06/04/25 00:18:08 JsBvGefO0
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暖か味を帯びた風が僕の頬を撫でる。
3mほどのフェンスに囲まれた病院の屋上。
時折、真っ白なシーツが風にはためく音が聞こえる。
僕はここに入院している。
重い病気ではないと言われているが、もう2年になるかな。
ふっと僕の視界の端に人影が写り、そちらへ視線を向ける。
そこには髪を腰辺りまで伸ばした女性が空を眺めていた。
空色のワンピースに白のカーディガンを羽織っているところを見るとお見舞いに来た人かな。
僕の視線に気づいたのか、女性がこちらを向く。
「こんにちは」
僕は女性に挨拶をしたが、女性は周りを見渡す仕草をする。
今のところ、屋上には僕と女性しかいない。
「……わたしが、見えるのね」
不思議な事を言うと、女性は僕の方に歩み寄る。
触れる事のできる距離まで来ると、僕の身体に手を伸ばす。
「え?ちょっ―!」
突然の事に戸惑う僕に構わず、女性の手は僕の身体に……触れなかった。
スッと抵抗も無く身体の中に入っていく。
目を白黒させて驚く僕、いたずらっぽく笑みを浮かべる女性。
突如、ゾクリと総毛立つ感覚に襲われて身体が震える。
「一般的に言う幽霊ってやつなのよ、わたし」
女性の手が引き抜かれ、ふふっと女性が笑う。
僕は全身に冷や汗をかき、動悸が激しくなる。
「あら、ちょっと驚かせすぎたかな」
「……少し驚いたよ」
「少し、だけ?」
女性が不満そうに僕の顔を覗き込む。
正直、かなり驚いたが口に出したくはなかった。