なにそのツンデ霊★四人目★at OCCULT
なにそのツンデ霊★四人目★ - 暇つぶし2ch500:片栗粉285('A`)
06/05/12 17:20:36 ds+IRU9sO
Σ
ポ、ポン介……!?

501:レイポン ◆ZMp2Jv9w5o
06/05/12 21:31:26 HMuCMFJg0
片栗粉ねっあんたは知ってるわっ
ひまわりの種あげる。遠慮しなくていいのよ?

502:片栗粉285('A`)
06/05/12 22:22:12 ds+IRU9sO
つ……つまりそれは片栗粉にヒマワリの種を加えると、
より強い幻かk…いやいや霊能力を得られると?
ハンターズ科学部、至急調査せよ! 繰り返す、至急調査せよ!

いやでも久々にレイポン読めて嬉しい俺ガイル

503:本当にあった怖い名無し
06/05/13 00:00:32 nHegHy990
レイポンキター!

504:本当にあった怖い名無し
06/05/13 00:42:31 dapRaXVv0
おかえりなさいレイポン!(´∀`)

そういえば、最近昔のコテを見かけないね
また彼らのSSを読みたいものだ

505:本当にあった怖い名無し
06/05/13 01:52:56 FtIUmddFO
>>494-497
萌 え た (;´д`)

506:ツンデ霊の入場です!
06/05/13 05:06:32 Mz8J8fHAO
メイドの土産はツンデレとはよく言ったもの!
献身的な萌えがいま実戦で爆発する!
「メイドさんと僕」美和さんだ!
 
兄は私のモノ!
邪魔する女は罵倒して罵倒して追い散らすだけ!
「ごめんね、お兄」よりツンデ霊妹だ!
 
私は学院最萌えなのではない!
ツンデ霊最萌えなのだ!
ご存じ御姉様!
「ツンデ霊女学院」!
 
いまやツンデレの神髄は姉にある!
私を驚かせる霊はいないのか!
「跡取り」姉
 
魚類最萌えこそツンデ霊最萌えの代名詞だ!まさかこの魚が来てくれるとは!
「レイトウマグロ」
 
超一流神様の超一流モフモフだ!
生で頬摺り萌え死にやがれ!
稲荷様の萌狐「祠のミカド」!
 
何でも有りならこいつが怖い!
酸化のピュア金属!
「銅タン」
 
ツンデ霊は口数少なくてナンボのモン!
超寡黙霊の「屋上の先輩」!


507:ツンデ霊の入場です!
06/05/13 05:07:53 Mz8J8fHAO
 
不幸少女は生きていた!
あのオナホールの衝撃を乗り越え更なる萌を磨いて甦ったぁ!「匠の業を訪ねて」!
 
すべての除霊へのベストディフェンスは私の中にある!
部屋憑き霊の神様がきた!
「部屋の主」
 
真の萌えを知らしめたい!「濡れおなご」
 
先輩殺しはいいのか!?
ツン魂冷めやらず!
殺すも生かすも思いのまま!
「電気をつけなくて良かったな2」!
 
特に理由は無い!
小動物が萌えるのは当たり前!
「ハムスター←僕←ツンデ霊」よりハムポン!
ミレレイには内緒だ!
 
悩殺なら誰にも負けん!
ツンのテクを見せたる!
「ツン・デレ・バトル」よりツンデ霊!
 
引き籠もって磨いたシュールな芸風!
ツンデ霊界のデンジャラスガール!
「俺と守護霊」より守護エモン!
 
ツンデ霊だから此処へきた!ストーリー、文脈、人物、一切不透明!
「スナップショット!」
 


508:本当にあった怖い名無し
06/05/13 11:18:10 wp701gv/0
>>506-507
哭けるッ!
今夜は哭けるぞッッッ!!

509:本当にあった怖い名無し
06/05/13 14:18:45 bGafPiMU0
>>506
あれ、ミカドって狐だったっけ?

510:本当にあった怖い名無し
06/05/13 16:01:35 Y4JQ6Io4O
>>506-507

このシリーズ大好きだ!
これからも頼むぜ!

511:本当にあった怖い名無し
06/05/13 19:27:10 mWOqZsOQO
モフモフ狐は確かあのチョコあげたら
「甘――― !!!」
ってやつじゃないっけ

512:本当にあった怖い名無し
06/05/13 21:59:26 wbOB+L760
こやつ 祟り神様を外しおるとは・・・・

513:本当にあった怖い名無し
06/05/13 22:52:12 jtIqy86g0
哭けた

514:本当にあった怖い名無し
06/05/13 23:01:37 50mGJlnE0
>「ハムスター←僕←ツンデ霊」よりハムポン!

誰かここにツッこもうぜw ミレレイ相変わらず不憫で萌えるが。

515:本当にあった怖い名無し
06/05/14 00:11:23 C/NOVzOlO
ごめん、ミレレイとレイポンの記憶がごっちゃな俺に
誰か説明してくれませんか。

516:本当にあった怖い名無し
06/05/14 00:57:53 ddIyjSiDO
>>472
霊視点で物語を進めていくのが新鮮で一番ヨカタ。
次回作もwktk

517:本当にあった怖い名無し
06/05/14 07:33:08 BqKzer2B0
登校してみたら花が飾ってあった。
ちょうど俺の前の席、工藤さんの机。
「あはは、何? イジメ?」
俺はそこに座ってる工藤さんに話し掛けた。
無神経なわけじゃない。そんな度胸のあるやつは、この学校にはいないと知っていたから。
部活の先輩ですら、彼女を呼び捨てにはしない。この地域は、彼女の親が経営する会社で
保っているのだ。容貌もキツめのせいもあり、イジメられるなんてイメージからは程遠い。

「そんなこと、するわけないでしょ。知らないの?」
俺の前の、そのまた前の席の、高見盛が振り向き、咎めるように言う。
(テメーには全然まったく訊いてねえ!)
……って言えたらなあ。
こんなヘンなことでもない限り、工藤さんとしゃべる機会なんかないんだよ!
俺、小心者だから!ブサイクだから!生物として同じ括りにいるのが申し訳ないから!
勇気を出して声かけたのにどーしてくれんだ。

「うん、何かあったの?」
としか言えねえ俺。弱え。
工藤さんは、目の端でこっちを見る。かんっぜんに無表情。
うお、怖え。たまんねえ!

「工藤さんね、昨日、亡くなったの。事故で」
テメーには訊いてねえ高見盛いいかげんに……

「……なくなった?」

高見盛は、伝えることはもうないとばかりに、席を立った。

518:本当にあった怖い名無し
06/05/14 07:34:21 BqKzer2B0
オイオイ脂肪が脳に詰まってんじゃねーのか?日本語くらいちゃんとしゃべれよ?
だがこれで新しい話題ができた。邪魔者もいなくなったしな!
俺は工藤さんの声を聞くべく、再チャレンジ。がんばれ、俺…

「亡くなったって、どの工藤さん?」
工藤さんはめんどくさそうに(見えるけどいつものこと)髪をかきあげた。
「私」
「ふうん」
「…………」
「…………」

はっ!? だ、ダメだ俺! それで満足するな俺! もっと会話に広がりを!

「え、えーと、ああ、演劇部で何か、やってるの? 役作りとか」
「いいえ」
「そ、その花は?」
「…………」
「…………」

が、がんばれ俺!

「もしかして、ほんとにイジメとか?」
「あなた、私に話してるのよね?」
「や、そ、そんなこと、される人じゃないと、思ってるけど」
「私に、話してるのよね?」
「う、あ、ご、ごめん」

いきなり顔を近づけられて、謝ってしまう。怖え。
俺みたいなゴミ虫が話し掛けられる身分の人じゃないよね、やっぱり。

519:本当にあった怖い名無し
06/05/14 07:35:51 BqKzer2B0
「そうじゃなくて――」
工藤さんは、ふいに、窓際に固まったクラスメイトたちに目をやった。次いで、
順繰りに教室を見渡していく。

俺も釣られてきょろきょろとしていると、あることに気が付いた。
全員が俺たちに大注目してる。
会話が続かなくて悪戦苦闘してる俺を応援してる、ってわけでもない。
てゆーか、今までのヘタレぶり、みんな見てたの?俺ハズカシイ!

「なんだよおまえら?」
精一杯の虚勢を張って、俺は怒鳴った。

静まり返る教室。
HR前のこの時間には、ありえなかった静寂。

「――アンタ、何やってんのひとりで」

誰かの、おびえを含んだ一言が、起爆剤となった。

つーか基地外?おまえやばいよ洒落になんねー呪いとかキモイ近づかないほうが興味ある
んなわけねー冗談はやめてよね何のつもりだか知らないけど見える人なのかよ頭オカシイ
でもいる気がしないそこにいるの何て言ってんだよなにそのツンデ霊もしかしてほんとに
霊能力怖いウソだよ前からそういうやつだったあたしは信じない面白いつもり………

わかった。
このイジメの標的は俺だってことが。
人に好かれるキャラじゃないと思ってたけど、けっこーショックでけえな。
工藤さんて、意外とノリいいんだ。こいつぁ新発見だ。

520:本当にあった怖い名無し
06/05/14 07:42:46 BqKzer2B0
俺は、今日はサボることを心に決め、席を立った。明日は…どーしよーかな。

「みんな、私が見えてないの」
「そうみたいだね」
さすが演劇部だよ。
「どうしてあなたは――」
「さあね」
アドリブ下手でごめんね。こんな会話だったらしないほうがいいから。俺にとっては。
「ちょっと待っ…!」

「ちょっと待てよ! そこに、いるのか? ほんとに?」
教室を出るとき、オカルト好きで、よくこっくりさんとかをやってるやつに止められた。
これも名演だと思った。

「ああいるよ」

俺がそういい残したドアの向こうで、また大きなざわめきがあった。
知ったことか。
楽しいかよおまえら。

521:本当にあった怖い名無し
06/05/14 07:45:47 BqKzer2B0

逃亡先には屋上を選んだ。
学校から出ず、イジメられっ子の気分を盛り上げたかったのが、その理由。
昼休みでもなければ、人は来ない。

と思ったら先客がいた。
だらしなく脚を投げ出して座り、煙草をふかしている。
野球部のエースで、有名なやつだ。なんて名前だっけ。

「よう。吸うか?」
意外なことに、向こうから話し掛けられた。
俺は首を振った。
「いいのか? 夏大近いのに」
彼は、ふっ、と短く息を吐き出した。笑っている。

「いいんだよ、もう。たぶん、俺らは試合に出らんねーから」
「へえ」
「……野球、興味ないか?」
「なんで」
「いや、もーちょっと突っ込めよってこと」
「ああ、悪い。なんで」
「さっきと変わんねー…」

彼は力なく笑う。
訊いたところで、話すつもりがあるとは思えなかった。

「おまえ、確か、み―工藤、さんのクラスの」
「ああ、後ろの席だよ」
「そっか…」

さすが有名人。把握のされかたが「3-A」じゃないんだ。

522:本当にあった怖い名無し
06/05/14 07:47:54 BqKzer2B0
「あの、な。何か、言われてたか?」
彼の口調から、弛緩したものが薄れた。漠然としすぎていて、何のことだかわからない。
が、あったことはただひとつ。俺は話したくもないが。

「工藤さんが死んだって。馬鹿騒ぎしてたな」
「それで?」
「べつに。くだらねーよ」
「は。くだらねーか。……この学校に、そんなやつもいるんだよなぁ」
「なんだよそれ」
「いや。少し、気が楽になった、気がする」
「?」
「そのうちわかると思うけど……おまえみたいなやつにだったら、話してもいいかな」
「??」

「工藤、さんが死んだのは―俺のせいだ」

彼はうつむき、そう告白した。
何を言っている?
3-Aの工藤さんの話じゃないのか?
またネタか?

「事故は、俺がやったわけじゃない。でも。俺が。死ななくてもよかったのに。助かった
はずなのに。俺が。俺のせいで。俺の――」

支離滅裂で、理解できない。彼が最も悔やんでいること、それがどうしても言葉に出せない
らしい。

523:本当にあった怖い名無し
06/05/14 07:49:29 BqKzer2B0

「やめて」

凛とした声。
俺たちの前に、工藤さんが立っていた。

「あれ、いつから?」
ほんとに気づかなかった。
屋上の扉は重い鉄製で、開閉の際には大きな音がするんだけど。

「ひっ!?」

隣で、息を飲む音が聞こえた。
見ると、彼は大きく目を見開き、固まっている。

「み、弥夜、お、俺は!ゆ、許してくれ!」
「呼び捨てにしないで」
「わ、わかった。お、俺のせい、俺のせいだ!」
「あなたなんかのせいじゃない。くだらないこと言わないで」
「悪かった!お、俺が悪かったから――!」
「何も悪いことなんかされて」

工藤さんが言い終わる前に、彼はものすごい慌てようで逃げていった。
なんだろうあれ?

524:本当にあった怖い名無し
06/05/14 07:52:42 BqKzer2B0
「工藤さんて、やっぱり怖いんだね」
「……やっぱりって、何」

形のいい眉がひそめられる。いや、やっぱり怖えって!自覚ねえのか!?

「い、いや?何でもないデスよ?と、ところで何あれ、彼氏とか?」
「冗談言わないで」

ぬお、冗談禁止?冗談でもないんだけど!とにかく会話が続かねえ!

「そ、そうだね、工藤さんの彼氏なんて想像できないし!」
「モテないって言いたいの」
「ち!?ちがっ!?あれ?なんでそういう方向にっ!?」
「どこが違うの」
「何もかも!アイドルがうんちしないのといっしょ!」
「あは、何それ」

おおお!笑顔キタ―!!めちゃくちゃ可愛い!どーしていいかわかんねえ!下ネタ最高!

「野郎なんてうんこだよ。うんこと工藤さんなんて組み合わせ、想像……」
「しないで」

今までで一番の殺気を感じ取り、俺は口をつぐんだ。うん、下ネタは引っ張るもんじゃ
ないな。大事なのは瞬発力だ。

525:本当にあった怖い名無し
06/05/14 07:55:12 BqKzer2B0
「それで、坪井君から、どこまで聞いたの」
「つぼい…あーそんな名前だった。べつに何も?工藤さんが死んだとか…死んだとか…」

ああ、俺、そんなネタでおもちゃにされて落ち込んでるんだっけ。
屋上に二人きりってシチュに、舞い上がってた。

「!!つーか、授業中!もう始まってるよ、工藤さん!?」
「私はいいの。もう、ね。それに今、教室には誰もいないから」
「へ?」
「あなたが嘘つき呼ばわりされてたから、なんだか気に入らなくて花瓶割ったの。だから」
「だから、って……?」

工藤さんは、小首をかしげて、頬に手を添える。お悩みのポーズだ。

「ううん、どうしようかな…ちょっといい?」
「うん。…え?」

目の前に、顔が近づいてくる。額にかかる髪を一度、かきあげて。
唇の感触が――

「……わかった?」

悪戯っぽく、工藤さんは微笑んだ。

526:本当にあった怖い名無し
06/05/14 07:56:36 BqKzer2B0
鼓動が、鼓膜を圧迫した。
感触はなく。体温もなく。ありえない距離にまで近づいた―重なった、彼女の姿を見て
しまった。

「み、みんなの話は」
「ほんとうのことね」
「死んだって」
「死んだみたいね」
「でもここにいる」
「そうね」
「幽霊」
「幽霊」

工藤さんは自分を指差して、そう言い切った。なぜだか、少し楽しそうに。

「わかったことがあるの。私が見える人のこと――」

今度は、俺が最後まで話を聞かなかった。
情けないことに、そこで意識を失ったからだ。


                おわり

527:ポン介 ◆ZMp2Jv9w5o
06/05/14 11:30:55 mUrxF8gq0
エエェェ(´Д`)ェェエエ

そこで終わりー?
とりあえずエクセレントGJ!

528:本当にあった怖い名無し
06/05/14 11:31:26 mUrxF8gq0
コテトリ失礼orz

529:本当にあった怖い名無し
06/05/14 16:02:39 C/NOVzOlO
GJ! 新鮮な視点で楽しみますた!

530:本当にあった怖い名無し
06/05/14 20:39:42 bxzaddwb0
おもしろかった、GJ!
主人公の霊に対する反応とか、リアルっぽくていいよね

531:本当にあった怖い名無し
06/05/14 23:16:19 LX4CbqzZ0
エエェェ(´Д`)人(´Д`)ェェエエ
作者もツンデレなのか・・・orz

532:本当にあった怖い名無し
06/05/15 00:15:28 PFQj2sgzO
なによ、結末なんて教えてあげないんだから!




って事?

533:本当にあった怖い名無し
06/05/15 06:57:02 LP3RwxE30
そうらしい

534:本当にあった怖い名無し
06/05/15 10:21:03 OE6Ql7Pm0
なんだこれ

535:本当にあった怖い名無し
06/05/15 23:47:09 PFQj2sgzO
まとめサイトの中の人、更新乙!\(^o^)/

536:見習いく~る幽霊
06/05/16 02:46:33 ylV1PEEl0
「うぐぅ…気持ちが悪いよぉ。 風邪でも引いたかなぁ…」
 なぜだか最近、体の調子が悪くなってきた。
 あんまり、幽霊に驚かない馬鹿と同居してるからかなぁ…
 体調を崩して、風邪でもひいたのかも知れない。
 これじゃ、幽霊としての自分が情けないよ。
 …あ、そこのキミ、何で幽霊が風邪をひくんだ、とか思ったでしょ。
 昔からよく言うじゃない、病は気からって。
 だから、気合いのある幽霊だって風邪ぐらいひくんだよ
「へっくち」
 ……とはいえ、こんなあたしの姿、アイツに見られたら笑われるんだろうなぁ…
 アイツ――そう、名前も知らないこの部屋の住居人だ。
 転入し、私が驚かせようと思った直後にアイツは言った。
『変な幽霊』
 …むぅ、すっごいムカツク!
 巷じゃ く~る な幽霊で通ってる(はずの)あたしだって、流石に頭に来たね。
 よりにもよって変な幽霊――
「へっくし、へくちょんっ!」
 ……あ~駄目だ、力説してる場合じゃないや。
 うん、寝よう。 風邪をひいた時にはそれが一番だ。
 布団を敷いて…って、しけないし…
 仕方ない、このまま寝ようかねぇ…風邪が治るといいけど…

537:見習いく~る幽霊
06/05/16 02:48:04 ylV1PEEl0
「で、おまえさんは何で、人の部屋のど真ん中で堂々寝てるんだ」
「へにゃ…?」
 寝ぼけ眼、開口一番にそう言う言葉が響いた。
 言ったのは、この部屋の住居人……
 ――しまった! 寝てるところジロジロ視姦されてた!
「なぁに今更慌ててるんだよ、どうどうすぴょすぴょねやがって。
 おかげで、俺も一瞬驚いたぐらい何だからな」
「う……うるさぁい。 体調が悪いんだからしょうがないじゃない!」
「体調が優れない…?」
 あたしの言葉を聞いて、ソイツは一瞬考え、一言
「幽霊…だろ?」
 と。 で、顔がゆるんでいくんだ、ソイツ。
 絶対笑われる。 ムカツク。
 ……と、思って、先の行動を予測していたんだけど、ちょっと違う展開になった。
「幽霊でも体調とか在るんだな…ちょっと待ってろ」
 そういって、台所の方へ引っ込んでいった。
 ……? なんだろ、いつもと違う反応。

538:見習いく~る幽霊
06/05/16 02:49:57 ylV1PEEl0
「ほらよ」
 暫く待って、ソイツは鍋を持ってきた。 その中からはいい匂いがする。
「ナニコレ?」
「卵雑炊、体調が悪い時にはこ~ゆ~食べ物が効果的なんだぜ」
 ………
 えと。
 なぜだかよく分からない。 けど、料理を作ってきたみたい
「食べるの? 誰が?」
「おまえが」
 ………
 思考停止状態? ちょっと待って、コイツ何言ってるの?
「なんで?」
「体調が悪そうだから」
 ………
 つまり、こいつは『あたしのために、卵雑炊を作った』わけで
 ………
 えぇぇぇぇ!? ちょ、まっ!
「あ!? あうぅ!? はう!?」
 あたしなんか、うまく言葉がでなくなってた。
 だってちょっと待ってよ。
 こいつにとっては、あたしは怖ぁい幽霊なはず! 言っちゃえば、そんなに好かれることも…その、ないはず。
 なんだけど!?
 それに、今まであたしなんか、散々こいつにからかわれたりもして!
 その、お世辞にも仲がいいなんて事はないのに。
 こいつ、あたしのために?

539:見習いく~る幽霊
06/05/16 02:52:41 ylV1PEEl0
「嘘……?」
 風邪をひいてからなのか、あたしの灰色の脳細胞もパニック状態だ。
「嘘なんかじゃねぇよ。 なんつうか、体調を崩した奴を放っておくなんて俺には出来ないしよ」
 そういって、中身をすくった匙を差し出してきて一言。
「あ……」
 卵雑炊を乗せた匙は、あたしの躰を貫通した。
 考えてみれば、あたしの躰は気合いを入れなきゃ、物に触れることも出来ない。
 んで、今の体調からそんなのはほぼ不可能状態になってる。
 そんなあたしを見て、ソイツは一言言った。
「あ~、やっぱり駄目かぁ。 しかしコレを捨てるのももったいないなぁ。
 ああ、残念残念。 自分で食べるとするかぁ」
 ………
 あろうことかあろうことかー。
 『あたしの為に作った卵雑炊』は、作った本人があたしの目の前で食べていった。
「むっかぁ~! な、なによそれ!」
「だって、しょうがないじゃなぁい♪」
 歌いながら、どんどん食べていくそいつ。
 くぅ! 乙女幽霊心を弄んで…!
 この恨みは絶対いつか晴らす! 晴らすったら晴らすんだ!

「…けど、ホント残念だよ」
「へ…?」
 何か言った気がしたけど、ま、いっか




540:見習いく~る幽霊
06/05/16 03:00:51 ylV1PEEl0
はいはい、空気の読めない俺が
>53-58の続きのような物を書き込みにきましたよってに。
あんまり気にしないで下さい。 ツンデレ気味もないし
んじゃ、寝る

541:本当にあった怖い名無し
06/05/16 03:16:59 D1h6XgaI0
んな卑下するな。面白かったよGJ。

542:本当にあった怖い名無し
06/05/16 12:14:31 +m5RCkfG0
続き物は最近少ないから全然おk
お耽美系の姉とか守護霊とか、もっと読みたいんだけど
>>428-431とかは続いて欲しいと思う キャラ立ってるし

543:本当にあった怖い名無し
06/05/16 13:10:34 YBr/3xqcO
男のか?

544:本当にあった怖い名無し
06/05/16 13:22:43 +m5RCkfG0
斜向かいの鈴木さんちの末娘の方も
コイツがデレたら最強

545:本当にあった怖い名無し
06/05/16 19:11:16 98lVzNer0
>>536-540
エレガントGJ!

第三者不在の場合は基本デレ全面押し出しっが
いいと思うっいいデレだった

>>542
お耽美系の姉って?あれ?w

>>544
kwsk

546:導入編。小娘と俺の嫌な日々
06/05/16 20:28:30 AOdfHNFvO
今日もいい天気だ。
俺は神にチョイスされた毎食パンの耳でOKな人間!だからそこらのパンピーみたく働く必要はナッシング。
 
さて、優雅にツンデ霊と戯れるとしよう。
「うへへへ、観念するんだな銅タン
いや!やめて!触らないで!
そんなコト言っちゃって…本当は感じてるんだろう?」 
ぽた、しゅうぅぅ
「こんなに泡をだしちゃって…ハァハァ」
ジョン・レノンも歌ったよな、イマジンは偉大だって。
想像力!萌えあがれ、想像力!
 
「…ウッ!…ふぅ~エクセレントォ!」
ごしごし
今日も太陽が黄色いぜ。
 
「……何…やってんのよ…あんた…」
 
「うおぅッ!?こ、小娘!いつからそこに!」
「…あんたが一人芝居しつつ銅に希硫酸垂らしてるあたりからいたけど?」
 
「シィィット!!視姦しやがって…俺サマのパラダイスタイムが台無しだ!
この絶壁胸!あやまれ!あやまれよぅ!」
「ちょっと逆ギレしないでよ!粗チンのくせに!」
 
なんてコトを!!
「ほほほ包茎ちゃうわ!見れ!このバズーカを!で乙女ちーっくに赤面しつつ指の隙間からチラ見しろや」
 
「…クス」
なんですか、その微笑ましいモノを見たような生暖かい笑いは?
ちくしょうポークビッツ!ポークビッツだと!?

547:本当にあった怖い名無し
06/05/16 21:18:44 98lVzNer0
・・・・(・ω・)
続きはー?

直球エロで実は笑っていた俺としては続ききぼんw

548:俺と小娘①
06/05/16 23:13:32 AOdfHNFvO
ああ、神は死んだ。
ニーチェ、あんたは正しい。
 
「そんな事より、ほら!次の見つけてきたわよ」
 
うるさいだまれそうさ俺は生まれたままの清いカラダさ童貞だし火星人だし―
って?見つかった?
 
「マジか!?貴様のアホ毛センサーにツ、ツンデ霊反応があったのか!?」
「アホ毛ゆーなぁ!…別にこの毛で探してる訳じゃない!」
 
「ともかくでかした!よくやったぞ貧乳!」
「貧乳じゃない!Bは貧乳じゃないもんッ!」
 
でやってきました、深夜の公園。
うん、いかにもツンデ霊サマが降臨しそうな雰囲気だな。


549:俺と小娘②
06/05/16 23:15:30 AOdfHNFvO
「そろそろ出る時間よ」
ブラ不必要娘がきょろきょろしながら言う。
「今度は平気なんだろうな?つか何の霊だよ?」
 
「えっと…義弟が心配で出てきたはいいけど不器用だから素直になれない義姉の霊…だって」
 
「!!ブラヴォー!!オォ、ブラヴォー!
テッパンだなッ!
imitation sisterキタ―(゚∀゚)―!!」
「……偽姉?」
 
「黙れ中学生。本場イングランドじゃこう綴るんだよ」

「どーでもいいけど。あ、いたわよ、あそこ」
 
小娘の指差す先には―
「 YES!YES!!YES!!!ナイスだ!
マジにハクいスケじゃーん!なぁ?」
「オヤヂうぜぇー!ってはやく行きなよ」
 
「おうよ!
会いたかったよー!
ねぇさあぁーん!」
 
 ぴと
 
「おお!いきなり寄り添ってきましたよ!で、でれキタ―(゚∀゚)―!!」
「良かったわね、その調子よ!」


550:俺と小娘③
06/05/16 23:19:25 AOdfHNFvO
 

 わたしと―
  ファイトなさい
 
「うはぁ!義姉さんいきなり馬乗りになってんですけど?」
「さすが義姉、積極的だわ!あんた童貞なんだからリードしてもらいなさいよ!」
 
 拳は強く強く―
  でないと骨を―
 
「なんかビキビキ筋をたてて拳つくってるけど!?」
「バカね、あんたが緊張してるからほぐしてくれるのよ!ほら力抜いて!リラックス、リラァーックス!」
 
  ジェノッサァァーイッ!!
 
「あがががががが何かタコ殴りなんですけど!?よく見たらジッポ握ってるよ?この人!」
 
「大丈夫!それツンだから!
YO!ツンK・I・T・A―!」
「YOH!SuGoi!ツンK・I・T・A―!!!
 
 
って死ぬ!死んじゃうよ!違う!
これ違うよパパン!」


551:俺と小娘④
06/05/16 23:21:38 AOdfHNFvO
 
なんとかガードポジションでしのいでマウントから脱出。
全力で撤退。
鼻曲がって前歯全折だが気にするな、俺。どうせ保険に入ってないし。
 
「ケッ、根性なしが」
「ふざけんな!このビッチ娘!そのツインテール固結びにすんぞ!」
 
「あーはいはい、次はちゃんとしたの探すから大丈夫、大丈夫」
 
「その意気だブラ要らず!よし、次こそは!」
「ウフフフ…そう…次こそは、確実に…ね」
 
ちょっと コイツに任せるのは不安になってきたがまぁいいや。
ツンデ霊を手にするまで俺たちの旅は終わらない!
 
【次回は小娘視点…の予定】

552:本当にあった怖い名無し
06/05/17 00:09:37 2fyDjGB80
携帯が鳴った。久しぶりにディスプレーに洋子の名前が表示された。
「もしもし、私よ。また事故起こしちゃった」

「なっ・・・なによ、今度もまたうろたえちゃって。
 べつに声が聞きたくて電話したわけじゃないからね。
 ただ・・・ 」 洋子は口ごもった。

「ただ・・・ なんだい」と例によって聞き返す俺。洋子は言った。
「今度も示談にしたいのに、持ち合わせがないの。だから・・・」 洋子は口ごもった。

「今度こそ、お金を届けに行けばいいのかい」と聞くと、女は取り乱して言った。
「ちっ、違うわよ。それじゃあまるで、あんたに来て欲しくて電話したみたいじゃない。
 バイク便を手配したから、お金を渡してくれればいいのよ。勘違いしないでよね」

俺は答えた。
「洋子、もう事故の事は気にしなくていいんだよ。それに最新の手口なら郵送だよ。」
生前の洋子は流行に敏感だった・・・

553:見習いく~る幽霊
06/05/17 04:17:30 5gq7kya+0
6月21日
 アイツが実家に帰るって言って、家を出ていった。
 なんだか、久々に家族が一同揃うらしい。
 何でこんな時期に。 こいつの一家というのがよく分からない。
 とりあえず、久々に一人になることになる。
 ひまなんで、日記でも付けよう。

6月22日
 朝起きたら、誰もいなかった。
 当たり前、アイツ、実家に帰ったんだもん。
 もてる気力を振り絞ってテレビを付けてみる。
 そういえば、あたしが一人で新しい住居人を待っている間だって
 こんな文明の利器もなかったんだよねぇ。 う~ん、いい時代になったもんだ。

6月23日
 ちょっと暇をもてあましてきた。
 ま、24日に帰ってくるとの話なので、一人の満喫ももう終わってしまうだろう。
 ちょっと残念だ。
 ま、あいつが帰ってきたら く~る に練った作戦で驚かそう。
 そうだ、あたしは幽霊なんだもん。 驚かさなきゃ。

6月24日
 一日待っても帰ってこなかった。
 ま、そう言うこともあるよね。
 驚かすネタは、明日に取っておこう。

6月25日
 何をやって居るんだろう。
 昨日帰ってくるっていったのに、今日も戻ってこなかった。
 腹いせに、アイツの食器を割っておいた。
 世間ではポルターガイストの一言ですむことだろう。
 でも、絶対アイツは驚かない。 むしろ怒るだろう。

554:見習いく~る幽霊
06/05/17 04:18:13 5gq7kya+0
6月26日
 帰ってこない。 寂しい……

6月30日
 ああ、そういえば、あいつが帰ってくるまでの間、日記でも付けようって思ったんだっけ?
 忘れてた。
 あいつはまだ帰ってこない。

7月1日
 寂しい。 一人ってこんなんだっけ。

7月7日
 帰ってきた!
 この日記もお役御免だ!
 なんでも、実家の人間に長らく引き留められたらしい。
 にしても長すぎだ! 3日の予定が弐週間だなんて!
 こいつ、どれだけ、あたしが心配したと思ってるんだろう。
 ―ご、ごめん。
 そいつはそう言った。
 なによそれ。
 謝られたって、過ぎた時間は戻らないんだよ。
 でも、戻ってきてくれただけでも嬉しい。
 これで、考えに考えを練った驚かし方が出来る!

 ……それだけなんだからね、勘違いしないでよ!

555:眠い…
06/05/17 04:21:50 5gq7kya+0
はいはい、空気読めない俺が更に続きを書いてみましたよ。
いつもと趣の違った文が書きたかったのが原因。 仕事中にこんなの考えてるから
俺って人間はツンデ霊が好きなんだよ。

>548-551
おまいのテンション大好きだ。
テンション高い良質書けるのが羨ましいGJ!

>552
俺なら洋子さんに振り込むんだろうな、写真付きで

556:本当にあった怖い名無し
06/05/17 11:14:46 mug3eo3MO
>>555
十分おもしろいから。無闇に髭すると
むしろ空気読めてないっつーの。









GJ

557:本当にあった怖い名無し
06/05/17 13:14:12 4z6fxoHU0
>>552
なんか切ないぞ
面白かった。GJ

558:本当にあった怖い名無し
06/05/17 19:41:15 /AwwYy6P0
下がりすぎてるからageるだけなんだからねっ

559:はじまり。
06/05/17 19:59:30 Hyva5BY70
「げ」
「あ?どした?」
「……」
「何?」
「やばいかな」
「だから何―ぁ。やばいんじゃね?」
「え?」
「やばいだろ。後ろ後ろ」
「何―」
「志村、後ろ」
「馬鹿」
「ごめ、おっ、先、逃げるわ」
「ちょっ、おい!…………あんだよぉ、っとに。後ろに何かあんの―」

――。


560:いち。
06/05/17 20:00:15 Hyva5BY70
「うは。まじやばくね?ここ」
「やばいだろー……。やばいって……」

……。

「なにビビってんだよ。やばいのがイイんじゃん。ほれ見ろ。こんな廃工場のど真ん中に石あるぜ」
「なんで石なんかあんの?まじ怖いよ……」

…………。

「おぅおぅ。ご丁寧にお札貼ってあるし」
「帰りたい……」

………………。

「なんか彫ってあるぞー?あ~……比、蔭……沙、紀……?女の名前?お墓かなー、これは?」
「なにニヤニヤしてんだか。とにかく怖いって…………げ、」

――。


561:に。
06/05/17 20:01:00 Hyva5BY70
「ひっ……!!??」
振り返った途端、目に入ったのは真っ黒な人影。
その存在どころか、気配すら感じなかった。僕は、息を呑んだ。というか、息を殺してしまった。
棒立ちで、突っ立っているその人影。着ているものは白い―水色だろうか、暗くて色がよく分からない―、膝下まである丈の長いワンピース。
けれど、真っ黒だ。白から露出している腕や、脚。そして、顔。全てが、真っ黒だ。
肌が黒いのではない。
どんな腕をしているのか、細いのか太いのか。
どんな脚をしているのか、長いのか短いのか。
どんな顔をしているのか、見えない。真っ黒。表情どころか、顔が見えない。
その身体中を覆い尽くす長い髪に隠れている、だけか?
とにかく、黒、に多い尽くされている、その人影。尋常でない。有体に言えば、生きてない。
「ぃ……ぃ…………!!!!」
情けない悲鳴も上がらない。喉が、挫けてしまった。恐怖で。
僕が指一本も動かせないで固まっているところ、微かな……、
声?

……ォ、ォ……ォ―ォ…………ォ……。


562:さん。
06/05/17 20:01:41 Hyva5BY70
目の前で立ち尽くす女性―ワンピーススカートだし、女性だろう?たぶん。何か聞こえてきた。
僕が凍っているように、彼女も一歩も動くことがない。ただ、直立したまま。音―声、か。
真っ黒は、真っ黒なまま、何も見つけられない。とても不安定。誰なのか。……これは、

泣いている?

……ォ―……ォォォォ……ォ、ォ、ォ……。

ォ―ォォォ……ォォォォォ……―ォォォ!!

オオオオォ……オオオオオオオオオ!!!!

泣いている、のか……。
僕は呆然としてしまった。人影、おそらく女性だろうが、それが、泣いている。
顔が見えない。口も見えない。この、彼女が泣いていると判断するのは、彼女から、泣き声が聞こえてくるからだった。
ぼんやりと、彼女の方から、低い、なのに甲高い、強烈な響きが聞こえてくるからだ。それが泣き声に聞こえる。
彼女から視線を外すことができない。怖い。
唐突に出現したことも怖かった、しかしそれはむしろ、驚きだ。
怖いのは。真っ黒な彼女が意味も分からず泣き続けていること。そしてその泣き声が、凄絶だから。
これ以上は、耐えられなかった。

僕は、気を失ってしまった。


563:よん。
06/05/17 20:02:21 Hyva5BY70
背中が冷たい。キンキンしている。耳に、板敷きの上で砂を踏みしめる音。誰か、近づいてくるようだ。
静かだ。また一歩、砂を踏みしめる音。それ以外に何も聞こえない。しん、としている。
また一歩。一歩。一歩。
目が覚めた。うっすら。頭を下げた姿勢で、石碑に寄り掛かっている。脚が、見えた。
ぞっとした。真っ白。陶磁器みたい、そう思った。投げ出した僕の足元に、ほっそりとした陶磁器が二つ並んだまま。じっとしている。
「……」
顔を上げていいものか……。砂を踏みしめる音が消え、打ち捨てられた廃工場には、何もない。
まばたきを数度繰り返しても、彼女はそこを動かない。ちょっとがに股……。
靴なんて履いてたのか。小学生が履くような、布とゴムだけでできた、簡素な靴だった。
「……」
顔を上げて、みようか。待ってる、のかも。
ゆっくりゆっくり、視線を上げていく。
陶磁器のようなほっそりした両脚に、
白とも水色とも言えないような、淡い色をしたワンピース、
腰の辺りにようやくボタンが見えるような、シンプルなデザイン、
両腕も、真っ白な、細長い、水を含んだかのような長い長い髪が巻きついている、
胸元、小ぶりです……、
首はさらに白く、細い、
彼女と、目が合った。


564:ご。
06/05/17 20:03:02 Hyva5BY70
強烈、
泣き声の比じゃない。く、とおかしな音をたてて僕の喉が鳴った。脳味噌が、停止、だ。
なんて顔してるんだよ……。
錆だらけの、何を製造するとも知れない機械に囲まれた薄暗い廃工場の真ん中で、女が立っている。
顔を歪めて。
最初に思いついたのは、これは泣き顔だろうか。いや……
そんなもんじゃない。そんな生やさしいものではない。泣き声は、凄絶だった。でもこの顔は、この顔は……何だ?
思いつかない。だから、
「なんて顔、してんの……?」
驚きとも、慰めとも、なんとも言いようのない、そのまんまの言葉が出てきてしまった。ぼて、と口から転がり出た。
彼女は、何も―動きもしない。黙って、顔を歪めている。
そのまま僕らはじっと見つめ合う形になった。僕が、彼女を見上げる形で。彼女が、僕を見下ろす形で。
見つめたまま、ぐ、と今度は唾を飲み込んだ。息をするのも忘れた。

気付かなかったのだろうか。ん、と手元に違和感を感じた。
お札。
背中を預けている石碑に張られていた筈の、お札。
友人―薄情にも彼は逃げ帰ってしまった―が石碑に刻まれた文字を覗き込んでいる間、僕はお札を突っついていた。剥がれちゃった訳だ。
はっと彼女の方に視線をやると、彼女は変わらず棒立ちのまま、泣いているのかどうなのかそれすら知りえない、顔を歪めている。


565:ろく。
06/05/17 20:03:42 Hyva5BY70
お札、元に戻さなきゃ。
それと、
泣き声、だったからやっぱり泣いているのかな。

怖かったけど、
泣かせたまま突っ立たせておくのも、ね……。

恐る恐る、彼女の様子を窺いながら。じっと歪めている。じっと立っている。
石碑の元の位置にお札を貼り直す。
不思議に、ぺた、と貼り付いた。
ほ、と僕は安心した。そうしてから、またもや、恐る恐る彼女を振り返る。
「あれ…………?」
彼女はもう、いなかった。


566:なな。
06/05/17 20:04:22 Hyva5BY70
「あの廃工場、こわかったなー」
「置いてけぼりにしたくせに……」
「ハハハ。お前本気でビビってんだもん。俺の迫真の演技でマジチビったんじゃね?」
「まさか……」
あの夜、友人は何も見ていなかったそうだ。後ろ後ろ、とか言ってたのは演技だった。
でも、僕が振り返ったときには―ホンモノ登場、と。
別段危害を加えられたわけでもなく、彼女は泣いていたようだし……。なんとなく、友人には、彼の迫真の演技から先のことを話していない。

さて……。
危害は、加えられなかった。怖かったけど。
だけど、呪われたような気はする。いや、嘘だな。魅了された、かな。
あの歪めた顔に魅了も何も無い気はするが、なんだ、あれだ、そのぉ……。
まぁ、気になるわけだ。あの夜から。あー……あの女性のことが。

じゃ、ま、そう言うことで、行きますか。廃工場。


567:はち。
06/05/17 20:04:55 Hyva5BY70
あの夜と同じように、廃工場に忍び込む。忍ぶ必要も無い程、打ち捨てられてはいるのだけど。
今日は、一人だ。ま、当然か。
石碑。比蔭沙紀。それでお札。お札には「封」とか書いてある。お墓だかなんなんだか、分からないな。
「あのー、すみませーん」
呼び掛けてみる。しばらく、ぼんやりと自分の声が、天井の高い室内に響いた。返事は無い、か。
腕組みで思案顔などしてみる、が。どうしたものかね。
お札、剥がしてみる?
「……あの泣き声と顔を再現するのはなぁ」
神経、というか、命そのものが磨り減る心地だ。
「そういえば……」
彼女の素顔、見てないな。ずっと歪めてたし、な。ああ真っ白だと、な。ちょっと、わくわくしてしまう。
やっぱ呪われたんかな自分は、と苦笑。しかし、
「どうするかなぁ」
勇ましく乗り込んだはいいが、肝心の―そう、肝心の―彼女がいないんじゃなぁ。
やっぱり、
「剥がす?でもなぁ……」
あの凄絶な泣き声と、強烈な表情。嫌がってるようにも見えたしなぁ。
「うーん……」
考えを言ったり来たりさせていたところ、

なぁに?

そ、と声が聞こえた。


568:きゅう。
06/05/17 20:05:28 Hyva5BY70
「え!?」
聞こえた!?今、声が!

なぁに?

やっぱり!!ころんころんと軽やかな声が、聞こえる。彼女、か。
「あ、あっあのっ!自分は、前、その、あれ……お札!剥がしちゃった馬鹿で、えっと!」
破滅的な自己紹介だった。後は、あの、その、えっと、だけ。段々と僕の声は消えていく。

ふふっ。

笑った!?おかしそうに。その、一言―にも満たない微笑む声―。簡単に僕は魅了された。
女の子に笑い掛けられてどきどきしたのは中学校以来じゃないか……。ちょっと恥ずかしくなった。
それでも何を喋ったらいいのか分からず、相変わらず僕は、えー、だか、あー、なんて。

また剥がしに来たの?

ころんころん。
うっとりしてしまう。この声は、魔物だ。でも、魔物でいい。ああ駄目だ、参ってしまう、この声。

また剥がしたら、殺そうかな?

はっと。ぞっと、した。でも、うたた寝でもしたくなるような、ころんころん。
「あ!いや!!そんなつもりは!!」
思ったくせに。我ながら安直な奴だ。


569:じゅう。
06/05/17 20:06:06 Hyva5BY70
なぁに?

「え?」
何、とは?

何か用事?

…………。
惚れちゃいましたー、なんて。死直行、かな?剥がしたら殺す、とか言ってたし。正直に、
「えー、と。なんか、あー、また会って……みたくて、ですね」

ふふふっ。

うおわ!!駄目だこの声!!理性的になれない。耳に心地よすぎる。

幽霊を誑し込むの?

あ、やっぱり幽霊ですか。なんとなく、何故か、納得。
いやっ、誑し込む、なんて、つもりでは……なくて。

やらしい。

ころんころん。意地悪そうな声だ。あ、駄目だ。落ちた、僕。そして、落ちた男は、『押す』だけだ。


570:じゅういち。
06/05/17 20:06:41 Hyva5BY70
「あのっ!会ってもらえませんかっっっ!!!」
我ながら、ストレート一直線だ。もう、『押す』しか……、

いい、です、よ。

「へ―」
ころんころん、今度はリズムをつけて。すんなり。あんまり簡単に了承が得られた。僕は意外そうな顔で呆然と、
石碑の後ろで、何かが形作られていく。するする、と陰から抜け出てきたかのように。あっという間に、彼女が、現れた。
「はい、こんばんは」
長い髪を一撫で。真っ白な顔を薄暗闇に輝かせ。ふ、と微笑む、彼女。
呆然としてしまった。あの、歪めた顔。成程。真顔は、笑顔は、こんな、か。
「へ、」
恐ろしい。これは、怖い。恐怖だ。とんでもなく、美しい。目も、鼻も、口も、涼しげに澄んでいる。濁りが無い。そのくせ、愛嬌のある笑顔で。ふ、と微笑んだ。
「さっきから、へ、へ、へ、って……やっぱりやらしい」
言葉とは裏腹に、表情に嫌悪感は微塵も無い。
「あ、え、こんばんは……?」
僕も、御挨拶。


571:じゅうに。
06/05/17 20:07:15 Hyva5BY70
昔。稼動する工場。大勢の作業員。ごうごう、と機械の駆動する音。
所狭しと奔走する作業員。女性。美しい。大勢の男性作業員がちらちら窺っている。
視線にお構い無しに、額に汗を浮かべあっちにこっちに走り回る女性。
おっと。誰が仕舞い忘れたやら、作業用の小道具。彼女はそれに気付かず。ああ、足を掛けてしまった。
目の前には、

ごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごう

フル回転する鉄の塊。熱い熱い鉄板をもっと薄くするために、

ごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごう

彼女は身体のバランスを失って、頭から、

ごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごうごう

大騒ぎ。


572:じゅうさん。
06/05/17 20:07:46 Hyva5BY70
静かな工場。
お祓い?石碑が誕生。お札まで?
化けて出たのかねぇ、綺麗な方だったがねぇ、残念だな、これあの娘のワンピース、お供えしとけ―
いろいろとコメントが。

いつしか誰も工場に来なくなって。
廃工場。
ぽつん、と。
ずっと。

誰か――


573:じゅうよん。
06/05/17 20:08:24 Hyva5BY70
「あのぉ。では何故、お札を剥がしちゃいけないんですか?」
目の前で、微笑を絶やさない彼女―沙紀さん―に聞いてみた。
「お札が剥がされちゃうと、痛い。ずっとずっと溜め込んだ分、痛い」
ふふ、と微笑んで答える沙紀さん。あの凄まじい形相と泣き声は、痛みの蓄積、か……。
沙紀さんが事故死されて、100年近く?ごうごうごうごう―なんというか、ごつい機械。僕らが腰掛けている―に突っ込まされる痛みの、100年分。それが一気に、襲ってくる、と。
「それは……痛かったですね。ご、ごめんなさい……」
思わずしょぼん、としてしまう僕に沙紀さんは、ふ、と笑っているだけ。
「だから、また剥がしたら、ね?」
逆鱗に触れる、と。殺されちゃうわけか。
「で?」
え?
沙紀さんが突然話を進め、面食らう。
「わたしと会って?」
沙紀さんと、会って……?
「え、と?」
どういう意味だろう?沙紀さんは呆れたような顔。微笑んだままで。
……こんな美人さんが僕の隣に座っているのは、想定の範囲外だ。等と分析の真似事を、
「ふふ?」
意味深に微笑む沙紀さん。僕は頭に疑問符ばかり。
「耳貸して?」
「え?はぁ……」
二人きりで内緒話は意味もない気がする。が、しばらく耳元で沙紀さんの、

ころんころん。


574:じゅうご。
06/05/17 20:09:26 Hyva5BY70
「はっ!?!?」
「なぁに?いや?」
驚く僕の傍で、ふふ、と沙紀さんは変わらぬ微笑み。でも、頬は高潮している。
長い長い黒髪が、僕の肩に置いた沙紀さんの手にまで掛かっている。僕は、緊張した。
ぐ、と僕の肩を引き寄せ、沙紀さんが呟いた。
「生きてる女の子の方が、いい?」
ちょっと、これは……反則な微笑みだ。寂しげに寄り掛かってくるような微笑みじゃないか。
というか、まぁ、僕はもう、
『押す』だけ、ですから。止まりませんよ。
「いいえ。沙紀さんの方がいいです!」
馬鹿正直に自分は、と半ば呆れながら、僕は目を閉じた。
「そう。わたしの方がいいか……」
微かに微笑み混じりの声で―嬉しそうに―、じゃり、と砂を鳴らしながら立ち上がり、僕の頭を柔らかく抱え込んだ。

打ち捨てられた廃工場。錆だらけの機械の真ん中で。かつて余りに美しい女性を巻き込んだ鋼鉄の傍ら。
季節外れの涼しげなワンピース姿の女性が、
そっと男にキスをした。


575:おわり。
06/05/17 20:10:10 Hyva5BY70
目を開けてみれば、沙紀さんの顔。変わらず、ずっと微笑んでいる。
「怖い……」
「わたし、怖い?」
「ビビっちゃう位、美人さん、ってことです」
「『ビビッチャウ』?」
時代が違ったか。苦笑してしまう。
沙紀さんは訳が分からないというふうに、ふ、と笑って。す、と音も無く跪く。
「頑丈だけが取柄のはずが、子供も産めません……ですが、精一杯尽くしますので、どうぞよろしくお願いいたします」
三つ指突いて、頭を下げる。
こちらも恐縮してしまい、慌てて土下座。沙紀さんが、にこ、と笑った。朗らかな。
「う、ん。じゃ、石、運んでくださいな」
沙紀さんとその痛みを封じ込めている石。これを持って帰る。僕の部屋に。
「うん。お、結構重い、です……」
「ふふっ。しっかり」
沙紀さんはよろける僕の傍にピッタリくっ付いて。
僕らは、家に帰った。


576:おまけ。
06/05/17 20:11:36 Hyva5BY70
さすが、というか。
料理は、和食なら、なんでも作ってくれた。洋食は、あれだ、ビフテキとか?南蛮風?みたいな?
服のボタンでも解れていたら、甲斐甲斐しく縫い付けてくれた。その見事なこと。
部屋の掃除、溜まり込んだ洗濯まで片付けてくれた。時代、なのか。
いいよそんなことまで、なんて遠慮でもして自分でしようとしたら、
「胡坐かいてお茶でも飲んでて」
うむ、尽くしてくれる女性だ、等と。男尊女卑、なんてゼミで取り上げてたなぁ、なんて思いながら。
なんというか、良妻?ていうか、僕駄目人間?

ちなみに、友人―迫真の名演技―から貰った本、ビデオ、DVD、等。
「ふふ、ん」
謎の力がはたらいて炎上。炭も残らず消失。文字通り、消えた。ああ、なんて情けない声が出てしまったが。
「いらないでしょう、あんなもの」
そう言って、ごそごそ擦り寄ってくる沙紀さん―呼び捨てて、とは言われたが、まだ年上だし―を見ると、うんうんいらないいらない等と思う。

最近、沙紀さんは僕を名前で呼ばなくなった。
「今日は何がいいです?あなた」
割烹着を片手に、狭い台所に立つ彼女。その笑顔に、寂しさは微塵も無い。これでいい。

577:本当にあった怖い名無し
06/05/17 20:11:57 jaZdL3zl0
GJ乙

578:本当にあった怖い名無し
06/05/18 00:47:50 PxK0PveaO
ちょwwテラGJwww
なんつーか背筋がしっかりしてて嫌みがない感じでよかとです。
後日談までついてて痒いところへの対処もばっちり!
ごちそうさまですた。

579:つんでれぃ見習い・1
06/05/18 15:01:09 RiImwaBa0
今日、すげえかっこいい人みかけた。
あたしが高校に入学して通学路になった道で、桜の木を見上げてた。
その辺の男子みたくチャラチャラしてなくて、どっか線が細い感じで。

ラッキーなことに、学校への行き帰りには、必ず彼を見かけるようになった。
けど、あたし、そのうちに気がついてしまった。
彼は、生きてる人じゃなかった。

580:つんでれぃ見習い・2
06/05/18 15:01:57 RiImwaBa0
フツーの人には見えないようないろんなものが見えるあたしは、そのことについては友達にも言わずに過ごしてきた。
あんまり話すようなことじゃないなって思えて。
あたしの場合、ギュって感じで睨むと、その「いろんなもの」って見えなくなるんだ。
見ていて怖くなる相手だと、睨んだままでやりすごすわけ。
見えなくなるだけで、その対象がいなくなるわけじゃないんだけどね。

彼が、あたしが睨むと見えなくなることに気がついたとき、とても悲しかった。
あんなかっこいい人にカレシになってもらうなんて夢の夢…というよりも、そもそもカレシカノジョになれないような気がする。


581:本当にあった怖い名無し
06/05/18 15:03:10 RiImwaBa0
今日もいる。やっぱり睨むと見えなくなってしまう。
って、、目が合った?

「何でいつも俺のこと睨んでるんだ?」

ひゃあ、喋った!
あたし、言葉が出なかった。
すげえ緊張するというかどきどきするというかもうどうしていいか、何か喋らなきゃ、何か…。

「ち、だんまりかよ。 ざけんなコラ」
「…にっ睨んでなんかないもん! ふざけてもいないもん!!」

ぎゃー、そうじゃないだろあたし!
喧嘩ふっかけてどうすんの!

「いい度胸してるよな…」
あーあ、やっぱり怒らせたよ、あたしのバカ。
「俺が幽霊なのわかってやってんのか?」
「バーカ幽霊なんて別にこわくなんかないよーだ!」
…泥沼。バカはあたしじゃん。
いたたまれなくなったあたしは、その場から走り去った。

582:つんでれぃ見習い・4 581は3です
06/05/18 15:04:24 RiImwaBa0
「ふーん、いい部屋じゃん」
ひゃ?
あたしの部屋に、あの人が立ってる。
「な、なによ人の部屋に勝手にあがりこんで、バッカじゃない!」
憎まれ口しか出てこない自分の口が恨めしい。
そりゃ、仲良くなってもしょうがないかもだけど、喧嘩するのはもっとしょうがないじゃんよ。
アコガレの人なのにさ(幽霊だけど)。
「あのな、俺としても、毎回睨まれるのは不愉快なわけだ。この際理由言わなくてもいいから、睨むのはやめろ。祟るぞ」
彼はそう言うと、しゅうっと消えてしまった。
部屋に一人残ったあたしは泣きそうな顔をしているんだと思う。なにやってるんだろう、あたし。

583:つんでれぃ見習い・5
06/05/18 15:05:14 RiImwaBa0
「睨むなって言ったろ、これで何度目だ」
「睨んでないもん。いちいちつっかかってこないでよ、うるさいなぁ幽霊のくせに」
「お前俺の言ったこと覚えてないんじゃねえの? マジで祟られたいのかよ」
「うるさいなぁ、あんたのことなんて怖くないもん。バーカバーカバーーカ」
あたし、もうダメだ。こんな調子で止まらなくなってしまった。
途端に、すうっと空気が冷えて、彼の顔色がより青く見えた。
祟られるのも自業自得ってやつよね。幽霊に喧嘩売ってるんだし。
「怖がらせようとしてもムダなんだから! やれるもんならやってみやがれ、バーカ」
彼は凍りついたような表情を浮かべ、無言で、あたしのほうに手を伸ばす。
さよならお父さんお母さんおじいちゃんおばあちゃん友達。
あたしは、目を閉じて、そのときを待った。

584:つんでれぃ見習い・6
06/05/18 15:06:26 RiImwaBa0
ひんやりとやわらかいものが唇に触れた。
閉じていた目を開くと、目の前に彼の顔があった。
もう一度唇に、さっきと同じ感触。
キスされたんだ。
あたしは真っ赤になって彼から離れた。
「ひどいよ、祟るんじゃあなかったの?」
涙が出てくる。
「人の弱みにつけこんで…どうせあたしはあなたを好きだよ、バカー!」
そこまで言うともう涙が止まらなくて、あたしはわんわん泣いた。

585:つんでれぃ見習い・おしまい
06/05/18 15:07:15 RiImwaBa0
結局あたしは祟られることはなかった。
そのかわりに、あたしだけに触れられる、大切な彼氏ができた。
たまにとんでもないタイミングでエロに走るのが玉に瑕だけど、それ以外はさして不満もない。
「俺幽霊じゃん。それは問題ないのか?」
…うん、問題ない。大好きだよ。

586:本当にあった怖い名無し
06/05/18 15:42:56 OwiTQjmT0
>>559-576
>>579-585
GJ!GJ!!
おいしゅうございました。

587:本当にあった怖い名無し
06/05/18 16:07:45 K92oWmik0
>>579-585
GJ!!生きてる女の子がツンデレか。新しい視点だな。

588:俺と小娘・小娘視点編①
06/05/18 16:43:46 tEzDcpymO
私の名前は鈴木良美。
 
年齢は14歳、極々ふつーな中学生
…だった。
数日前までは。
 
今の私は俗に言う幽霊ってヤツだ。
トラックにひき逃げされて死んじゃったらしい。
 
当初は自分が死んだのに気が付かず随分と戸惑ったけど
我が家で行なわれた他ならぬ自分の葬式を見て自分が死んでいる事を実感した。
 
そう、私は死んで、幽霊になった。
 
道理で誰も私を見ず、いくら呼び掛けても返事もしてくれない訳だ。
 
これからどうしよう?
 
成仏したらいいのかな?
でもやり方なんて分かんない。
教わりたくてもみんな私をシカトするし。
仕方ないか…だって私は幽霊なんだもん。
でもやっぱりちょっと、悲しい。
一人は…淋しい。
私はぼんやりそんな事を考えながらふらふらしていた。


589:俺と小娘・小娘視点編②
06/05/18 16:45:39 tEzDcpymO
「浮遊霊ハケーΣ(゚∀゚)―ッ!Getだぜー!食らいやがれ、虚数素子ビィィーム!びびびび」
「…はぁ?」
 
目の前には見るからに怪しげな中年オヤシが。
これまた怪しげな事を叫んでいる。
 
ヤバいよ、ヤバい人だよ。
て、私に言ってるのかな?もしかして見えてるの?
 
「おや?なんか見覚えあると思ったらオマイ、斜向かいの鈴木さんちの末娘じゃん?」
 
斜向かい?…あぁ、お母さんが『絶対あそこの人に近寄っちゃだめよ!』ってよく言ってたっけ…
 
「よーし、小娘ッ!
喜んでいいぞ!
貴様を栄えあるツンデ霊探知機に任ずる!
ジーク、ツンデ!」
「話がみえないんだけど?ツンデ霊?何それ?」
 
「ジーザス!ツンデ霊も知らないなんて!ゆとり教育の弊害を目のあたりにした気分だぜ?」
奴はアメリカナイズに大仰に手を広げ肩をすくめてポーズをとる。
うわ、何かムカつく。


590:俺と小娘・小娘視点編③
06/05/18 16:47:17 tEzDcpymO
「あんた、頭おかしいんじゃない?」
 
「黙れアホの子、いいか?ツンデ霊サマは何よりも優先される…
食事よりも、水よりも、酸素よりも、だッ!」
逆ギレされた。
つまり、そのツンデ霊?とかいうのを探すのに協力しろと言いたいらしい。
 
「大体貴様に拒否権なぞ無い!
この俺の手に虚数素子装置、通信販売で税込\498000!!がある限りなぁぁ!」
 
いや、騙されてる。だってただのドライヤーだよ、それ。 
でも…黙っていよう。
成仏出来ないまま一人でいるよりも誰かと一緒に居れるならその方がいい。
 
それにコイツ、ちょっとキモいけどにぎやかで楽しいし。
 
「よし!行くぞ!
そのアホ毛でツンデ霊を探知するんだ!」
「アホ毛言うなぁ!」
 
  良かった。
 これで私は
もう一人じゃないんだ。

【続いたりします】


591:本当にあった怖い名無し
06/05/19 08:51:06 k/PLEiHo0
>588-560
笑いのつぼがマッチしたよ!w
GJ!
続きまだー?

592:本当にあった怖い名無し
06/05/19 10:08:50 o3/BBPvC0
義妹編以来の正統派?ツンデ霊の匂いがするよジークツンデ!

593:本当にあった怖い名無し
06/05/19 21:02:38 Lsja8IToO
おまいら、最近のツンデ霊はすごいですね。


サキさん大好きだwwうぇっwwww

594:本当にあった怖い名無し
06/05/19 23:28:22 xM5aHtfrO
しかし良美でツンデレとくるとどうしてもypを思い出してしまう

595:本当にあった怖い名無し
06/05/20 01:50:43 0arHxHEO0
ツンデ霊 の検索結果 約 19,700 件中 1 - 10 件目 (0.05 秒)

どんどん増えてくなー

596:俺と小娘・小娘視点編④
06/05/20 17:54:27 a+4CykZWO
面白くない…
とても面白くない。
 
この男、こんな美少女がいるってのにほったらかしにしてエビフライやマグロの刺身にハァハァ興奮してやがる。
 
ハッキリ言おう、コイツはダメ人間だ。
まず32歳、独身、無職。
この時点すでリーチだが
ツンデ霊とかいうのに熱中し毎日学校やら安アパートやらを片栗粉片手に徘徊している。
 
おまけに全然私に構ってくれないし。
 
このままじゃダメだ。
私が屑人間街道まっしぐらなコイツを更正させてあげないと!

第一、私はエビフライより魅力がないって―の?
そりゃ、胸はあまり無いけどさ…
せ、成長期!
そう、成長期なんだからッ!
 
とにかく!何としてでもコイツの目を覚まさせてやる!
そうと決めたらまずは敵を知らないと。


597:俺と小娘・小娘視点編⑤
06/05/20 17:57:25 a+4CykZWO
『ツンデ霊』ってのをヤツのパソコンで調べてみた。
 
ふむふむ…ツンツンしてて…デレデレね?で、霊っと。
……腐ってるなぁ
しかし意外と認知されてるみたい。
ヒット数もすごいし。
 
マイガッ!ゆとり教育の弊害を目のあたりにした気分だわ!!
 
いけない、あのバカの口癖が移った。
 
しかし、実際かなりマズイ。
この近辺の霊はかなりタチが悪いのが多いし…アイツになまじ霊感があるってのが問題だ。
迂闊に近づくとチャンネルが繋がってとり殺されてしまう。
 
早く私が何とかしないと…
 
ツンデ霊を諦めさせるのが一番良い方法かな?
そうしたらヤツも社会復帰出来るし
ヤバい場所を徘徊することも無くなるだろうし…
私に構ってくれるかも!
 
方針は決まった、あとは作戦を練らないと。


598:俺と小娘・小娘視点編⑥
06/05/20 17:59:48 a+4CykZWO
本物の悪霊に近付ける訳にはいかないので、ヤラセでちょっと危険なメにあってもらう
そうすればツンデ霊に幻滅するだろう
 

準備はバッチリ!
幸い協力者も見つかった。
祠にいた祟り神様に事情を話したところ快く引き受けてくれた。
 
彼女はいいひとだ。ぶっちゃけ見た目ゾンビだけど。
 
と言うわけで次の日、いよいよ誘導。
しかし…あいも変わらずコイツはハイテンションだ。
そのエネルギーがあれば何処ででも雇ってくれるだろうに。
「…平日の真っ昼間からこんな事してないで働けよ」
「うるせぇな、探知機。いいから働け」
 
ダメだ、やはりツンデ霊を諦めさせないと真人間への道は開けない。
 


599:俺と小娘・小娘視点編⑦
06/05/20 18:03:39 a+4CykZWO
でもコイツ、私の事どう思ってるのかな…?
ちょっとサグリいれてみるか。
「つーか、私、成仏したいんだけど」
 
も、もしかしたら引き止めてくれたりしたりして?
少しどきどき
 
「ハハハ、君の成仏なんてツンデ霊サマに比べたら塵芥程の価値もないヨ」
 
「…死ね!キチガイ野郎!」
傷ついた、今のは傷ついた。
人の気も知らないで好き勝手な事をぬかすダメ人間め、祟り神様にキツくお仕置きしてもらわなくちゃ!
 
(こちらスネーク、ターゲットを連行する、八割方殺っちゃって構わないオーバー)
(こちらメタルギア、了解した。これより作戦実行フェーズに移行する)
 
廃墟で待ち伏せてる祟り神様と念話。
さてうまくいくといいけど…


600:俺と小娘・小娘視点編⑧
06/05/20 18:06:02 a+4CykZWO
 
「チッ…あと少しだったのに」
残念ながら作戦は失敗。
あと少しで逃げられちゃった。
「ふざけんな!このズベタ!そのツインテール引っこぬくぞ!」
「あーはいはい、次はちゃんと探すわよ、そうちゃんとしたのを…ね」
やはり懲りてないか…
 
まぁいいや、次はすごいのを用意してツンデ霊の幻想を粉々にしてあげるわ。
「その意気だ!アホ毛!次こそは!」
 
ヤツは能天気に盛り上がっている。
「そう…次こそは…ウフフフ」
 
そう、次こそは
あなたを
真人間にしてあげる
そしたら…
 
ちょっとだけ、ちょっとだけなら
ら、らぶらぶになってあげなくもないわよ?


601:本当にあった怖い名無し
06/05/20 18:20:34 hVauMfmc0
小娘さんに告ぐ。そんな「俺」なんてやめて別のにしとけ。

ってのはともかく続き早く頼む。む、むりはしなくていいんだからねっ!

602:本当にあった怖い名無し
06/05/20 22:20:57 TXdiJ9Ob0
祟り神様を貶めるな・・・・

603:本当にあった怖い名無し
06/05/20 23:01:49 WJR0EJOPO
なんでスネークとメタルギアが通信してんだwww

604:本当にあった怖い名無し
06/05/20 23:16:22 WJhsBt/2O
まぁまぁ、あのゾンビが祟り神様とは一言もでていないんだから
祟り神様が連れてきた知り合いのゾンビだってことにしとけ

605:ゾンビのおねーさん・番外編
06/05/21 00:19:32 s/lmbS9W0
屍「眼球が腐っちゃったの。替えをお願いね、魔王」
魔「え?まだ大丈夫では」
屍「腐ったの」
魔「は、はい。こちらの灰緑色が最近は人気ですが」
屍「そう。それにするわ」
魔「…またあの小僧とスライム狩りですか」
屍「根性のないスライムを鍛えてやってるのよ」
魔「それはそうと、勇者どもがラストダンジョンに到着したとか」
屍「髪はもう少し明るい色のほうがいいかしら」
魔「あの、勇者どもがゴフゥッ!?」
屍「テメーのケツくらいテメーで拭けボケ!髪は・これで・いいのか・ああん?」
魔「よ…よろしい…かと」
屍「そう」
魔「あ、あの、姐さん、殴らないで聞いていただけますかね?」
屍「内容によるわね」
魔「…恋もいいですが、我が魔王軍の戦況は芳しくなくて」
屍「恋?」
魔「はい」
屍「誰が?」
魔「姐さんが」
屍「誰に?」
魔「小僧に」
屍「私が…?」
魔「恋愛などいつでもできます。今は姐さんに陣頭指揮を」
屍「…………これが…恋!!!」
魔「ご、ご自分でお気付きでなかったので?」
屍「うふふ、グッジョブよ魔王!そうとわかれば!」
魔「は、はい?」
屍「サキュバスのカラダとナーガの舌が要るわ。いますぐブチ殺して用意なさい!」
魔「え?あ、あの、魔王軍は戦力が不足してゲフぅっっ!?」
屍「待っててね、ボウヤ。うふふふふ」

606:本当にあった怖い名無し
06/05/21 17:42:49 VEVjsBUeO
みんなGJ

でもナーガの舌ってなにさ?wwwww

607:本当にあった怖い名無し
06/05/21 19:23:52 bhjBU9AYO
ナーガ(Naga)
カテゴリ:悪竜
地域:インド
元々は民間信仰において地下世界を司る蛇の神であり、七つのコブラの頭を持ち、その顎には美しい宝石がきらめき、その光が地下世界と信者の闇を照らし出すとされている。
ナーガは神鳥ガルダが落としたアムリタ、つまり神酒ソーマを舐めた為に不死の力を得ている。元来、蛇の神は水と結びつけられ信仰されてきた。ナーガも雲を呼び、雨を降らす魔力を持つとされる。
古い民間信仰から派生した神であった為、新しい宗教である仏教やヒンドゥー教では悪魔とされた。
しかし、仏教では他の神々とともに仏道に帰依し、八部衆として曼陀羅に加えられた。
ヒンドゥー教においても、神々の飲み物であるソーマをつくる儀式の乳海攪拌(ニュウカイカクハン)において体内の毒を吐き出し、その結果清められて神となり、シヴァ神のベルトとして彼に付き従い、悪魔を捕らえる為の縄として活躍することになる。

山北 篤/佐藤 俊之 監修 「悪魔事典」(新紀元社)より。

ゲームなんかで人間の女性の姿があてられたりするけど、元々は七つ頭のコブラだよ。

608:本当にあった怖い名無し
06/05/21 20:11:12 1VtKzncj0
>>607
ナーガはは拘束具として使用するわけだ…
舌だけ?

609:本当にあった怖い名無し
06/05/21 20:54:40 mw1Vi0Lh0


610:本当にあった怖い名無し
06/05/21 21:53:45 VGIXGi5l0
『悋気の火の玉』は、演じ様によっては立派なツンデ霊になるとみた。
さておき、流行に乗って中途半端にギャグに手を出そうとしたのが間違いだった。

IDをNG指定推奨。10レス予定。反省はしていない。

611:本当にあった怖い名無し
06/05/21 21:54:47 VGIXGi5l0
昼休み@2A教室

「ねえ、ゆっきー知ってる? 出たんだって」
「アンタ食事中に、そういう話題やめなさいよ。卵焼きもらい」
「違うわよっ! 四角さんよ、よ・つ・か・ど・さん!」
「セブン&アイがどうしたってのよ? ベーコン巻き頂き」
「“ヨーカ堂”じゃ無くて、“ヨツカド”っ! ちゃんと聞いてよ」
「で、そのヨツカドさんとやらは、何組の子なの? キンピラGET!」
「四角さん知らないの? ちょー有名だよ?」
「少なくとも私にとっては有名人じゃないわね。えーっと、ブロッコリー」
「むっふふ~。違う違う、“人”じゃないのよ」
「ふーん、まさか妖怪とでも言うわけ? んー、ニンジンのグラッセ」
「むふー。そのまさかなのよ。四角さんはそっち系なのよ」
「四角、ってぐらいだから、交差点で死んだ人の幽霊? ごはんごはん」
「ちがうのよ、四角さんって言うのはね……、」


「─つまりはそういう、えーっと……思念体? みたいなものなの」
「何で疑問系なのよ。でもまあアンタにしちゃよくできたお話ね」
「違うよ、お話じゃなくて本当のことだよ! ─って、ああっ!?」
「今度はどうしたってのよ。三叉路さんでもいたの?」
「そうじゃないの、いつの間にかわたしのお弁当が減ってるの!」
「ああ、妖怪小林さんの仕業ね」
「そうなんだ……って、それって、ゆっきーじゃないのさ!」

612:本当にあった怖い名無し
06/05/21 21:55:53 VGIXGi5l0
目覚ましは電池が切れたらしく、アラームの鳴る3分前で止まっていた。
歯磨き粉も洗顔剤も切れており、買い置きを探すのでだいぶ時間をロス。
盛大な寝癖は、なかなか右跳ねが収まらず、ワックスで無理矢理固めた。
靴下は見つからず、ワイシャツはボタンが飛び、ファスナーがシャツを噛む。
食パンをセットしておいたトースターは何故かコードが抜けており生のまま。
慌てて家を出れば、靴紐が音を立てて千切れ、二歩目でもう片方も切れる。
ここまで来ると、半ば予感はしていたが、案の定、自転車の後輪がパンク。

一縷の望みに賭け、車で送って貰おうと姉の部屋のドアを開けた。
その結果、高速飛来したマクラとキス。蹲る俺、悠々と寝る姉。死ね大学生。


そして俺は、朝っぱらから長距離猛ダッシュをする嵌めになっている。
その途中も道路工事、横断歩道の老婆、そば屋の出前、バナナの皮……
下手なコントの─いや、むしろ下手なマンガの初回のようなベタ展開。
事実は小説よりも、などと言うが、もはや呪われているとしか思えない。

さすがにここまで来ると、次に来る展開も何となく予感できた─

「─くそっ、いい加減にしやがれっっ!!」

見通しの悪い交差点から飛び出してきた少女。
完璧に衝突コース。それでも何とか避けようと、無理矢理に身をひねる。
筋肉が悲鳴を上げ、物理法則が笑い、それでも何とか衝突だけは回避。
─その代償に俺は、歩道脇の生け垣にダイブ。ドシャグシャバキバキ。

613:本当にあった怖い名無し
06/05/21 21:56:55 VGIXGi5l0
「痛ってぇ……」
茂みから這い出す。見なくとも顔や腕を擦り剥いていることが分かる。
おまけに足首にも違和感がある。まだこれから走らなければならないのに。
─って、そんなことよりも、

「ごめん、大丈─、」

ぶつかりかけた少女に謝ろうとして─息を飲んだ。
生まれて初めて、何かに“見とれる”という経験をした。
先程は避けることに必死で見ていなかったが、驚くほど綺麗な少女だった。
現実味の薄いほどの美。まさに男の理想の体現がそこにいた。
「…………」

──だが、

「ばーっかじゃないの?」

満身創痍の俺に対し、彼女の言葉には一切の優しさがなかった。
まるで肉屋の店先に並ぶ運命の豚を見るかのような冷たく残酷な視線。
息子の肉を食わされた将軍(おっさん)のような絶対零度のツンドラ視線。

お陰で金縛りが解けた。ついでに朝からの鬱憤がムカムカと湧き上がる。

「バカとは何だ、このバカっ! お前が飛び出してくるのが悪いんだろ!」
こちらは大通り、彼女の出てきたのは脇道─すなわち正義は俺にあり。
しかも避けてやったのは俺だ。感謝の一つぐらいするのが筋だろう。

「何言ってるのよ。これも全部、アンタ達のせいでしょ。自業自得じゃない」
「─は? 何で俺の─っていうか、“達”って何だよ」
わけが分からん。いい加減、電波さんの時代は去ったと思ったのだが。

614:本当にあった怖い名無し
06/05/21 21:58:17 VGIXGi5l0
「いいえ、アンタ達の責任よ。自覚無いなんて、ホント最低ね」
「だから何の話だよ。わけ分かんねえよ。直立のままで頭ぶつけたのか?」
「っっ、誰がそんな器用な真似できるって言うのよ!」
「だよな、見るからに不器用そうだし」
「むっきーっ! 出来ることならアンタの首を絞めてるところよ!」

売り言葉に買い言葉。分かっていても抜け出せないスパイラル。
「あのなぁ、こっちは身を挺してお前を庇ってやったんだぞ」
そりゃ、こっちに非が無いわけも、頼まれて避けたわけでもない。しかし、
「─無駄な努力、ご苦労様」
こう不貞不貞しい態度で返されては、退くわけにはいかない。
「無駄とは何だよ。俺が避けてなきゃ、今頃お前は─」
「アンタが私に、ぶつかれるわけ無いでしょう」

「……何を言ってるんだ、お前?」
急に静かになった相手に対し、冷静さを取り戻す。同時に不審になる。
視線は彼女の正気さを物語っている。だというのに言葉は要領を得ない。
妙な胸騒ぎ。唐突に以前聞き流した噂話が、脳裏を過ぎる。

ほら、だって私─そう言うと、彼女は壁に向かって手を伸ばした。

すっ、と音もなく、吸い込まれるように壁をすり抜ける腕。
勝ち誇ったように、ふふん、と鼻を鳴らす。口元は、どこか自虐めいた嗤い。

「─幽霊、?」
「と言うよりも思念体ね。実体が無い、という点では一緒だけど」
そう言って、見た目には生身としか思えない腕をヒラヒラと振るう。

「どう、これで分かったでしょ? アンタが私に触ろうなんて無理なのよ」
「─……お前、いったい何者だ?」

      「“ヨツカドさん”、─そう呼ばれてるわね」

615:本当にあった怖い名無し
06/05/21 21:59:27 VGIXGi5l0
朝@2A教室

あの後、私なりに“四角さん”の情報を集めてみた。
まずネットは全滅。色々なサイトを巡ったが類似の話すら見あたらなかった。
しかし、その後の聞き取り調査では、すんなりと情報は集まった。
学内では意外と認知されているらしい。どうもこの学園特有の話のようだ。
なお、“それ”のパーソナルは極めて簡単である。

遅刻しそうになり必死に走っていると男子と、曲がり角で衝突しようとする。

……イメージが湧かなければ、マンガ喫茶で適当なマンガを見繕えばよい。
参考となるシーンが手を変え品を変え、山のように見つかることだろう。
逆に言えば、“それ”はそれ程までに皆から望まれているということか。

“彼女”は人々の“想い”から“生み出された”、いわば“思念体”らしい。
共通認識、強い想いは、時にこんな奇跡までも生み出してしまうものなのか。

さて、大部分の情報提供者は、彼女について口を揃えて“恐ろしい”と言う。
何故か。話を聞く限り、男子生徒にとっては喜ばしい事象ではないのか。
ある情報提供者はこう語った。

『─だって、生殺しじゃないですかっっ!!』

多くの男達が夢見るシチュエーション。しかし、“彼女”は“思念体”である。
絶好のシチュエーション。聞けば “それ”の外見は美少女らしい。
そこまでのお膳立てが揃っていながら─彼女に“触ることは出来ない”。

つまりは、曲がり角での“衝突”という、メインイベントが欠落しているのだ。

─今回の調査結果から、私が下した結論はこうだ。

「……、…………、ば~っかじゃねぇの?」

616:本当にあった怖い名無し
06/05/21 22:00:32 VGIXGi5l0
朝・予鈴前@2A教室

「おはよ、ゆっきー。どうしたの、王に謀反を起こす将軍のような顔をして?」
「誰がハルパゴスよ。─アンタこそどうしたのよ。今朝は早いじゃない」
「えー、そんなことないよ? いつも通りの時間だよ」
「……あ、本当。まだアイツが来てないから、てっきり─……何よ?」
「むふふ~、ゆっきーはラブラブだ~♪」
「ちょ、ちょっと! 何で私があんな奴とっ!!」
「むっふふー♪ ……でもホントどうしたんだろうね。いつも時間通りなのに」
「知らないわよ。って言うか別にアイツが遅れようが私には関係ないし」
「実は、四角さんに逢いたくて、わざと遅れて家を出てたりしてたりして」
「─なっ!? あ、アイツにそんな度胸があるわけ無いでしょ!」
「いやーん、信頼してるのね。らぶらびゅー♪」
「~~~~~~っっ!!」
「痛っ! ちょ、ゆっきー痛い、イタイ痛たたた、あらららーいっっ!!」


「でもさぁ、ゆっきー。……可哀想だよね」
「可愛そうって、誰がよ?」
「─四角さん」
「……どうしてそう思うの?」
「誰かにぶつかるために生まれてきたのに、それが果たせないなんて」
「……確かに、えらく矛盾した存在よね」
「だからね、四角さんはきっと、苦しくて─寂しいと思うんだ」
「……心配しなくても、誰か現れるんじゃないの? ぶつかってくれる人がさ」
「そうかな?」
「そうよ。そうじゃなきゃ─本当に、可哀想じゃない」
「─むっふ~♪ ゆっきーってクールぶってるけど、ロマンチストだよねー」
「な、何よ! いいじゃない。ハッピーエンドを望んだって!」
「うん、いいよ。全然おっけー。わたしゆっきーのそういうところ大好き♪」

「─でも、もし本当にぶつかる人が現れたとして、その後はどうなるの?」

617:本当にあった怖い名無し
06/05/21 22:01:25 VGIXGi5l0
「─というわけ。だから誰も私に触れるわけないの」
“ヨツカド”と名乗る少女は、自身の説明を終えると、再び自虐的に笑った。

「……じゃあ、何でお前はこんなこと続けてるんだ?」
「こんなことって?」
「わざわざ曲がり角で人とぶつかる振りをして、楽しいのか?」
「─別に。毎朝こうしてるのは、単に私が“そいういうもの”だからなだけよ」
イライラする。それじゃあ何処にこいつの意志があるっていうのか。
彼女が満足しているのならばいい。しかし自虐的な顔が気にくわなくて─

─がしっ、と彼女の頭を抱え込むように“掴む”。

「え──? あ、え、あ……あれ?」
状況が飲み込めていない彼女を無視して、頭を後ろに引き─、

──ガツンッ!

「痛ったーっ! な、何するのよ!! ─って、ええっ!?」
「馬鹿野郎、こっちだって痛かったわ!」
「や、そうじゃなくって、え、今の、その……頭突き─?」
「そうだよ。いちおう手加減してやったから、感謝しろ」
予想以上の衝撃に、思わずおデコに手を当てたくなるが、必死に我慢する。

「え、ちょ、ちょっと待ってよ! 何でアンタ、私に触れてるのよ!」
「世の中には、お前みたいなヘンテコな存在もいれば、」
「─だ、誰がヘンテコよ!!」
自覚しろよ。─まあ、他人のことを言えない身なのが哀しいが……
「お前みたいなヘンテコもいれば─それに触れるヘンテコもいるんだよ」
「─え?」
呆けた顔をする彼女。あまりに無防備なので、思わず脳天にチョップ。
「へうっ! ったぁ~……何するのよ─って、また触ったっっ!?」
「いいか、お前だけが特別ってわけじゃないんだ。調子に乗るな、このバカ」

618:本当にあった怖い名無し
06/05/21 22:02:50 VGIXGi5l0
「お前、何かしたいこと無いのか?」
「……こうして毎朝やってるじゃないの」
「それは、したいことじゃないだろ。そうじゃなくて“お前がしたいこと”だよ」

「……私が─?」
急に見知らぬ場所に迷い込んだように、視線が彷徨い出す。
「わ、私は、曲がり角で、誰かとぶつかる─そういう存在、だから……」
「でもぶつかれないんだろ? だったら無駄じゃないか」
「─っっ、じゃあ、どうしろってのよ!!」
「ハムスターみたいに、いつまでも回ってないで、探せばいいじゃないか」
「さ、探すって、何をよ!」
「─やりたいことをだよ」

彼女の目が、小動物のように見開かれる。
「別にしたくてしてたんじゃないんだろ? なら他のことしてもいいじゃないか」
「な、なに簡単に言ってるのよ! 私は“四角さん”なのよ!」
「それが?」
「そ、それがって─許されるわけ無いじゃない!!」
「誰が許さないの?」
「だ、誰がってわけじゃないけど……」
言葉尻がフェイドアウトして、むにゃむにゃと、聞き取れなくなる。
どうもパニックで思考が空回りしているようだ。
おそらく今まで律儀に存在理由とやらを守ってきていたのだろう。
見かけによらず、真面目な性格なのかもしれない。

「─ねえ、私にも新しい存在理由、見つけられる─かな?」
不安そうに、それでいて、どこか期待をもった眼差しで見つめてくる。
すでにそれは、何かを見つけた者の瞳だ。─ならば大丈夫だろう。

「まあ、のんびり探せば? ─って、俺はのんびりしてる場合じゃねえ!」
時計を見ると─ヤベぇ、絶対間に合わねえ!
「満足したらとっとと去れ。って言うか、俺はもう行く。じゃっ!」

619:本当にあった怖い名無し
06/05/21 22:03:38 VGIXGi5l0
朝・予鈴後@2A教室

「遅い! 何やってたのよ」
「いや、朝っぱらから、ちょっとした災害に遭ってさ」
「災害? 何よそれ」
「いや、ほんと大変だったんだって。完璧に遅刻覚悟したし」
「ふーん。でもまあ、ギリギリ間に合って良かったじゃない」
「うん、たまたま通りすがった西江先輩の後ろに乗せて貰えて……」
「─アンタまだあの人と交流してるの? 止めなさいよ」
「そう言うなよ。先輩、あれで以外と面倒見のいい人なんだぜ」

「で、何してたのよ。まさか四角さんとでも遊んでたとでも言うつもり?」
「え──?」
「……ちょっと、何でそこで止まるのよ」
「あ、いや、そういや予鈴過ぎてるけど、先生は?」
「話題を逸らすな、視線を逸らすな、質問に答え─」

──ガラガラッ

「こらー、お前ら席に着けー。そこの夫婦、いつまでいちゃついてる」

「「─っっ、だ、誰が夫婦ですかっ!!」」

「むっふー♪ ゆっきーたち、息ぴったりー」
「「ばか、そんなわけ─……、っっ!!」」
「ほら、夫婦漫才はその辺にして、早く席に着け」

620:本当にあった怖い名無し
06/05/21 22:05:12 VGIXGi5l0
朝のHR@2A教室

「えー、こほん……喜べ男子諸君、美少女転入生を紹介する!!」
「「「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」」」
            「「「─ふんっ、何よ男子達。ばっかじゃないの?」」」
「くぅ、このセリフ一度言ってみたかったんだよなぁ……じゃあ、入ってきて」

「はじめまして、ヨツカドです。……えーっと、次は何て言うんだっけ?」

──ガタンッ!
「─お、お前何でここに─っっ!!」
「あ、思い出した。……こほん。─あーっ、今朝のパンツ覗き─」
「覗いてないっっ!!」
「ちょっと、どういうことか説明してもらいましょうか」
「うわっ、小林! 俺は無実だ」
「きゃー、ゆっきー怖ぁい♪」
「え、席はアイツの隣? えー、最悪ぅ 何でアンタの隣になんか」
「ちょっと小娘、なに勝手に人の机を脇に押しやろうとしてるのよ」
「転入生は隣の席と決まってるんですから、仕方ないじゃないですか」
「誰がそんなこと決めたのよっ! って言うか、何でこいつの隣なのよ!」
「えーっと……宇宙意志? もしくは若き情熱のリビドー」
「こ、小林、落ち着け。おまえも黙れっっ!!」
「─むっふふ~。さーて、次はどんな噂を流そうかなぁ……」
「こらっ、アンタもこのヨツカドとかいう馬鹿に何か言ってやりなさいっ!!」
「むっふっふ……って、あ、えーっと、二人とも仲良くしなきゃダメだよ♪」
「おーい、そろそろHRの続きを……出席を取るぞ、相川、浅沼、石井……」
「何よさっきから小林さんとやら、ごちゃごちゃと。こいつの恋人なわけ?」
「─なっ、だ、誰がっ! そういうアンタこそ、こいつが好きなわけ?」
「えっ!? わ、私は別に、こんな奴のこと好きってわけじゃ……」
「じゃあ何でこんな奴に付きまとおうとするのよ!」
「それは─……私の探してるものが、きっと─この近くにあるから」
「……何それ? ちょっと、何アンタまで笑ってるのよ。説明しなさいよ!」

621:本当にあった怖い名無し
06/05/21 22:45:20 7kPs+vSK0
見事だ。まったくもって最高だよ。アンタ…。
「お約束」をネタにしてここまですばらしいストーリーを作ってくれるとは。
感動した!!

622:本当にあった怖い名無し
06/05/21 23:14:16 bhjBU9AYO
「NEEDLESS」思い出した。

623:本当にあった怖い名無し
06/05/21 23:21:43 sKcvgVFe0
え? 「NEETDESU」?

624:本当にあった怖い名無し
06/05/22 12:07:50 AQxDHnAkO
え?「NINTENDODS」?

625:本当にあった怖い名無し
06/05/22 13:10:37 mv7h9xOSO
激しくGJ!
あと>>624おもろない

626:本当にあった怖い名無し
06/05/22 17:04:49 GOwZ6YQdO
>>625

『(くくっ……)

はっ!
な、なによ! 笑ってなんかいないんだから! つまらない冗談は止めてよね!
でも言いたいんならまた言ってもいいわよ……』

ここまで行間を読めるようになった俺を誉めて。誰か('A`)





>>624
つまらん

627:本当にあった怖い名無し
06/05/22 18:29:03 uWdpqT/70
>>626
GJ

628:本当にあった怖い名無し
06/05/22 19:34:56 yuVfkhaN0
>>611
GJ!!
その文才羨ましすぎる

629:3行(題名除く)
06/05/23 00:27:53 zZ42AAVL0
「つんでれい」

「ありません投了です」深々と礼をする
「あんたのためにやってんじゃないの、私が暇だからよ」
血の跡の残る将棋盤で練習する私は駆け出し棋士
















詰んで礼…
失礼

630:本当にあった怖い名無し
06/05/23 01:17:26 kFxvHSoFO
つーか血の跡? 藤原佐為?
佐為が女でツンツンデレデレだったら激萌えだっつーの。

だからさ、俺と守護霊の作者さん。

  是  非  。

631:本当にあった怖い名無し
06/05/23 01:17:28 16EGsDtlO
はをくいしばれ

632:本当にあった怖い名無し
06/05/23 10:34:55 wezvX3Fl0
>>630  ~~おかっぱ野郎の魔の手から守れ!~~

塔矢「あ…ありません…」
進藤「え、オレ、もう勝っちゃったの?」
塔矢「……………っ!」
進藤(うわ、スゲー落ち込んでるよ、佐為)
佐為(全力で叩き潰しましたからね)
進藤(なんだよ、オマエならもうちょっとこう、さ。できただろ?)
佐為(私にはできなかったのです、ヒカル)
進藤(ウソつけ!)
佐為(この子供…危険な匂いがしましたから)
進藤(危険?コイツが?)
佐為(間違いなく変態です)
進藤(へ…そんなふうには見えないけど)
佐為(変態です)
進藤(…………)
佐為(…………)
塔矢「く…もう一局やろう、進藤」
進藤「うわ!?」
塔矢「何だ」
進藤「い、いや、用事思い出した。じゃあな!」
塔矢「え?あ、ちょ!」
進藤「さ、触んなぁあああ!」
塔矢「え?え?ええ?」

633:本当にあった怖い名無し
06/05/23 12:54:11 kFxvHSoFO
ネ兄!


まちがいた(´・ω・`)

ネ申! でも塔矢カワイソスwww

ごちですた

634:俺と小娘・地獄変
06/05/23 15:26:25 UvmcQtUCO
俺「ただいまー」
小娘「…ちょっと!どこ行ってたのよ!?」
 
俺「鳥取県。それはそうと、今日は『素直クール』について考えよう」
 
小娘「素直クール?」
俺「うむ、ツンデレと対なる概念だ」
 
ぴんぽーん♪
「宅急便でーす」
 
俺「おお、きたきた!」
小娘「クール便?中身、何なの?」
俺「鳥取砂丘の砂だ」
 
小娘「砂ぁ!?何で砂をクール便なんかで送ってんのよ?」
俺「ソレダ!」
小娘「まさか…砂をクール…すなをくーる…?」


635:本当にあった怖い名無し
06/05/23 19:37:52 hU54TIu/0
はをくいしばれ

636:本当にあった怖い名無し
06/05/23 20:06:38 kFxvHSoFO
何コノ流れ……
(´・ω・`)

637:レイポン ◆ZMp2Jv9w5o
06/05/23 21:06:53 TrzBXE+M0
>>636
何?なんか文句あるの?
ひまわりの種でも食べればいいじゃないっほら・・ほらぁっ

みんな・・・中々やるわねっファイトしてやってもいいけど、
忙しいからまた今度ねっじゃあまたねっ

638:本当にあった怖い名無し
06/05/24 00:13:40 eFxa9oxnO
なんか俺だけ最近ずっとレイポンにからまれるんだが……

は? 別に嬉しくなんかねーよwww
////

639:本当にあった怖い名無し
06/05/24 01:39:45 OFy/d7+u0
ヤキが回ったな……。

640:①
06/05/24 13:49:33 iAOQhzDV0
カップに口をつける。口の中いっぱいに広がる紅茶の香り。
夕食後の穏やかなひと時。
「おっと」
中身をこぼさないように気をつけながら、カップを上に上げる。
一瞬前までカップのあったところを、枕が通り過ぎる。
枕だけではない。椅子、食器、掃除機、辞典などなど、さまざまな物が
部屋中を飛び交っている。そう、文字どうり飛んでいるのだ。
僕がこの部屋に越してきて、一週間。ラップ現象から始まり、ついには、
ここまで発展したか。ポルターガイスト。
上半身を軽く仰け反らせる。目の前を、びゅうん、と時計が通り過ぎる。
時刻は、十時を指していた。僕は、残りの紅茶を飲み干す。
「・・・少し早いけど寝るか」
「なんでええええぇぇぇ~~~~!!!」
いきなり、大声が部屋中に響く。─近所迷惑だよなぁ。
声がした方したほうを見てみると、そこには可愛いが顔をした女性が、目を険
にして、立っている。
恐らく、彼女がこの部屋の主だろう。

641:②
06/05/24 13:51:01 iAOQhzDV0
「あんた、おかしいんじゃない?何で無反応なのよ!?」
・・いきなりおかしいやつ扱いされた。まあ、いいや。慣れてるし。
「こんだけやってんだから、泣いておびえて震えなさいよ!」
「・・いや、そんなこと言われても、ねぇ。僕こういうの結構慣れてたりするし」
「・・慣れて、る?」
「うん。だから、この位じゃ、驚いたりはしないよ」
僕は、少し余裕を見せるように、両腕を広げながら言った。その時、
  つん
と、いきなり、誰かにわき腹をつつかれた。
「うわあ!?」
不意打ちだった。思わず声を上げてしまいましたよ。
「なんだ、驚くじゃないですか」
冷めた声。振り向くと日本的な可愛い、しかし、声と同様に冷めた表情の女の子。
─二人いたのか・・・
僕に目をくれず、スタスタと最初の幽霊の前に行く女の子。
並んでみると、二人は雰囲気は多少違えど、顔は似ている。姉妹かもしれない。
「姉さん、声大きすぎです」
─やっぱり姉妹か。
「だって、深雨(みう)、あいつ、むかつくんだもん」
妹のほうは、深雨ちゃんというらしい。むかつかれたことはスルー。
「気持ちはわかりますが、近所迷惑です。」
やっぱり、冷めた声の深雨ちゃん。てか、気持ちわかるんだ・・・。


642:③
06/05/24 13:51:49 iAOQhzDV0
「それは、さておき・・・」
いいながら、深雨ちゃんがこちらを向く。
「おめでとうございます」
「?」
「新記録です。一週間逃げ出さなかったのは、お兄さんが初めてです」
「・・・・・どうも」
「まあ、この先もがんばってせいぜい頑張って下さい」
「・・・・」
「絶~っ対に意地でも怖がらせてやる」
横でお姉さんが嫌な決意を燃やしている。
「ん~、君みたいに可愛い幽霊なら怖くないからね。難しいと思うよ?」
「へっ・?・・か・・かわ・・・?」
とたんに、きょとんと毒気を抜かれたような顔になる。が、見る見るうちに赤くなり
「ふ、ふざけないでよ!!!!」
と、起こって消えてしまった。
「うーん、怒らせちゃった」
「それは違いますよ」
「?」
「お兄さんが可愛いとか言うから、姉は照れたんですよ」
「そうなの?」
「ええ、姉は男の子慣れしてませんから」
「・・・・深雨ちゃんもすごく可愛いよ」
「ありがとうございます」
まったく表情を変えず、ぺこりとおじぎをする。深雨ちゃんは男なれしてるということか・・?
どうみても、十代前半の少女なんだが・・・・
「では、そろそろ寝ますか」
「・・・そうだね」

643:④
06/05/24 13:52:26 iAOQhzDV0
次の日の朝、寝室(なんと、うちは六畳三部屋、家賃一万円!!)からおきてリビングに入った
ところ、僕の鼻は、普段はありえない匂いを嗅ぎ分けていた。
それは、食卓にのる朝食の香り。
「えー・・・・と・・??」
一瞬実家にいるのかとも思ったが、どう見ても自分の部屋だ。
「食べないんですか?」
「うわあ!?」
いきなり後ろから声をかけられた。深雨ちゃん、まったく気配ないし・・・・
「また、驚きましたね」
「う、うん・・それより、これ、僕が食べてもいいの?」
「他に誰が食べるんです?」
さも、当然のように言ってくる深雨ちゃん。なんか、状況がつかめないんですけど・・
「よっぽど、お兄さんに可愛いといわれたのが嬉しかったみたいですね」
「はあ・・・それじゃ、せっかくだし、いただきます」
「どうぞ」
 僕は久しぶりに満たされたおなかで大学に行った。


644:⑤
06/05/24 13:54:32 iAOQhzDV0
学校から帰ってくると、お姉さんが食卓でぼうっと、頬杖を付いていた。
僕は、とりあえず、朝のお礼を言おうと近づいた。
─瞬間、僕の体が、一気に天井まで浮かびあがった。
見下ろすと、期待に満ちたような目で見つめるお姉さん。
「・・・・ただいま」
「あ~!もうっ!!!」
乱暴に地面に落とされた。結構、痛い。
「おびえてよ!」
「いや、そんなこと言われても・・だから、僕、こういうの慣れてるし」
「どんな人生送ったら、慣れるのよ!」
「いや、僕、遺伝なのか、昔からよく見えちゃったりするほうだったから」
「・・・遺伝?」
「ああ、親父が見える人でさ。若い頃、事故で亡くなった恋人の霊と暮らしてたことがあるんだって。
幽霊とキスしたって、自慢していたから」
「あ、あたしはキ、キスなんかしないからね」
なんか、赤くなるお姉さん。てか、論点ズレてない?
「まあ、そんなことよりもさ」
「うん?」
「朝、ご飯ありがとね」
「なっ!」
「朝起きて驚いたよ。想像もしてなかったから」
「だ、誰があんたのためなんかに!!」
そう言ったきり、少しの沈黙。
「・・あっ・・・いや・・なんでもない」
お姉さんは何かを言いかけたが結局何も言わずに、すうっと消えてしまった。

645:⑥
06/05/24 13:56:21 iAOQhzDV0
「騒がしい姉ですね」
「・・・・そうだね」
またも突然表れた深雨ちゃんは「つまんないです」とつぶやいた。さすがに三回目なので、
この子の神出鬼没にも慣れてきた。ちょっと、優越感。
「ねぇ、お姉さん、最期になにをいいかけたのかな?」
「わたしは、姉の通訳ではありませんよ」
「まあ、そういわずに」
「・・・そうですね、料理の感想を聞きたかったけど、照れて聞けなかったってとこでしょう」
─ああ、確かに。考えてみれば、僕もありがとうとしかいっていなかった。食事を出してもらって、
『おいしかった』を言わなかったのは、われながら非常識この上ない。
「じゃあさ、伝言してもらえる?」
「いいですよ」
「朝食は、すごくおいしかった。とくに、卵焼きが最高だったって」
「わかりました」

また次の日
朝起きてみると、リビングにはいい香り。
食卓を見ると、昨日は二つだった卵焼きが、三つに増えていた。


どーでもいい追記
 この後、食卓につこうとした僕の椅子を、気配無く忍び寄った深雨ちゃんに引かれた。
無様に転がる僕を見て、初めて深雨ちゃんが少し笑った気がした。
まぁ、それだけ。

646:本当にあった怖い名無し
06/05/24 13:57:10 iAOQhzDV0
遅くなりましたが、438さん、439さん、498さん、505さん
反応ありがとです。

647:本当にあった怖い名無し
06/05/24 17:25:00 GBdvMjCIO
激GJだ!

某スレの香りがしないでもないが…
だがグレエト!!

648:ある男の見解。 ◆VC3/0IaBbQ
06/05/24 18:57:09 nw034C3uO
>>640-645
あっ、結構好きかも。GJです!

649:本当にあった怖い名無し
06/05/25 01:41:14 sXJhnMdHO
>>640-645
良かったんだけど、きちんと推敲しよう。
>>640下から三行目、
>声がした方したほうを見てみると、
とか、>>642の七行目、
>がんばってせいぜい頑張って下さい」
とか。


神よ、どうしてもこんな所に目が行く俺をお赦し下さい。

650:本当にあった怖い名無し
06/05/25 09:32:56 H29De1ikO
>>649
周りから「つまらない人」って言われない?

651:本当にあった怖い名無し
06/05/25 09:38:25 JV/zlJcTO
いや、書いてくれるのはGJだけど流石に
こんな日本語書かれると、読みながらどうしても
そっちに目がいってしまうのは仕方がない。

652:本当にあった怖い名無し
06/05/25 10:57:35 09k17Y0FO
FBI編
死神「私ははあああ、アンタの味方なんかしないし、わっ…私は一応中立なんだけど、……後ろにいるオッサンがうざいだけなの!」
つき「!!!……………
……………
……………ツンデ霊乙」

オッサン・死神「!?」
オッサン【ツンデ霊……?!つき君……】

死神【ちょ、ちょっとアンタ、変な事言わないでよ!!!】


オッサン「あ、あなたは神か?」
つき「そうです」

653:本当にあった怖い名無し
06/05/25 11:07:39 iICnaEX+0
このスレ楽しいから好きだけど、初代スレのような勢いが無くなってきたなぁ。
ちょっとマンネリ化してきたのかな?まぁとにかくGJ!!

654:1/2
06/05/25 11:16:12 09k17Y0FO
狂乱のつき!!

つき「た、頼む死神
もうおまえしかいないんだ
書いてくれ!!」

死神【つ…つき君……
…………
………】
死神「はぁ?!アンタ馬鹿?!!ちょっと前まで「新世界の神になる~」とか言ってたのにもうこれなの?!
ホント最低ね。さっさと死んだ方がいいわ。」(死神、ノートに書き込む)

つき「!!

死神、おまえ!」

死神「どうみても精子よつき。
私にすがるようならもう駄目ね。アンタは終わり。
さようなら、いろいろ面白かったわ。」

655:2/2
06/05/25 11:17:10 09k17Y0FO
つき「し…
死ぬのか?!
僕は死ぬのか?!!」

死神「そうよ、はいあと40秒。
心臓麻痺
もう決まりなの。」



つき「…………ちくしょう…………
…………アレ?
皆寝てるよ?
もしかしておまえ…」

死神「………アンタを殺せるわけないじゃない…/////」

つき「…! おまえ…消えてる……まさか僕のことを…
うわぁーしなせたくないいかせたくないー」

どうでもよくなった

656:本当にあった怖い名無し
06/05/25 11:38:33 JV/zlJcTO
をいこらwww作者wwwGJだけど

657:本当にあった怖い名無し
06/05/25 20:59:24 ZI3wesenO
「おい、肩を揉め」
「ふざけんな、何でおれがそ―ぐわぁ!指が!指がぁ!」
「揉めよ」
「わかったよ!…く、このビッチめ…!ぐぎゃぁ!ま、前歯が!や、やめてくれ!」
「口は災いの元だ」
「うぅ…」
「腹が減った、飯」
「さっき食べたじゃないか、もう食材もな―ぎゃあぁぁッ!腕が、腕が!」
「飯だ」
「か、買ってくる!買ってくるから!折れる!折れるって!」

「眠い。寝るぞ」
「あ、ああ、布団敷いといたから」
「一緒に寝るんだ」
「おれまだ仕事が―ぐわぁ!目は!目はやめて!寝るから!」
「腕枕」
「は、はい」


658:本当にあった怖い名無し
06/05/25 23:01:48 JV/zlJcTO
ちょっと萌えた(*´ー`)

659:本当にあった怖い名無し
06/05/26 02:21:46 bpUAjYJS0
推敲は大事ですよねー
推敲をしない文章というのは味見をしない料理と同じで、
作者の「読ませてやる」的感情の表れと取られる恐れがあるんですよねー
推敲がどれだけ大事か、ちょっと以下の文章を例にとって考察してみましょうねー


「ごめんなさい」
見慣れた光景が目の前にあった。
もう何度目になるだろう。こうも続くと失恋も大したことはないと思える。嘘だ。

「あーあ、やっぱりダメだったね♪」
小憎たらしい声が聞こえたかと思うと、空から逆さまの女が降ってきた。
「アンタみたいなのが女の子と付き合おうってのが、そもそもの間違いなのよ、うん」

一人で結論を出して一人で納得している。小憎たらしいどころではない。憎い。
「これは多分お前のせいなんだぞ」
こいつが現れてからまったくロクなことがない。
階段から転げ落ちるわ、財布は落とすわ、テストで赤点は取るわ、女の子にはフラれるわ。
……決して俺の注意力や努力や男前度が足りないわけではない。

「なんでよー、アンタがフラれるのと私となんの関係があるのよ」
「お前、なんか変なオーラとか出してるんじゃないのか?
 取り憑いた男から女を遠ざけるオーラとか」
「じゃあ、アンタ今まで彼女とかいたことあるの?」
「生まれてこの方、一度も汚れを知らない身体です」

やれやれ、といった感じで女は肩をすくめて見せる。お前どこのアメリカンだ。
「とにかく、お前もうどっか逝けよ。いつまで俺に憑いてるつもりだよ」
「やだよーん。せっかくこんなに面白い奴見つけたのに、それを捨てるなんてとんでもない!」
……また人のゲーム勝手にやりやがって。

(省略されました・・一部の地域を除いてレスを延長します)

660:本当にあった怖い名無し
06/05/26 02:47:08 LimcCfXcO
>>659
べっ、べつに続きが読みたいとかじゃないんだから!
ただ…そう、中途半端じゃあんたがすっきりしないだろうって…

ってとりあえずツンデレレス書いてる自分はいったい('A`)
しかし…なんなんだこの肩すかし感は。

661:本当にあった怖い名無し
06/05/26 19:03:39 xfbL5OEoO
「おはよう」
「お、おおおはよう」
「朝飯だ、食え」
「この消し炭が?ぐふぉ!鳩尾はやめて…マジ」
「そら、口を開け、あーん」
「い、いや自分で食べれるから…イテェ!フォークで刺すなって!」
「うまいか?」
「じゃりじゃりする…げふッ!腹に爪先蹴りは嫌ぁ!」

「昼寝するぞ」
「あ、ああ、布団敷いといたから」
「膝枕」
「は、はい」
「なでなでしろ」
「り、了解」


662:本当にあった怖い名無し
06/05/26 22:41:08 Tu7TTcq/O
だからその最後で萌えさせる手法が大好きだぁぁぁぁあ!

gjgjgjgjgjgjgjg!

663:本当にあった怖い名無し
06/05/27 00:52:59 MauLq0Wn0
「モルスァ」が脳裏をよぎった俺は負け組

664:本当にあった怖い名無し
06/05/27 03:04:22 2Igd4DiRO
さんざんイジめてきてたのに、幽霊が家に来てから過保護プレイってのが好きなんだ。
家でもイジめてくるけど男が泣きそうになったら過保護になるんだ。異常なぐらい。
なんか今なら萌えて消えれそうだよ。
今そっちにいきます

665:本当にあった怖い名無し
06/05/27 03:07:46 2Igd4DiRO
sage忘れたorz

666:本当にあった怖い名無し
06/05/27 04:00:03 7Bx9Xfwl0
ツンデ霊のことを考えていると、時が早く経ちすぎて困る。

667:遣ろか水
06/05/27 04:16:05 X24XxsK30
夏の暑い日幼馴染の少年少女が連れ立って山道を歩いていた
少女はペットボトルの水を持っていたが少年は手ぶらであった
のどが渇いて仕方ないという風情の少年を始めはからかっていた少女も
彼がへばってしまうのはさすがに気の毒に思い

「ねえ、私の水やろうか やろうか?」
(アッ、でもこれって間接キスじゃないの!?でも今更やっぱダメって言うのも変だし
そうよねこの位のこと気にするほうが変よねそもそもコイツそんなの全然考えないやつだし
私さえ意識しなければ全然問題ないのよつーかむしろ私にとっては望むところ?チャンス到来?
って何考えてんのよ私は!! (///) やっぱダメかな?こんなのエッチかな?あーでもでも…)

「ああ、くれるんならくれよ」

「え?あ、えと、う、うっさい!このスケベ!!変態!!!」 バシャ~ン!!

668:本当にあった怖い名無し
06/05/27 12:13:10 cKW1ZYqoO
新しい手法だ…

GJ!

669:本当にあった怖い名無し
06/05/27 13:05:16 3E4XUa2G0
上手いなw <br> <br> 最早妖怪じゃなくなってるが

670:本当にあった怖い名無し
06/05/27 16:50:19 aBE7++Cc0
>>660
ネタもないのに書いた(´・ω・)ス
反省はしてない(´・ω・)ス
謝罪と賠償をする(´・ω・)ス


こいつのことは生きてるうちから知っていた。
いや、知っているといっても同じマンションの同じ階の住人というだけで、
話したこともなければ名前すら知らないのだが。
ただ、時々朝の登校の時間帯が重なることがあり、
そのときに顔を見たことがある程度だ。

ある朝、俺がいつものように遅刻しそうになっていると、
玄関を出た廊下の手摺に女が腰掛けていた。
頭がおかしい人かと思ったらこいつだった。

「危ないぞ」
下は植え込みと芝生がある。とはいえ落ちたら怪我ではすまないだろう。
特に深く考えたわけでもなく、気がついたら声をかけていた。
そのときのこいつの驚きようは今でも覚えている。
人のことを化け物でも見たような顔で見ていたな。失礼な幽霊だ。

それからこいつは俺の周りをうろつくようになった。

「それにしてもアンタもよく飽きないわね」
「なにがだ」
「普通はさ、これだけフラれたら、ちょっとは謙虚になるものよ」
なぜ謙虚にならなければならないのか。
よくわからないが、それはつまり俺の男前度が足りないとか、
俺がいまいちイケメンになりきれていないからとか、容姿に欠陥があるからといいたいのか。
「アンタのことなんて誰も気に留めてないのに」
……本当に失礼な幽霊だ。

671:本当にあった怖い名無し
06/05/27 16:51:05 aBE7++Cc0
こいつに出会って半年が過ぎただろうか。
最近のこいつは元気がない。
相変わらず憎まれ口だけはきくが、以前のような切れがない。
もしや、いわゆる女の子のなんとやらか。……なわけないか。

「なあ」
「なによ」
「なんか悩みでもあるのか?」
「……幽霊なのに?」
「幽霊でも悩みぐらいはあるだろ」
「…………」
「ないなら別にいい」

いよいよおかしい。
ここ二、三日のこいつは、いつもの憎まれ口もきかなくなった。
これでは本物の幽霊のようではないか。まさか今さら自分が何者なのか自覚したのか。
一日中どこかに行っていたかと思えば、気がつくと俺の部屋の窓際で物思いに耽っている。
ふむ、こうして静かにしてればそこそこ可愛いのにもったいない。
そういえば、なぜ俺がこいつのことを覚えていたのかといえば、
朝見かけるこいつの可愛さがちょっと気になってたんだよな……。

「ねぇ」

アホなことを考えていると突然話しかけられた。
久しぶりなので少し動揺する。

「アンタ、自分が死んだ後のことって考えたことある?」
「はぁ?」

なんなんだいきなり。
まさか最近元気がなかったのは、そんなことを考えていたからか?

672:本当にあった怖い名無し
06/05/27 16:52:08 aBE7++Cc0
「例えば、自分が死んだあと、誰もそのことを哀しんでくれなかったらとか考えたことない?」
「そんなことありえないな。俺が死んだら、学校中の女の子が悲しみのあまり寝込んでしまって、
 翌日から学校は当分休校になるだろう」
「真面目に答えて」

真面目に答えてるぞ、と言いかけてやめた。
こいつのこんな真剣な顔を見るのは初めてだ。

「そんなこと考えたことないな」
「本当に? 自分がいなくなっても誰もなにも思わなくて、いつもと変わらないでいるのよ?
 それでもいいの?」
もしかして、最近一人でどっか行ってたのは、それを確認しに行ってたのか?
それで悩んでいたのか?

「……そりゃあまったく悲しんでくれないってのも寂しいけどさ。
 でも、変わらない生活を続けてくれているなら、俺は嬉しいよ」
「…………」
「だって、これからも生きていくんだぜ? いつまでも後ろばっかり見て生きていくのが幸せとは思えない

よ」
「……そう」
それっきり黙りこんでしまった。もしかして外したのか。
確かに自分でもクサいことを言ったとは思うが、ってお前が言わせたんじゃないか。
俺の責任じゃないぞ、うん。

673:本当にあった怖い名無し
06/05/27 16:52:54 aBE7++Cc0
一ヶ月が過ぎた。
その日もどこかへ出かけていたアイツが帰ってきたとき、俺はある変化に気がついた。

「お前、なんか薄くなってないか?」
「はぁ?」
突然なにをバカなことを言うのかといった風に怪訝そうな顔をする。
そして慌てて自分の身体を確認している。

「……別に変わらないと思うけど」
「いや、やっぱり薄くなってるって。前はそんなに透けてなかった」
俺の記憶が確かなら、初めて話したときのこいつはほとんど普通の人間と変わらなかった。
それが今は背後の景色が透けて見えている。どうにか服だけ透けて見えるようにならないだろうか。

「もしかして……」
なにかを思案するように呟くと、そのまま窓から出て行ってしまった。
どうしたんだよ。気になるじゃないか。こっちがもしかしてだよ。

結局帰ってきたのは深夜になってからだった。
「あのさ、前言ってたこと覚えてるか?」
アイツは黙ったまま窓の外を見ている。
「自分が死んだあとに悲しんでくれる人がどうこうってやつ。
 俺思うんだけど、やっぱり自分の親しい人とか大切な人がいなくなると悲しいよ。
 でも、その悲しみを周りに見せないようにして、我慢して、なんとかやっていくしかないんじゃないかな


アイツは相変わらず窓の外を見たまま動かない。ちゃんと聞いてるんだろうな。
「その人がどれだけ悲しんでるかなんて、周りから見ただけじゃわからないし、
 その人がその悲しみを乗り越えていければ、それが一番いいことなんじゃないか?」
俺の恥ずかしいセリフをアイツは黙って聞いていた。

674:本当にあった怖い名無し
06/05/27 16:53:58 aBE7++Cc0
「ごめんなさい」
見慣れた光景が目の前にあった。
もう数えるのはやめた。なんど経験してもつらいものはつらい。

「いい加減諦めたら?」
なんともいえない表情を浮かべてアイツが見下ろしている。同情するなら愛をくれ。
「諦めたらそこで試合終了ですよ」
「始める前から投了って感じだけど」
やっぱりムカつく。

「ああ、どこかに俺の魅力に気付く、美人で巨乳で性格のいい子はいないのか」
「そんなのがいたら、天然記念物としてすぐに保護されるでしょうね」
こいつは最近以前の調子を取り戻した感がある。なにかあったのか?
俺の方は相変わらずだ。
階段から転げ落ちるわ、財布は落とすわ、テストで赤点は取るわ、女の子にはフラれるわ。
恐らくこいつが俺からなにか吸い取っているのだと思う。
……決して俺が成長していないわけではない。

一つ違うことがあるとすれば、アイツの姿が俺にはもうほとんど見えなくなってしまっていることだった。

アイツ自身には自分の変化がわからないらしい。
これは俺の問題なのか、それとも……。
あまり考えたくない。

675:本当にあった怖い名無し
06/05/27 16:55:00 aBE7++Cc0
それでも時は流れ、季節は巡る。
アイツはいつもの調子で話しかけてくる。
「最近告白しないね。ようやく諦めたの?」
突然空中から声がして、その度に驚かされる。
「なによ、変な顔して」
本当にわかってないのか、こいつは。なぜかイライラする。
段々アイツと話をする時間も減ってきている。

「ねぇ、なにか悩みでもあるの?」
「なんだよいきなり」
「最近元気ないじゃない。なにかあったの?」
「……別に」
「ないなら別にいいけど」

ふと、以前にもこんなやりとりがあったような気がした。
あれはいつだったか……。

「アンタに聞いておいてほしいことがあるんだけど」
「……え? なに?」
なんだいきなり。こいつらしくない。

「私、もうすぐここからいなくなるかもしれない」

なんだよそれ、衝撃の告白のつもりか。いつものおふざけにしてはタチが悪いぞ。

「アンタ言ってたよね。私の姿が薄くなってきてるって。
 多分……もうそんなに時間がないんだと思う」
「いなくなるって、それでどこに行くつもりなんだ?」
「うーん、どこっていうか、この場合元に戻るって言った方が正しいのかな?」
「ふざけんなよ! 今さら……今さら元になんて戻るわけないだろ!」
なんでそんなにあっさりしてるんだよ。結局俺と一緒にいた時間なんてそんな程度だったのか。

676:本当にあった怖い名無し
06/05/27 16:56:00 aBE7++Cc0
「……もしかして私のために泣いてくれてるの?」
「えっ?」
そのとき初めて自分が涙を流していることに気付いた。
「もういいよ、どこへでも好きなところへ行けよ」
半ばヤケクソ気味になって声を絞り出す。
「ありがとう、それだけでもう十分よ」
最後にアイツの柔らかい手のひらが頬に触れた気がした。


それから半年が過ぎた。
あの廊下でアイツと出会ってから一年以上が過ぎていた。
俺は高校を卒業して大学生になっていた。

新しい環境の中で新しい友人と出会い新しい生活が始まった。
相変わらず階段から転げ落ちたり、財布を落としたり、単位を落としそうになったり。
……やっぱり俺のせいだったのか。考えたくはなかったが。
とにかく俺は以前と変わりない生活を送っていた。

ある日、高校時代の友人に会う機会があった。
気の合う者で集まって、プチ同窓会とでもいうようなものを開くことになったのだ。
会は順調に進み、参加者はみな楽しんでいたようだ。
もちろん俺も楽しんでいた……はずだ。
帰り際、参加者の一人が俺にこんなことを言った。

「君、大学に入ってずいぶん変わったね」
「そうか?」
「うん、なんか落ち着いたっていうか、大人びてきたっていうか……ただ」
「ただ?」
「どこか悲しそう」
なんとなく触れられたくない部分に触れられた気がして、俺は逃げるようにその場を後にした。


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