なにそのツンデ霊★四人目★at OCCULT
なにそのツンデ霊★四人目★ - 暇つぶし2ch100:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:19:21 q5cKLA8f0
窓から差し込む光が瞼を突き刺す。
胡乱な頭で状況を把握しようとして―

「………っっ!!!!!!」

床から飛び起きた。
俺はいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
それは別にいい。大した問題じゃない。

「……ここは……あの世なのか?」

身体にはきちんと感覚がある。どこにも異常は感じられない。
見回せばそこはいつも通りの店内で、周囲からは朝の早い人々が奏でる喧騒が聞こえてくる。
まったくもって、いつもと変わらない朝だ。

「はははっ…夢でも見たのかな俺」

そうだ、そうに違いない。
バンシーなんか見ていないし、俺が死ぬ理由は無い。
昨夜は仕事疲れで神経がやられていたのだろう。
よし、そうと決まれば……

「開店の準備でもするか」

商品の陳列を確認し、店内を掃除する。
僅かな時間で朝食を作り手早く腹ごしらえをする。
食器を片付けようとした時、棚と壁の間に何かが落ちているのが見えた。
顔を近づけてみると、それはネズミの死骸だった。

101:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:20:20 q5cKLA8f0
「うわ……どっから入り込んだんだよ……」

ぶつぶつ言いながら、まだ比較的新しいその死骸を片付ける。
保存食品の類も扱う店である以上、不衛生は敵だ。
そうこうしているうちに日は昇って行き、通りには様々な人々が溢れていく。

からんからーん

「おっと…お客さんだ」

前掛けを羽織りながら急いで店に出る。
あれこれと注文の多い客の相手を終える頃には、バンシーの夢などすっかり忘れていた。


その夜。
帳簿を付けながら仕入れ品目の選択に頭を悩ませていると、店の扉を叩く音が聞こえた。
すでに店は閉めている時間だが、極々稀にこういう客がいる。
無視してしまっても咎められる筋合いは無いだろうが、そこは俺とて商人の端くれ。
融通を利かせてあげれば以降はこの店を贔屓にしてくれるかもしれない、という打算もある。
店の明かりを点けて扉を開け、営業用の―

「いらっしゃ……」
「なんで生きてるのよっ!!!!!」

―笑顔も凍るほど酷いことを言われた。

102:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:21:20 q5cKLA8f0
「なんでよ!? 死んでるはずでしょー!?」
「……………えーと、あの……お客さん?」
「信じられない……確かにこの家から死の気配がしたのに……」
「もしもし? お客さん?」

腕組みしてブツブツと呟くのは、腰まで届く美しい黒髪の女の子だ。
野暮ったい緑衣と灰色のマントがいささか大きすぎるようで、裾をずるずると引きずっている。
可愛らしいとさえ言える顔立ちの中、紅玉色の瞳だけが異彩を放っていた。
少なくとも俺はこんな瞳の色をした人種を知らない。
緑衣に灰色の外套、おまけに紅い瞳なんて……そんなの、まるで。

「……バンシー!?」
「きゃあっ! ……な、何よいきなり大声だして」
「お、お前っ! 俺を殺しに来たのかっ!?」
「殺す? なんでよ?」
「いや、だってお前、ホラ」

言葉に詰まる。アレは夢だと思っていたのに、目前の少女は間違いなく現実だ。
であるならば……俺の死もまた現実ということになってしまう。
昨夜の絶望感がじりじりと背筋を這い登り、俺は慄然とした。

「……俺が死ななかったのが不満なのか。それでまたこうして……」
「それよ! あたしもそれが聞きたいの」
「へ?」
「この家って、あんた以外に誰か住んでる?」
「いや……俺一人だけど」
「濃密な死の気配を感じたのよ……だから昨夜、張り切って泣いたのにっ!」

103:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:22:24 q5cKLA8f0
鼻息荒くまくしたてる少女の姿は、戸口で悄然と泣き続けた姿とどうにも一致しない。
これでは嘆きの精ではなく憤りの精だ。こちらの思惑などどこ吹く風、といった様子で
バンシーは続ける。

「……納得いかない……納得いかないわ………あたしの初仕事だったのに……」
「でも俺はこうして生きてるしなあ」
「だったらあの気配は? 間違いなくこの家からだったわよ?」
「………あー……もしかして……」

そんなことはないだろう、と思いながらも一応伝えてみる。
言われてみればこの家に“死”が存在したことを。
ただしそれは……

「……………………………………………ねずみ?」
「うん、ねずみ」
「………何よそれ」
「灰色で、ちゅーと鳴く……」
「知ってるわよっ!!」

があっ、と口を開けて噛み付くように怒鳴る少女。
俺もいい加減、この状況が単なる八つ当たりだと理解していた。
自然と口調がきつくなる。

「死んだのが俺じゃなくて残念だったね。とにかく、お客さんじゃないなら帰ってくれ」
「……べ、別に死んでほしかったわけじゃ……ないけど……」
「バンシーを見た家の者がどれだけそれを恐れて、悲しむか知ってるのか?
 逃れられない死ならわざわざ予告なんかしなければいいんだ……悪趣味な」
「……だって、だって……あたしの、お仕事だから……」

104:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:23:22 q5cKLA8f0
しょんぼりと肩を落とす少女の姿は、さながら叱られた子供のようだ。
紅い瞳の端にはじんわりと涙が溜まり、いまにも零れ落ちそうに見える。
商人の俺は、商品を売るのが仕事。嘆きの精は、死者を悼んで泣くのが仕事。
頭では理解出来るが、どうにもこの少女に向いている仕事とは思えない。
……まあ、ねずみの死の気配すら感知できるのはある意味で優秀なのかもしれないが。

「ごめん、俺も言いすぎたよ。でもさ……ねずみと人の区別も出来ないのはちょっと……」
「う、うるさいうるさいっ!! 初めてだったからちょっと気負いすぎただけなのっ!!」
「……あー、確かに俺も店を一人で回しはじめた頃は良く失敗したなあ…
 品物仕入れすぎてとんでもない在庫量になったり……」
「……………これは………!? 今度は間違いないわ……あの家から気配がするっ!」
「聞けよちくしょう!」

人が折角慰めるつもりで披露した失敗談も聞かず、数軒先の家を睨むバンシー。
あの家には確か……鍛冶屋の4人家族が住んでいたはずだ。
豪快な主人とキップのいいおかみさん、双子の子供達は七歳になったばかりだ。
あの中の誰かが、死ぬ?

「お、おい……ホントにあの家に……?」
「いってきまーす!!」
「待てってばよおいっ!!」

嘆きの精は身を翻し、鍛冶屋の戸口を目指してとてとてと走っていく。……あ、転んだ。
何事もなかったようなフリをしながら立ち上がり、服の土ぼこりをぱんぱんと掃う
バンシーの背中を眺めながら溜息をついた。今度もねずみだったらいいな、と思いながら。

105:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:24:21 q5cKLA8f0
翌朝早い時間に鍛冶屋を訪れた俺は、店先を掃除するおかみさんにそれとなく尋ねた。
「何か変わったことはなかったか」と。きょとんとしたのもつかの間、おかみさんは
不思議そうに答える。
「今朝起きてきたら、台所でうちの年寄り猫が眠るように死んでいた」
「子供たちが悲しむだろうから、どう伝えていいか困っている」

……ねずみではなかったが、ノリはかなり近いものがある。
きっとあのバンシーは、また今夜鍛冶屋におしかけて自らの予告を確かめるだろう。
あの荒くれ主人に怒鳴りつけられるバンシーの姿が目に浮かび、内心で決意を固める。
要らん騒ぎを起こす前に身柄を確保せねば。


「というわけで、またハズレです。……いや、ある意味では当たりなのかもしれないが」
「…………いきなり店に引っ張り込んでおいて、他に言うべきことはないの?」

店の椅子に座るのは、滅茶苦茶不満そうな顔をした件のバンシー。
ねずみから猫にクラスアップしたとはいえ、嘆きの精としてはかなりダメダメな結果である。
こいつはそのうちヤモリや蜘蛛の為に泣きかねない。

「お前ね……あの家の親父さんをこんな夜更けに叩き起こしてみろ。斧で頭カチ割られるぞ」
「ひいっ!」

頭を抱えて怯える姿を見て、少しばかり溜飲が下がる。
この人騒がせなへなちょこバンシーを放置しておくのは、本人(本精?)にも街の住民にも
よろしくない。意を決して厳しい言葉を告げる。

「お前さ、向いてないと思うよ。そのうち人間の気配にも行き当たるかもしれないけど
 あまりにも予告の精度が低すぎるんじゃないか?」
「…………余計なお世話。あたしのお仕事の邪魔しないで」
「そもそも楽しくないだろ? 人の死を告げるために泣くだけなんて」

106:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:25:20 q5cKLA8f0
俺が言いたいのはそれだった。
逃れられない死を告げるのは、決して愉快なことではないだろう。
死を求めて彷徨うのならそれは死神と何ら変わらない。
悲しいことがあって嘆くのではなく、嘆くために悲しいことを探すのは―

「―なんか、つまんなくないか?」
「……訳知り顔で好き勝手言わないで! だって他に……」
「他に?」
「他に……すること、ないもん。できることも、ないもん」
「………………」

嘆きの精は、ようやく自分の為に嘆く。
そう在るように生まれた存在だから、そうするしかできないと。
改めて少女の姿を眺めてみる。紅い瞳の他は本当に普通の人間と変わらない。
いや……普通というには器量が良すぎるか。

「お前に出来る仕事があるんだけど、良かったら話だけでも聞いてみないか?」
「…………お仕事? あたしにできること?」
「ああ……実はな…………」

その夜、俺の店の明かりは随分長いこと灯っていた。

107:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:26:23 q5cKLA8f0
「いらっしゃいませ! 何をお探しですか?」
「ありがとうございましたー!」

その街には、小さいながらも品揃えの豊富な雑貨屋がある。
二十歳を少し過ぎた若い店主と、それよりもっと若い看板娘が二人で切り盛りする店だ。

「あれっ……確かに仕入れたはずだったんだけどな……」
「そこじゃないってば。ほら、暖炉側の棚の二段目!」

くるくると表情を変える看板娘は、いつも通りに店主を叱る。
「どちらが店主か分からない」と笑う常連客。

「しかしなんだね……店主、あんたいい奥さんつかまえたじゃないの」
「「奥さんじゃありません!!」」
「……二人して否定せんでも」 

長い黒髪と紅い瞳の少女を見て、まるで嘆きの精のようだと言う人もいた。
店主と看板娘はそうすると決まって顔を見合わせて笑うのだ。



「ホント、この人かいしょー無しで困るんですよ。
 あたしがいなかったらこのお店つぶれちゃうんじゃないかな?」

―看板娘は、それはそれは楽しそうに嘆きを洩らした。

108:運動場整備部隊 ◆zR/LhJxu0Q
06/04/23 20:27:09 q5cKLA8f0
終わり。霊というか精霊というか。

109:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:28:49 p+T4upIN0
GJというよりほかあるまい。よって叫ぶ。たちどころに叫ぶ。
GJ!最高だぜブラザー!

110:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:28:55 OPEXyK3r0
GJ!

111:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:31:37 7B7mmu0Z0
メンデルスゾーンGJ!

112:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:33:10 9G616x8UO
GJ!
俺もうぷするよ。今回はえろ初挑戦!ラストは少しあとにあげるけど。

113:えろ初挑戦!①
06/04/23 20:36:57 9G616x8UO
よくある話と言えばよくある話だ。
家賃の安さにひかれて契約した部屋には少女の幽霊が憑いていた。
 
「…出ていけ」
強ばった顔で睨み付けていた彼女は今も散々俺に嫌がらせを仕掛けている。
 
寝ている俺の首を絞めたり包丁を投げ付けたり
風呂にドライヤーを投げ入れて感電させようとしたり、とにかく色々だ。
 
霊験あるお守りを身につけるようになってからは直接的な被害は無くなったが
今だに口では色々と突っ掛かってくる。
 
「なぁ、お前いつになったら成仏すんだよ?」
「うるさいわね!あんたには関係ないでしょ!」
 
「つーか、なんで地縛霊なんてやってんの?」
彼女は凍り付いた。
しまった、失言だ。
 
「…ごめん、無神経な質問だった」
「な、何よ!変に気を使うじゃないわよ!…交通事故よ」
 
「そうなんだ…」
「ちょっと、何よ…何しんみりしてんのよ!バカじゃないの?!」
「……」
「ななな何見てんのよ!
あんたなんか死んじゃえッ!」


114:えろ初挑戦!②
06/04/23 20:38:57 9G616x8UO
「なあ、暇だからオセロでもしない?」
「し、仕方ないわね!
どーしてもって言うなら付き合ってあげる!ほ、本当は嫌なんだからね!
感謝しなさい!」
 
敗色濃厚になるとテーブルを引っ繰り返すのは止めて欲しいが。
 
そうこうしてるうちに一年がたち、家庭の事情で俺はこの部屋を引き払わねばならなくなった。
 
「なぁ、お前、俺がいなくなっても平気か?」
「あ、当たり前じゃない!やっと静かになって清々するわよ!」
「そうか…」
「い、今まで一人でやってきたんだから!
何てこと無いわよ!ふん!」
 
情も移っていた俺は何とか彼女にしてやれることはないか、と色々と聴いてみた。


115:えろ初挑戦!③
06/04/23 20:40:29 9G616x8UO
「…じゃあ一つだけ。一つだけお願いがあるの」
夜になったらお願いすると言うと彼女は真っ赤になって姿を消した。
 
で、夜だ。
何やらいつもと違う雰囲気。
「電気、消して」
少し震えたかすれ声で言う彼女。
 
言われるままに電気を消す。窓からの月明かりだけが部屋の中をぼんやりと照らす。
 
「で、お願いって…?」
俺の問いに答えずに彼女は着ていたワンピースをするりと脱ぎ落とした。
 
彼女の透き通るような白い肌が月光に映え、幻想的な美しさを奏でる。
 
「…服、脱いで」
鼓動が煩い程に跳ね上がる中、俺は裸になる。
 
彼女はゆっくりと俺に近づいてくるが、その細い肩が震えているのを俺は見逃さなかった。


116:えろ初失敗!④
06/04/23 21:42:27 9G616x8UO
薄暗い部屋の中、彼女のにじり寄るかすかな足音だけが響く。
 
「ねぇ…一つだけ。
一つだけ私の願いを叶えてほしいの」
「うん、願いは…何?」
彼女の艶やかな素肌に目を奪われながら答える。
 
彼女はしなやかな腕を俺の首に回し、耳に口を寄せて熱っぽく囁いた。
 
「私と……
 私とファイトしなさい」
 
カーン、と部屋にゴングの音が鳴り響くと彼女は俺の首をガッチリ抱えあごに膝を叩き込んだ。
 
「あごがヤワいわね。ガムでも噛んで鍛えるといいわ」
 
思わず倒れこんだ俺に馬乗りになる彼女。
「ば、馬鹿な…お守りがあるのに…ハッ!?」
 
今、俺、裸。
お守り、服のポケット。
 
「お前は『これを狙っていたのか!?』と言う!」
「お前、こ、これを狙っていたのか!?…ハッ!?


117:えろ大失敗!⑤
06/04/23 21:44:10 9G616x8UO
「ククク…貴様が2chのツンデ霊スレを毎晩チェックしてるのは調査済みッ!
油断したわねぇ…」
 
「くそッ!」
ジタバタと暴れるがビクともしない。
「無駄無駄無駄ァ!
 さて本番よ…」
彼女はビキビキと筋を浮かんだ拳を握り込む。
 
「拳は強く強く握りこむのよ。でないと骨を痛めてしまうわ」
 
「ちょ、待っ…」
 
「ジェノッサァァーイッ!!」
 
何度も何度も何度も鉄拳を叩きこむ
「これこそがツンの最終形態よ!」
 
彼女の指が俺の眼窩をえぐり進み、脳幹を破壊すると同時に俺の意識も暗転した。


118:運動場整備部隊 ◆zR/LhJxu0Q
06/04/23 21:45:45 q5cKLA8f0
いつもいつも……w なんでアンタはそうなんだっ!! (褒め言葉)

119:エピローグ⑥
06/04/23 21:45:46 9G616x8UO
 
「こうかな?もっと下?」
 
「そうそう、それ位!うん上手よ!さすがまーくん!」
 
俺は新しい入居者である青年の上に乗って首をぐいぐい締めあげる。
 
「じゃ、私はこっち書くわねー♪」
彼女は鼻歌を混じりにかべに血文字で『呪殺!』と書き込んでいく。
 
「だいぶ弱ってきたからね。これできっと出ていくよ、こいつも」
「うふふ、だってまーくん、すごい上手く祟るんだもん」
 
「でも一思いに殺っちゃった方が早くない?」
「ダメよぉ、そしたらここに憑いちゃうでしょ!
この部屋は私たちだけの
・愛・の・巣♪」
 
彼女はそう言って俺に抱きついてくる。
 
彼女は昔のツンツンが嘘のように今はデレデレだ。
 
(幸せ…なのかな)
願わくば、お祓いとかがきませんように…



120:本当にあった怖い名無し
06/04/23 21:49:50 7B7mmu0Z0
エマニエルGJ!w

121:運動場整備部隊 ◆zR/LhJxu0Q
06/04/23 21:50:32 q5cKLA8f0
先走り割り込み失礼。マジ御免。烈海王に転蓮華されてくる。

122:本当にあった怖い名無し
06/04/23 22:15:57 7B7mmu0Z0
>>121
失礼なんていったって許さない。
何か書かなきゃ許さないよ?
んー?wんんーw

123:本当にあった怖い名無し
06/04/23 22:18:49 TPBzJwZ10
え? じゃあ俺も許さない。

124:本当にあった怖い名無し
06/04/24 00:20:57 wLM0F3bw0
「私メリーさん、今あなたの後ろにいるの」
僕は電話を切り、背後の気配に話しかけた。
「君がメリーさん?」
「電話で言ったでしょ?可哀想だけど、ルールだからあなたを殺さなきゃいけないの」
僕はその言葉を聞き慌てた。
「ちょっと待った。…死ぬ前にちょっとやりたいことが2つあるんだけど、いいかな?」
「いいけど…何?」
「君の顔が見たいんだ。誰に殺されたかわからないなんて気分が悪いだろ?」
「それはできないわ。あなたが振り向いたら私は鎌を振らなきゃいけないの」
「…じゃあ2つ目、コインランドリーに洗濯物取りに行きたいんだけど、いい?」
メリーさんは少し悩んでいたようだったが
「それくらいだったらいいわ。でも、振り向いた瞬間にあなたは死ぬ。忘れないでね。」
コインランドリーまでは片道5分、僕はメリーさんとの会話を期待していたが、
「私の姿は電話がかかってきた人にしか見えないの。変人だと思われたくなかったら話しかけない方がいいわ」
と言われ、断念した。結構人通りが多い道だったから。

125:本当にあった怖い名無し
06/04/24 00:30:57 wLM0F3bw0
洗濯物をバッグに入れ、
(後は家に帰って遺書を書いて死ぬだけだ。)
と思いながら歩いていたら、目の前の信号が変わりかけていた。
その信号は待ち時間がとても長い。
これ以上メリーさんを待たせるのも悪いので駆け抜けることにした。
幸いその交差点は車があまり通らない。いつも自転車で通っている道だ。
横断歩道半ばまで来たとき、突然クラクションが鳴った。
大型のトラックだ。
(何でこんな道を!?)
と頭が考える前に僕の体が反応していた。
後ろにいるメリーさんをかばう。
僕ごときが盾になったところで大して変わらないだろうが、やらずにいられなかった。
メリーさんの鎌が振り下ろされる前に、トラックが僕達を跳ね飛ばした。

126:本当にあった怖い名無し
06/04/24 00:42:38 wLM0F3bw0
「…ここは、天国か?」
アスファルトに叩きつけられたところまでは覚えている。
あたりを見まわす。色とりどりの花が咲いていた。
「…私にかまわず逃げればよかったのに」
声に反応して振り向くと、メリーさんがいた。
「君も死んじゃったの?」
おそるおそる尋ねる。
「私はもともとこっちの世界の住人なの。死ぬわけ無いじゃない」
そうでした。…ってことは僕、無駄死に?
「全く…私は今まで一度も失敗してないのに…あなたのせいで台無しね」
「ゴ、ゴメン」
「…あなたが転生するまで待っててあげる。次は殺させてよね」
…そうして、メリーさんと僕の霊界生活が始まったのです。
ちなみに、僕はクリスチャン。転生などする訳無いのですが、そのことを話しても
「じゃあ最後の審判まで待っててあげる」
と言って聞かないんです。

127:本当にあった怖い名無し
06/04/24 00:44:36 wLM0F3bw0
始めて書いたのですが、どうでしょうか?

128:本当にあった怖い名無し
06/04/24 02:43:08 SzKBm3JIO
駄目だな

129:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:21:43 MbqP78Ek0
天井にあるスタンドグラスから降り注ぐ月の光が室内を照らす。
目の前にいる彼女ははにかみながら上目遣いで見つめてくる。

彼女に出会ったのは雪の夜だった。
仕事帰りに突然聞こえた甲高い急ブレーキの音。
好奇心に駆られて野次馬に行った現場で見たのは、
血みどろで路上に伏した女性と、すぐ側に佇みそれを見下ろす女性。

途端に周囲のざわめきが消え、直感が目の前の危険を警告する。
立ちすくむ女性がゆっくりと視線を上げる。
早く逃げなければ、焦る気持ちとは裏腹に身体はまったく言うことを聞かない。
最後に覚えているのは彼女の哀しげな両の瞳と左手に嵌めた指輪の光だった。


自慢ではないが、私は生まれてこの方幽霊などというものとは無縁の生活を送ってきた。
それなのに、彼女に出会ってからの二週間はそんな私の常識を覆すものだった。

なによりも私を驚かせたのは、寂しい一人暮らしだとばかり思っていた私の部屋が、
実は大変賑やかな大所帯であったということだ。
格安の家賃は古くボロボロの造りのせいだけではなかったのか。

毎晩聞こえる恨み言。いつの間にか移動する食器。
気にしだすと壁の染みすら人の顔に見える始末。

「……出ていけ」「……くるしい」「……イタイ」

今日も始まったか。うるさくて眠れやしない。
実害はないからいいものの、こう毎晩では精神衛生上よろしくない。
……ここはやはり一言言ってやるべきか。

130:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:22:44 MbqP78Ek0
「あー君たち、言いたいことはわかるが、私に言われてもなにもできないんだ。
 私はできるだけ君たちの邪魔はしない。だから君たちも私の邪魔はしないでくれないか。
 具体的には夜は静かにしてほしいのだが……」

「……五月蝿い」「……しね」「……クルシメ」

どうやら彼らの機嫌を損ねてしまったようだ。
飛んできたのが辞書ではなく文庫本だったのはまだ彼らにも良心が残っているということか。


「クスクス」

窓際から楽しげな笑い声が聞こえてくる。

「……見てないでなんとかしてくれよ。君が来るまではこんな部屋でも平和だったんだ」

「あら、私のせいだって言うの?」

「どう考えても原因は君しかありえない」

「この人たちは私が来る前からここに住んでたのよ?
 それにあなたにも元々素質があったのよ。彼らの声を聞く素質がね」

「幽霊じゃなくて外国人の声が聞こえる素質なら私の人生ももっと違っていただろうな」

131:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:23:40 MbqP78Ek0
あの事故の日から、彼女は私の部屋にいる。
特になにをするというわけではない。ただそこにいるだけだ。
別に害があるわけではないので放っておいたら、
本来の家主である私よりも家主らしい顔で振舞うようになった。

「ねえ~、ビール無くなったよ~」

当たり前のように冷蔵庫を覗き込み催促する。

「おつまみ用意しとくからさ~、ビール~」

どうも最初の対応を間違えたようだ。


月日は流れたが私と彼女の生活に変化はない。
賑やかな同居人たちも相変わらず騒がしい。

「ただいま」

「お帰りなさ~い、あなたご飯にする? お風呂にする? それともワ・タ・」

「ご飯にしよう、昼食べる時間なくて腹ペコなんだ」

なにやら妙にハイテンションの彼女にかまわず食卓につく。
給料が安い割りに仕事はキツイ。いつもの様に彼女の相手をする気になれなかった。
彼女はなにか言いたげだったが、夕食の支度を済ませるとさっさと消えてしまった。

なんだったんだ?
ふたりで暮らすようになって結構経つが、いまだに彼女のことはわからないことだらけだ。

結局、彼女はその夜戻ってくることはなかった。
こんなことは初めてだ。しかし、幽霊を心配するというのも妙な話だな。

132:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:25:12 MbqP78Ek0
「……可哀想」「……かわいそう」「……カワイソウ」

……なんなんだ。ここ最近大人しくしていたと思ったら可哀想?
可哀想とは彼女のことなのか? こいつらでも他人の心配をするのか。

「……冷蔵庫」「……れいぞうこ」「……レイゾウコ」

冷蔵庫になにかあるのか。また勝手に食い散らかしたんじゃないだろうな。
ところが扉を開けた私の目に意外な物が飛び込んできた。
白いクリームと黄色いスポンジと茶色のチョコレート。
その茶色い板に「Happy Birthday!!」の文字。

そうか、今日は私の誕生日だったのか。


夜の街を闇雲に走る。
彼女とふたりで訪れた場所を一ヶ所ずつ捜して回る。
ここ最近うんざりするほど悩まされた霊の気配というものが、
今はまったく感じられない。
ほら見ろ、やっぱり彼女が側にいたからだったじゃないか。

結局、彼女を見つけることはできなかった。
なにか見落としていることがあるのだろうか?
とりあえず一旦部屋に戻ろう。

133:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:26:24 MbqP78Ek0
私の住むアパートへの途中に古びた教会がある。
管理する者もなく荒れ果てていく一方の建物は、
近所の子供たちの遊び場になっている。

特に理由があったわけではない。
神頼みのつもりでもない。そもそも神様なんて信じていない。
ふと思い出したのだ。彼女の左手の薬指に光る指輪のことを。

古びた教会の中央、天井のスタンドグラスから降り注ぐ月の光の中に、
彼女はひとり佇んでいた。

「あー、なんて言えばいいのか……とにかく悪かった。
 もうずっと誕生日なんて祝ってもらった事がなかったから」

ゆっくりと振り向く彼女の瞳はいつか見たあの哀しみを湛えていた。

「私はきっと君に甘えていたんだ。誰かが側にいることに慣れすぎて、
 いつの間にかそれを当たり前みたいに思うようになってた」

今、私ははっきりと理解していた。
私は彼女に伝えなければならない。
決して後悔するようなことがあってはいけない。

「やっとわかったんだ。私には君が必要なんだ。
 もう一度、私にチャンスをくれないか」

「……今日はずいぶんと殊勝なのね。らしくないじゃない」

いつもと違い弱々しく微笑む。
私は焦っていた。嫌な予感がする。

134:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:27:34 MbqP78Ek0
「もしかして、このまま私が消えてしまうんじゃないかとか考えてる?」

「……違うのか?」

「ついさっきまでそう思ってたの。どうしてあんなとこにいつまでもしがみついてるんだろうって。
 最初はね、まだ私に未練があるせいなんじゃないかって思ってたわ。
 ―もう気付いてるでしょうけど、これね」

そう言って左手を上げて見せる。薬指の指輪に月の光が煌めく。

「婚約者がいたの。いい人なのよ。
 ちょっと気弱なところがあって、どこかあなたに似てるのかもしれない」

もう戻れない過去を懐かしむように、そしてどこか哀しげに。

「あなたの部屋に世話になるようになってからもちょくちょく様子を見に行ったりしてたのよ。
 ……彼には私の姿は見えなかったけどね

 初めのうちはずいぶんショックがあったみたい。彼も私も。
 当たり前だよね。でも……人間って結構強くできてるのね

 ちょっとずつ時間が経つごとに私の中で何かが変わっていくのがわかった。
 彼もそうだったみたい。お互い新しい生活の中で新しい自分を見つけて……、

 そして新しい幸せも見つけて」

そこで言葉を区切るとじっと私を見つめる。

「あなたはどうだったの?」

135:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:29:03 MbqP78Ek0
「私は……そう、私も同じだ。君と暮らした日々は私にとって幸福だった。
 とても幸せだったんだ。」

「それで?」

なにやら嬉しそうな彼女を見てると、彼女の思惑通りに進んでいることを思い知らされる。
少し悔しい。

「私は君を愛している。これからも私の側にいてくれないか」

もうここまできたら隠す必要もないだろう。隠せていたかどうかはわからないが。
そうして、私はすべてを打ち明けた。

「……」

「どうした?」

私が見つめる中、彼女の頬がみるみる朱に染まる。

「う、あう、そんなこといきなり言うな!」

「君が聞くから答えただけじゃないか」

「アンタのキャラじゃないでしょ」

「大切なものを失くしたくないだけだ」

「う~、だからそういう恥ずかしいセリフを言うな」

「君の答えを聞いてない」

136:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:30:20 MbqP78Ek0
これは面白い。ここぞとばかりに攻めに転じる。

「それは、ほら、なんていうか……もう! 言わなくてもわかるでしょ!」

「ちゃんと言ってくれなきゃわからないよ」

「だからさ、私も好きでもない人の部屋にいつまでもいないって」

「それで?」

恨めしそうに私を見つめる。

「だから……私も、あなたのこと、好きよ」

一言一言吐き出すように言い終えると、上目遣いに見つめてくる。
言葉もなく立ち尽くすふたり。まったく、これではまるで小学生のようではないか。
意を決して彼女の腕を取り、胸の中に引き寄せる。

「あっ」

彼女は抵抗することなく私の腕の中に納まった。

「これからはずっと一緒だ」

「ええ、ずっと……ずっと側にいるわ」

淡い月の光の中で、ゆっくりと唇を重ねる。
ふたりを祝福するかのように、どこかでゴングがなった。

>>91-92
こんなんだっけ? あるあるwwwwww

137:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:32:04 x6d0zTGSO
すげえ、パーフェクトだwwGJww

138:本当にあった怖い名無し
06/04/24 06:51:44 kVt0inm00
GJwwww


139:本当にあった怖い名無し
06/04/24 07:42:11 7HwvtyfFO
GJ!
あれ、スタンドグラス だっけ??
俺はステンドグラスだとおもっていた。

ん?スタンドグラス?
ステンドグラス?
スタンド?
ステンド?








スタープラチナ?


140:本当にあった怖い名無し
06/04/24 08:01:39 mX9RSAcV0
>>124-127
いいよいいよー最後の審判GJ!w

>>129-136
総出GJ!w

141:本当にあった怖い名無し
06/04/24 10:26:27 lFqFIftj0
>>96-107
1レス見ただけでレベルが違うのがわかる。ドジっ娘いいねえ。
>>119
涎?

142:本当にあった怖い名無し
06/04/24 17:36:25 SzKBm3JIO
携帯でも見れるまとめサイト…ないかな?

143:本当にあった怖い名無し
06/04/24 17:48:03 DTCpL+NzO
>>87
文章がだるい。
もう書かなくていいよ。

144:本当にあった怖い名無し
06/04/24 19:09:10 9tpohwkVO
まぁでも…どうしても書きたいって言うなら、一応読んであげてもいいから!


145:本当にあった怖い名無し
06/04/24 20:12:28 +TOx04wK0
>>144の口調がツンデレというよりギター侍な件

146:本当にあった怖い名無し
06/04/24 20:26:44 mX9RSAcV0
ほ・・・本当だっっw残念っっをつけると完成だっw

147:本当にあった怖い名無し
06/04/24 20:35:51 HgmnS7eZ0
俺は一体どこで間違えてしまったんだろう・・・

「ず・・・ずっと、俺の傍にいて欲しい。」
「いっ言われなくても、あなたが死ぬまで傍にいるわよっ。」
「う、うん。そうだよね。俺に取り憑いてるんだもんね・・・。
 じゃあ、少しでも長く一緒にいられる様に頑張るから。」
「ふん。せっ精々頑張ってみなさい。
 別に私が一緒にいたいとか、そんなんじゃないんだから。」
それからの数ヶ月は本当に楽しかった。
不器用な俺と素直じゃない彼女。喧嘩もしょっちゅうした。
でも仲直りできると嬉しくて一緒に泣いて笑いあった。

変化はちょっとした事から始まった。
軽い立ちくらみのような眩暈
「あ、あれ?なんか・・・変・・・だ。」
「ちょ、ちょっと急にどうしたのよ!」
「う、うん。ちょっと力が入らなかった。でも、もう大丈夫。」
「そう。なら良いんだけど・・・」
「ほらほら、そんな心配そうな顔しないで。」
「な、何よ別に心配なんてしてないんだからっ。」

148:本当にあった怖い名無し
06/04/24 20:37:17 HgmnS7eZ0
しかし、その後も急に力が入らなくなったり、ぼ~っとしてしまうことが多くなり、
とうとう、寝たきりの生活になってしまった。

「ご、ごめんなさい。私が取り憑いてるからこうなっちゃうんだよね。」
「良いんだよ。・・・いつか・・・こうなる事は・・・分かってたんだから。」
「で、でも・・・辛くないの?死んじゃうん・・・だよ。怖く・・・ないの?」
今にも泣き出しそうな声で訊いてくる。
泣いているのは彼女には似合わない・・・笑っていて欲しい・・・少しでも安心させないと
上手く働かない頭で必死に考える。
「・・・・・・う~ん、死ぬのは・・・やっぱり怖い・・・かな。でも・・・君と同じになる・・・だけだし。
 きっと、今と・・・そんなに・・・変わらない・・・よ。」
「ばっ馬鹿じゃないのっ!私の傍にいられるから、死んでも良いって言うのっ!」
「出来れば、・・・生きたままで・・・傍に居たいけどけど・・・ね。
 多分、それは・・・もう・・・無理・・・みたい・・・だから。」
本当は、もう会話をするのも辛い。
言葉を発するだけで、体の中から何かかがドンドン失われていく気がする。
「なっ何言ってるのよっ!で、でも・・・」
そこから急に会話が途切れる。
彼女は一人で何かを考え始めているようだ。
そして、俺はそんな彼女をただ、見続ける事しか出来なかった。

149:本当にあった怖い名無し
06/04/24 20:38:13 HgmnS7eZ0
どれくらいの時間がたっただろう・・・
周りもよく見えなくなってきた。
「そう、そうよ。私があなたから離れればいいのよ。」
「・・・えっ?」
「良い?あなたがここまで弱ってるのは、残念だけど私が取り憑いているから。」
「・・・まぁ、・・・そう・・・だね。」
「で、私はここまで弱ったあなたには興味が無い。」
「・・・興味・・・って。・・・酷い・・・なぁ。」
「だから、私は今から別の気に入ったヤツに取り憑くの。
 で、そいつが弱った頃にはあなたは元気になってるだろうから・・・。」
「そ・・・そんな・・・上手く・・・いく・・・かな?」
「上手くいくの!良い、ホントは殺すところなんだけど・・・
 望まれて死なれたんじゃ悔しいじゃない!」
「は・・・ははは。」
「笑う所じゃない!
 良い?今度来るときまで、・・・絶対死にたくないって思うようになってるのよ!」
「・・・う、うん。」
「別に、あなたのために離れるんじゃないのよ。
 こ、このままじゃ私が悔しいから離れるんだからっ。」
「・・・あ・・・ああ。・・・・んっ?」
唇に何かが触れたような感触と、頬に冷たい雫。
「じゃあ・・・ね。結構・・・この部屋・・・好きだったわ。」
そう言うと彼女の気配が消えた。

少し経つと意識がはっきりとしてきた。
「ん、・・・少しは・・・調子良く・・・なったかな?」
ずっと寝たきりで固まっていた関節がほぐれていくのが分かる。
自分の体に羽が生えたかのように軽くなっていく。
これなら、その内動けるようになるだろう。
自然と笑みがこぼれていた。
「帰って・・・きたら、何て言ってやろう・・・かな。」

150:本当にあった怖い名無し
06/04/24 20:38:56 HgmnS7eZ0
しかし、調子が良くなったのは一時的なものだった。
立ち上がろうとした瞬間、体の中で何かが壊れた。
その後ドンドン体の感覚はなくなり、意識も朦朧としていった。
そして数時間後、俺はあっけなく死んだ。
安易に動こうとした俺が悪かったのか
彼女の決断が遅かった為か・・・
今となっては、もうどうでも良い事だ。

・・・あれからどれだけ経っただろうか・・・
今も俺はこの部屋にいる。
来る筈の無い彼女を待ち続けている。

151:本当にあった怖い名無し
06/04/24 21:03:20 XinhKBcU0
GJ
。・゚・(ノд`)・゚・。

152:本当にあった怖い名無し
06/04/24 21:16:07 eM3cui9h0
>>96
10数年前にTRPGにはまっていた時のことを思い出したよ。
バンシー。懐かしいなぁ。

153:本当にあった怖い名無し
06/04/25 00:18:08 JsBvGefO0
1/5
暖か味を帯びた風が僕の頬を撫でる。
3mほどのフェンスに囲まれた病院の屋上。
時折、真っ白なシーツが風にはためく音が聞こえる。
僕はここに入院している。
重い病気ではないと言われているが、もう2年になるかな。

ふっと僕の視界の端に人影が写り、そちらへ視線を向ける。
そこには髪を腰辺りまで伸ばした女性が空を眺めていた。
空色のワンピースに白のカーディガンを羽織っているところを見るとお見舞いに来た人かな。
僕の視線に気づいたのか、女性がこちらを向く。
「こんにちは」
僕は女性に挨拶をしたが、女性は周りを見渡す仕草をする。
今のところ、屋上には僕と女性しかいない。
「……わたしが、見えるのね」
不思議な事を言うと、女性は僕の方に歩み寄る。
触れる事のできる距離まで来ると、僕の身体に手を伸ばす。
「え?ちょっ―!」
突然の事に戸惑う僕に構わず、女性の手は僕の身体に……触れなかった。
スッと抵抗も無く身体の中に入っていく。
目を白黒させて驚く僕、いたずらっぽく笑みを浮かべる女性。
突如、ゾクリと総毛立つ感覚に襲われて身体が震える。
「一般的に言う幽霊ってやつなのよ、わたし」
女性の手が引き抜かれ、ふふっと女性が笑う。
僕は全身に冷や汗をかき、動悸が激しくなる。
「あら、ちょっと驚かせすぎたかな」
「……少し驚いたよ」
「少し、だけ?」
女性が不満そうに僕の顔を覗き込む。
正直、かなり驚いたが口に出したくはなかった。

154:本当にあった怖い名無し
06/04/25 00:19:01 JsBvGefO0
2/5
「まぁ、いいわ」
くすっと笑い女性が身を引く。
僕は内心、動悸を抑えようと必死だった。
「あなた、よく屋上に来てるよね?」
「ん?ああ、自由に外に出られないから自然とここに、ね」
苦笑しつつ返した言葉に女性はバツの悪そうな顔をする。
「……まさか、自殺とか考えてないよね?」
「自殺は考えてないけど、死にたいとは思ってるね」
「……」
女性が難しそうな顔をする。
僕は肩をすくめて、
「そんな顔しないでください。きれいな顔が台無しですよ」
「な、なに言ってるのよ!」
女性が突然大きな声を出し、そっぽ向く。
「ご、ごめん、気に障る事言ったかな」
僕は慌てて取り繕う。変な事言ったつもりはないんだけど。
女性はそっぽ向いたまま視線だけをこちらに向けてしばし止まる。
そして大げさに溜息をつく。
「あなた、空気が読めてないとか言われない?」
「空気?マイペースってよく言われるけど……」
「ああ、もういい、わかった」
女性が呆れたような顔をして頭を振る。
「話は戻るけど、死にたい、なんていうもんじゃないよ。
 世界には生きたくてもできない人はたくさんいるんだからね」
僕の目を真っ直ぐ見つめ、諭すように言う。
「わたしだって、本当は……」
「君は――っ!」
身体に痛みが走り、『どうして』と言葉を続ける事ができなかった。

155:本当にあった怖い名無し
06/04/25 00:21:15 JsBvGefO0
3/5
発作だった。
鈍痛に視界が狭まるような感覚、僕は平衡感覚を失いフェンスにもたれかかる。
この時間に起こるのは初めてだった
「ちょ、ちょっと!どうしたの!?」
僕の状態にオロオロする女性が映る。
「ねえ、わたしの所為なの?」
『違う、いつもの事だから』
だけど言葉は出ない。僕は首を横に振る事しかできなかった。
「大丈夫ですか!?」
別の方向から声が掛かり、誰かが駆け寄ってくる音が聞こえる。
その時、僕の前にいた女性の姿は消えていた。

僕は目を覚ました。見慣れた天井が映る。
射し込む夕日が個室を淡い色に染めている。
発作の後、気を失ったらしい。
窓を背に女性が心配そうな顔をしている。
「そんなに重いの?あなたの病気」
「よく分からない……今まで治療を続けてるけど、治る見込みはなさそう。
 最初の頃よりも悪くなってる感じだしさ、家族には迷惑かけるだけで、ほんと情けないよ」
僕は自嘲気味に笑い言葉を続ける。
「ごめん、心配かけたみたいで」
「べ、別に心配なんてしてないわよ!
 ただ、わたしの所為だったら寝覚めが悪いから確認しただけ!」
「寝覚めって……幽霊でも寝るんだ」
ぐっと女性が言葉に詰まる音が聞こえる。
「こ、言葉の綾よ。細かい事は気にしないの!」
女性の態度に自然と笑いが出てきた。
憮然とした表情だった女性も笑みを浮かべる。

156:本当にあった怖い名無し
06/04/25 00:23:27 JsBvGefO0
4/5
「きれいだ……」
「え?」
僕は微笑む女性をまぶしそうに見つめ呟いた。
ちょうど夕日を背にした女性は幽霊とは思えない暖か味を帯びていた。
それはまるで、
「天使みたい」
「なっ!」
女性が驚いたような表情に変わる。
「ば、ばかな事言わないでよ。褒めたって何も出ないわよ」
「幽霊からなにか貰おうなんて思ってないよ。むしろ取ってほしいくらい」
「……本気なの?」
僕は女性を見つめ、頷く。
「そう……」
女性は一言呟くと僕の前から消えた。

夜、僕は痛みと共に目を覚ます。
やっぱり薬の効き目が弱くなっている。
昼よりも痛みは小さく、治まるまで耐えれるだろう。
その時、額にひんやりとした物が触れる。
目を開けると、女性が僕の額に手をかざしている姿が映る。
「こんばんは」
女性に声をかける。
「痛むの?」
女性が顔を覗き込むように訊いて来る。
「少し、ね。前よりも酷くはないから大丈夫だよ」
「そう」
短い返答の後、沈黙が続く。女性の手が気持ちいい。

157:本当にあった怖い名無し
06/04/25 00:25:04 JsBvGefO0
5/5
「ねぇ、本当に死にたいの?」
「……うん、自分勝手だとは思うけど、本心だよ」
僕の言葉に女性の身体が僅かに震えた。
額の上にあった手が退けられ、女性が顔を近づける。
「後悔、しないでね」
背筋の凍るような声で耳元に囁かれた。
さっきまでベッドの横に立っていた女性が馬乗りのように僕の身体の上に現れる。
そして心臓マッサージをするかのように僕の胸の辺りへ手を移動させる。
女性は一呼吸置いてから、手を僕の身体の中へ沈めていく。
ビクっと僕の身体が震える。
「い、痛いのはちょっと」
「文句言わないで、わ、わたしも初めてなんだから」
女性の声が上ずっている。表情も真剣そのものだった。
僕は苦笑しつつも歯を食いしばる。
程なくして痛みが和らぎ、代わりに全身の力が抜けていくような感覚に襲われる。
『おやすみなさい』
僕の意識が無くなる直前に女性の声が聞こえた気がした。

今、僕は幽霊として家族のそばにいる。
女性曰く、
「そんな未練たっぷりじゃ、あの世に行けないじゃない。
 家族を見守るとかして、未練を無くしなさい」
それから少し顔を赤らめ、
「成仏できるようになるまで、待っててあげるから。
 サボらないように見てるんだからね、ちゃんとしなさいよ!」
女性からあの世に行く道連れがほしかった、と後になって告白された。
そんな訳で女性に突っつかれながら、守護霊生活を送る事になりました。

終わり~

158:GJ
06/04/25 00:26:28 U/vfkqLZ0
えーそんなのハッピーエンドじゃない。
(つд`;)

159:GJ
06/04/25 00:27:25 U/vfkqLZ0
うわ、↑のは、>>147へのレスね。

160:本当にあった怖い名無し
06/04/25 00:27:37 JsBvGefO0
ジェノッサァーイ!にはならなかったけど、
馬乗りと書いてて、どうしてもそっちにイメージが……。
いつも笑わせてもらってます。

遅レスだけど病気繋がりで、
>>77
>ずっと病院で過ごしてきたぼくが、退院できたわけは、だいたいわかってるから。
この一文でぐっときた……GJ。

161:本当にあった怖い名無し
06/04/25 00:30:54 U/vfkqLZ0
>>153
文章うまいね。長文だったけど、疲れずに読めたよGJ

162:本当にあった怖い名無し
06/04/25 01:47:03 N7Mq5vJK0
「マサミ~マコト~、早く、早く~!」
遠くでカナコが俺たちを呼んでいる。
「おう、わりぃわりぃ。おら、マコト早く行くぞ。」
「ったくよ~。何で俺まで一緒じゃなきゃダメなんだよ。
 そんなんで、デートって言えるのかぁ?」
いつもの様に二人のデートに付き合わされる。
だが、元気なカナコを見たのはその日が最後だった。
その後カナコは病気で倒れ、あっさりこの世を去った。
「マサミのことお願いね・・・」
それが彼女の遺言になった。

俺とマサミとカナコはいわゆる幼馴染ってヤツだ。
親同士が知り合いだった事もあり、俺の記憶の中にはいつも二人がいた。
そして思春期を向かえ、初恋に落ちる。
いつも3人一緒にいたのだ、相手は決まっている。
だが、マサミとカナコも恋に落ちていた。
「マコト、わりぃ。俺、本気でカナコの事好きなんだ。
 応援・・・してくれるか?」
「マコト、ごめん・・・ね。私・・・ね、マサミのことが好き・・・みたい・・・なの。
 応援・・・してくれたら・・・嬉しいな。」
別々の日に同じ内容を聞かされ、謝られる。
俺の初恋はこれで終わった。

163:本当にあった怖い名無し
06/04/25 01:48:22 N7Mq5vJK0
カナコの葬式が終わり部屋で呆ける。
不思議と涙は出てこなかった。たぶん、まだ信じられないからだと思う。
「はぁ。」
この日、何度目かの溜息をつく。
「ちょっとぉ!何、ボケ~ッとしてるのよ!」
「わっ。」
突然カナコの怒鳴り声が聞こえた。
「わっ、じゃ無いわよ!なんで部屋でボケッとしてるのかって聞いてるの!
 私言ったよね。マサミのことお願いって。」
「なんで・・・ってゆうか、ホントに・・・カナコ?」
「そうよ!何、もう私の声忘れたの?薄情ねぇ。」
突然の事態に驚き、辺りを見回すと、
窓の傍でヨヨヨっと泣き崩れる真似をする、カナコが浮かんでいた。
「・・・幽霊ってやつ・・・?」
「そうみたいね。死んでまで、あなた達の事が心配だったなんて・・・
 自分でも驚きだわ。」
「そ、そうか・・・。でも、あなた達じゃなくてマサミが・・・だろ?」
「そうね。でも、マサミを助けるにはマコトの力が必要だもの。」
「俺の・・・力?幼馴染パワーってヤツ?」
「何それ?そんな訳の分からない物あるわけ無いでしょ。」
「じゃあ、なんだよ。」
「そんなの私にも分からない。でも、マコトにはマサミの傍にいて欲しいの!」
「今の俺じゃ、何も・・・してやれないよ。」
「出来なくても、いるの!」
「なんで、俺・・・なんだよ。もっと、他にいるだろ?」

164:本当にあった怖い名無し
06/04/25 01:49:45 N7Mq5vJK0
瞬間、部屋の空気が変わる。凍りつくような冷気が辺りを包む。
「本気でそんなこと言ってるの?」
感情の消えた声で訊いてくる。
ヤバイ、本気で怒っている。
「あ、ああ。ほ、本気。」
「マサミが、傍から居なくなっちゃうかも知れないんだよ?」
「お、俺の傍に居れば、つ、辛い事も思い出しちまう。
 しょ、しょうがない・・・よ。」
「死んじゃうかもしれないんだよ。それでも良いの?」
「そ、それは・・・。」
無いとは言い切れなかった。
「好きなんでしょ?・・・マサミのこと。」
「えっ?」

それは知られてはいけない感情。
マサミとカナコだけには知られたくなかった、自分の心の奥に封じ込めた感情。

カナコに相談された時にあきらめた初恋。

165:本当にあった怖い名無し
06/04/25 01:51:23 N7Mq5vJK0
「もう、素直になりなよ。ねっ・・・マコちゃん。」
「えっ?・・・カナ・・・ちゃん。」
久しぶりに呼びあう、その名前。
「もう、男の子の真似なんてしなくても良いの。」
「ち、違う・・・よ。こ、これは好きで・・・してるだけ・・・で。」
「その格好なら、友達としてでも傍に居られると思ってた?」
「そ、そんな訳じゃない・・・よ。」
女性なのに男性の様に振舞う・・・。
恋人になれないなら、せめて友達として・・・
女友達よりずっと本音を言ってもらえる、男友達として・・・
それは、とても歪な変身願望・・・。

「ずっと、好きだったんでしょ?」
「う、うん。」
「だったら、お願いっ!私は死んじゃって・・・もう、何も出来ない。
 助けてあげられるのは、マコちゃんだけなの。」
「そ、そんな事っ。」
「マサミの所に行ってあげて・・・きっと落ち込んでる。
 これ以上、私のせいでマサミを苦しませたくないの。」
「で、でも・・・」
「ごめんね。私・・・我侭だよね。
 でも・・・ね、マサミを助けられるのはマコちゃんだけなの。
 マコちゃんなら、きっとマサミを幸せに出来ると思うの・・・。」
「カナちゃん・・・」 
「もう、これ以上私の事で苦しんで欲しくないの・・・。
 だから、だからっお願いっ!せめて残った二人で・・・幸せになって欲しいの。」
「・・・・・・」
「マコちゃん・・・お願い・・・マサミの傍に・・・行ってあげて・・・。
 私の・・・事は・・・忘れて・・・幸せに・・・なって。
 最後まで・・・我侭ばっかりで・・・ごめん・・・ね。」
「カナ・・・ちゃん・・・?」

166:本当にあった怖い名無し
06/04/25 01:52:59 N7Mq5vJK0
もう、周囲にカナちゃんの気配は無い。
私にマサミを託す事で安心したのか・・・

「・・・カナちゃん・・・勝手すぎるよ・・・。」
そこで始めて涙がこぼれた。零れ始めた涙は止まらなかった。


泣き止めばきっと私は、まだ泣けずに苦しんでいる彼の元に走るだろう。
そして、また泣くだろう・・・
恋敵だった幼馴染を思い出して・・・

167:本当にあった怖い名無し
06/04/25 12:49:00 9YbzfGs6O
すまん、イマイチ相関図を脳内に描けんかった。
マサミは男? ん? あれ?
もっかい読み直すわノシ

168:本当にあった怖い名無し
06/04/25 15:27:00 TjlmBovb0
カナコ:女
マサミ:男
マコト:俺女

かな?

サプライズでマサミも俺女かも?

169:本当にあった怖い名無し
06/04/25 22:02:17 q6XGz5cI0
俺はどうしてこんな事になっているんだ・・・?

「畜生っ!またかっ」
目の前で大型トラックがスローモーションの様に迫ってくる・・・
すくんだ足は思うように動かす事が出来ず・・・
そのままグチャっと轢き殺された。

「ふふふっ、また失敗したわね。」
「・・・・・・。」
「ほらほら、早く起きないとまた始まっちゃうわよ。
 今度はどこまで行けるかしらねぇ。」
暗い部屋の中で女が一人楽しそうに話している。
視線の先では俺が激痛に悶えている・・・。
「はぁ、はぁ、・・・」
「あら、回復するのが早くなったわね・・・
 もっと苦しんでるところ見ていたいのに・・・残念。」
「はぁ、はぁ、い、一体いつまで続くんだ・・・?」
「あら、最初に言ったでしょ。あなたが私を殺した事を思い出すまでよ。」
ああ、それはたしかに聞いた。

信じられないが、俺が原因で彼女は死んだらしい・・・
彼女が死んだ原因を思い出すまで、過去の日々を繰り返さ無くてはならない。
間違いを犯すたび・・・何度も殺され続けてきた。
死に方はどれも悲惨だ・・・圧死・轢死・焼死・窒息死etc
死ぬ瞬間まで感覚があるのだ、堪ったものではない。
それだけ彼女の恨みが強いという事なのだろう。

170:本当にあった怖い名無し
06/04/25 22:03:34 q6XGz5cI0
「なぁ、ちょっと訊いていいか?今回も俺はお前に会っているのか?」
「当然よ。私は私と会った時のあなたしか知らないんだから。」
「そう・・・か。」
今回の日々を思い返す。
しかし、目の前の女に会った記憶は無い。
いや、それどころか女の気配すら感じなかった。

「くっ、思い・・・出せない・・・」
「そう、ならもう一度やり直しなさい。時間はたっぷり有るんだから。
 ふふふ。」
「ああ。」
そして俺はまた過去にさかのぼってやり直す。

ほんの少し意識が戻りかける・・・
「も・・・もう、こんな姿見たくない・・・。
 ごめんなさい・・・うっううっっ・・・」
部屋の中で女が泣いている。
「何で・・・なんで思い出してくれないのよ・・・
 ずっと、ずっと前から・・・あなただけを見てきたのに・・・。」
ずっと見ていた・・・嘘じゃないだろう。
俺が忘れていた、本当に小さな他愛も無いことまで
この過去では何度も再現されてきたのだ。

171:本当にあった怖い名無し
06/04/25 22:05:06 q6XGz5cI0
「どう?今度は少しは思い出した?」
女がいつもと同じ態度で訊いてくる。
だが、ずっと泣いていたであろうその目は真っ赤で・・・
前より顔もやつれている様に見える。
それはどこかで見たことがある様な・・・
「・・・いや、悪い・・・。」
「そう、ならまたやり直しね。」
あれは誰だ・・・いつあの目を見た・・・思い出せ・・・
「本当に思い出せないの・・・?いい加減イヤにならない?」
「ああ・・・。」
「私の事・・・憎い?」
「ああ・・・」
「そう・・・よね。」
「ああ・・・」
女の話に適当に相槌を打ちながら、必死に頭を働かせる。
俺はあの眼を知っている・・・
あの泣き声を聞いたことがある・・・
それは、いつ・・・だ?

「ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・。
 ほ、ほんとは、一目逢えるだけで・・・良かったのに・・・
 あなたの笑顔が見れれば・・・それだけで・・・
 それだけで良かったのに・・・
 ごめんなさい・・・」
彼女の懺悔は続く・・・
ああ、憶えている・・・それは、あの手紙にも書いてあった・・・
差出人も書かれていない、初めて貰ったラブレター。
きっと、彼女が・・・その差出人。
俺は・・・俺はどうして・・・逢いに行ってないんだ?
思い出せない・・・

172:本当にあった怖い名無し
06/04/25 22:06:31 q6XGz5cI0
「お前、小さい頃眼鏡かけてたんだな。」
「えっ?お、思い出したの?」
「ごめん。今はそれしか思い出せない・・・」
「そ、そう。でも別に良いわ。次はもっと思い出すでしょ。」
「ああ、絶対に思い出すよ。」
「なっ、何よ急に?さすがにそう何度も死ぬのはイヤになった?」
「ああ、そうだな。でも・・・でも、それだけじゃないんだ。」
「それだけじゃ・・・無い?どういう・・事よそれ?」
「ん、秘密。」
「ちょ、ちょっと、なによそれっ!ふざけてるのっ!」

体が弱くて休みがちだった少女・・・
俺が話しかけると嬉しそうに笑ってくれた・・・
いつの間にか、俺の傍から消えていた彼女・・・
笑顔の良く似合う・・・俺の・・・初恋の相手・・・

何度も死んで、そのたびに彼女の懺悔を聞かされるのは辛いけど・・・
あの頃の彼女と自分に会えるのだ・・・
俺は、彼女と自分の顛末を知るために、何度もやり直すのだ・・・
いつか、彼女があの頃の笑顔を向けてくれるまで・・・
なに、時間だけはある・・・

173:本当にあった怖い名無し
06/04/25 22:09:18 q6XGz5cI0
今回はちょっとハッピーエンド風です。
次は、もっと読みやすく書ける様になりたい・・・

174:本当にあった怖い名無し
06/04/25 23:06:19 9YbzfGs6O
GJ。なんかひぐらしっぽかった…

激しく続き気になる

175:本当にあった怖い名無し
06/04/26 02:16:54 Z0sZB7TN0
私は名探偵南子。
今、大学時代の友人五人と、孤島にあるという洋館にクルーザーで向かっている。
知り合いが相続することになったその屋敷は、もう数十年も使用されていないという。
その理由は明らかではないが、オカルト話に目のない友人たちは様々な想像を巡らした。
そして、実際訪ねてみるという計画がまとまるまで、そう時間はかからなかった。

「楽しみだねっ!やっぱり幽霊とか出るかなっ?」
波風に負けずにはしゃいでいるこいつの名は…いや、別にいいだろう。私と共にそんな
いかにもな場所に行くということは、こいつは殺人事件の被害者になるか、犯人に
なるかの二者択一。ほかの四人に関しても同様だ。説明するのがめんどくさい。

「ねえ、南子ちゃんは幽霊って信じる?」
ああやかましいくだらない貴様を犯人にしちまうぞボケが。
「…多くの体験例があるからな。一概に否定はできない。今のところは脳の問題だと
思っている」
「あははー!南子ちゃんらしいね!もし自分が見ちゃったらどうするっ?」
「死ぬ」
「ど、どうしてっ?」
「私は自分の脳を疑ってまで生きていたくはないからな」
「あはははは!極端すぎっ!」

うぜえ。ほかの四人は引いてるっていうのに。そっちのほうが正常だ。なにしろ
「なにか」を見に行こうという旅行でもあるのだ。なんであんたがここにいる?
といった表情。

バカどもが。
名探偵は、おいしいシチュエーションは逃さないんだよ。

176:本当にあった怖い名無し
06/04/26 02:18:30 Z0sZB7TN0
島に着くころには暴風雨になっていた。
日帰りするという選択肢はこれでなくなった。
これが名探偵たる所以だ。自分の才能がときどき怖くなる。

その洋館は十角形でも傾いてもいなかったが、重厚な造りで、ミステリースポットと
してはなかなかの雰囲気があった。
柱や扉に刻まれた実用性皆無の紋様からは、上流階級の歪んだ美意識がうかがわれた。

「うわ…すごい…」
「これはいいね」
「はやく中に入ろうよ。寒いし」
「すいませーん!すいませーん!」
ガンガンにノッカーを叩きつけるバカ約一名。誰もいねえっつってんだろ!
「鍵は私が預かってるから…」
と、バッグを漁っていると。

ぎいぃ…

悪趣味な扉が開いていく。

「あ、開いちゃった」
「無用心だね」
「ちょ、おかしくない?」
「鍵、壊れてたんだよ、たぶん」
隙間から覗く暗闇に、五人はとまどっている。誰一人、足を踏み入れようとしない。
不安と、気休めの言葉が交錯する。

はいキタコレ!んー、いいですかー。私たちのほかに停泊している船は見当たりません
でした。ここに誰かがいるというのは不自然なんですー。んー?

177:本当にあった怖い名無し
06/04/26 02:19:49 Z0sZB7TN0
「な、南子ちゃん、どうしたの?」
はっと気付き、私は眉間から指を離した。ちょっとあっちの世界にいってたみたいだ。
「いや。誰かいるのかな、ってね。考えてた」
「それなら、もう出てきてもいいころじゃないの?」
「さあね。もういないのかもしれないし。こんな所、泥棒され放題だろうし」
「そ、そっかー。だから鍵壊れてたんだね」

ひとまずの解答を与え、一同を安心させる。
バカが。私がここにいる以上、そんなありふれた理由はありえない。どんな伏線か、
楽しみにしとけ!

一階ホールは闇に包まれていた。
目をすがめ、ようやくのことで燭台を発見することができ、ライターで火を灯す。
ぼうっとオレンジの淡い光が浸透していく。

正面に階段があり、踊り場には大きな肖像画がある。吹き抜けの二階部分には、左右に
扉が二つずつ。一階には合計六つの扉があった。
こんな離れ小島では来客もなかっただろうに、なんだこのムダな広さは?それに―。

「うっわー、足が沈む!なにこれっ?クツ脱がなくていいのかなっ?」

ああいい絨毯だよ一平方メートル百万はするだろうよ脱ぎたいなら脱げバカ野郎。
だから考えごとのジャマをするな。

「きゃああああっっ!?」
「いやあっ!なに、今の!?」

突然悲鳴が響いた。
見ると、叫び声をあげた二人が抱き合い、座り込んでいる。


178:本当にあった怖い名無し
06/04/26 02:21:13 Z0sZB7TN0
「どうした」
「む、むこう…あそこに、ひ、人が…」
震える指で、階段下の扉の辺りを指し示す。
「ふうん。どんな」
「え、よくは見えなかったけど、真っ黒の服の、タキシードみたいな…」
「へえ」
私はライターを片手に、問題の人物のいたほうへ行ってみることにした。

「ちょ、や、やめたほうがいいよ!」
「あ、あれ絶対、ゆ、幽霊だよ!」
…貴様らはそれを見に来たんじゃないのか?

「あのな、ここ、おかしいと思わないか?」
「おかしいよ!やばいって!」
「ちがう。聞いた話では人が住まなくなってだいぶ経つことになってる。そのわりに、
手入れが行き届きすぎてる。こうなると誰もいないほうがおかしいよ」
「でも…あの、あの人?消えた?みたいな…」
「服装聞く限り、危ない人間とは思えないね。悪戯好きかもしれないけど」

バカ話につきあってられるか。
私は五人をホールに残し、謎の人物の探索に向かった。

「誰か、いるか?」
各所の燭台に火を灯しながら、声を掛けていく。我ながら陳腐だと思う。なんらかの
思惑があって出てこないのだろうから、ムダな台詞だとわかっている。だがほかに
いい言葉が見つからない。

179:本当にあった怖い名無し
06/04/26 02:22:32 Z0sZB7TN0
「―誰か…?」

(―また……………)

耳元の声に、ばっ、と振り向く。
そこには誰もいなかった。

「幻聴…?この私が?」
信じたくはない。信じたくはないが。吐息さえ感じられたというのに。

(―そのような……)

幻聴じゃない!
私は振り向き、そして

(―またそのような格好で!)

そして、気を失った。



苦しい。息ができない。
苦い。口の中が。
硬い。頬に当たるこれは―

食堂の床だった。
私は、そこに倒れていた。苦しさに舌を出していたらしく、本来舐めるものでない床を
味わう羽目になっていた。

180:本当にあった怖い名無し
06/04/26 02:23:40 Z0sZB7TN0
「く…畜生…っ!」
身を起こそうとするが、腹部の圧迫感が凄まじく、なかなかうまくいかない。
殴られたか、それとも刺されたか。慎重に、現在の状態を確認する。
異常はすぐに判明した。

「なんじゃこりゃああああああ!?」

いやまじで。
なにこれゴスロリってやつ?そうあれよ、フリフリの。
なんでこんなの着てんの?

近くに自分の服が見当たらないので、しかたなくそれを着たままホールに戻ることにした。
いい物笑いの種になるだろうが。
精一杯の言い訳を考えつつ、ホールの扉を開いて。そして考え抜いた文句が必要なかった
ことを知る。

五人分の半裸の死体が、そこにあった。

私はさすがに呆然とした。
いきなりだろ。いきなりすぎるだろ!一気に全員ってどういうことよ?
クリスティーもびっくりするよ!一日に一人ずつがお約束だろ!そんでみんな疑心暗鬼に
なってくのがセオリーだろ!ムチャすんなよ!

とりあえず驚き終えて、探偵らしく死体を検分する。
「コルセット…?」
五人が全員それを着用しようとしてあきらめたような形跡がある。というより、これは
無理矢理に締め上げられた様子だ。おそらく、死因はそれだろう。
私は自分のお腹をさすった。
超絶スタイルを誇る私のウエストでも限界なのだから、このブタどもに耐えられるはずが
ない。
「なるほど、いい度胸だ。この私も標的にしたのか…

181:本当にあった怖い名無し
06/04/26 02:24:40 Z0sZB7TN0
許せないね。身の程知らずが。思い知るがいい、世の中には手を出してはいけない領分が
あるということを!
私は入り口へと走った。
とりあえずだ。とりあえず今は見逃してやる。だって怖いもん!こんなの私初めて!

ガチャ。
「ん…?」
ガチャガチャガチャ。
「あ、開かない!?」
全体重を乗せても、扉は微動だにしない。

(―どちらに行かれるのですか、お嬢様)

「バカ野郎、外に決まってるだろ!」
ん?おまえ誰?という疑問と同時に平手打ちを喰らい、尻餅をつく。
見上げると、そこに黒服の男が立っていた。

「やっぱりいたな、タキシード。これは貴様の仕業か」
ぱしっ。
言ったとたんに、平手打ちを喰らう。
「な、なんなんだって!ちょ、お、お話しようよ?いた、痛いって!」
(嘆かわしい。この近藤、お嬢様のそのような言葉使いは聞くに堪えません)
「誰がオジョウサマかっ!いた、わか、わかりました!これでよろしくて?」
(…まあ良いでしょう)

畜生サイコ野郎め。ここ出たら覚えてろ、一生ム所から出られないようにしてやる。

182:本当にあった怖い名無し
06/04/26 02:25:52 Z0sZB7TN0
「…それで、キサ…あなたの目的は何なのです?」
(ご質問の意味がわかりかねます)
「私の友人を殺したでしょう?」
(不法侵入者がおりましたので、始末いたしました)
「…外の空気を吸いたいのだけれど」
(それはなりません。絶対に)
「…………」
黒服はじっとこちらを見つめている。

「あなたは、どなた?」
(……執事の、近藤でございますよ。お忘れですか。また何かのお遊びで?)
「こんどう?」
(はい)
「しつじ?」
(さようでございます)

なるほどサイコだ。
つまりこいつは「おじょーさまとしつじごっこ」がしたいわけだ。
それでこの超絶美形の私をお嬢様役に選んだわけだ。審美眼は確かだが、そのために五人も
殺すのはイカれてるというほかない。
足音を立てない身のこなしといい、瞬時に意識を奪う技といい、まさにナントカに刃物だ。
逆らうのは得策ではないだろう。

183:本当にあった怖い名無し
06/04/26 02:26:54 Z0sZB7TN0
じゃあ、付き合ってやるよ。貴様が隙を見せるまでな。
私はすうっと息を吸い込んだ。

「ばあとらああああああ!!」

絶叫がホールにこだまし、近藤はびしっと直立不動する。

「お腹が空いたわ。お食事の用意をしてくださらない?」
(かしこまりました……お嬢様!)
きらきらと目を輝かせて、近藤は掻き消えた。

ああー、楽しいんだろうなあ。待ってたんだろうなあ。こういうの。犬みたい。
でもあれどうやってんだろ?忍者かな?凄いとは思うけど変態だね。さすがサイコ野郎。


―島に来てからから何日経ったのか、判然としない。
意外とお嬢様ごっこがツボにはまり、堕落した生活を送っている。
だってさあ。なんにもしなくていいんだもん。超ラクチン。ご飯は豪華だし。
もうここ出なくてもいいかも。
不満がないわけではないけど。

「あの、ね。近藤?」
(なんでしょう、今、手が離せませんので…あ、右脚をこちらに)
「下着くらいは、自分で着けたいのだけれど」
(お嬢様のお手を煩わすことを、この近藤、看過できません)
「そ、そお……」

この完璧主義には、ちょっと、ね。

次回、名探偵南子。孤島の大量殺人鬼解決編に続かない。

184:本当にあった怖い名無し
06/04/26 07:28:23 Ljg2ebh00
主人公鈍感すぎ…

185:本当にあった怖い名無し
06/04/26 13:41:16 z5B/WGdi0
面白い。続き書いてほしい。
殺人鬼解決編!!

186:本当にあった怖い名無し
06/04/26 15:46:02 jWNvI2PpO
5人の死体&霊は何処へ?

187:本当にあった怖い名無し
06/04/26 20:37:33 pil+Ywzl0
執事が霊である必然性がないね。もったいない。

188:本当にあった怖い名無し
06/04/26 21:52:46 r13YC0sH0
いや、そんな冷静に言われてもw

189:本当にあった怖い名無し
06/04/26 22:06:35 MBriG739O
「近藤」

「なんでしょう、お嬢様」



「私と…ファイトなさい」
カーン!

…を期待してた俺ガイル

190:本当にあった怖い名無し
06/04/26 22:21:02 122uZCByO
>>189
いや、どう見ても中の人とは違う文体だろ、あれww
ファイトしなさいの新作投入まだかね?

191:運動場整備部隊 ◆zR/LhJxu0Q
06/04/26 22:26:32 k9f4BACQ0
違う人だとは思うがw

しかし最近では、何を書いても「私と……ファイトなさい」で締めたくなる
衝動を必死で抑えていたりする。範馬の魅力恐るべし。

192:モノローグ 1/6
06/04/26 22:42:59 Zil9vfTl0
人生は長い。
時に若くして死ぬ者も有るが、そうでないなら人生は長い。
先の見えぬ長さに不安を覚える事も少なくない。
それでいながら終わってしまった後に顧みると余りに短かった様に思える。

彼は、今日死んだ。
78歳、十分に生きたのだろうと思う。

193:2/6
06/04/26 22:43:30 Zil9vfTl0
私の知る最も若い彼は、17歳、高校を中退したばかりの彼だ。
その頃の彼は日中から夜まで独り呆然として過ごし、時折声を殺して嗚咽していた。
自身の先行きに絶望し切っていたのだろう。
ふらりと外出し、ロープを買って帰った事もあった。
天井から吊るした輪をやはり呆然と見詰め彼は泣いた。
陰気を振りまく彼に嫌気が差していた私は、彼が躊躇う内に背中を押してやる積もりだったが、
実際には彼が輪に首を通す前にその背中を蹴飛ばしてしまっていた。
彼は腰を痛め、それを口実に自殺を諦めたのだが、
驚くべき(或いは馬鹿げた)事にこの時から彼は私を許容し、度々私に話し掛ける様になった。

彼は自殺を思う程根暗である癖に、私に向かって愚痴を零す事は無かった。
テレビを見、或いはゲームをしながら、殆ど返事もしない私に毎日下らぬ事を話した。
そんな時に浮かべる空虚な笑みが不快で、苛立ってテレビを壊してしまった事もあったが、
彼はそれについて一言たりとも文句を言いはしなかった。
それどころか私に謝り、数年間はテレビの無いまま暮らした。
(後に、態々私に伺いを立てた上で新しいテレビを購入するのだが)

194:3/6
06/04/26 22:44:51 Zil9vfTl0
彼は少しずつ外出をする様になった。
バイトを始め、同時に通信制の高校にも通い出した。
彼は元々出来の悪い人間では無かったらしく、その両方をそれなりにこなしていた。
(高校を中退などする事は無かっただろうにと思ったものだ)

高校卒業後、三流企業にではあるが彼は就職する事が出来た。
働き始めて直ぐの彼は沈む事も多かったが、
以前の、日々何もせずに過ごしていた彼と比べると余程ましだった。
少しばかり仕事の愚痴を言う様にもなったが、愚痴と呼ぶには控えめ過ぎる程で、
偶に労ってやるのも悪くないと思えた。

彼は明るくなった。空虚な笑みを浮かべる事は無くなった。
幾らか友人が出来、飲みに出かける事も多くなった。
それでも他の誰に対するよりも私を相手にして話す時の方が彼の舌は滑らかだった。
彼は根が暗いから、あまり返事をしない私の方が気安かったのかもしれない。
それを面白くないと思い、しばらく彼を完全に無視してみた事もあったが、
彼は私を怒らせたのかと何やら私に謝り(それも悉く的を外した物だった)、
余計に煩くなったので再び相手をしてやる事にした。

195:4/6
06/04/26 22:45:39 Zil9vfTl0
彼は仕事の関係で出会った女と交際を始める事になった。
私はその暫く以前から彼がその女を好いている事を知っていたが、
(かつ、相手の女も彼を憎からず思っている事を、私は知っていた)
愚かな事に、彼はその女と私とを同じ天秤に掛け悩んでいた。
私は彼を罵倒し、それで漸く彼は女との交際に踏み切ったのだった。
2人の関係は概ね順調に進んでいった。

彼が結婚したのは29才の時だった。
収入は彼の妻の方が多かったが(私がそれを嘲うと彼は苦笑したが、
余り気にしてはいなかった)女は彼の事を信頼していた。
2年経って長男が、更に3年後次男が生まれた。
父親となった彼は、非常に頼もしくなった様に見えた。

それからの彼の人生は、順風満帆であったと言って良いと思う。
高卒の彼とは違って2人の息子は大学を出、彼よりも余程大きな企業に就職した。
2人とも妻を娶り彼は5人の孫に恵まれた。孫達は皆、優しい彼を好いていた。

しかし彼は、愛に満ちた、と言って良い程の家族の中に有りながらも、
毎日態々独りになる時間を作っては私と会話した。

196:5/6
06/04/26 22:46:22 Zil9vfTl0
彼が病に臥せって入院してからは、彼の主な話し相手は私だった。
同室の者に気味悪がられぬ程度に、独り言を装って私に話し掛けるのだった。
(それでも彼が呆けているのではないかと心配する者も有ったが)
彼も私も、彼がもう長くは無い事を知っていたが、彼は呑気な物だったし、
私も別段以前と変わらぬ様に振舞った。

愈々彼が危なくなって、息子家族が駆けつけた。
妻と、2人の息子とその妻たち、そして5人の孫に囲まれた彼の表情は、穏やかな物だった。
最期の直前まで意識は有り、苦しみを感じていない訳は無かったろうが、
家族に言葉を遺す彼は、非常に穏やかな様子だった。

幸せな最期だったろうと思う。それなのに、
それなのに愚かな彼が遺した最期の言葉は、
私に宛てた物だった。

197:6/6
06/04/26 22:47:02 Zil9vfTl0
人生は長い。
彼が私に言った礼を数えていたならばどれ程の数になったろう?
けれど、思い返してみると、とても短かった様な気がする。
彼は今日、逝ってしまった。
向こうで、彼は妻を待つのだろうか。それとも―


私には最早、此処に留まる理由は無い。
また当て所も無く彷徨う事になるのだろうか。そうだとしたら、
私の先にはそれこそ何も見えず、嗚呼、
私は昔の彼の様に死のうとする事も出来ない。


逝ってしまった彼を羨んでみても仕方が無いが、
そうせずにはいられない私を、私は自覚していた。



198:エピローグ
06/04/26 22:48:18 Zil9vfTl0
私が辿り着いた先には、
17歳の姿の、馬鹿な男が居た。

199:本当にあった怖い名無し
06/04/26 23:04:15 z5B/WGdi0
>>189
彼のファンだが、何か彼と近い物を感じた。
もしかしたら、文体を変えてきたのかもと思ったよ

200:本当にあった怖い名無し
06/04/26 23:24:24 MBriG739O
>>190>>191>>199
というか、何を読んでもクライマックスまで
散々盛り上げて(萌えさせて)おいて、
「ファイトなさい」とくるオチが、ある種のトラウマであり、且つ中毒にもなっているwww

[このスレは「ファイトなさい」で完結させるスレとなりました]


201:本当にあった怖い名無し
06/04/26 23:33:48 MBriG739O
>>198
GJ!最期の言葉が気になる。色々妄想してみたくなる。

17歳の姿の男は言った。
「私と…f(ry」

駄目だ、中の人、そろそろ禁断症状キタ、助けてくれ。

202:本当にあった怖い名無し
06/04/27 02:14:01 WQUWL7/S0
草木も眠る丑三つ時にこんな所来ちゃった記念にさくっと書き下ろし。

「騙されやすい彼女」

俺の彼女は騙されやすい。
とある日のこと、家に帰ると、ラッセンの絵を壁に飾って得意げにしていた。
「べ、別にあなたの部屋が殺風景だな~って思ったわけじゃなくて、
あたしが買いたかったから買ったんだからねっ!」
「いやそれはかまわんが、いったいどこで買ったんだ?」
「今日ちょっとアキ●バラに行ってみたら、駅前に小さな画廊があって、そこで勧められたの♪」
「ちょっっっおまっっそれ有名な詐欺画廊だっての」
「えええええっ! だ、だってこれほら、シリアルナンバー入ってるし」
「んなものは誰でもかけるっての。大体よく見ればこれカラーコピーってわかるだろ?」
「そ、それに『今ならバーゲンセールでお買い得だ』って進められたし……」
「芸術品がそこらの家電みたいにバーゲンやるわけねーだろ?
 無茶苦茶きな臭いじゃないか。 まったく、ちょっとは鼻利かせろよ」
「……ふぅんだ。どうせあたしには目も鼻も無いですよ~だ」
いぢける彼女が愛おしく、そっと抱き寄せ口のあたりにキスをする。

そう、俺の彼女はのっぺらぼう。きれいなものに目が無いくせに目が利かず、鼻がないから勘もない。
お陰でだまされやすくてすぐいぢけるけど、ホントは優しい女の子。


おまけ

「……でもさ、口も無いのにどうしてこんな話に食いつくんだろうな?」
「ううっ……」
「あっ、そうか♪ 上に無くても下に」

「ジェノッサァーイッ」


203:本当にあった怖い名無し
06/04/27 07:27:46 QmM9Wpw2O
昨日アキバで見たのっぺらぼうはそういう事だったのか

204:本当にあった怖い名無し
06/04/27 09:14:52 txlU7KS6O
最近は霊より妖怪が流行ってる

205:第一話
06/04/27 19:10:01 o82tYb4j0
僕「こんにちはゾンビのおねーさん!僕ネクロマンサー!」
屍「死にたいの、ボウヤ?」
僕「ううん、おねーさんを仲魔にしにきたんだ」
屍「身の程知らずね」
僕「まだLV1だけど、お師匠から教わったオフダもあるし!」
屍「そう」
僕「えいっ!くらえっ!」
屍「…………」
僕「……効いた?」
屍「全然」
僕「ええ?どーして?」
屍「どーしてじゃないわよ。その御札、字が間違ってるわ」
僕「え?どこ?」
屍「まったく…ほら、ここ」
僕「あ…ホントだ!ありがとうおねーさん!」
屍「うるさいわね。殺すわよ」
僕「じゃあ、こんどこそ!」
屍「…………」
僕「…………」
屍「…どうしたの」
僕「ううん、やっぱりいいや」
屍「何が」
僕「僕、魔王退治に行くんだ」
屍「無謀ね」
僕「うん。そんな危ない所におねーさんを連れていけないよ」
屍「LV1のくせに何様のつもり?」
僕「大丈夫だよ。僕、もっと強くなるから!」
屍「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
僕「じゃあね!ありがとうおねーさん!」
屍「……あああ…私、なんでこうなるかなあ……」

206:最終話
06/04/27 19:11:08 o82tYb4j0
僕「えへへ。負けちゃった」
屍「そりゃそうでしょうよLV1」
僕「だれも仲魔になってくれなかったし」
屍「ネクロマンサーの才能ないわね」
僕「うぐ…で、でも!お、オフダもあるし!」
屍「また間違ってる」
僕「え?どこ?」
屍「ここ」
僕「あ、そっか」
屍「バカじゃないの」
僕「うぐっ…だ、だって、お、お師匠、死んじゃったし…」
屍「…………」
僕「ほ、ほかにだれも…もう、い、いないし…っ!」
屍「…………」
僕「ぐすっ…えぐっ…」
屍「そんなの、言葉にした瞬間にボウヤの負けよ。…ああ、もしもし?私」
僕「ケータイ?だれ?」
屍「負け犬に構ってられないの。あっち行って」
僕「う…ご、ごめんね。ごめんね、おねーさん…」
屍「まったく……あ、こっちの話よ、魔王」
魔「あ、姐さん、ど、どのようなご用件で?」
屍「いますぐ体育館裏に来い」

207:ツンデ霊ナインシスターズ①
06/04/27 19:40:11 ay7Zt85HO
俺の仕事は拝み屋だ。
霊払いとは違う。
 
霊と接触がもてる、という特殊能力を生かし
霊を説得して迷いを解消し成仏させてやるのが拝み屋だ。
 
今日の依頼は取り壊し予定の食品工場を占拠している少女の霊の成仏。
工事業者に事故が相次ぎ、霊の姿が確認されて俺に仕事が回ってきたって訳だ。
 
「…出ていけ」
確かに少女の霊だ。
結構可愛いが恨みがましい表情で俺を睨み付けてる。
「まぁまぁ、そうツンツンするなよ」
「え…?あんた、あたしが見えるの!?」
「ああ、こうして話も出来る。俺は君の力になりにきたんだ」
「な、何よそれ!余計なお世話よ!いいから帰りなさいよ!」
 
両手をぶんぶん振り回して怒鳴る少女。
どうも悪質な霊じゃなさそうだ。
彼女がもってる現世への未練が何か分かれば手も打ちやすいのだが…


208:ツンデ霊ナインシスターズ②
06/04/27 19:41:44 ay7Zt85HO
「なぁ、なんで工事の邪魔をするんだ?」
「り、理由なんてないわよ!何もかもムカつくから祟ってやっただけなんだから!」
 
「嘘だね、君みたいな子がそんな事をする訳ないよ」
「ななな何言ってんのよぅッ!わわ私!
チョー悪い!そ、そう!もんのすごい悪霊なんだから!の、呪い殺すわよ!」
 
顔を真っ赤にしてわたわたとおかしな手振りをする彼女はどうみても悪霊には見えない。
 
『にゃ~』
対峙(?)する俺たちの間をぬって表れた数匹の猫。
少女の足元にまとわりつく猫たちは生まれて間もない子猫ばかりだ。
 
「だ、駄目!危ないから出てきちゃ駄目よ!」
慌てて子猫達を掻き抱く少女の霊。
 
「何で猫が…?」
「親猫がこの子達産んで…すぐ死んじゃって…いくトコないのよ、この子達」
 
「だから工場の邪魔を?」
「……」
無言で頷く少女。
 
「やさしいんだね」
「ちょ!違っ!」
真っ赤に赤面しながらぶるんぶるんと首を横に振る。


209:本当にあった怖い名無し
06/04/27 19:42:32 3zDEy8mp0
>>205
ワロスwwwwwwwwwwwGJwwwwwwwwwwwwwwwww

210:ツンデ霊ナインシスターズ③
06/04/27 19:45:23 ay7Zt85HO
 
とにかく原因は解明した、あとは簡単だ。
 
「大丈夫、俺が力になるよ。君のために」
彼女に手を差し伸べる。
「……ほ、本当に?」
 
上目遣いに潤んだ瞳で俺を見つめる少女は
おずおずと手を握ってきた。
 
俺はその小さな手をしっかりと握り
「うん。だから…
 
俺と ファイトするんだ」
 
背後に控える助手(29歳未亡人)がカーンとゴングを鳴らすと
俺は彼女の腕を抱え一本背負いでコンクリの床に叩きつけた。
 
「ゲボッ!」
もろに背中から落ちのたうつ少女に馬乗りになる。
 
「拳は強く強く握りこむんだ。でないと骨を痛めてしまうからな」
 
ビキビキと筋が浮くまで拳を固める。
「ちょ…待…」
 
「ジェノッサァァーイッ!!」
 
オタケビと共に何度も何度も何度も少女の顔面に拳を叩きこむ。
「これで、終わりだ!」
浄化済みモンキーレンチで少女の頭蓋を柘榴のように断ち割った。


211:ツンデ霊ナインシスターズ④
06/04/27 20:05:07 ay7Zt85HO
 
少女の躰はしぶとくビクビクと動いていたが、哀しげに顔を舐める子猫を
震える手で撫でるとそれっきり動かなくなった。
 
これで仕事は完了。
猫どもは保健所に直行だ。 
強い霊には口先で、弱い霊には実力で。
 
これがスマートってもんさ。
さぁとっとと帰って冷えたビールでも飲もう。    
『待てぇいッ!!』
「何ィ!」
 
上の手摺りに逆光を背負いポーズを決めてる八人の霊の姿が!!
 
『我ら地獄より来たりしツンデ霊ナインシスターズ!』
 
「不意をついたとは言え、猫使いの鎖妬禍を倒すとは」
「だが、鎖妬禍は末妹。実力では一番下…」
 
「次はこのハムスターキラー、魅隷霊がお相手しよう」
 
「いや!この屍姫、死火罵音が!」
 
「面倒だ!まとめてかかってこい!」
 
こうしてツンデ霊ナインシスターズて俺の死闘の幕が上がった。


212:本当にあった怖い名無し
06/04/27 21:10:53 UPbZroSIO
私怨

213:本当にあった怖い名無し
06/04/28 01:11:01 9yp40rMOO
ちょwwwwww原因解っても解ってなくても関係ないじゃんwww大好きwwwwww

214:本当にあった怖い名無し
06/04/28 02:38:28 DgQdO6Se0
>>205
ゾンビ好きとしては、GJ。
だが、もうちょっとゾンビっぽさを出してもらいたいな~と思ったり。
腸のはみ出具合とか、骨が見えてる感じとか、えぐれ感・ぐちょぐちょ感が欲しい……。
あーでも、それって俺だけっぽいな。orz


215:本当にあった怖い名無し
06/04/28 03:59:03 UYVqiWs0O
>>214
特殊な趣味のおまえは中の人にお願いして祟り神様の新作でも書いてもらえW

216:本当にあった怖い名無し
06/04/28 09:21:22 9yp40rMOO
>>205
ゾンビ好きじゃないけど全国9000万人の姐さん萌えを代表してGJ!

217:本当にあった怖い名無し
06/04/29 06:02:53 QRwxVdudO
基本的に主人公が最後に死んで終わる話しは後味悪いね。
(自殺であれ病気であれ。)

218:本当にあった怖い名無し
06/04/29 09:54:12 9BiiB+mp0
オカ板だしむしろそういうのは大いに有りかと。

219:突撃となりのツンデ霊1
06/04/29 11:17:41 XxYGmMkF0
「お前はいつ成仏するんだよ!!」
「そんなのあたしの勝手でしょ!!」
いつものように始まる口喧嘩。
このアパートに越してきて以来、これが日常になってしまっている。
不幸なことに、俺の借りた部屋には若い女の幽霊が憑いていたのだ。
真夜中になると決まって、女のすすり泣きが聞こえてきやがるから、
「うるせぇ!泣くなら屋上にでも行って泣きやがれ!」
と一喝したところ、しばらく静かになったと思ったら、
「――泣いてなんかないわよっ!!」
という罵声と共に、彼女が現われたというわけだ。
それからこっち、昼でも夜でもおかまいなしに部屋を浮遊しては、
何かにつけて俺に喧嘩をふっかけてくるようになっちまった。
全く、本当にやかましい事この上ない。
………可愛らしい顔立ちや、薄手のワンピースから時折のぞく
白い素肌や、たまに見せる極上の笑顔なんかを除けば。

220:突撃となりのツンデ霊2
06/04/29 11:18:44 XxYGmMkF0
「大体お前本当に幽霊の自覚あんのかよ!?
 今何時だと思ってやがる!」
「日曜日の午後1時だけど!?あんたこそ年頃の男のくせに、
 今何時だと思ってんのよ!」
「なんだそれ、年頃の男はどうだっていうんだよ!」
「年頃の男だったら、こんな時間に家に引き篭もってないっ!」
「どうせ俺には親友も彼女もいねえよ!巨大なお世話だ!!」
「あら、あたしに言われてようやく外出かしら?」
「タバコ買ってくるんだよ!!」
そう言い捨てて、乱暴にドアを開けようとした瞬間、
ドアのほうが勝手に開いた。
「あれ?自動ドアだっけ?」
開いたドアの向こうには、見覚えの無い男がひとり立っていた。
男は俺に少し驚いたようだったが、すぐに丁寧に会釈をすると、
名刺のようなものを差し出してきた。
「急にお尋ねして申し訳ありません。私はこういう者です」
「………ツンデ霊ハンター?」
「はい、ツンデ霊ハンターです。
 ――貴方の部屋、霊が出ますね?」
いきなり核心を突いてくる男。
喉まで出かかった何故それを、という言葉を寸前で飲み込む。
こいつ、何か怪しい。
ツンデ霊ハンターなんて職業は聞いたことも無いし、
初対面の人間に霊が出ますね、なんて言うのは大抵霊能者を装った詐欺だ。
………俺の部屋にうるさい霊がいるのは本当のことだがな。

221:突撃となりのツンデ霊3
06/04/29 11:19:35 XxYGmMkF0
「何のことです?」
俺は知らぬふりを決め込むことにした。こんな詐欺に引っ掛かってたまるか。
「またまた。私のカンと、この虚数素子測定装置はごまかせませんよ。
 この測定装置は私独自のカスタムを施した特別製です――
 ほら、こんなに高いツンデレ・パー・ミニッツが観測されている」
「なんです、そのつんでれって」
「話せば長くなります。
 とにかく、貴方の部屋にツンデ霊がいることは疑いようも無い事実。
 ――気づいていないとは、実にもったいないですね」
なんだかよく分からない装置を片手に、なんかムカつくことを言う男。
「私が、貴方の部屋に棲むツンデ霊を無償で駆除して差し上げましょう」
「へええ、俺の部屋に霊が?霊を駆除って、いったいどうするんです」
「ですからね、このオーブントースターを改造した幽霊捕獲装置でこう、
 ズバッと」
「OK分かった、ズバッと帰ってくれ」
オーブントースターに車輪がついたようなガラクタを取り出し始めた男を、
ドアの向こうに押し出す俺。間違いなく詐欺かバカの類である。
「ああ!ちょっと待ってください!これは怪しいものでは――」
「そのガラクタもお前自身も怪しさ大爆発だっつうの!!」
「………なにやってるのよ?」
玄関先で押し合いへし合いしている俺たちの騒ぎを聞きつけてか、
こっちのバカ女もそばにやって来た。ええい、前も後ろもうっとおしい。
その瞬間、男の眼がギラリ、と輝いたかと思うと――

222:突撃となりのツンデ霊4
06/04/29 11:20:20 XxYGmMkF0
「ツンデ霊キタ――(゚∀゚)――!!」
「うおぉっ!?」
俺の身体は、軽々と部屋の中に弾き飛ばされた。
「なっ、何だってんだ!!」
慌てて身を起こす。
部屋の真ん中で女幽霊と男が、にらみ合っている――
「ふふふふ、ほら居るじゃないですか、見事なツンデ霊が!!」
「なっ、なんなのよぅコイツ………」
この男――ホントに視えるのか!?
「ツンデ霊ハンターとして!
 このチャンスを逃す手はありませんッ!!」
男が手にしているのは、さっきのトースターのガラクタだ。
まさか、アレが本当に幽霊捕獲装置だっていうのかよ!?
「喰らえ!!」
裂帛の気合とともに放たれるオーブントースター!
トースターは床を流れるように滑り、硬直している女幽霊の足元に急停止する。
トースターのてっぺんがカパッと開いた瞬間、そこからまばゆい光が発生した!
「えっ!?あっ、やだ、吸い込まれる――!」
「ふはははは!ツンデ霊ゲト――(゚∀゚)―wwwwっうぇw!1」
女幽霊が、みるみるうちにトースターに引き寄せられていく。
このままでは、女幽霊は完全にトースターの中に吸い込まれてしまうだろう。
「こ、こんなの嫌――!助けて――………!」
その一言で。
俺の中で、ゴングが鳴り響いた。
「ジェノッサァァーイッ!!」
「ゲフッ!?」
全身のバネを使って中空に飛び上がり、トースターにカカト落しを叩き込む!
続いて男にネリチャギをぶちかまし、倒れたところにマウントを決めるッ!!
「よくもアイツを!骨が砕けようが貴様を潰す!!」
「うは、ツンキタ―(゚∀゚)―ってか男のツンはいらねええええ!!」
意味不明な言葉を喚く男の顔面めがけて、全力で拳を落とす。
形容しがたい轟音が、何度も何度もアパートを揺るがし続けた。

223:突撃となりのツンデ霊5
06/04/29 11:23:15 XxYGmMkF0
「――手。血が出てる」
「あ?………ああ、こんくらい大したことねえよ」
「………ごめん、ね。助けてくれたんだよね」
「!? バッ、そんなんじゃ」
「でも、あのとき、よくもアイツをって」
「う、き、聞き間違いじゃねえのか――」
「ごめんね、あたし幽霊だから手当てもしてあげられなくて、
 おまけに悪口ばっかり言ってたし………
 あう、ごめん、屋上にも出られないしぃ………」
「おいおいおい、泣くなよ!俺全然気にしてねえし!
 その、何だ、お前はここにいてくれるだけで充分――」
「え?」
「あ」

なんだか和やかな雰囲気になりつつあるアパートの一室。
その玄関の外で、ボロボロになった男がひとり倒れている。
その男の右腕だけがすぅっ、と上がり、親指を力強く立てた。
「で………デレ、キタ――(゚∀゚)――………!! 」

END

224:本当にあった怖い名無し
06/04/29 11:27:59 XxYGmMkF0
いろいろパクってすいません。
ツンデ霊ハンターの始祖に栄光あれ。

>>218
賛成なのです。
やっぱりオカ板なら、じわりと恐ろしい話とかもありでしょう。
問題はそこにいかにしてツンデレを盛り込むかですが………

225:本当にあった怖い名無し
06/04/29 11:37:24 wNVR21T20
拳は強く強く握りしめて、だっけ?
あの一節が好きなので入れてほしかった
でも楽しかったよ GJ

226:本当にあった怖い名無し
06/04/29 11:37:54 wNVR21T20
あああああageてしまいましたorz

227:本当にあった怖い名無し
06/04/29 11:52:02 4WWSD4gd0
「反省してるなら……
       許してあげてもいいかな♪」

228:本当にあった怖い名無し
06/04/29 12:08:10 hZoqsXEUO
>>227
それ、なんてエロゲのキャラ?

>>224
ヨカッタヨーヨカッタヨー!
後半のデレ多めと内輪ネタがとても萌へ!

229:うわん
06/04/29 16:01:50 o2oR68P70
「うわん!」

「うわん!」

「うわん!」

「うわん!」

「うわん!」

「うわん!」

「愛してる!」

「愛し…って、ちょ、お前、何言わせようとしてんだよ、いきなり!」

「な、なんだっていいでしょ!早く言い返しなさいよ!殺すわよ!?」

「あ、愛してる…よ」

「ウ、ウン(恥)」

230:運動場整備部隊 ◆zR/LhJxu0Q
06/04/29 16:13:28 pwJ05+t00
……マニアックな妖怪で来たなあw

231:本当にあった怖い名無し
06/04/29 18:02:58 hZoqsXEUO
いいじゃないっすか、
ここはオ カ 板 なんだから。

萌えたしwww

232:本当にあった怖い名無し
06/04/29 22:31:29 /NGr3uJ1O
私事で大変申し訳ないが、「ジェノッサァァーイッ!!」を「ゴーナヘーゥッ!!(たぶんGo to Hell)」にしても良いかなと思う今日この頃。

233:本当にあった怖い名無し
06/04/29 22:55:31 hZoqsXEUO
>>232
中の人でつか?

俺はゴーナヘゥとか言われても補注がないと訳せないけどw

234:本当にあった怖い名無し
06/04/29 23:38:19 6tfjPmmwO
「ネクゥゥゥゥゥロマァンサァァァァァァ!!!!」
とかいいなと思う俺ガイル

235:本当にあった怖い名無し
06/04/30 00:04:40 hZoqsXEUO
「ドコデェェェモォォォォォドァァァァァァア!!!」に一票

236:本当にあった怖い名無し
06/04/30 00:09:07 kpJ1pZmnO
なんかつまんないのが沸いてるな。

237:本当にあった怖い名無し
06/04/30 00:09:35 qEdQf3jmO
doraemoooooonのフラッシュ思い出した

238:本当にあった怖い名無し
06/04/30 00:17:20 nAwH078jO
>>236
だよな。俺も自分でそう思うorz
「面白い」代案きぼんぬ。

239:ちんちろりん
06/04/30 02:26:04 U5fJxK5H0
「あんたなんかちんちろりん」

「そういうお前こそちんちろりん」

「あんたなんかちんちろりん」

「そういうお前こそちんちろりん」

「あんたなんかちんちろりん」

「そういうお前こそ…あ、俺の家、もうそこだから…」

「あ、うん、えっと、それじゃ、バイバイ」「…あ、あのね!」

「え?」

「ほ、本当はあんたのこと、そんなにちんちろりんだとか思ってないから…!」

「ああ、俺もそんなの本気で思っちゃいないよw」

「そ、そうなの?」「あの、明日も一緒に帰れるかな?」

「うん 約束だな」「じゃあまた明日な、ちんちろりん」

「あっ、もう、何よこのちんちろりん!!」

240:本当にあった怖い名無し
06/04/30 02:27:19 U5fJxK5H0
>>229の類で書いてみました
マニアックすぎるかとも思いましたがどうでしょう

241:本当にあった怖い名無し
06/04/30 03:06:19 nAwH078jO
ごめん、その妖怪(?)は知らなかったw
ちんちろりんってアンポンタンみたいなノリ?

242:本当にあった怖い名無し
06/04/30 10:21:20 BNNuWoJF0
>>239
ほのぼのしててよかったよー

243:本当にあった怖い名無し
06/04/30 17:10:13 fmJFoMwx0
ちんちろりんはマイナーではあるがググれば一発だろ、とか思ってやってみたら見あたらないなw

江戸時代辺りの「実話系奇妙な話」で、
侍が帰宅途中に変な奴から指さされて「~殿(侍の名前)はちんちろりん」と言われる
侍も無礼打ちにでもすりゃいいのに、相手を指して「そういう者こそちんちろりん」と言い返す
以下侍の家までこの掛け合いをエンドレス
侍の家まで来たところで変な奴が「こいつテラツヨスw」とかいって消えてしまうという話
変な奴ってのは狸かなんかだったんだろう、とされている

それだけの話なら「なんか子供の口ゲンカだねw」「でもホノボノした時代だったんだねw」
とかで済みそうだけど、実はこの掛け合いは呪いのかけ合い・返し合いみたいなもので
負けていたら侍は死んでいただろうとか説明されててなんとなくガクブル

244:本当にあった怖い名無し
06/04/30 17:24:13 FSJiIIRF0
>>243
初めて知った。サンクス

245:本当にあった怖い名無し
06/04/30 19:43:39 nNbBsBGmO
入居した格安アパートに引っ越すと女の子の幽霊がいた。
「ええと…ごめんなさい。私、幽霊なんです。
天国行きが内定してるんですけど…
天国へのエレベーターがメンテ中であと三日かかるっていうです。
厚かましいお願いですがそれまでここに置いてもらえないでしょうか?」
 
哀れな様子で俺に懇願してきた。
とりあえず俺は女の子の横ツラを張りとばした
 
「ダメだ!ダメだ!!
違うだろッ!
そうじゃないだろ!?」
「そ、そんな…お願い!私、行くとこなくて…」
 
「だから違うって!!
まずは『出ていけ!』だろ!
基本だろ!?何やってんだよ!」
「え…?」
 
「格安!曰くつきアパート!
幽霊!
こう来たらツンデ霊が常識だろうがッ!」
「そ、そうなんですか…?」
 
「常識!否!不変の定理だ!
よし!俺がお前をどこに出しても恥ずかしくないツンデ霊娘に教育してやる!」
「え…い、いいですよ、遠慮しておきます…」


246:本当にあった怖い名無し
06/04/30 19:44:56 nNbBsBGmO
「いいから!三日だな!?このツンデ霊ハンターの俺に任せろ!」
「いやぁぁぁ!」
 
【一日目】
「まずは基本だ
『あんたなんか死んじゃえ!』」
「あ、あんたなんかし、死んじゃえ…」
「ダメだ!ダメだ!
もっと赤面しつつ!目は鋭く!かつ愛情を滲ませて!」
「あんたなんか死んじゃえ!」
「まだ照れがある!やり直し!合格するまで何度でもやるぞ」
「…(T_T)」
 
【二日目】
「ジェ、ジェノ、サーイ」
「気合いが足りない!もっと激しく!」
「ジェノサーイ!」
「違う違う!『ジェノッサァァーイッ!!』だって!もう一度!」
「…(T_T)」
 
【三日目】
「実技にうつる!
ほら!背負い投げ!はやく!」
「うーん、重いです…」
「はい!馬乗りにまたがる!」
「えぇ!?お、男の人に…そんなはしたない事出来ません…」
「いいからやれぇぇ!!
一人前のツンデ霊になれんぞ!」
「も、もぅ嫌ぁ(T_T)」


247:本当にあった怖い名無し
06/04/30 20:03:24 nNbBsBGmO
【四日目】
「…ただいま」
「あれ?どうしたの?お前天国行くんじゃなかったの?」
「ツンデ霊になったから内定取り消された…」
「そ、そうか、残念だったな。ま、いいじゃん!嫌な事は忘れて寝ろ!俺も寝るから!」
「…」
 
ニュースキャスター『昨夜未明、江戸川区アパートで突出 求さん、32歳が殴打された死体で発見されました。
近所の人の証言によると激しく争う音と【ジェノッサァァーイッ!】との叫び声が聞こえたとの事から
捜査本部は怨恨での殺人の線で捜査を進める事を発表しました。』


248:本当にあった怖い名無し
06/04/30 20:23:54 cbyTkx+dO
とても美味しかったです。
本当にありがとうございました。

249:本当にあった怖い名無し
06/04/30 20:33:31 DIyTRMLE0
>>243
サイコロ賭博のちんちろりんとは関係ないのかな?
賭博の方はサイコロの音が語源だけど。

250:本当にあった怖い名無し
06/04/30 23:34:38 nAwH078jO
>>249
俺も思った。サイコロ三つをお椀の中で転がすアレでしょ?
サイコロ賭博するような輩って事かね?

251:本当にあった怖い名無し
06/05/01 01:07:00 zrruRAbL0
オレは落語「たらちね」の「サークサクのポーリポリのチンチロリン」かとオモタよ

252:本当にあった怖い名無し
06/05/02 00:20:16 NAQr9D1JO
丸1日書き込みがないとは。

253:本当にあった怖い名無し
06/05/02 01:37:42 rSrwjD3TO
住人が極端にツン化してきてるというトレンドじゃね?

なによ、スレが止まったから書き込んだワケじゃないんだから!
たまたま…そう、たまたまよ!また明日来てあげるから、
ちゃんと保守してなさいよね…べっ別に来たいワケじゃ(ry

254:本当にあった怖い名無し
06/05/02 01:44:26 i+ebwlcA0
きっと書き込みが無いのは作者さんたちのツンデ霊が折角のGWだし、

「もし今日は2ちゃんにカキコしてないで、外に遊びに行くって言うのなら、
 貴方1人じゃ可哀想だから、付いていってあげても良いんだけど・・・。」

って言っているんだよ。目は完全にワクテカなのにツンツンモード全開で。

そして言われるままに(建前上は自主的に)近くの公園で日向ぼっこ。
たかだか徒歩数分の外出なのに、ぽかぽかのお日様の下で、
幽霊なのに思いっき笑顔全開ではしゃぐツンデ霊。

思わずデレ全開の自分と、それを微笑みながら眺めている作者さんに気づいて、
照れ隠しに『何見てんのよ!!ジェノッサァァーイッ!!』と右フック。

それを交わしてクロスカウンター狙いの作者に、
『まだまだ1000年早いんだよ!!ダブルジェノッサァァーイッ!!』
と、絶妙のタイミングでダブルクロスを決めたツンデ霊。

暖かな日差しの中・・・家族連れやら犬の散歩で賑わっていた平和な公園が、
戦慄の流血現場に急変した一日であった・・・。

255:本当にあった怖い名無し
06/05/02 01:53:27 rSrwjD3TO
誰が上手いSSを書けとw


途中まで激萌えだったのにww

256:本当にあった怖い名無し
06/05/02 05:31:11 2/MePW4VO
見えない人にとっては、急に暴れ出したと思ったらボコボコに
なっていく状況だけ見えるわけだよな。
子供がみたらトラウマになりそうだ…

257:本当にあった怖い名無し
06/05/02 11:23:28 i+ebwlcA0
>>252
スマ。しゃーねーだろー初めて書いたんだし。何となく書いたんだし。
>>252読んで世間はGWなんだから、遊びに行って書き込みが激減したり、
逆にGW厨が増えて荒れてしまうのが2ちゃんの良くあることだし。

だから最初は作者さんたちも遊びに行っているんだよ。って書いて、

でもそれじゃこの板らしくないからツンデ霊が~って書き換えて、

何となくシチュエーションが思い浮かんだから公園ではしゃぐツンデ霊まで書いて、

でもオチが思い浮かばなくて『ジェノッサァァーイッ!!ダブルジェノッサァァーイッ!!』

俺が言いたかったのは作者さん達も連休を楽しんでいるんだろ?ってだけであって、
少しでも住人のツンデレ分補給に役立てば・・・なんてぜってーに思ってねーよ!


途中まで萌えてくれてサンクス(笑

258:本当にあった怖い名無し
06/05/02 11:29:55 i+ebwlcA0
>>256
公園の芝生の上に寝転んで微笑んでいた人が急に1人ボクシングを始めて、

 「暖かくて危ない人がでてきた?」
  「それともパントマイム」
   「念の為に警察?」
    「とりあえず写メ撮っておく?」

って周りがザワザワし始めた途端に頭部から流血してダウン。
その後も打撲音だけがあたり一面に鳴り響いて変形する顔面。

そして明らかに意識が薄そうなのに、見えない何かに肩を預け、
ズルズルと音をさせながら立ち去る男・・・。

そんな感じ?

259:本当にあった怖い名無し
06/05/02 13:25:31 rSrwjD3TO
ここはおかるてぃっくなインターネッツですね

260:256
06/05/02 21:22:11 2/MePW4VO
>>258
補足サンクス
俺が言いたかったのはまさにそういうこと

261:本当にあった怖い名無し
06/05/02 21:38:50 8ux0gepLO
>>232です。
余所に投稿するつもりで書いてたら、なんだかこっちのスレでも読んでもらえないかな?と思って書いてみました。
「ゴーナヘーゥ!!」は入れられませんでした。
携帯からなので少々読みづらいかもしれませんが、5レス予定です。

262:Heaven or Hell
06/05/02 21:39:53 8ux0gepLO
20XX年某月某日、23:48。天候、豪雨。
とある港の倉庫街の片隅。
そこに、二人の人影が向かい合っていた。
片方は長身で、右手に長刀を提げている男。
もう片方は、それより少し背が低く、両手に大きなナイフ、ククリナイフを持っている女。
二人はかつてともに肩を並べて戦っていた。男が女に愛の言葉を囁き、体を重ねる事もあった。
二人は公私ともに最高のパートナーだった。
しかし女は死に、男は心に癒える事の無い傷を負った。女は男に放たれた銃弾を代わりにに受け、倒れたのだ。
パートナーを失い、悲しみの底にあった男は、数日後に女の幽霊に会った。
男は、女が死してなお何かに囚われている事を悟った。
それが何かは今は分からない。しかし、このままでは女は間違いなく悪霊と化し、人々に害をなす存在になるだろう。
そうなる前に彼女の未練を断ち切り、成仏させようと、たとえこの手で最愛の女(ひと)を討つ事になろうとも。
そう男が誓った瞬間、女は姿を消した。
そして男は女を見つけ出し、対峙した。

「久しぶりだな、ラナ。」
「そうね、随分久しぶりね、レイ。」
男―レイが言い、女―ラナが応える。二人とも、わずかに寂しそうな微笑みを浮かべながら。


263:Heaven or Hell
06/05/02 21:41:37 8ux0gepLO
「…組織の規則、覚えてる?」
言葉を選びながら、ラナは問う。
僅かな逡巡の後、レイが答えた。
「ああ。幽霊は発見した場合、その時点での危険度の大小に関わらず、即刻排除せよ。幽霊を生み出す要因の最たる物である未練は、生者に害なす恐れがある怨恨である場合が多いから。」
無論、すべての幽霊が恨み辛みで幽霊になった訳ではない。
自分の死後に残される愛する人を心配し、その想いが形を変えて未練となり、幽霊となる場合も決して少なくない。
しかし、その想いも、度を超せば周囲に被害を与えかねない。
それ故、組織は幽霊に対する方針をそう位置づけた。
「よく覚えてたわね、規則を破ってばかりだったあなたが。」
「訓練所で徹底的に叩き込まれたからな。嫌でも思い出しちまうよ。」
他愛もない、しかし、今の二人にとってはとても重要で悲しい話題。
「今度ばかりはちゃんと規則を守ってよ?あなたはいつも規則を破って無茶をしていたから。」
悲しげに微笑みながらラナが言う。
「俺が規則を破って無茶したのは、規則を守って行動してたらヤバかった時だけだ。第一、ルールっつーのは破ってなんぼなんだよ。」
言って、二人で笑った。


264:Heaven or Hell
06/05/02 21:42:49 8ux0gepLO
「でも今度だけは絶対に規則を守って。気付いているかもしれないけれど、私の未練はあなたなのよ?
私が死んで、どれだけあなたが悲しんでいたか知ってる。だからこそ、それを乗り越えて、前に進んで欲しいの。
死んでしまった私の事を思い悩んで、それに囚われたあなたが任務に失敗してしまったら、死んでも死にきれない。」
無茶な要求だ、とレイは思った。いくら彼でも、かつてのパートナーを斬るのには抵抗がある。
レイが躊躇っていると、畳み掛けるようにラナが言い放った。
「あなたが私を斬れば、私は成仏するし、あなたは任務を遂行した事になる。
逆にこのまま私を斬らないと、私は悪霊になり、あなたを襲ってしまうかもしれない。
どっちを選ぶかは決まりきってる。天国か地獄か。選択肢は一つだけよ。」
頭を掻きながら、レイは口を開いた。
「相変わらずひでー女だよ、お前。前からそうだったよな、俺に無理難題押し付けて、出来なきゃ根性無し呼ばわりされて、出来てもすぐに次フッかけてきてよ。」
フッ、と笑ってレイは続けた。
「でもそんな毎日も良かった。ラナ、お前と一緒だったからな。お前の言ってる事はもっともだ。だからこそ、俺にはお前を斬れない。」


265:Heaven or Hell
06/05/02 21:43:56 8ux0gepLO
レイの言葉に、ラナは悲しげに、そして諦めたように言った。
「そう、ならあなたが自分の意思で私を斬るつもりは無いのね?」
「ああ、俺から斬りかかるつもりは無いよ。」
レイの言葉に、決意したようにラナが言い放った。
「なら……私と、戦いなさい。私はあなたを斬る。私に斬られたくないなら、私を斬って。」
言うが早いが、ラナはナイフを抜いて走り出し、レイに斬りかかった。
とっさにレイも長刀を抜き放ち、ラナのナイフを防ぐ。
「仕事前の決めゼリフ、覚えてる?」
いわゆる鍔迫り合いの状態でラナが問う。
「忘れるかよ……。『勝てば天国、負ければ地獄。Heaven or Hell. Let's Rock!!』」
言い切ったと同時にラナのナイフを弾く。
間髪を容れずにラナが両手で斬りかかる。レイが長刀で防ぐ。
レイが斬りかかる。ラナが両手のナイフで受け止める。
ラナが左右から同時に斬りかかる。刀の切っ先と柄でレイが受ける。

数十合も斬り結び、レイの顔に疲れの色が見え始めた。しかし、ラナは戦いを始めた時となんら変わらない涼しい顔をしていた。
(ラナは幽霊だから、疲れなんて無いのか!)
もう一度鍔迫り合いになり、互いに距離を取って体勢を整える。


266:Heaven or Hell
06/05/02 21:45:16 8ux0gepLO
ラナが両手のナイフを交錯させて突進して来た。レイは大上段で刀を振り下ろす。

ギィンッ!!

堅く重い金属がぶつかる音が響き、一瞬遅くレイの刀が衝撃で押し上げられ、右足が浮いた。
「終わりよっ!!」
もう一度ナイフを交錯させてラナが斬りかかる。
刹那。
「っせいやぁあああ!!」
浮いた右足を下ろす勢いを利用して、レイが渾身の力を込めて刀を振り下ろす。

ガギギィンッ!!

レイの刀がラナのナイフをへし折り、残った柄を弾き飛ばす。
返す刀でラナの喉元に切っ先を突きつける。
「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」
二人とも肩で息をしながら、レイはラナの、ラナはレイの目を見た。
ラナは満足げに、レイは躊躇いがちに、同時に頷いた。
そして、レイはラナの胸に、刀を突き立てた。


全てが終わった後、その港の倉庫街には、右手に長刀を提げた男が佇んでいた。
雨はいまだ強く降り続け、男に容赦なく吹き付けた。
その男の顔に浮かぶ表情は、男の髪と、強すぎる雨足に阻まれて読み取る事は出来ない。
男の顔についた水滴が雨なのかすらも分からない。

267:232
06/05/02 21:46:09 8ux0gepLO
えー、ギルティギアは大好きです!!

スイマセン。
元々「主人公(生者)とヒロイン(幽霊)がガチでバトる」っつーシチュありきで書き始めたので、あんまりツンデ霊してないかもしれないどころか、ほとんどしてませんね。本当にすいません。
一応推敲はしましたが、誤字脱字等ございましたら御指摘ください。
感想や批評もお願いします。

268:本当にあった怖い名無し
06/05/02 22:31:42 4W3n2fevO
とりあえず俺もギルギアの戦闘開始時の
「Haven or Hell Let's ROCK!」
の掛け声好き。GJですた。

269:本当にあった怖い名無し
06/05/02 23:11:42 rSrwjD3TO
gj! っていうか、キャラよりもこれだけの作品を書きながら
謙虚な姿勢の作者さんに萌え。
とりあえず言われた通り誤字をうp
1レス目の「にに」→「に」くらいでしょうか。あと一カ所日本語が変な箇所が。

4レス目くらいの「私と戦いなさい」は「私とファイトなさい」 ゴングがカーン!
みたいw

とにかくGJGJGJ!

270:本当にあった怖い名無し
06/05/03 00:02:18 i+ebwlcA0
>>267
えーっと何か元ネタ(ギルティアっての?)があるのですか?

271:232
06/05/03 01:07:01 7PLMSeDHO
ID変わりましたが>>232(>>267)です。

>>269
御指摘感謝です。
>4レス目くらいの「私と戦いなさい」は「私とファイトなさい」 ゴングがカーン!
>みたいw
実は狙ってましたwww
このスレに投稿しようと決めて急遽追加したのですが、あまり違和感なくできたみたいで良かったです。

>>270
特に元ネタはありませんが、強いて言うならアーマード・コア(ラナの名前。MoAのラナ・ニールセンから)とギルティギア(Heaven or Hell. Let's Rock!!のセリフ)ですか。「Heaven~」は日常生活でもたまに使うお気に入りの言い回しです。
他は全部オリジナルです。多分。

「勝てば天国、負ければ地獄。Heaven or Hell. Let's Rock!!」
このセリフを応用して別キャラでもう一つ考えていますが、今度こそツンデ霊要素をもっと入れたいと思います。
いつ書き上げられるかは分かりませんが、できるだけ早く書き上げようと頑張ってみます。
それではスレ汚し失礼いたしました。


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