06/07/22 09:43:31 bylFPANM0
知り合いの話。
一人で夏山に入り浸っていた時のこと。
ある夜、テントの外で「ヒャン、ヒャンッ」と動物の鳴き声がする。
チワワのような鳴き声だな。
そう思い顔を出したが、小犬の姿など見当たらない。
代わりにテントの前に鎮座していたのは、何の変哲もない小さな箱だった。
一辺が十センチくらいの、水色の小さな紙製の箱。
見つめていると箱は小さく飛び跳ね、「ヒャン」と鳴き声を上げた。
何だ何だ? 思わず駆けより、しっかと箱を捕えて蓋を開けてみる。
空っぽだった。埃一つ入っていない。微かにハッカの香りがした。
釈然としない彼は、蓋を閉め直してもう一度放置してみた。
しばらくすると、小箱は再び「ヒャンッ」と飛び跳ね出した。
確認したがやはり何も入っていない。
蓋をせずに放置すると、今度はいつまで経ってもウンともスンとも言わない。
蓋を戻すと、また不定期に鳴き始める。
何とも面妖な。しかし明日も早い。いつまでも相手をしていられないので、
放ったらかして寝ることにした。
剛胆にも子犬のような吠え声を枕に、彼は寝入ったのだそうだ。