金だった。
明日の休みにでも早川さんは親を説得する事を試みるらしく、私も明日父を説得してみる事にした。コレさえ乗り切れば後はお金の問題だけだ。
そのお金の工面は既に早川さんは去年の秋頃から動き出していたらしく既に免許取得するまでのお金(合宿込み)は今も続けているアパレル関連の土日のアルバイトと少しずつ貯めたお小遣いで用意できているとの事。
免許取得は夏休みの合宿を使っての取得を考えているらしく私もその考えに便乗した。 しかし問題は私にあった。
私は憧れ始めたバイクにはお小遣いだけでは到底免許とバイクには手が届かなかった。「花沢不動産の一人娘」と聞けば、いかにも持っていそうなイメージがあるかもしれないが
父はお金には厳しい人で小さい頃からお年玉をくれる福島の叔父さんや親戚の方々の多額なお年玉は全て私の花嫁資金として別口座に預金していた。
ならばと私は本格的にアルバイトをしようと考え始めた。明日、父にバイクの事とアルバイトの事を正直に話そうと決意した。
262:華
07/02/08 20:15:48 lzT1tyvH
中型免許取得に夢中になるあまり、異形の者が誰なのか?と、考える事をずっと忘れてしまう事になる。
「そうだ!思い出した!」と早川さんは突然話題を切り替えてきた。「この間、磯野君と中島君がピザ屋の配達やってるの見たよ」と言ってきた。
もう磯野君の事は吹っ切れたし、バイクに夢中な私は早川さんと「珈琲・浦野」でバイクの事を話すのが楽しくて仕方が無かった。
どうやらピザ屋で相変わらず無茶をしているらしく、バイクを壊して今はカブでピザ配達をしているらしい。 プライベートでは磯野君がNSR50、中島君がモンキーに乗っているという事も早川さんの友人情報から初めて知った。
まだ彼らも中型免許を取得してないが、後に「磯野カツオ」「中島ひろし」 そして…あの女「大空かおり」が首都高に名を轟かせるのはまだまだ先の話になる。
バイクの免許を取る。アルバイトをする。なんだか胸がドキドキし始めると同時にワクワクしてきた。早川さんも同じらしく二人で顔を微笑ませながら「オートバイ」を開いては知識を詰め始めてゆく。
モダンな雰囲気の店内で小さく流れるJazz。カウンターには60台位の男が夕刊を広げていたり、近所の主婦連中がドリフの笑い声を発しながら談笑していたり、
店内を優しい瞳でニコニコ見つめながら白髭のマスターは珈琲豆を焙煎している。この喫茶店は本当に安らぐ場所だと改めて感じ、10日ほどの出来事が退屈な高校2年を埋めるかのように充実していた。
胸躍る感情と容量の少ない私の脳に対して膨大なバイクの知識が抑えきれないまま「珈琲・浦野」を後にし、早川さんと別れ家路に着いた。相変わらず父は今日も私が眠りに付くまで帰ってくる事はなかった。
263:華
07/02/08 20:16:31 lzT1tyvH
休日の夕方、父との夕飯を済ませ私は父に真剣な眼差しで免許とアルバイトの話をし始めた。いきなりの出だしだから…と心の中では反対されるものだと思っていたが、あっさりと父は了承してくれた。
嬉しさのあまり飛び上がった。
豚足を床にドスンと着地させると父は座るようにと私に言い聞かせた。「これだけは覚えておきなさい」といつもは優しい眼差しの父が厳しく鋭い眼光で私に言葉を向ける。
ガタンガタンッ!…ガタンガタンッ!…ガタンガタンッ!… 都心から朝日ヶ丘駅に向かう列車が家の裏の線路を駆ける。 通り過ぎた後、父は重々しく口を開いた。
「いいか?花子…バイク乗りはバイ…」と言い始めたが父は言葉を止める。 上を見上げ、揺れている電気の紐を眺めながら小声で「いや…やめておこう。きっと脈々と…」と呟くが私には駅のホームから聞こえるベルの音で聞こえなかった。
父は改めて言う。「自分が選んだ事だ。自分でお金を貯めると言うことは良い機会だ。事故だけは気をつけなさい。それと勉強も。」そう父は言い残して事務所へと去っていった。
父が去った後、やった!と嬉しくガッツポーズを小さくとる。次には早川さんへメッセージを高速ベル打ちで「オッケー出た」と送る。その日の夜11時には早川さんから「私もオッケー」とあまりにも予想外な答えが返ってきていた。
264:華
07/02/08 20:17:13 lzT1tyvH
次の日曜日に私はチラシの求人を眺め、とにかく高給が無いか?と躍起になっていた。豚鼻から蒸気機関車の様に勢いよく荒れ狂う息が噴出す。
そして見つけた。「日給2万・力求む!集え筋肉!海鮮組(面接試験有)」という枠に飛びついた。に、日給2…2万??す、すごい!と思うや否や面接試験の受付を電話で済ませ、夕方にある面接に向け時間を潰した。
このアルバイトが未知なる世界のジグソーパズルの重要なピースの一つ、そして高校3年の進路選択に繋がる大きなターニングポイントになる事に私はまだ知る由も無かった。
265:華
07/02/08 20:24:16 lzT1tyvH
楽しい話に浮かれていた私に急に現実に戻された感じ = ×
楽しい話に浮かれていた私は急に現実に戻された感じ = ○
嗚呼…今日も反省して寝ます…orz
266:774RR
07/02/08 20:47:50 bQkeoXkw
もしや・・・伝説の筋肉パブ「海鮮組」か!?
つ④
267:774RR
07/02/08 23:08:14 qTDSipKJ
ナカジマがモンキーなのはもうすっかりデフォのようですねニヤニヤ
と、ひそかにナカジマでサイドストーリーを作ってた人がレスするよっ!
ほら、アレだよ!アレ!カブでバトったやつ!
そのうちネタが思い浮かんだら軟化かいてみるよ
268:774RR
07/02/08 23:39:23 0WaFztyA
>>267
それなんて歌?
269:774RR
07/02/09 00:00:46 RJI3xjb2
>>まとめサイトの中の人
勝手なお願いで申し訳ないですが、所用でしばらくこのスレを
見れなくなるので、華さんやのびた氏の作品を
まとめておいてもらえないでしょうか?
270:774RR
07/02/09 04:33:48 ZXb1wv9w
↑
出張か何か知らないけどさ、マンガ喫茶とかで見ればいいじゃん。
ログを保存したいんだったらネットに繋げる時にウェブメールにでも
置いておけばいいし。
あっ、それが出来ない状況になるから中の人に頼んでるのか。スマン
271:774RR
07/02/09 05:40:51 zgJEaZDw
花沢さんの父は東京町田のその名も知れた極悪の初代リーダーであった、そして母は中野レディースでカミソリセットの舞で有名。父は恐いのである…娘にその血が覚醒する事が。
272:774RR
07/02/09 09:56:32 m97vgHYc
マスターはイージーゴーの人?
つ④
273:774RR
07/02/09 12:47:58 /yAkoFoT
俺もおもった。インディアンの
つ④
274:774RR
07/02/09 13:21:48 zWbbnpYD
しかも「浦野」だよ。
あの人か...w
275:774RR
07/02/09 19:54:23 mtWWDM7d
>>274
ああ!今はじめて気付いたわw
276:華
07/02/09 20:30:22 wYPVqUhP
夕方、私はバスに乗り朝日ヶ丘の中心街から離れた海鮮組事務所へ向かった。
事務所という名のプレハブの前には、チラシの宣伝効果からか50人を越える屈強な男達が集まっていた。
どうやら集まった50人を越える男達は皆、面接に受けに来た人間という事は即座に理解できた。
筋骨隆々な男や坊主頭で腕に刺青の入った男、まだ寒い季節にも関わらずタンクトップにはち切れんばかりの胸板の男。力におぼえのある人間がそこには集まっていた。
当然そんな男達の中に女は私一人だった。
「おいおい、お嬢さん 場違いって言葉知ってるか?」と皮肉を言われるが私は黙って我慢した。するとプレハブのドアが勢いよくバンっ!と開き、中からは190cmは越えるであろう60代の大男が現れた。
その男はあまりにも大きく、その場に居た屈強な男達の筋肉も鶏ガラに見えてしまう程の肥大した筋肉が作業着からでもハッキリと伺えた。
太い声で「お~し 今日は面接に集まってくれてありがとう ワシがこの海鮮組の親方をやっとる海 千山(うみ せんざん)だ。」と集まった面接者に言い放った。
「海鮮組は力が全てだ!集まってもらったのは他でもない。自信がなけりゃぁとっとと帰るこった。力に自信のあるやつぁ面接受けろ」
277:華
07/02/09 20:31:03 wYPVqUhP
さっきまで己の筋肉を見せびらかし、ざわついていたプレハブ前は一気に凍りつく。ある者は怯え、またある者は威風堂々とした姿に恐怖した。
「それじゃ これから事務所の中で面接試験やるから二人づつ入って来い。 な?」そう言うと海親方は事務所に入って行く。
事務員と思われるツンと尖った眼鏡を掛けた賢そうな女性が順番に並べ、私は最後の面接者となった。その隣には私と同じくその場に似合わない中肉中背の大学生らしき男が居た。
面接が始まる。すると隣の男が「君も面接なの?! じょ、女性なのに?」と言う。私は黙ってその男を見ていた。「理由は人それぞれだろうけどさ、お互い受かるといいね!」と明るく微笑んだ。
私は「有難うございます。受かるといいですね。」と微笑み返す。すると事務所から最初の男達が出てきた。 「あ、ありえねぇ…」そうブツブツ呟きながらプレハブを去っていった。
次々と落胆する筋肉隆々な男達がプレハブから吐き出す様に事務所から出てくる。 どうやら並みの試験じゃない事を残された私や面接者は感じ取った。
私達の順番が回ってきた。恐る恐るドアを開けると「おぅ!おめぇらで最後か!よし、前に来い」と海親方は太い声で言った。
足元にはセメント袋が4袋づつ用意されていた。
「よし、それ担げ」
278:華
07/02/09 20:32:18 wYPVqUhP
いきなりだった。名前も聞かず突然に要求された。大学生らしき男は必死に2袋までは持ち上げた。すると海親方は「あの椅子まで歩いて椅子の上に落とさねぇでのぼってみろ」
男は必死に歩き椅子に足を乗せようとするがセメント袋を落として転んでしまう。その姿を見て「おぅ、嬢ちゃん 次はおめぇだ。ここじゃ男女関係ねぇ。自信がありゃやってみな」と言う。
私は豚鼻を大きく広げ大量の酸素を吸い込ませる。酸素は肺に入り込み全身の筋肉へ入り込む。 ググっと豚足の蹄に力を入れ、そして袋をまず1袋ひょいと左腕で担ぐ。空いた右手で2袋、3袋、4袋…
「ほほぅ、こりゃ驚いたな」と海親方は私の腕を見始める。
一歩、二歩と歩き出し、セメント袋4袋を左腕で担ぎながら椅子に難なくのぼりきった。すると親方は立ち上がりゆっくり近づいて私の脹脛(ふくらはぎ)を触る。
「嬢ちゃん、あんた普通の筋肉のつき方じゃねぇな 何処で何してたんだ?」と担いでいた4袋を右手で2袋、左手で2袋の端を指で挟んで床に下ろした。その光景を見た大学生らしき男は「う、うそだろ…!?」と驚愕する。
私は海親方に小さい頃から福島の叔父さんが運営する牧場の手伝いを夏休み・冬休み共に手伝い牧草を運んだり、牛を引っ張ったりしていた作業や農作業も手伝っていた事を話す。
海親方はその話を黙って聞き終えると「嬢ちゃん、名前は?」
「は、花沢花子です」と背脂を伸ばし、裏返った声で返した。
279:華
07/02/09 20:32:52 wYPVqUhP
「おし、気に入った!いつから春休みだ?」と聞いてくる。私は「あ、明後日から休みです!」と豚っ面を引きつって答えた。 「おし、明後日から来い」
どうやら私は合格したようだ。余談だが私はこの面接内容には自信があった。セメント袋を重ねて担ぐには福島の叔父さんの牧場で束ねられた牧草を運ぶ時にコツを覚えていたのでセメント袋も難なく担げた。
中学の頃の体力測定では背筋220㎏、握力は両手共に75㎏、肺活量は6000mlを記録し人とは飛び抜けた体力の持ち主だった。
それは高校になっても衰える事無く、小さめの林檎であれば潰す事も出来た。そんな肉体を持つ私も跳び箱6段だけは今現在も飛べないのである。
海親方は「おい、ひよっこ。おめぇ最後に言う事あるか?」と大学生らしき男に聞く。「ぼ、僕は 僕は強さが欲しいんです。 じ、自分を変えたいんです」と言葉を返した。
その後、海親方に自分が東京大学の文学部に所属している事を話し、文学以外の「何か」を見つけたくて面接を受けに来たと言う。
海親方は黙って話を聞き終えると「おめぇは今日から文学ってあだ名だ。 おめぇも花と同じ日に現場に来い」彼も合格したようだ。 そして「花ちゃん」「花さん」と呼ばれていた私が「花」と呼ばれる様になったのはこの時からだった。
280:華
07/02/09 20:39:24 wYPVqUhP
た、多分…寝ます…orz
281:774RR
07/02/09 20:41:34 j7Z5tGiu
背筋220㎏、握力は両手共に75㎏、肺活量は6000ml って・・・ w|;゚ロ゚|w ヌォオオオオ!! ④
282:774RR
07/02/09 20:50:16 Hmsi2oYt
花沢さんに殺されゆ
283:774RR
07/02/09 20:52:41 mtWWDM7d
男でもそんなヤツはザラにいねーよw
284:華
07/02/09 21:04:22 wYPVqUhP
私(華の中の人)が中学生の頃、肺活量以外で実際にこの記録だした男がいました…
その方の漲るパワーをモチーフに花沢さんに重ねてみました…orz
285:774RR
07/02/09 21:25:13 d3latEkq
④
俺、力自慢には程遠い男なんだけど、なぜか握力だけはある。
背筋力100キロ程度なのに、握力は90キロ
体力測定の時、体育教師がいつも握力計の故障だと疑っていたなぁ。
286:774RR
07/02/09 22:11:06 8MzgYlEU
背脂www
287:FZ4@愛知
07/02/09 22:18:58 dnrsoPmu
>>286
>背脂を伸ばし、裏返った声で…
↑これって意図的にとしても狙い過ぎだよねwww
めちゃめちゃワロタw
作者氏乙!
(^ω^)ノシ
288:774RR
07/02/09 22:58:29 x47qDTOj
ラードかよwwww
作者氏乙
289:774RR
07/02/10 00:51:04 aHxDkbiy
作者のSっぷりに惚れた。
今後とも楽しみにしてます。
290:774RR
07/02/10 04:22:49 6A77qGig
>>華氏乙!!!
続編楽しみにしています
291:774RR
07/02/10 07:21:27 rcv46zM1
華氏④
292:774RR
07/02/10 08:45:22 RovX2Fhu
>257
「魔棲男」氏や「カツヲ」氏の作品はサクサク読めたのに
なぜか「華」氏や「タラオ」氏の作品を読み飛ばしてしまい
妙な違和感を感じたのはコレが理由か…
俺からもお願い。
いい作品なんだろうから読みやすいように改行くらいはちゃんとして下さい。
293:774RR
07/02/10 09:23:44 W2aKutx7
理由は知らんが読み飛ばすとかよく平気で書けるよね。人間性を疑う。
294:774RR
07/02/10 09:59:42 A+9A8LpM
>>292
何様?空気嫁
295:774RR
07/02/10 10:16:05 ZaHqG8Z5
>>257
>>292
どうせ喪前ら短編小説もろくに読まずにうすっぺらい国語の教科書しか
読んだことねぇだろ。
改行ってのは読みやすくする為にあるように思うかもしれないが
特に華氏の文はその場をイメージさせたりインパクトを伝えるために
ああいう改行の使い方なんじゃなえぇか
あれが文章ごとに改行されると全く文章のイメージがわかんよ
華の中の人、タラオの中の人キニスンナ
海千山…海千山千からか それで海鮮組 マジオモロイよ
マスターも浦野だしw
296:774RR
07/02/10 10:19:07 ZaHqG8Z5
っと忘れてた 紫煙あげ
つ④
297:774RR
07/02/10 11:39:43 Jb5RNmed
>>295
同意
それはさておき、作者の皆さん乙
298:774RR
07/02/10 11:59:15 OoOzQrwE
>>295
>>292は教科書すら読まないよ。
299:774RR
07/02/10 12:21:12 AkVunItG
マンガじゃないと理解出来ないんだろうなぁ
可哀想に
300:774RR
07/02/10 14:45:19 sKiLxADQ
ゆとり世代は教科書すら読まなくてもいいのか。
いいなぁ。
301:774RR
07/02/10 14:56:26 CcCQphel
教科書すら読まない俺だが、初代スレからの全作品キッチリ読んでるぞ。
>>作者様
つ④
302:774RR
07/02/10 15:00:01 hSo8wh3h
そんなことばっか言ってるから盲目信者って言われるんだと思うんだがなぁ・・・
とりあえず下らんことでスレを荒らさないで欲しい
>>作者様
つ④
303:774RR
07/02/10 16:05:45 3So4cRA/
批判への批判は即信者という、短絡思考もいかがなものか。
304:774RR
07/02/10 19:50:11 m5togL1X
>>303
それも一理あるね
ただ>>295は言い方をもうちょっと考えるべき
>>257も>>292も作品を頭ごなしに批判するようなことは書いてない
作風もあるが読者の意見は重要(まぁ作者諸氏はこれで食ってるわけじゃないが)
こういう議論て何度もループしちゃうよね
もっと読みやすく
↓
批判は黙れ
↓
盲目信者乙
みたいな流れが定期的に起こるのはなぜだろう・・・
305:774RR
07/02/10 20:25:48 7ZjTIn3P
スルーすればいいのにいちいち文句つけるから荒れるんだよ。
>>292も>>257の話は>>258と>>259で終わってるんだから蒸し返すな。
とりあえず>>292みたいなのはスルーに限る。
306:774RR
07/02/10 20:47:46 5cM/KUKX
みな、それぞれがこのスレを好きなんだよね。
ただ、好きだからこそ、少しの校正でもっと良くなる!って思っちゃうから
どうしても口出ししてしまう。
で、ここから提案なんですけど、Wikiでまとめると言うのはいかがでしょうか?
Wikiの利点としては皆さん、周知の通り、
・みんなで編集できる。
・編集履歴が残せる。
などがあると思います。(他にもあるかと思いますが、当方の個人的認識と言うことで)
デメリットとしては
・Wiki自体の管理が必要になる。
・Wikiの実行環境の管理(サーバなど)
があるとおもいます(他にもあるかと思いますが、当方の個人的認識と言うことで)
307:774RR
07/02/10 20:57:39 3So4cRA/
編集できちゃうのは、個人的には嫌だなぁ。リレー小説ならいざ知らず。
作者さんが意図して入れた改行なんかも勝手にいじられたり、と手垢だらけになりそうで怖い。
そもそも完璧を求めること自体、意味あるのかなぁ?って思っちゃう。
308:774RR
07/02/10 21:13:32 7ZjTIn3P
作者が一人なのにwikiにしたって仕方なくないか?
309:タラオの中の人
07/02/10 21:50:54 fcwdYYVe
あまり複雑なことは考え無いで行きましょうよ。
俺はここに楽しみながら書いていて、皆さんも俺の書いた文を単純に楽しんでいただければ良いと思う。
金銭が発生するわけでも、誰かに迷惑がかかるわけでもなく、なんら義務ももっていない状態で、
完璧を要求されるのは少々難儀です。
建設的なご意見は大歓迎ですが、所詮は余暇で書いているものですので。。。
改行について。
私の場合、ワードで書いた後に貼り付けています。
ワード上では、読みやすいのですが、貼ると今ひとつ読みにくいんです。
それでも、貼る際に編集して改善はしていますが、
あまりにやると文脈のの連続性が失われてしまうので、たいがいにしないといけません。
魔棲雄さんの文などは比較的短い単元でスペースを開けて、
読みやすさを出す事により疾走感を演出しているようですが、
私の場合、句読点が比較的多く、また体言止めなどを多用する文章のため、
あまりに改行やスペースを設けすぎると、「あざとさ」が出てしまいます。
まあ、個々の「味」と言うことで納得していただきたく。
ということで、この話は以上で終了。
後引かないようにお願いしますです。
310:華
07/02/10 22:08:13 UuioiWza
こんばんは。私、今日投稿するか悩みました…orz
でもタラオの中の人の言われる通り複雑な事考えないで行きたいです…
みなさん…Easy Go!です…orz
↓続き行かせてもらいます↓
311:華
07/02/10 22:09:06 UuioiWza
面接も無事に合格を貰い私は嬉しかった。働いて働いて合宿費用とバイクの費用を貯めてやるんだ!と鼻息荒く自宅に帰った。
自宅に帰ると父が何やら包装紙を綺麗に取り外し、中の木箱の蓋をそっと開く。「おぉ~!流石は博多の明太子だなぁ~見事だ」と嬉しそうに明太子を眺めていた。
「ただいま、とおちゃん。どうしたの?その明太子」と私が聞くと父は「おぉ、おかえり。田中さんがね、先日の件でお礼にと博多から送って来たんだよ」 先日の駐車場の件でのお礼との事だ。律儀な人だと感じた。
「しかし、今回は田中さん…不幸だった。」と父は呟き出す。父の話では田中さんは駐車場を借りた日の深夜に、福岡の実父が倒れそのまま息を引き取ったとの事。
次の日の昼頃、ウチに電話があったらしく急遽福岡へ帰る事になり奥さんと共に福岡に飛んで帰ったそうだ。
まだ暫く福岡に滞在しなくてはならないらしく多忙な日々を送っている、と父から聞いた。
私もアルバイトが決まり父に報告すると「ほほぅ 海さん所か あの人は一本筋の入った人だ。見た目は怖いが根は良い人だから」と言い出した。
不動産関連の仕事柄で昔から良く知っている人らしく、何やら嬉しそうに微笑んでいた。
私は早川さんへ「バイト決まった」とベルを打ち込み、続けて「明日もいつものところへ」と打ち込むと、すぐに「いいよ」と返事が返ってきていた。
312:華
07/02/10 22:09:48 UuioiWza
私は近くの本屋に走り、バイクの本を幾つか買い込んだ。買い込んだ本を部屋に持ち帰ってはベットに寝転びながら本に噛り付いた。
楽しくて仕方が無かった。どんなバイクに乗ろうかと、バイクの写真を見ては自分が跨っている想像をして楽しんでいた。
雑誌の記事に温泉へ入りに行く記事や郷土料理を食べにツーリングする記事には、当時カルチャーショックを受けた。と、言うのも温泉や郷土料理など食べに行くのは私は「旅行」でしか味わえないものと考えていた。
そもそも「旅行」というのは車や電車、飛行機などの乗り物に乗り込んで目的地まで行き、現地の景色、文化、食事を味わうものと考えていた。
だがバイクは違った。自分の手で、自分の意思で目的地へ赴く。なんて凄い乗り物なんだろうと改めてバイクの魅力にのめり込んでいった。
明日は退屈だった高校二年生の終業式。明後日からの春休みは海鮮組でアルバイトが始まる。
高校生になってから中学のみんなとバラバラになり何かを失いつつあった今の私の心に一つ一つ埋めるかのような充実感が埋まり始めていた。
ラジオから流れる「東京の開花は4月6日~7日頃です。」と言う言葉を聴いてパチッとスイッチを切り眠りについた。
313:華
07/02/10 22:10:31 UuioiWza
校長の何度も同じ事を繰り返し延々と続く内容を聞き終え、終業式は幕を閉じ私の退屈だった高校二年生も幕を閉じた。
早川さんの私立高校も同じ日に終業式で、私は自宅に帰り「珈琲・浦野」へと向かった。もちろん買い込んだバイクの雑誌を抱えて…
既に早川さんは奥の小さなテーブルに腰掛けており、昼間の店内は人でごった返していた。いつもは夕方頃に来店していた「珈琲・浦野」の雰囲気とはまた違った風景だった。
ガヤガヤとざわつく店内に笑い声が所々聞こえて来る。いつも60代くらいの男性が新聞紙を広げて読んでいたカウンター席もカップル達で埋め尽くされていた。
抱えていた雑誌とポーチを上にあげて「通りま~す」と言いながら奥の小さなテーブルに辿りついた。「凄い人ねぇ~」と手を小さく振りながら早川さんに挨拶した。
「でしょ~? 私もこの時間来るの初めてだけど凄い人ね」と嬉しそうに笑うと「そうそう、コレ!私も沢山買っちゃった!」と言いながら抱えていた本を小さなテーブルに広げた。
早川さんは突然笑い出す。どうしたんだろう?と首を傾げると早川さんも同じ雑誌を沢山広げ始めた。「親が公認してくれたから私もいっぱい買っちゃった!」
「ふふ」と早川さんが笑うと私も可笑しくなり「グフフ」と笑い出した。
「でも、よく早川さん説得できたわねぇ」と聞く。 「うん、最初は猛反対されたんだけどね。免許もバイクのお金も自分で出すっ!って大声出したらお父さんが渋々OKしてくれたの」と嬉しそうに話し出した。
ただ、条件として学力が落ちるような事があったらバイクには乗せない、という条件付らしい。
314:華
07/02/10 22:11:06 UuioiWza
私も明日から始まる海鮮組のアルバイトを話すと「ええええぇっ!は、花ちゃん…に、肉体労働?」と驚くも「は、花ちゃんらしい」とクスクス笑われてしまった。それもそうだ。そう感じた私も自分自身に笑い出してしまった。
それからバイクの雑誌を読み始め、コーヒーを啜りながらアップルパイを頬張る。合宿何処に行こうか?どんなバイク乗ろうか?何処にツーリング行こうか?と話が途絶える事はなかった。
「そうそう、私達が久し振りに会ったバイク屋さん覚えてる?」と早川さんが言い出した。「うん、ガンマが飾ってあった看板の無い所でしょ?」とコーヒーを啜った。
「あのお店まだオープン前らしいよ」と雑誌を左手で開き右手でアップルパイを口に運んだ。
どうやらバイク屋さんの諸事情によってオープンには至らないらしく4月にはオープン出来るという事だった。
「ねぇ!オープンしたら時間のある時にそのバイク屋さん覗きにいきましょうよ」早川さんが提案をしてきたが「う~ん…まだ免許もないのに冷やかしにならないかしら?」と不安そうに私は答えた。
ちょっとだけ!という早川さんの押しに負けてしまい、オープンしてお互いの時間が合えば覗いてみるという事に強引に決まってしまう。
この早川さんの強引な案が二つの再会を果たす事になる。
そしてまた未知なる世界のジグソーパズルのピースが一つ、二つとはめ込まれて行く。
315:華
07/02/10 22:16:48 UuioiWza
ね、寝ます…orz
316:銀のスカG ◆HAWK2rcsg2
07/02/10 22:37:17 bdyTrZJT
つ④④
安らかに眠れ、そしてまた面白い話をおながいします。
個人的には花沢さんの「グフフ」という笑い方がツボだったw
317:774RR
07/02/11 02:16:31 vfY/3NK/
サザエさん実写化するんなら、
花沢さんは渡る世間のカズちゃんだなと読みながら思った。
318:774RR
07/02/11 02:23:33 sDVgZY5y
15年位前かな?
実写版を見たなぁ。タラチャン出産の瞬間で終わった話。
319:774RR
07/02/11 03:06:29 ypAdOA5k
つ④
320:292
07/02/11 09:16:40 YUNt1qeu
>>309
そうか、もう一つ感じた違和感はコレか…
魔棲雄氏に比べ両名は偉そうで謙虚さがないから嫌なんだな…
321:774RR
07/02/11 09:53:17 2uV8+uzT
>>320
偉そう?
偉そうなのはお前だよ、とっとと消えろ
322:774RR
07/02/11 09:53:43 PuJ0fI2R
スルーage
323:774RR
07/02/11 10:02:27 Zmuu0xLS
>>320
アンチ必死だな。死ね。
324:774RR
07/02/11 10:08:23 jhOaEAld
取りあえずタラオ氏は早く次回作を…
325:774RR
07/02/11 11:29:25 H4l0elDa
お姉さんたちも鈴菌感染するのだろうか
326:774RR
07/02/11 12:18:15 pEXk/1UD
華氏つ④
堀川って誰だ?って調べたらあの刈り上げ君かw
327:774RR
07/02/11 14:48:48 N2OQqvxI
Wikiさ、なんにも書いてないのなら作った。
編集してくれるなら晒す。
328:774RR
07/02/11 15:09:21 GVOX84Rz
>>309
流れを読んでないのはわかるが、これだけは言わせてくれ。
タラオ氏の文章のどこに体言止めが多用されているんだ?
あと、読みにくいとか行ってる奴、CSSいじって行間をあけると読みやすくなるよ。
329:774RR
07/02/11 15:38:48 ki7YSZYI
いままで通りでいいんジャマイカ?
Wikiも誰か言ってたが手垢付くみたいで俺は嫌だな
330:華
07/02/11 20:36:25 LUvLb6Bf
いよいよ海鮮組のアルバイトが始まる。
私は朝日ヶ丘駅近くの建設現場へと向かった。到着すると現場は建設中のビルで建設予定の看板には「かもめビル建設中」と書かれていた。
「おぅ!花、はえぇじゃねぇか。」と海親方が声をかけてゆっくりと近づいてきた。
「おはようございます。今日から宜しくお願いします!」と気合を入れて豚足をピンと伸ばし深くお辞儀をする。海親方は「おうっ!宜しくな」ニコっと笑った。
するとブォォォォォ~ンという音と共に一人の男が現場へとやってきた。その車輌を見れば「KAWASAKI ゼファー400」という事は私にはすぐにわかった。
「Kawasaki ZEPHYR400」レーサーレプリカ全盛期に川崎重工が世に送り出した一台。46馬力2バルブの空冷ユニットを搭載し、その車体ラインは名車ZⅡを彷彿させるスタイル。
「ネイキッド」という言葉を生み出し、レーサーレプリカブームの流れを変える一石を投じた車輌である。
「おはようございます」そう言いながらフルフェイスを脱いだのは驚いた事に文学さんだった。 「ほほぅ、文学 お前バイクのるんか?懐かしいなぁカワサキか?」と海親方は文学さんに近づきながら挨拶をした。
文学さんは照れくさそうにゼファーという名前である事を海親方に説明しながら車輌を現場へ駐輪場へと押していた。文学さんもバイクに乗るんだと、心の中で少し親近感が沸き始めた。
331:華
07/02/11 20:37:19 LUvLb6Bf
私たちは作業着に着替えビル建設前の広場に集合した。そこには親方程ではないが肥大した筋骨隆々な男達と尖った眼鏡の事務員の女性が整列していた。
海親方の挨拶の後、私達の紹介が始まり、いよいよ仕事が始まろうとしていた。
文学さんは親方に恐る恐る質問し出した。「あ、あの… 面接の合格者って僕達二人だけなんですか?」 そういえばそうだと私も気付いた。
海親方の話によると合格者は私たち含め、たったの7人で残りの5名は突貫工事が進められている海山商事新社屋の建設現場へと向かっているとの事。
更に突貫工事の進められている新社屋にほとんどの重機類と海鮮組の若い衆が出向いているそうだ。
私達の現場にはほとんどの重機類は無く、数日間は階段を使って資材を上へ上へと運ばなければならない過酷な現場だった。
「心配すんなっ! こっちはよ!少数精鋭ってヤツだ!」と豪快に海親方は笑い出し作業が始まった。
10階建て予定のビルは既に図太い鉄筋が組み上がっており、私と文学さんは海鮮組の職人さん達へ下から階段を使って様々な資材を運ぶ事となった。
頼まれた資材を一段一段のぼり、職人さん達へ届けビル前の資材置き場に戻りまた一段一段のぼる。腰に力を入れ豚鼻を大きく開き酸素を送り込む。
まだ寒い季節にも関わらず作業着が暑苦しくなってくる。落とさない様に慎重に一段一段資材を担いでのぼる…
海親方は「ゆっくりでいい 自分の運べる量でいいから確実に上にもってこい」と私と文学さんに気遣ってくれた。
昼休みには二人ともグッタリしてしまい配られる特大のお弁当を食べる食欲が私には沸いてこなかった。
「花、おめぇ飯食わねぇともたねぇぞ」と職人達にからかわれたりしながら私はお弁当を食べ始めた。 「おいっ!文学!おめぇ隅っこいくんじゃねぇ! こっち来い!」と海親方が隅でお弁当を食べていた文学さんを呼んだ。
332:華
07/02/11 20:37:51 LUvLb6Bf
「飯ってのはよ!弁当であれみんなで食うのがうめぇんだよっ!覚えとけ」そう笑いながら文学さんの背中にバンッと叩くと「ごふっ」っと文学さんがむせる。
そんな光景を見て職人達はゲラゲラ笑い出した。
すると一人の職人さんが「文学!おめぇバイク乗るんだな 俺も昔は乗ってたんだよ」と言い出し、周りの職人達も嬉しそうにバイクについて語り出した。
W1やメグロ、ドリームナナハン、古い車種では赤トンボ(YA-1)の名前が飛び出していた。
「そういや、花はなんでウチ来たんだ?」と一人の職人が質問してきた。私は迷わず「バイクの免許とバイクのお金を貯めるために来ました」と言うと更にバイク話は盛り上がった。
バイクって不思議だと思った。今日初めて会う人達なのにバイク話でこうも盛り上がるとは思わなかった。そして嬉しさで胸がドキドキしていた。
そんな楽しい昼休みも終え午後の作業が始まった。資材を一段一段のぼり背中からは背脂がツゥーっと流れる。ググッと腰に力を入れ太股をあげる。
階段を踏み外さないように慎重に息を殺しながら一段一段とのぼる。 体力に自身のある私でもさすがにこの作業はきつかった。文学さんに到ってはフラフラと危なげながらも下唇を噛みながら重い資材を担いで一段一段のぼっていた。
18時になり今日の作業が終わる。汗びっしょりになった私達は糸が切れた様にその場に座り込んだ。だが充実感が私達の顔を緩めていた。
「花、明日も頑張ろう!」と文学さんが励ます。私も「明日も頑張りましょう!」と励ましあった。
厳しい肉体労働ではあったが昼休みのバイク談議や優しい職人さん達に囲まれながら私達は頑張って仕事を続ける事が出来ていた。
そんな初日から一週間も過ぎた日に「かもめビル建設現場」で事件が起きた。 3月末、桜のつぼみはまだ開いてはいなかった。
333:華
07/02/11 21:06:28 LUvLb6Bf
ね、寝ます…orz
334:774RR
07/02/11 21:19:07 BWusKgyK
>>華ちゃん
つ④
文学さんと俺には、大学生とゼファー海苔という共通点が。
335:774RR
07/02/11 21:19:18 PoazXaOv
携帯からで申し訳ないが乙です
336:774RR
07/02/11 23:26:44 D9RMgc75
また背油www
華さん乙です!つ④
337:774RR
07/02/12 00:36:59 hRnYK5wt
華さん④④④④④
338:華
07/02/12 11:35:52 RiW7jRng
おはようございます。
私、今日の夜は出かけてしまうので今夜分をアップしておきます。
↓続き↓
339:華
07/02/12 11:36:34 RiW7jRng
毎日汗をかき、家に帰ってはバイク雑誌に噛り付いて眠る生活が続いていた。今までは家に帰るとお菓子に噛り付いていた生活とは随分変わっていた。
そんな生活を続けるにつれ、体のコレステロールと無駄な脂肪が徐々に落ち始めていた。
過酷な肉体労働生活も一週間が過ぎていた。
新社屋建設に出向いていた鮫肌という名の25,6歳位の男が海親方と話し込んでいた。困った表情を浮かべながら職人達へ事を伝えるべく一旦休憩となった。
海親方の話によると新社屋突貫工事が思う様に進んでおらず、もう数日ほど重機類を新社屋現場で使う事になる。という内容だった。
「かもめビル」建設は少数精鋭の言葉通り順調に進んでおり海親方は重機類の件は問題無いと鮫肌という男に言った。
「おっし、一服いれるかっ!」と海親方が言うと職人達は座り出しタバコに火をつけ始めた。なんらいつもと変わらない一服休憩だった。
しかし休憩が終わろうかという時に事件は起こった。私は作業が始まる前にと御手洗いから戻ると先程の鮫肌という男と文学さんが口論になっていた。
340:華
07/02/12 11:37:30 RiW7jRng
「はっ! 東大?文学? ここで何の役に立つんだよっ!」鮫肌は腕を組みながら言い放っていた。文学さんは悔しそうにグッと堪えていた。
海親方や職人達はジッとその様子を伺っていた。 私は止めないの?と思っていた。
「大体文学で飯喰えるんか? 宮沢賢治だか知らんが銀河鉄道読んでなんになる くだらねぇ」と言い放つと職人の一人が「鮫!おめぇ言いすぎだよ」そう鮫肌に言い聞かせた。
その瞬間「うぉぉぉぉぉぉ」という声と共に文学さんが鮫肌に体当たりをする。職人達は「おぉ!やれやれ やっちまいなぁ」と何やら楽しそうに観戦し始めた。
鮫肌は咄嗟の出来事に不意をうたれ床に叩きつけられる。「み、宮沢賢治をぉぉぉぉ」と叫びながら鮫肌の顔を殴り始めた。
「こんのクソジャリィィ」と立ち上がり文学さんの腹に一発のボディーを入れると文学さんはくの字になり床に倒れた。「おめぇの知る文学ってのはそんなもんか」鮫肌は捨て台詞を吐き出した。
「鮫肌ぁぁぁぁ!!!」という声を叫びながら文学さんは鮫肌に蹴りをかまし、鮫肌は憤怒し転がっていた棒切れを手に取り始めた。
「バカヤロォォォ!!!」と太い声が響いた。
海親方がそう叫ぶと二人とも固まってしまった。二人の元へゆっくり近づき右手で文学さんを、左手で鮫肌の胸ぐらを掴み上げたまま吊るし上げた。
壮絶な光景だった。文学さんはともかく鮫肌という男は海鮮組の職人達と同じく肥大した筋骨隆々な男にも関わらず意図も簡単に海親方は腕一本で吊るし上げてしまった…
そして吊るし上げたまま海親方は二人にこう言った。
341:華
07/02/12 11:38:10 RiW7jRng
「文学!おめぇ自分に大義名分ある喧嘩に足使うなんざ無粋な真似すんじゃねぇ!」まずは文学さんを叱り出した。
「鮫!てめぇも喧嘩でモノ使おうとすんじゃねぇ!ちったぁ大人になれ!」と鮫肌に言い聞かせた。
二人は苦しそうに「すみません…」と言うと海親方は二人を降ろしバスッっと一人づつボディを入れ二人は海親方の腕に絡むように気を失った。
「貝塚ぁっ!貝塚いるか?」そう海親方は言うと職人達は「おぉ!出るか」と嬉しそうに様子を眺めていた。
「先程から後ろに居ます」そう言い出したのはツンと尖った眼鏡の事務員の女性だった。 「おぅ!こいつら寝かせとけ」そう言うと女性は細い華奢な腕で二人を担いで事務所へとスタスタ歩いていった。
「わぁははははは さすが貝ちゃん!見事な物干し竿だ!」と職人達はドッと笑い出す。驚いた…事務員といえど海鮮組は力が全てなのか…そう思わされた。
その後二人は揃って海親方の元へ謝りに来て鮫肌は新社屋現場へ、文学さんは持ち場へ戻った。
その日の仕事を終え、私は建設中のビル屋上へ上って夕日を何考えることなく眺めていた。沈みかけている太陽を見ながら私は海親方の先程の采配を思い返していた。
海親方から「何か」を教えられた感じがした。乱暴ではあるが一本筋の入った男の姿を見て一つの正義を見せ付けられた感じがした。そして色んな事を考え始めてしまった。
無言の失恋した。友人と再会した。異形の者に助けられた。そして決意を固めた夜の事。退屈だった高校二年生。気弱になった私の心。そんな事を考えていた。
「おぅ!花 まだ帰らないんか?」ポンっと肩に手を置いて海親方が現れた。「なんだ?悩みでもあんか?」そう海親方は言う。
私は首を左右に振る。「そうか それならいいけどな 夕日見てるのか?」と聞いてくる海親方に私は首を縦にコクンと下げた。
突然海親方は言いだした。
342:華
07/02/12 11:39:32 RiW7jRng
「夕日ってのは今のお前だな。」私は何の事だかわからず海親方の顔を見上げた。
「太陽ってのは昇ったり沈んだり輝いたり色んな顔を持ってやがる。」そう言いながら私の頭にポンと手を置き、優しく撫で始め「暗くなる前に帰りな」そう言い残して階段を下りていった。
私は再び沈みかけている夕日を見ると、豚頬に弧を書くように一粒の涙が流れていた。
343:華
07/02/12 11:42:31 RiW7jRng
長々とスミマセン…
もう少しだけ【海鮮組バイト編】続きます…orz
それでは失礼しますorz
344:774RR
07/02/12 12:33:00 +ebxGvN1
うっひょぉ!
つ④
345:774RR
07/02/12 14:26:34 L/HlXhk8
つ④
もうたまんねぇ!
346:774RR
07/02/12 16:16:50 EigdOtml
つ④
続きお待ちしております。
347:堀川くんの憂鬱
07/02/12 20:29:25 k26rknWf
「私を探して。」
受話器の向こう側で、彼女は言った。
そうして一方的に電話を切った。
「ガチャリ」
永遠とも思われる切断。
やれやれ。
僕は、すっかり温くなってしまった缶ビールを飲み干した。
彼女はFTRに乗って、僕の知らない何処かへ行ってしまった。
そして、「私を探して。」と彼女は言う。
OK。
時間だけは、たっぷりとある。
金も、3ヶ月くらいなら何とかなるさ。
仕事のことは・・・、また考えればいい。
まず、何をすればいい?
「教習所だな。」
彼女の名前は磯野ワカメ。
今までも、いろいろあったけれど、
僕のガールフレンドだ。
348:774RR
07/02/12 20:46:46 1PLENTw6
やれやれ=村上春樹
349:774RR
07/02/12 21:44:47 6ovtCfX1
おぉ、来たよ~
つ④
350:774RR
07/02/12 23:15:20 W9RkBkZn
堀川君って昨日の放送で、ワカメにいらん事教えた奴か?
みんなサブキャラよく知ってんな。
351:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/13 00:03:37 +jGRnjYG
【SCENE105】
4月も半ば過ぎ。完全なるバイク最適シーズン到来。
走っていて薄ら寒いくらいが丁度良い。都内では既に終わってしまった桜も、少し標高を稼げば再見する事ができる。
風と共に体に巻きつく桜吹雪は、バイク乗りにしか見ることの出来ないもう一つの「花見」だ。
僕とアナゴ君、そして鈴木さんは1985年初のツーリングを奥多摩にすることに決めた。
前月に賊に破壊されたNinjaのキーシリンダーの出費は痛かった。・・・だが、Ninjaは鈴木さんのおかげですぐに
手元に戻ったのだし、授業料と捉えれば決して高いものではない、と自らに言い聞かせた。
待ち合わせたアナゴ君、そして鈴木さんも道中で合流し、3台の大型バイクは国道20号を西へ。
新宿の高層ビル群がミラーの中で遠ざかる。うららかな春の陽気は、いつも以上に目に入る世界を明るく彩る。
そんな陽気のせいだろうか。先頭を行くアナゴ君のペースが上がる。まだ車が多い府中市内にも関わらずだ。
右に左に車をかわす。走っていようと停まっていようとお構いなし。決して褒められたような運転ではなかった・・・、が
予知予測に基づいて流れを読むのではなく、次々に発生する刹那の状況に対して若い反射神経任せのライディング。
今思えば、そんな走り方はその時が初めてでは無かったかもしれない。僕とアナゴ君はライディングへの、そして
スピードへの「慣れ」で、心のたがが緩んでいたのかも知れない・・・。
352:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/13 00:04:16 iq+y2xF3
遅い!遅い!僕もアナゴ君も、心地よい春風を切るライディングを妨げる無粋な4輪の群れを押しのけるように走った。
もはや渋滞を作り出す4輪車が悪であり、それら悪を切り裂いて走る僕達に正義があるような、おかしな義侠心すら
持ちあわせていたような気がする・・・。八王子付近に着いた頃、後ろに居たはずの鈴木さんの姿は無かった。
道路脇の自動販売機でコーヒーを買った頃、鈴木さんが追いついてきた。
「二人とも、大丈夫かよ。あんまり無茶するとあぶねーぞ。」
鈴木さんは口調こそいつものように穏やかだったが、目はいつに無く真剣だったような気がする・・・。
「ハハハ!平気っすよ~。大丈夫、大丈夫」
アナゴ君は鈴木さんの心配をよそに緊張感無く答えた。僕もまた鈴木さんの言葉を真摯に受け止めてはいなかった。
・・・それは、この先に知る事になる鈴木さんの持つ辛い過去を思えば、あまりに軽く能天気な受け止め方だった・・・。
その後も、多摩川の渓谷美に目もくれず僕達は走った。細く、前車をパスし辛い国道411号線にストレスを感じていた
僕とアナゴ君は、奥多摩湖で停まることなく料金所を抜け、奥多摩周遊道路へ。
冬場の鬱憤を晴らすが如く、僕とアナゴ君は走った。コーナーの先に潜むリスクなど頭に無かった。一般車両など当然の
ように瞬間的に追い越し、所々のコーナーに置いてある小さな花束など自分達には無関係なことだった・・・。
ステップを路面に擦り付けなければ「負け」だと思った。ブレーキを遅らせ、無理なスピードで突っ込む事が「勝ち」だと
思った。若く、そして愚かだった・・・。
353:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/13 00:05:47 iq+y2xF3
風張駐車場に僕とアナゴ君が着いた時、やはり後ろに鈴木さんの姿は無かった・・・。その代わり、そこには馴染みの
顔が居た。レッド達、横田基地所属の米軍人だ。
いつもの第三京浜常連組み4人と、初見のハーレーダビッドソンが3人ほど。どうやら彼らもこの陽気に誘われ、
ツーリングとあいなったようだった。そのうちに鈴木さんも合流。いつものようにバイク談義が始まった。
このヒョロヒョロの坊やがスピードのデビルだって?ウソだろ?・・・というような内容の事を、ジャンクフードとバドワイザー
によって丸々と太ったハーレーダビッドソンの大男に言われた。笑いが絶えない時間が過ぎてゆく。
いつもと同じ、バイクを軸にした心地よい時間が流れていた・・・。
米軍グループは勤務時間が迫っているという事で、僕らより先に奥多摩周遊道路を降りる事になった。
7台のバイクが駐車場を後にする際、CB900Fのマイケルがヘルメットのバイザーを上げアナゴ君に叫ぶ。
「Let's meet at the San-Kei!」
「OK!またな!」
僕らが彼らを第三京浜で打ち破ったあの日、一触即発の状態だった彼ら二人は、実は折り合いが良かったらしく、
妙に仲が良かった。彼らが二人で僕に仕掛ける小さなイタズラ・・・勝手にキルスイッチを切られていたり、燃料コックを
OFFにしておかれたり・・・などには僕も何度も餌食になった。
354:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/13 00:06:40 iq+y2xF3
その後も少しの間、僕ら3人は語り合う。話はやはりライディング。
「もっと速くなりてぇよなぁ。なぁフグタ君」
「そうだね。とりあえず目指すは関東最速?なんちゃって~」
鈴木さんは、そんな僕らの会話を聞くとも無く聞いていたような気がする・・・。
「どうしたらもっと速くなれますかね?やっぱ練習っすかねぇ?」
アナゴ君の突然の質問に、鈴木さんは驚いて我に返った。
「え?あ・・・あぁ、そうだな。うん、練習あるのみだよね」
そんな取ってつけたような言葉の後、少しの間を置いて鈴木さんは言った・・・。
「二人とも・・・。バイク乗りは、バイクで・・・」
そこまで言ったところで、鈴木さんは言葉を止め、タバコの煙を気だるそうに吐き出してから、
「・・・いや、なんでもない。忘れてくれ。」と言った。
その先の言葉が、場の雰囲気に相無い相応しくないと思ったのか、言うのが躊躇われたのかは解からない・・・。
その時の鈴木さんは明らかに浮き足立つ僕らとは正反対の心持ちでいたに違いない・・・。どこか憂いを湛えた彼の
瞳の、その理由が明らかになるのは間もなくの事だった・・・。
355:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/13 00:08:16 +jGRnjYG
「僕らもそろそろ行こうか」
3台はレッド達が数分前に降りていった檜原村方面へバイクを向ける。
下りというのに相変わらずのハイペース走行。そして少し走った頃、前方に異変を感じた。
クルマ数台の渋滞が出来ている。事故だろうか?その右コーナーの先は見えない。車線を跨いで停車するクルマの
列を追い抜いてゆくと、そこには信じ難い光景があった・・・。
センターラインを車幅半分ほどはみ出して停止する対向4輪車。そのバンパーとボンネットは何かが突き刺さったように
中心あたりがへこんでいる。フロントガラスも車体右側が蜘蛛の巣状に割れていた。
・・・そして、そのクルマの傍らには鮮やかなブルーのバイクが転がっていた。あの大きなテールが特徴的なバイクは・・・。
CB900F!まさか、先刻別れたばかりのマイケルのマシンなのか?
にわかには信じられず、さらにNinjaを進ませる。そうすると、CB900Fの先、対向4輪車の右後方にアスファルトに
仰向けで倒れている細身のライダーの姿。そして、周囲には慌しく動く数人の外国人の姿・・・レッドもいる!
心拍が上がる・・・。状況が知りたい・・・。だが知るのが怖い・・・。僕とアナゴ君は夢中でバイクを路肩に停め、彼らの
元へ駆け寄る。
356:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/13 00:10:13 +jGRnjYG
「マイケル!大丈夫かっ!」
アナゴ君が叫ぶ。マイケルは仲間達に介抱されていた。ヘルメットは脱がされていたが意識は無いようだった。右足からの
出血が著しく、血がアスファルトに流れていた。僕とアナゴ君はその光景を前に成す術がなかった。
それは、その悲惨な光景を前にして体が動かなかったという理由だけではない・・・。不幸中の幸いか、マイケルの仲間達は
世界最強の軍隊の兵士で、そのような不測の事態を前にした彼らの対応は機敏で、僕らの出る幕など無かったからだ。
こんなもの俺の戦友がベトコンの地雷で受けたキズに比べりゃ大した事無い、と言うような励ましを与えながら右足を止血したのは
先刻、僕をヒョロヒョロ呼ばわりしたハーレーダビッドソンの大男。後に聞いた話だが、彼はベトナム帰還兵だということだった。
日本語がほぼ完璧なジョージは、僕らが到着する以前に救急車を呼びに最寄の公衆電話まで走ったようだった。
彼らのプロの対応の前に、僕とアナゴ君はマイケルに励ましの声を掛ける以外、出来る事は何一つ無かった・・・。
その内、意識の無かったマイケルの顔が苦痛に歪み、声を発した。
「・・・Ow・・・Ouch!」
357:魔 棲 雄 ~マスオ物語~
07/02/13 00:11:30 +jGRnjYG
・・・良かった!意識が戻ったようだ。彼は痛みに悶えながらも、アナゴ君に向かって「Here I am again!」などとジョークを
飛ばす。良かった・・・命に別状が無くて本当に良かった・・・。
どうやら彼は右足を解放骨折していたようだった。後に解かった事だが、足以外にもあばらや鎖骨を折り、肩も脱臼して
いたようだった。
「トリアエズ、ダイジョブダ」
レッドがフーと安堵の溜息をつき、僕らに笑い掛ける。アナゴ君は安心したのかヘナヘナとその場にへたり込む。
奥多摩で事故に遭うと救急車が来るまで時間が掛かる、と言うのは道沿いの看板に掲げられているほどで、実際に救急車が
来るまで相当な時間を要したが、その間のマイケルはアウッチアウッチと叫びまくったかと思えば、愛車CBの状態を気に掛けたり
相手のクルマの運転手に毒を吐いたりと、非常に元気に振る舞い僕らを安心させた。救急車に運び込まれる際、アナゴ君に
親指を突き立て再会を誓う。
マイケルが救急車に無事収容された事で安堵する僕とアナゴ君、そしてレッド達だったが、だが僕は気が付いてしまった・・・。
過去にアナゴ君のエンジンブローの時など、様々なトラブルに際し機敏かつ正確に対応し、頼れる兄貴分だった鈴木さんが
この状況下で微動だにせず立ち尽くしていたことを・・・。そして、蒼ざめた鈴木さんの体が、小刻みに震えていた事を・・・。
358:774RR
07/02/13 00:16:35 5TbcFh6i
つ④
359:774RR
07/02/13 00:39:38 cV7ScESL
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。
360:774RR
07/02/13 01:48:31 C1v5j2gT
つ④
361:774RR
07/02/13 02:15:09 FKkvMXn2
そういえば3年前、奥多摩帰りに青梅街道で横田基地の
白人のR1と黒人のCBRが事故ってたな。
急に思い出した…。
362:774RR
07/02/13 02:20:41 pIIEayai
ぁ~ ゾクゾクするぅ~(;´∇`*)
やっぱ魔棲雄はたまらんバイ!
つ④
363:774RR
07/02/13 02:31:14 pIIEayai
おっと!!
忘れちゃいけねぇ!
まとめサイトの中の人も現実忙しいとのコトですが、まとめ乙ですm(__)m 助かります!
364:774RR
07/02/13 05:29:20 RdqcBZ/P
華氏、魔棲雄氏
つ④④④④④④
最高だぜ!
365:774RR
07/02/13 06:41:38 QgOZm56p
泣きました。まじで。
366:774RR
07/02/13 10:31:03 EDV2LBbP
マスオ最高!!
つ④④④
367:774RR
07/02/13 16:40:24 LEEowcvr
サルベジ
368:774RR
07/02/13 18:08:04 OeBAofr9
久しぶりに鳥肌が立った
369:華
07/02/13 20:28:47 7u34GKU4
魔棲雄さん つ④ サイコーです!
ぁ、兄貴ぃ…(´;ω;`)
私も続きます。
↓続き↓
370:華
07/02/13 20:29:28 7u34GKU4
明日から高校三年の新学期が始まる。いつしかラジオに流れていた桜開花情報は見事にハズレ、この日は桜が満開である。
春休み最後、そして海鮮組最後のアルバイトとなった。少し寂しい気持ちもあったが何事も無くアルバイトを終えて私と文学さんは「かもめビル」前のプレハブに呼ばれた。
「かもめビル」の現場で残す作業は内装だけで海鮮組とは別の内装屋が受け持ち完成となる。つまりこの現場での海鮮組は全ての作業を終える事が出来た次第だ。
私達二人はプレハブに入り、海親方から給料を頂いた。「ありがとうございます。」と二人は声を揃えて海親方にお辞儀した。「おぅ お疲れさんな」と海親方は優しい目で言った。
初めて手にした給料袋に感無量の気持ちが湧いてきた。働く事の喜びを初めて味わえた瞬間だった。
「どうだい。文学、おめぇさえよけりゃぁまだウチで働くか?突貫じゃねぇから日給は下がるがどうだ?」と海親方が文学さんに提案してきた。無論あの一件以来の文学さんは海親方を心底尊敬していた。
「は、はい!お、お願いします!」文学さんは嬉しそうに答えた。
「おい、花 おめぇ進路決めてんのか?」と聞いてきたが、私はまだ進路を決めて無く悩みながら「いえ、まだ決めてません…」そう答えた。
「俺はな、三流だが大学出てんだよ。おめぇも大学行け。きっと人生の大きな糧となる。」海親方が私に優しく言う。
「で、でも…私…勉強は普通位だし今から受験勉強は難しいんじゃ…」おどろおどろ答えると「たった今、ここにいい教師が出来たじゃねぇか!なぁ!文学」そう海親方が文学さんへ顔に似合わないウィンクをパチッと飛ばした。
「ふふふ いいですよ 僕でよければ勉強教えますよ。」そう言いながら海親方にウィンクで返した。そんな文学さんの仕草を見て海親方は豪快に笑い出す。