06/09/07 12:25:05
「アハハハハハハハ……!アッハ!アハ、アハハハ!」
高見沢は笑い転げる。おかしくておかしくてしょうがない、といった感じに。遠慮も躊躇もなく。高らかに笑う。
そこにはやはり、あの折り目正しい女教師の面影はなかった。
「美澄……さん?」
「ヨミ…お前なのか?」
「あは!はぁはぁ…バカね、あんたたち…!あはははは!」
そこで笑いはピタリと止んだ。
「とんだ名探偵だわ、助手さん」
鋭い眼で僕をにらむ。
「二重人格?妹?妊娠?…どれも大間違いだわ」
どういうことだ……まさか、まさか彼女は?
「あたしは最初から最後まで、高見沢清美よ」
「じゃあ……お前…」
依頼者の声は震えている。
「そう。楽しい遊びだったでしょ?
まさかあんた、想いを伝える勇気のない自分を好きな女が、幽霊のふりして通ってきた、とか本気で考えてたわけ?バカじゃない?遊びよ、遊び。
相手は誰でもよかったわ、別にあんたじゃなくても。……幽霊になるとき、コンタクトくらいしとくべきだったわね。あんたの顔まともに見たの、今日が初めてよ」
「嘘…だろう…?嘘だと言ってくれ…」
「嘘じゃないの。残念だけど。あたしは男が欲しかったのよ。めんどくさいカケヒキのいらない、自分の都合のいいときにだけ遊べる玩具が。……あんたみたいなダメ人間、うってつけだったわ」
「信じない!俺は信じないぞ!」
「どうぞご勝手に。でもあたしはあんたに飽きたから、もう会うことはない。今後二度と。
……なにさ、せっかく後腐れないよう幽霊らしい消え方してやったのに。
あんたみたいなうだつの上がらないカスみたいな人間があたしみたいないい女抱けたのよ?せいぜいいい思い出として胸にしまって、これからはその思い出にすがって生きなさい。
……感謝してほしいぐらいだわ。あたし、処女だったでしょう?」
依頼者は、泣いていた。すすり泣く彼を、高見沢清美は冷酷に見下ろしている。
「いい思い出よね?今は医学が進歩しているから、本当は三回目の処女喪失だったけど」
僕は、彼女への怒りを抑えきれそうにない…!
「先生……もう止めませんか」