06/04/23 20:15:51 q5cKLA8f0
扉なんか開けなければ良かった。
確実な死がそこに待っていると知っていたら、どんなことがあろうと
扉を開けるような愚は冒さなかったに違いない。
でも……もう遅い。
俺は扉を開けて、見てしまった。
―泣き続けるバンシーを、見てしまった。
伝承に曰く
流れるような長い髪をたなびかせた、青白い顔
泣きはらしたせいで紅くなった瞳
緑衣の上には灰色のマント
……若い女の姿であることなど、この際なんの慰めにもならない。
“死者が出る家にはバンシーが訪れる”
この家には、俺しか住んでいないのだから。