07/02/04 01:20:20 Shqg/Qn+
程なくして、真っ赤な回転灯が近づいて来た。僕が呼んだパトカーだ。
第三京浜では疎ましい存在である白と黒に塗り分けられた警察車両が、その時ばかりは心強い味方に見えた。全く
調子よいものだと自分でも思う。
すぐに現場で警察官からの事情聴取が始まった。もう一人の警官は、駐輪場周囲の検証を行う。
「じゃあ、カギとチェーンは掛けてあったんだね」
「・・・はい」
パトライトの灯りに誘われて、何事かと近所の視線が深夜にも関わらず集まる。被害者のはずの僕は、まるで犯罪者
のように俯きながら警察官の質問に答えた。
「もしかしたら、そのうち出てくるかも知れないけど・・・でも、どうかなぁ・・・」
警官は他人事のようにそう言った。若い僕はその言葉に少々苛つきを覚えたが、そもそも他人事だ。無理も無い。
当時のバイク盗難は、現在主流の売買を目的としたプロの窃盗団によるものとは毛色が異なり、今回のような暴走族や
未成年者が、自らが乗る為に行うというのがほとんどだった。
その場合、幸運にも手元に戻ったところで傷だらけの廃車寸前という事が多かったし、そもそも手元に戻る確立だって
相当に少ない。