なにそのツンデ霊★四人目★at OCCULT
なにそのツンデ霊★四人目★ - 暇つぶし2ch1:本当にあった怖い名無し
06/04/19 22:30:59 BF95bFqr0
怖い話に出てくる女幽霊は実はツンデレなのではないかという新説を
検証してみるスレッドです。

前スレ 
なにそのツンデ霊★三人目★
スレリンク(occult板)
なにそのツンデ霊★2人目
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なにそのツンデ霊www1人目 
スレリンク(occult板)
まとめサイト
URLリンク(www.tsunderei.org)


2:本当にあった怖い名無し
06/04/19 22:32:12 F3cVqVcP0
いいかげん板違い

3:本当にあった怖い名無し
06/04/19 22:47:41 ODlYlmMGO
>>1


>>2
ツンデレ乙

4:1
06/04/19 22:52:49 BF95bFqr0
前スレ書き込めなくなってて新しいの立ってなかったから立てたんだが・・・
需要薄い感じ?

5:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:12:23 ubvdlMFZO
そんなことはないから気にしなさんな

6:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:17:11 YICmXJw2O
新スレ立ったのに気づかない人も多いと思われ。

マターリたいきんぐ

7:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:26:11 4FQ9ebKw0
「この桜の下には少女が眠ってる・・・」
そう教えてくれたのは誰だったろう?

その少女とは、今私の横で嬉しそうに桜を眺めている
この少女のことなのだろう。

出会ったのはいつだったか・・・
たしか、この家に越して間もない頃だったと思う。
裏庭に大きな桜のあるこの家は、近所でも評判の幽霊屋敷だった。
祖父が死に、誰も住んでいないはずの家から明かりが見えたり
物音がしたりするのだ。
そんな噂が立つのも時間の問題だったのだろう。
私が越してくる頃には、誰も近寄らないさびしい家だった。

元々、心霊現象など信じない私は噂を気にせず引っ越す事にしたのだが、
家に入ったとたん、タタタタタッ何かが走り抜ける音がした。
「本当だった・・・のか?」
しばらく呆然としてしまったが、それ以降は特に何も起こらなかった。
何日かは荷解きをしたり、家の掃除、片付けで過ぎていった。
「あの桜まだあるかな?」
ふと、そんなことが気になり裏庭へ向かった。
そこにあの桜があった。
しかし、昔の記憶と違い弱々しくそこに有るだけの木だった。

8:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:26:42 4FQ9ebKw0
「あれ?こんな小さかった・・・」
軽い目眩を覚える。
庭に見た事の無い少女が立っていた
「君は誰かな?どうしてここに居るの?」
少女は答えないず、ただ寂しそうに桜を見つめるだけ。
「その木はもっと暖かくならないと咲かないよ。
 お家の人が心配するから、桜が咲いたら一緒においで。」
「きっと、もう咲かない・・・。」
そう首を振って答えると、どこかへ走って行ってしまった。
「えっ、それはどういう・・・」
私の問いかけは少女に届かなかった。

その夜、初めて金縛りにあった。
ただ、そのときに感じたのは「苦しい」というよりも「寂しい」
そんな感情だった。

9:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:28:02 4FQ9ebKw0
「もう咲かない・・・か」
咲いたらあの少女は喜んでくれるだろうか。
それは解らない。
ただ、この桜が咲いているのを私も見たいと思った。
「まずは、掃除でもするか」
手始めに雑草をむしる。
「はぁはぁ。」
日暮れまでかかったが4分の1も終わらない。
「ふぅ、これは大変だ。しばらくは毎日草むしりだな。」
「よ・・な・・を・・な。」
「ん?」
空耳が聞こえたようだ。
その晩も金縛りにあった。感じるのは「寂しさ」だけ
耐え切れず目を開ける。
と、そこに何かが居た。
「よけ・・こ・・・るな!」
「えっ?」
「よけい・・・をするな!」
「よけい・・・?」
「余計なことをするな!」
「ん、よけいな事って何の事かな?」
不思議と恐怖心は無く疑問をそのまま口にする。
「余計なことをするな!」
それしか言って来ない。
ただ、声には「怒り」より先ほどと同じ「寂しさ」を感じた。
しばらく考え
「桜の事・・・・だよね?」
ザワッ
訊いた瞬間、部屋の空気が震え気配が消えた。
「ふぅ、どうしたら良いものか。」
呟くがやはり答えは返ってこない。

10:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:28:19 i+WuVRNeO
「4人目」と「死人目」
本スレはどっち?


11:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:48:24 fw3+Qokh0
>>7-9
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +

>>10
ココが本スレの様です。「死人目」の方は削除依頼済み

12:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:50:08 4FQ9ebKw0
次の日も朝から庭の草むしりをする。
時々、庭の隅から視線を感じ顔を上げるが当然誰もいなかった。
「ふぅ、今日はここまでかな。」
まだ半分も終わってなかったが、
日暮れ近くになり手を休めると、見慣れない石が目に付いた。
不思議に思い手を近づけると、
ビリッ!
電気が流れたように痺れた。
「あ!っつぅ~~っ。」
声にならない悲鳴を上げる。
静電気・・・な訳はない。
気を取り直して再び近づくともう何も起こらなかった。
「お墓・・・かな?」
根拠は何も無いがそう感じた。
細長い少し大きめの石。
「庭がきれいになったら、ちゃんとしてあげますので。」
謝るように呟きそっと石を置いた。
その夜も金縛りにあった。
「・・・れろ。」
「ん?」
「わ・・ろ。」
「われろ・・・?」
「忘れろ。」
「忘れろ・・・ね。」

13:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:50:44 4FQ9ebKw0
昨日と同じ気配と声
思い当たるのは・・・庭で見つけた「お墓」しかない。
「どうして忘れないといけないのかな?」
「忘れろ。」
「あれは・・・君のお墓・・・でしょ?」
ビクッ
気配が震えたと思うと、激しい揺れが襲ってきた。
「うわっ!」
声を上げたとたん、すぐに揺れがおさまった。
気配はもう無い。
「・・・桜とお墓・・・・か。」
何かが頭に引っかかるが思い出せなかった。


14:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:51:25 4FQ9ebKw0
昨日と同じように草むしりに精を出す。
だが頭の中では「桜とお墓」がずっと浮かんでは消えていった。
昨日のように、視線を感じたりする事も無く
夕暮れになった。
申し越しで草むしりも終わる。
その夜も金縛りにあうが気配は感じない。
体を覆うとてつもない「寂しさ」
「う、ううっ。」
「こ、こんな中に・・・・君は・・・居る・・・のか?」
知らずうめき声や呟きがもれる。
押し潰されそうになりながらじっと耐える。
(少女・・・・桜・・・お墓・・・)
いつの間にか、庭で会った少女の事も思い浮かんでいた。
そのまま意識を失った。

15:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:52:07 4FQ9ebKw0
また庭の草むしりに精を出す。
自分がここまで桜に執着していたか、疑問に感じたが
もくもくと草むしりをする。
夕暮れが近づく頃何とか草むしりも終わった。
「誰かから聞いたはずなんだけど・・・」
父親なら何か知っているかと思い電話をする。
「父さん、この家の桜ってなにか言い伝えみたいなの無かったっけ?」
「どうした急に?幽霊でも出たか?」
笑いながらそんなことを訊いてくる。
「ん、そんなことは無いんだけど・・・
 小さい頃、誰かから聞いたような気がしてさ。」
「あ~、とたしか、桜の下に少女が眠る・・・ってヤツか?」
「あっ、それそれ。ホントなのそれって?」
「さぁ~てなぁ。俺も聞いただけだしなぁ。」
「そうなんだ。うん。分かった。」
「それよりそっちはどうなんだ?元気でやってるか?」
その後、他愛も無い話をして電話を切った。
「桜の下に眠る少女・・・・か。」
呟いたとたんあの気配が近づいてくる
「出て行け。」「余計なことをするな。」「忘れろ。」
色々な言葉が降りかかってくる。
「くっ。」
いつもと同じ「寂しさ」の重圧。

16:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:53:21 4FQ9ebKw0
「・・・どう・・・して?」
「一人にして。」「誰も来ないで。」 
「どうして?そんな寂しそうなのに?」
「イヤっ!」「来ないで!」「一人にして。」
口調が少女のものに変わる。
「君は・・・一体・・・誰?」
「忘れて。」「出て行って。」「一人に・・・しないで・・・。」
うっすらと姿が浮かぶ。
「・・・泣いて・・・いるのかい?」
「出て行って。」「忘れ・・・ないで。」「一人に・・・・しないで。」
泣きながら少女は言葉と重圧をかけてくる。
言っている事も滅茶苦茶だ。
家が揺れる。堪らずひざを付く。
「出て行って。」「忘れないで。」「一人にしないで!」
「出て行かないで!」「忘れないで!」「一人にしないで!」
「・・・傍に・・・いる・・・よ。」
何とか声に出す。
悲しみに包まれる少女を見ていられなかった。
「イヤだ!」「寂しい!」「一人にしないで!」
揺れがおさまってくる。
「グスッ、グスッ」
揺れがおさまり。目の前には泣き崩れる少女。
「傍にいるから。そんなに泣かないで。」
やさしく声をかける。

17:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:53:57 4FQ9ebKw0
グスッ、・・・イヤ・・・だ。もう、桜咲かないもん。」
「大丈夫、きっと咲くから。」
「グスッ、グスッ・・・ホント・・・・に?」
「うん。本当だよ。今年はダメでも。来年。」
「えっ・・・?」
「そうじゃなくても、いつかきっと。きっと咲くから。」
「・・・いつか・・・きっと?」
「そう、いつかきっと咲くから。それまで一緒に待とう。 
 ねっ。」
「・・・いつか・・・きっと・・・咲く?」
「そうだよ。これからちゃんと手入れしてあげて。
 元気になればきっと咲くから。」
「そう・・・かな?また、咲く・・・かな?」
「ああ、きっと咲くよ。だから、それまで一緒に待と。」
「・・・うん。・・・咲くまで、一緒に待つ。」
少女は泣き止み、腫れぼったい目で笑顔を向けてくれた。


18:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:54:47 4FQ9ebKw0
数年後
しばらくは桜が咲くことは無かった。
私は園芸や樹木の本を読み漁り、できる限りのことをした。
そして今年やっと花が開いた。
「すごいねぇ。ほんとに咲いたねぇ。きれいだねぇ。」
「ちゃんと咲いたでしょ。信じて、やれる事をやって、
 待ってればきっと叶うから。」
「そうだねぇ。頑張ったもんねぇ。良かったねぇ。」
もう少女は泣かないですむ。
桜が咲いたことより、その事が私は嬉しかった。

19:本当にあった怖い名無し
06/04/19 23:56:54 4FQ9ebKw0
だらだら長くてすいません。
ツンデレですらないような・・・



20:本当にあった怖い名無し
06/04/20 00:07:29 nXLXcvmE0
なーに十分ツンデ霊さ!

21:メイドさんと僕 1/3
06/04/20 00:35:02 8syTmnOO0
「人の友達に、なんてことするかなぁ」
「あんな人は旦那さまのお友達にはふさわしくありません」
「勝手なこと言わないでよ。大体僕は旦那さまなんかじゃないんだってば……」

僕はお屋敷でもないただの一軒家に住んでいる。
年だってまだまだ若いし旦那さまと呼ばれるのはどう考えてもおかしい。
けれども僕をそんなふうに呼ぶのは、3年前両親が死んだすぐあとに
突然現れた、おかしなメイドさんの幽霊だった。

「あなたさまは旦那さまのお生まれ変わりです。
 だから私がお世話いたします。」

美和と名乗ったメイドさんは前世の僕に使えていたらしい。
前世と言われても覚えているわけはないし、少し困ったのだけれど
美和さんにとってそんなことはどうでもいいみたいだった。
ひっそりと僕を見守っていたのだけれど、ひとりぼっちになって
泣いていた僕をみかねて姿を現したそうだ。
美和さんの出現に当然僕はびっくりしたけれど、怖いとは思わなかった。
美和さんは幽霊なのに料理が上手で、毎日僕においしいご飯を作ってくれる。
毎朝見送ってくれるし、学校から帰ると玄関で出迎えてくれる。
美和さんの笑顔と「いってらっしゃいませ」「おかえりなさいませ」は
僕にとって、毎日の大きな励みになっている。
僕が立ち直れたのは美和さんのおかげで、美和さんがいなかったら
僕はどうにかなっていただろうし、もしかしたら死んでいたかもしれない。
美和さんみたいな幽霊がいるのなら死ぬのもそんなに怖くない気はするけれど。

22:2/3
06/04/20 00:35:54 8syTmnOO0
美和さんは普段、とても優しいのだけれど
ときどきちょっと厳しかったり頑固だったりする。
たとえば前に学校の用事で遅くなって、連絡もしないで
門限を破ってしまったときはものすごく怒られた。
怒った美和さんはちょっと怖いから、そのあと僕は
なにかあったときにすぐ連絡ができるよう携帯電話を買った。
契約のなにやら難しいことは美和さんがごまかしてくれたみたいだけれど
どうやったのかはよく分からない。
あと、美和さんは電話も使わないで僕に電話がかけられるらしい。
電話代もかからなくておトクなのだけれど、ふしぎだ。
こういうところはやっぱりお化けなんだなぁと思う。

今までも、何回か美和さんを怒らせたことはあったのだけれど
今日もまた怒らせてしまった。といっても今回に限っては
僕が悪いわけじゃなくて、僕が家に連れてきた友達に怒ったのだ。
怒った美和さんは、姿をかくしたままコップの水を友達に浴びせかけ
投げても壊れないしぶつかってもそんなに痛くないようなものを
かたっぱしから投げつけて、彼を追い帰してしまった。
そもそも美和さんが怒った原因というのは僕を思ってくれてのことで
その友達が、僕に向かって独り暮らしをうらやむようなことを
言ったのがまずかったらしい。僕はあまり気にしなかったのだけれど。
「とにかくさ、あんなことしちゃって
 あいつが誰かに話したらうわさになっちゃうよ。
 家を見に来たがる人が増えたりしたらどうするのさ」
「そ、それは。ですけど……。」
言いよどむ美和さん。
僕が美和さんに対して優位に立てたのはこれが初めてかも。

23:3/3
06/04/20 00:37:09 8syTmnOO0
「まあいいや。一応口止めはしておくし
 もしうわさになってもなんとかごまかすから」
「……申し訳ございません。考えが足りませんでした」
美和さんはしょんぼりしてしまっている。
もともと美和さんを責めるつもりはなくて、文句を言ったのは
ちょっとした照れ隠しだったのだけれど、失敗だった。
「いいってば……。
 ……あのさ、ありがとう。僕のために怒ってくれたんでしょ?
 それに、いままでだって、いろいろ、その、感謝してるから……」
もっと、素直にお礼を言うつもりだったのだけれど
それでも、美和さんはにっこりと笑ってくれて
「いえ、私は旦那さまのメイドですもの。
 旦那さまのために尽くすのは当たり前のことですわ」
「……だから、僕は旦那さまじゃなくて―」
美和さんが生きていた時代にメイドなんて言葉があったかなぁ、なんて
ちらっと考えながら、僕はやっぱり美和さんのことが大好きだと思った。

24:本当にあった怖い名無し
06/04/20 14:02:49 6nZ4lf2+0
彼女と二人で街を歩く。まあ他人からは男一人にしか見えないだろうけど。
服を選んでもらったり、必要な雑貨を買ったり、欲しい本を探し歩いたりとそこらにいるカップルとなんら変わりのない二人。
彼女の声は普通の人には聞こえないから、僕が言動に気を付ければ何も問題無い。

25:☆⌒ヽ(*^^)/・:*:・゚☆,。・:*:♪・゚'☆ ◆jH..cosmic
06/04/20 14:07:00 CeAOz+ox0
全然エロくねえじゃんか・・。

26:本当にあった怖い名無し
06/04/20 16:35:46 h5Ougz5r0
妹「お兄ちゃんって落ち込んだ時どうする?」
俺「んー、別に何も。寝るかな」
妹「ふーん・・」
俺「どうした?何かあったか?」
俺「ううん、ちょっとね」
俺「何だよ水くさいな、言ってみろよ」
俺「う、うんとさ・・・」
俺「おう」
俺「お兄ちゃん、この間一緒に歩いてた人、彼女?」
俺「・・・は?」
俺「前学校の近くで話してたじゃん」
俺「ああ・・・あいつか。なわけないだろ、ただのクラスメートだよ」
俺「ほんと?」
俺「嘘言ってどうすんだよ」
俺「そっか」
俺「てかそんな話はいいんだよ。落ち込んでたんじゃなかったのか?」
俺「ううん、それならいいんだ!えへへ」
俺「おかしな奴だな」
俺「ふふ♪お兄ちゃんに彼女なんてできるわけないよね、よく考えたら。」
俺「こらこら、失礼だぞ」
霊「ばっかじゃないの」

27:本当にあった怖い名無し
06/04/20 17:24:27 6nZ4lf2+0
すみません。24の続きです。

ふと、彼女が前方を見つめ、そして慌てて言った。
女「やばっ!前から同僚きたっ!」
俺「えっ?あの半透明の人の事?同僚って・・・」
女「どうしよう、えっと、うんと」
俺「何悩んで、あっそういうことか。えーとじゃあ俺は弟って事で」
女「え、弟?ちょっと無理ない?」
俺「兄とか父とかよりはましだって。何なら義理でも養子でもいいから」
女「うんわかった。じゃあよろしく」
同「どこかで見た顔だと思ったら・・・、久しぶりだねえ。で、さっそくだけどそっちの彼は?」
俺「すみません、ここだと人目があるんでちょっとあっちに」
同「あ、そっか。ゴメンゴメン、じゃあ行こうか」



28:本当にあった怖い名無し
06/04/20 17:25:07 6nZ4lf2+0
俺「じゃあ改めて。初めまして、弟です。姉がお世話になってます」
同「はい、初めまして、よろしくね。ふーん弟なんだ、あんまりにてないねえ」
俺「よく言われます」
同「久しぶりに見たと思ったらカワイイ男の子と一緒にいるからさ、年下が趣味なのかと思ったよ」
女「な、何言ってんのよ!こんなのが彼氏なわけないでしょ!調子に乗るから冗談でもカワイイとか言わないでよっ!」
俺「(こんなの、って酷くない?)まったく、彼氏も作らず死んだと思ったら弟に憑くんですから、困った姉ですよ」
女「な、なによっ!こんなに美女が年中無休で側にいてあげてるんだから感謝しなさいよっ!」
同「はいはいわかったから。弟君も大変だねえ。さて、挨拶したかっただけだし、私は行くわ。ほんじゃねお二人さん!」
俺「あ、はい。お疲れ様でした」
女「あ、うん、じゃあね。」
ふう、問題起きなくてよかった。さて、気を取り直してデートの続きでもと思っていると、
女「ねえ、怒ってない?」
俺「ん?どうしたの急に。俺、何かされたっけか?」
女「だって私、こんなのとか感謝しろとか偉そうに言っちゃったから。私が一緒にいたいから、あなたの側にいるのに」
俺「ああ、そのことか。こんなの、はちょっとアレだと思ったけど、別に気にしてないし怒ってもいないよ」
女「ホントに?」
俺「本当だって。本心じゃないのはわかりきってるし。それに一緒にいてくれて感謝してるのは本当だしね」
女「あっ・・・、うん、ありがとう」
俺「さあデートの続き続き。改装中だったあの店、今日リニューアルオープンだって話だから行ってみようか?」
女「うん!行こう行こう!」
そしてまた腕を組み、彼女と二人、目的地へと歩いた。

その晩はいつもよりたっぷりサービスしてくれた。なんか得した気分。




29:24,27,28、前971
06/04/20 17:57:31 6nZ4lf2+0
途中で書き込んでしまい急いで続きを書いたのですが、あまりに長くなりす
ぎたので削っていたら三時間も空いてしまいました。それでも長いですけど。
何度か読み直して推敲しているんですが、それでも誤字があってショック。
24三行目 僕→俺
あと前スレなんですが、
971九行目 8部→8分
時間かけて書いてるわりに安易な間違いしてるな、俺。
誤字以外の誤変換、文体等でミスを見つけた方は、生温かい目でスルーするか、ニヤニヤしながら指摘していただけると助かります。

30:本当にあった怖い名無し
06/04/20 18:49:11 mfStRfO/0
新スレ万歳。
あと、>21-23の美和さんが、可愛すぎて犯罪。

IDをNG指定推奨。7レス予定。短くまとめるのは諦めた。

31:本当にあった怖い名無し
06/04/20 18:50:47 mfStRfO/0
妙に安い物件だったので、“アレ”かと思っていた。
ところが入居してみると、変な悪寒も物音も、ましてや霊その物もいない。
念のため押し入れや風呂場、流し台の下まで調べたが、染みもお札も無い。
─そうか、夜中に現れるのか!
どっこい金縛りも耳元の囁きも夢に出てくる不気味な影もない。快眠だった。

だから油断した。このパターンは考えていなかった。
確かに、“執着”“未練”という意味では、案外絶好スポットなのかもしれない。

─まさか“郵便受けの前”にいるとは。

階段脇の郵便受けに、目付きの悪い若い女性の霊がいた。
その一角だけが、爽快な早朝をぶち壊しにするドロドロ空間。
日が昇っていて良かった。夜だったら逃げ帰って布団を被って震える。

「あの、新聞を取りたいのですが……」
勇気を出してお願いをする。女性は、じと、と睨むと、
「─取れば」
何とも無愛想である。いや、無愛想を通り越して、敵意すら感じる。
まあ、霊なのだから、そういうものなのかもしれない。

触らぬ霊に祟り無し。必要以上に卑屈になって新聞を抜き取る。なのに─

「ちょっと─、」
部屋に戻ろうとする僕を、彼女が呼び止めた。
ぴしり、と固まる。えと、何か気に障るようなことしちゃいましたか─?

「─郵便受けに名札を付けなさいよ。配達人が困るでしょ」
びしり、と指をさす先には、名無しの郵便受けが待っている。
表札は、透明なカバーとの間に名前を書いた紙を差し込むタイプ。
ダイレクトメールとか嫌なので、そのまま放置するつもりだったけど……
「……スイマセン、後で付けに来ます」

32:本当にあった怖い名無し
06/04/20 18:52:03 mfStRfO/0
もしかして今日はいないかも……そんな甘っちょろい期待は、あっさり玉砕。
昨日同様、郵便受けの前には不機嫌顔の彼女が、ぷかぷか浮いていた。

「……新聞、取らせていただきます」
昨日同様おっかなびっくり新聞を取ると、見出しが一文字、破り取られていた。

─傍らに浮かぶ女性を見る。
何よ、とでも言うように睨まれたので、慌てて目を逸らす。
他には考えられない。しかし、霊の行動にしては、いささか軽い気がする。
気になって他のページもめくってみると、社会面にも破られた箇所がある。
前後から類推すると、切り取られた二文字は、ある名字を構成する。

─もしかして、
表札を見ると、自分の名前の下に並んで、予想した名が差し込んであった。
もう一度、彼女を見る。今度はいささかバツの悪そうな顔をしている。
それでもなお見つめていると、渋々というように、ぼそりと呟いた。

「……私宛の手紙が来るかもしれないでしょ」

─なるほど。
予想通り、彼女の未練は“そこ”にあるらしい。

──無理だ。
彼女がどれだけの間、“ここ”にいたのかは分からないが、もう恐らくは……


「…………っと、」
「─え?」
意識を引き戻され前を向くと─鬼が居た。一気に血の気が引く。

「何か文句ある? 無いんだったら、早く消えなさい」
死にたくなければ去れ─そう聞こえた。命が惜しいので、大急ぎで退散。

33:本当にあった怖い名無し
06/04/20 18:53:04 mfStRfO/0
切り貼りの脅迫状のような表札では、どうも落ち着かない。
なので翌朝、新たに彼女の名前を併記したプレートを作って持って行った。

「汚い字ね」
一蹴。名誉のために言っておくと、彼女が言うほど汚くない─はずだ。
名札を郵便受けに差し込むと、彼女は少しだけ嬉しそうな顔をした。

「しかし、こうして見ると……」
「何よ?」
「まるで僕たちが同棲しているみた─」
ぞく、と背筋が粟立った。
彼女を見ないように、ゆっくり回れ右をして─ダッシュで逃走。



次の日も、その次の日も、彼女はそこにいた。
もしかして─と期待したが、雨に日でも、やはりそこが指定席のようだ。
必然的に毎日顔を合わせることになる─となれば嫌でも慣れてくる。
口は悪いが実害はないので、半月もすれば別に怖がることもなくなった。
彼女の態度は冷たいままだが、それを気にすることも無くなった。

ついでに分かったこと。
どうやら彼女は、“入居者(ぼく)”意外には見えないらしい。
僕が彼女と顔を合わせるのは、朝に郵便を取りに行く時ぐらいである。
しかし、その他の時間でも─ふと覗いてみると、彼女は必ずそこに居る。

ずっと─“そこ”で待ち続けている。

    ──もう届くことのないであろう、彼女にとって大切な“何か”を

34:本当にあった怖い名無し
06/04/20 18:54:23 mfStRfO/0
入居して数ヶ月、彼女との関係は相変わらず─であった。

─それに気が付いたのは偶然。

前日に降った雨が作った水たまり。
─泥にまみれた、クシャクシャの絵葉書に気が付いた。

拾い上げ伸ばして見ると、泥汚れの下には美しい森の写真。
表に返すと、見慣れた特徴的な丸い字で、妹の名前と旅行の報告。
泥だらけで読めないところも多いが、それでも妹の喜びが伝わってくる。

  ども~、兄よ、元*してます***
  私*今、学校をサボっ**達と屋久島に来*****
  凄いっ! こ*神様がいるよ! 絶対に**って!
  *の感動を、少**け兄にも分けて*げよ*。
  実物はもっ**っとずっと**! ぜひ見*べし!*
  た**は実家に*ってき*さい。お母さ**配*てるよ。
  私も**産を用意して待っ*て**るから。そ*じゃ♪

何てことないメッセージに、ふっ、と心が和む。
こんなちょっとした物でも─手紙というのは凄く嬉しいものだ。

                     ──それを、─こいつは、

「……何よ。文句ある」
睨み付けると、拗ねたような顔をして視線を逸らした。
─ああ、こいつはやっぱり、“霊”なのだ。これがコレの本質だ。

「……べ、別にいいじゃない、葉書の一枚ぐらい」

「どうせアンタはまた貰えるんでしょっ! 私は─私なんて、もう─っ!」

35:本当にあった怖い名無し
06/04/20 18:55:40 mfStRfO/0
「─当たり前だろ」
びく、と彼女の動きが止まり静かにになる。
それを無視し、郵便受けから名札を抜き取って、下半分を破り取る。
上半分だけ元に戻し、下半分は─細かく千切って泥水に捨てた。

「─あ、」
初めて見る表情。胸の奥が、じり、とする嫌な表情。
先程までの強気な─強がりな態度は消えて、代わりに現れたのは怯え。

だからどうした─許してやれと?
今の行為も、これから言う台詞も、彼女を傷付けると分かっていて─

「他人のだからって、手紙にこんなことする奴に─、」

どろどろくしゃくしゃの葉書を彼女の目線に突き付ける。

「そ、その─、ご……」

「──いったい誰が、手紙を送ってくれるって言うんだよ」




昼前から、また雨が降り出した。
今朝の新聞を取り忘れたことに気付いたが、面倒なので放置した。

翌朝、郵便受けに行くと、彼女の姿は無かった。
二日分の新聞だけ郵便受けに入っているのは、何だか妙な光景だった。

翌日も、その翌日も─彼女の姿は無かった。
─だからどうと言うのだ。そんなこと─僕には関係ない。

36:本当にあった怖い名無し
06/04/20 18:56:56 mfStRfO/0
さらに次の日─ちょっとした出来事。

新聞の中に、小さく破けている箇所を見つけた。
見出しではなく、記事中の小さな文字が一文字だけ抜けていた。
ふとデジャビュを感じるが、不確かな記憶はすぐに霧散した。

─翌日も、目立たない箇所が一文字だけ切り取られていた。
──また翌日も、やはり一文字分だけ、虫食い箇所があった。


そして─

次の日、新聞を取ろうとして、小さな “手紙” に気が付いた。
─郵便受けの名札を差し込む場所に、見落としそうな小さな三文字。



                       ご め ん

右下の隅、目立たないように─しかし、きっちりと揃えられた切り貼り。
それと一緒に、青い小さな野草の花が差し込まれていた。
足元を見ると同じ花が一輪だけ、誰かによって摘まれていた。

まるで送り主の性格をそのまま表したような、小さな謝罪の手紙。
それが、ここから離れられない彼女なりの、精一杯だと伝わってくる。

ふっ、と心が和む。
ちょうど、妹から届いたあの手紙を読んだときと同じ気持ち。


小さな花を丁寧に引き抜いて、部屋へと戻る。
ここ数日、郵便受けの所でずっと感じていた気配が、小さく身動いだ。

37:本当にあった怖い名無し
06/04/20 18:58:21 mfStRfO/0
小さな花を、妹からの葉書と一緒に写真立てに入れた。
泥だらけの屋久島の緑の前で、小さな花が、ひっそりと主張をした。


いざペンを取ってみると、すらすらと文字が生まれてくる。
面と向かっては話しにくいことも、文章にすると、どうにかなるものだ。

思ったよりも長くなってしまったそれを封筒に入れる。
直接に受け渡せば済むが、少し迷った後、切手を貼ることにした。
郵便として届く方が、ずっと嬉しいし、ずっと楽しい。そう思ったから。

宛先の名前は、少しだけ気取って書いてみた。
住所はしっかり書いてあるから、ちゃんと配送されるはずだ。

   ─宛先は、素直じゃないキミに

         ─差出人は、素直になれないボクより

実際に書いてみると、予想以上に気恥ずかしい。
しかし、受け取った彼女も恥ずかしがることを予想して、そのまま決行。
最後に、二人分の名前を書いた新しいネームプレートを入れた。



三日後、郵便受けに、二人分の名前が書かれた、新しい名札が入っていた。
それと一緒に、大きさがバラバラの、この前よりも少し長い手紙。


         紙 と へ゜ ン  よ こ せ


─次の手紙が待ち遠しくなって、急いで部屋に取りに帰った。

38:死に至る病
06/04/20 19:12:22 +ELglSrNO
「そう、虚数素子。つまりあらゆる場所に『存在しているかも知れない可能性』を持つ素子。それこそが霊体を形成する」
 
彼、玉葱教授が2年前に私に言ったセリフだった。
そして昨日、私の許に届いた手紙を改めて読み返す。
『我が悲願、達せり。』
 
狂人の戯言だ。
無視するのが良識的と言うものだろう。
しかし、どうにも気に掛かる。
それはおそらく2年前に続けられたあの言葉が未だ私の記憶に残っているからだ。
「…虚数素子を電子化して制御出来れば…
つまり!幽霊を
捕らえる事が出来るのだよ!!」
 
私は導かれるように手紙に書かれていた教授の研究所に向かう。
 
「よく来てくれたね。五年ぶりかな、運動場君?」
「ええ、玉葱教授。あなたが学会を追われて以来ですよ。で、わざわざ私を呼び出した用件はなんです?」
 
「君に私の研究を手伝ってもらいたいのだ」
「研究?妄想の間違いでは?」
 
だが教授は私の皮肉を悠然と無視し卓上の装置を指し示す。


39:死に至る病
06/04/20 19:13:48 +ELglSrNO
「虚素子荷電装置がついに完成したのだ!
すでに十分な臨床段階実験も済んでいる!
視てみるかね…?
我らがあれ程望み、求めたツンデ霊を!!」
 
私は自分の喉がゴクリとたてた音を聴いた。
 
「見たまえ、これらが全てツンデ霊だよ!」
数百はあるゲージが並んでいる。
 
「こ、これは…?」
「ふふ、それはついさっき捕らえたばかりでね。固体名、美和さんだ。
ま、いまいちツンは足りんがね」
「おぉ!こ、これは」
「さすがにお目が高い。幾多の猛者を萌え震あがらせた銅タンだよ」
「そ、そしてこっちには!」
「そう、伝説の300番!ミレレイだ!」
 
「す、すごい」
「ここにはあらゆるツンデ霊がいる。実義を問わず妹から姉、地縛から部屋憑き
同級生から先輩から
タクシー霊、そして魚類までだ!」
 
「このゲージには?」
からからと車を回すハムスターとゾンビ、あとよく分からない邪気をまとった女がいた、背中に範馬の刺繍が入っている。
 
「止したまえ、そこは黒歴史だ」
玉葱教授は顔を逸らしながら答えた。


40:死に至る病
06/04/20 19:15:19 +ELglSrNO
 
「とにかくだ、君が協力してくれるなら報酬も用意している。
…お狐さまをあげよう」
「あ、あのツンデレ最高位の狐神様を!?」
「そうだ。狐ミミからモフモフも思うままだよ、君」
「モフモフし放題!?」
 
「どうかね?色よい返事を聞かせてはくれないか?」 
メフィストテレスじみた教授の誘惑…
しかし私は振り切り毅然と答える。
 
「お断わりします」
 
「なぜ!?」
「教授、あなたは間違っている!
 
いつかツンデ霊に巡り合う、その日々を放置プレイが如くハァハァする
それこそがツンデ霊ハンターの神髄でしょう!」
 
「き、君!止めたまえ!そのレバーは…!」
ゲージ総解放とおぼしきレバーを迷いなく倒す。
 
「…そうか…君は生粋のMなんだな…」
解放されたツンデ霊の一群が迫る轟音が近づいている。
 
「さぁ、教授…間もなく彼女等はここに来ます。どうするか、お分りですね?」
「ああ、分かったよ。せめて最後ツンデ霊ハンターらしく…」
 
『ツンデ霊キタ――(゚∀゚)――!!』


41:本当にあった怖い名無し
06/04/20 19:19:54 Tu9M2DhO0
>>31->>37
GJ! すごいよかったまさにツンデ霊!
>>38->>40
GJ!

42:運動場整備部隊 ◆zR/LhJxu0Q
06/04/20 19:37:51 vDh5MeGt0
>>37
微妙な距離感を互いに探り合ってる雰囲気がとても良いです。王道っスね。

>>40
おヴァカハンターキタ――(゚∀゚)――!!(褒め言葉)

43:本当にあった怖い名無し
06/04/20 20:14:13 w7HyLC0qO
新スレ早々萌えレベル・文学的レベル・ギャグレベル高いのそれぞれキタコレ!GJ!

お狐様ってチョコ食べてた神様だっけ?

44:本当にあった怖い名無し
06/04/20 22:32:36 +tUPfXuBO
>>26
もしかして前々スレあたりで
ニートと守護霊の話書いてた方ですか?
超好きです(*´Д`)

45:本当にあった怖い名無し
06/04/20 23:07:18 +E98IPvJ0
>>44
リアルな告白キタ━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!

46:本当にあった怖い名無し
06/04/21 00:12:34 P8jZ6+n80
>>44-45
いやいや、気持ちはよーくわかるぞ

47:本当にあった怖い名無し
06/04/21 01:10:35 fphFyr9G0
>>44
ニートと守護霊の話ってどれ?

48:本当にあった怖い名無し
06/04/21 01:20:57 4RJ/OYDD0
2人目の『俺と守護霊』ってやつだなーきっと。

49:本当にあった怖い名無し
06/04/21 01:32:34 gADCcUET0
もう4スレ目か、結構早いなあ。
作者は総数でどのくらいいるのかなー?
コテなしの人でも大体作風でわかるようになってきた。


50:本当にあった怖い名無し
06/04/21 02:13:12 N7hNkJ9wO
>>49
構成力ならたまねぎツンデレさん
完成度なら運動場整備隊さん
独創性なら範馬の中の人さん
萌えなら三人目の狐神の人
センスなら守護霊の人
あとは5人くらいの王道派 作者さん達かな?


51:本当にあった怖い名無し
06/04/21 02:25:49 1XpPrh2S0
みんなスゲーよなー。
書いてみて分かったけど
短くまとめるのってホント難しい。
カラダも心も目一杯だよ~。

52:本当にあった怖い名無し
06/04/21 02:31:48 txcAlznBO
うp!うp!

53:本当にあった怖い名無し
06/04/21 02:58:21 qXHZba3q0


「でも、どうやって驚かせようかな…」
 あたしは内心心底悩んでいた。
 相手は超強者だ、普通にゆうれいが居てもまったく驚かない。
 どころか、笑い飛ばすだけの胆力がある。 これは普通の驚かし方ではどうも成らない。
 何か変わった方法でも考えないとダメなのかなぁ…
 悩む…すっごいなやんだ。
 けど、やっぱりなかなか答えは出なかった。 結局辿り着いた結論は……
「王道だよね。 けど、王道って言ってもアレだよ。
 効果があるから王道って言うんだよね」
 ポルターガイスト。
 うん、アレしかない。
 あたしも生きていた頃は結構悩まされた、アレ。
 それを、この青年Aにやってみようかと思う。
「よぉし…思い立ったが吉日!」
 早速あたしは、今まで薄らいでた体を一気に気密化してあの男の前に立ちふさがることにした。
 ま、コレが所謂。『急に目の前に女性が~~』って奴なんだけど、アイツには通じそうもないんだよね。
 幽霊さんには慣れてるみたいだし。

54:本当にあった怖い名無し
06/04/21 02:59:01 qXHZba3q0
「ん……?」
「ひっひっひ~、う~ら~め~し~……ひきゃ!?」
 姿を現し、あの男の前に立ちふさがる。
 うん、たった。
 けど、あの男の姿が、前とは違った。
 なんて言うか、素っ裸だった。
「風呂あがりぃ!?」
 そう、たぶんアイツは風呂上がりだ。
 バスタオルで頭を吹いている、しかも一人暮らし故かすっぽんぽん。
「へ、へんたいっ!」
 なんて言えばいいのかもよく分からず、とりあえずあたしは叫んだ。
 そぉかそぉか…あんなのがついてるんだ。 初めて見た、オトナバージョン。
 けど、女の子にあんなのを見せるなんて変態だよ変態!
「こ、この恨み晴らさずおくべききゃ!」
 言うなりなんなり、とりあえず姿を消す。
 あ、あんな姿の男の前で冷静にポルターガイストなんて起こせるもんか!
「なんだ、あの幽霊は。 ホント、俺の知ってる今までの霊とは違うな。
 裸、しかも相手の裸を恥ずかしがる幽霊なんて初耳だぞ…」
 う、うるさいやい!
 意表をつかれただけなんだから!
 でなきゃ、幽霊のあたしがアンタなんかに驚かされるもんか!
 とりあえず、心の中で叫んで消える。
 そだよ、く~る になる必要があるんだから。

55:本当にあった怖い名無し
06/04/21 03:00:10 qXHZba3q0
 夜、草木も眠る深夜二時。 レッツ丑三つ時。
 よし、未だ、今がチャンスだ。
「うふふ、うふふふ……」
 ちょっと含み笑いをしつつ……っていっても、今は姿を消してるから
 そんな見えるもんじゃないけど、ま、気分の問題。
 あたしは、姿を消したままアイツの部屋にある妙な女の子のお人形さん手に取った。
 …っと、そこの君! 幽霊なのになんで『手に取れるか』って突っ込み入れたよね!?
 フン、バカにするなぁ~! 確かに普段普通にしてる幽霊には物とか取れないけど
 ちょっと意識を集中すれば、そんなに重いモノでもない限り動かすことが出来るんだぞ!
 君の部屋だって、たまに何も動かしてないのに音がしたりとか、急に棚から物が堕ちたりとかあるでしょ?
 そういうのも幽霊さんの仕業なんだぞ!
 え? それにしては姿が見えないって?
 ん~、みんながみんな、あたしみたいにく~るって言う訳でもないし
 恥ずかしがり屋さんなのかな?
 あと、ちょっと話がずれちゃったよ。
 とにかく、この男に対する報復をしなければ。

 大作戦其の一:音で起こして寝不足大作戦。
 内容:寝てるところを大きな音で安眠妨害。 起こす。

 そうと決まればレッツ大作戦。

56:本当にあった怖い名無し
06/04/21 03:01:06 qXHZba3q0
「よいしょっと…」
 音を大きく出すには、やっぱり何かを割ったりするのが丁度イイ。
 いや、最初流石にそれもやり過ぎかなぁっておもったんだけど
 さっきの裸を見られた時のアイツの反応を考えてみるに、あいつは多分女の子慣れしてる。
 だってさ、普通女の子に裸見られたら焦るよね?
 けど、アイツは平然としてた。 多分、何人も女の子を泣かせてきたに違いない。
 そんな女の子に変わって正義の鉄槌だ。 やり過ぎなんて事は全くないはず。
 よし、音の大きく出しそうな物…んと………
 見回すと、アイツの頭の上に大きな硝子製のお皿があった…
「よし、あれだ……」
 アレを落として割って大きな音→起きる→怖くて寝れない→寝不足。
 よし、完璧な公式だ。
「ふにゅ…以外に重い…」
 なんでお皿、しかも硝子製のお皿って見た目に反して重いんだよね、何でだろう?
 重いからかなぁ……ついぞ……

 つるり

 落として。

 がしゃーん!

 割っちゃった。 ま、いい、かな? えと、大きな音もたったし
 アイツもコレで…
 と、アイツの顔を見てみる…起きてない、いや、それどころか
 ……どうやらあたしは大変なことをしてしまったようだ。
 アイツの顔面に、重い重い硝子製のお皿を落としてしまった。

57:本当にあった怖い名無し
06/04/21 03:01:59 qXHZba3q0
「うわわ、ど、どうしよう!」
 あ、あんな重いお皿がおちちゃったんだ。 一回の人間が無事な訳がない。
 ほら、は、鼻血も出てるし。 それでいて目を覚まさないし。
 コレはある意味危険な状態?
 そ、そだ、ま、まずは救急車!
 慌ててアイツの携帯電話を手に、110番に電話…
「って違うよ! 救急は119番!」
 改めてかけ直そうとして
 ……ダメだ、無理だ。
 こんな機械を通してなんて、あたし、幽霊の声なんて通じない。
 どうすれば…コイツ、目を覚まして起きてくれるんだろう。
 とりあえず濡れ布巾でも用意して顔につけて冷やしてあげよう。
 ちょっとは有効なのかも知れない。

 早速濡れ布巾を用意して、アイツの顔面に乗せてあげた。
 端から見ると、あたしが昔箱に入ってた時の状況に近い…
「――ってだめじゃん! ホントに死んじゃうよ!」
 濡れ布巾を顔面に乗せて息も出来なくなったら、呪ったり驚かす事なんて全然出来ないよ!
 慌てて額のみに乗せた。
 あとはどうしよう。
 そだ、目を覚ましてもコイツが元気じゃなきゃ、驚かしても意味無いよね?
 元気を付けるには、美味しくて消化に良いモノを…そだ、お粥でも用意しておこう。
「お粥…お粥…水を多めに御飯をたけばいいんだっけ?」
 炊飯器の中にテキトウにお米をぶち込んで、水をじゃーっと入れた。
 スイッチオン。
 ん~、便利な物があるんだねぇ、これでお粥もすぐ出来るよ。
 あとは……そだ。
 見守ってでもあげるか、容態が危なくなったりしたらすぐに対応出来るように。
 アイツの別途の横にイスでも用意して…さて、暫く見守ってあげるか。
 う…見守るって言うのも変だけど、あとで驚かす為だもんね。

58:本当にあった怖い名無し
06/04/21 03:03:07 qXHZba3q0
「ぅ……」
 ちょっとうとうとしてたのかな…
 多分寝ちゃってた、目を覚ましたら……
 アイツの顔がすぐ目に飛び込んできた。 どうやら無事だったみたいだ。
「お前、何俺の横で寝むってんだ? にしても…頭痛ぇ…」
 どうやら、昨晩あったことは覚えてないみたいだ。
 とすると…
「なんだ、お前俺の横でぐっすり寝て、幽霊のクセにそんな趣味でもあるのか?」
 ……
 そか、コイツ覚えてないって事は…あたしが必死だったことも知らないのか。
 当たり前か。 自分の顔面にお皿が直撃したクセに。
「あ…そういえば、このお粥」
 気付くと、昨日一生懸命作ったお粥がからになってた。
「幽霊のクセに御飯食べるのか? 水加減はイマイチだったけど…な」
 ヘヘ、っと微笑するアイツ。
「べ、べつにアンタの為に造ったワケじゃないんだからっ!
 全部、あとであたしがアンタを呪ったり脅かしたりする為に作ったんだからね!」
 慌てて、思ってもいない言葉を発してあたしは姿を消した。
 ……こんなはずじゃないのに。
「ああ! ちょっと待てよ! お前か、この皿割ったのは! これ高いんだぞ――!」
 …………ん~、少しは驚かすことに成功した……のかな?

 ところでどうしよう。
 何回いい方法無いかなぁ、結構離れしてるようなコイツを驚かす方法。
 そこの君、何かいい方法あったら教えてくれない?
 取って置きの、どんな幽霊慣れしてる人間でも驚くような方法!

59:本当にあった怖い名無し
06/04/21 03:04:50 qXHZba3q0
はいはい、空気の読めない俺が 再び書き込みに来ましたよってに。
前スレで書いた見習い幽霊の続編とでも思ってください。
なんだか、思いついちゃったので一気に書き上げてしまいました。
どう見てもツンデレにしては微妙なラインです。 本当にありがとうございました。

んじゃ、寝る

60:本当にあった怖い名無し
06/04/21 10:37:54 zHJwfevA0
>>59
いいよーGJ!

そして失礼ながら

ある時、イエスが弟子たちを連れて街中を闊歩していると
一人のツンデ霊がハンター達にはやしたてられてられていた。
なぜこんなことをしているのかと、弟子がハンターの一人に問うと、
「この女はツンデ霊だからだ」と答えた。
それを聞いたイエスはハンターにこう言った。「ならばしかたがない。続けなさい」
そしてこう続けた。
「ただし、一度も罪を犯したことのない正しき者だけこのツンデ霊をはやしたてなさい」
ハンター達は、とまどい、やがて一人また一人とその場を離れ
はやしたてているのはイエスただ一人だけとなった。

61:ポン介 ◆ZMp2Jv9w5o
06/04/21 10:44:18 zHJwfevA0
>>44
残念ながら、違いますorz
ハムスターとかの書いてました・・・黒歴史ですがねっw

コピペを改造したものです。すいません

62:本当にあった怖い名無し
06/04/21 11:01:21 zHJwfevA0
君が死んでからもう1年。
君は今も僕を見守ってくれているのかな?
君は、僕の生まれて初めて出来た彼女だった。
すごく嬉しくて、幸せだったなあ。
突然、白血病だって医者に宣告されてから、君は病室で日に日に弱っていった。
「毎日見舞になんてこないでよっ」って照れ怒る君を見て、僕はいつも泣いていたんだ。
君の為に、僕の小汚いノートパソコンをあげたら、君はせっかくだからってもらってくれたよね。
ネットをするようになった君がいつも見ていたサイト、それが「2チャンネル」だった。
ある日君はいつものように、笑いながら言った。
「ほら、見なさいよ今日も2ゲット出来たよ。」
「あまりパソコンばっかいじってると身体に障るよ」
なんて僕が注意すると、
「なっなによ。あんたがもってきたから、仕方なく・・・これ見てよ。
ほら、この3のひと、2げっとぉ!なんて言っちゃってさぁ、ふふ」
僕は黙っていた。君がすごく楽しそうで、僕は何も言えなかった。
「ほらみなさい、この3のひと、変な絵文字使ってくやしぃ~!だって。
かわいい。 ふふ。」
僕はまだ黙っていた。笑う君を見て、どうしようもなく悲しくなった。
「憶えててくれるかしら」 君がふと言った。
「…この3のひと、私がいなくなっても、あの時変な奴に2をとられたんだよなー
なんて、憶えててくれないかなあ……無理かな……憶えてて、ほしいなぁ……」
それから数ヶ月後、君は家族と僕に見守れながら息を引き取った。

君はもうこの世に居ない、なのに僕は今F5を連続でクリックしている。
君の事を、3のひとが忘れないように、いつまでも、いつまでも忘れないように。
君の事を、君の名前を、僕はいつまでも、いつまでも忘れない。
天国にいる君へあふれる想いをこめて、今ここに刻み込む

2get

『・・・3じゃない。遅いのよっ』「ごめん・・・」
天国にはまだ、安心していけないそうだ。・・・だから僕は、いつも3ゲット。

63:本当にあった怖い名無し
06/04/21 11:22:31 MA/XepXd0
>>44
にーとのひとはハンターになって幸せに暮らしてるの
新スレのレベルが高いからじゃましちゃいけないって思ってるの

64:真の愛の詩
06/04/21 20:27:40 N7hNkJ9wO
 
俺は孤高のツンデ霊ハンター。
今日もツンデ霊を求めて深夜の盛り場を彷徨っている。
 
薄暗い路地裏に女の子発見!ツンデ霊にエンカウントか?ひゃっほう!
 
「あ?何見てんだよ、おっさん」
間違いない!
 
ツンデ霊キタ――(゚∀゚)――!!
 
「んあ?どしたぁよジュン?」
仲間らしき女の子達がぞろぞろ出てきた。
「なんかキモいオヤジがいんだよ。おい!見てんじゃねーよ!」
 
ツン、キタ――(゚∀゚)――!!


65:真の愛の詩
06/04/21 20:28:54 N7hNkJ9wO
 
「なめてんのかよぉ、えぇ?」
「キモいだよ、ヤッちまおぜこいつ」
 
ぐるりと囲まれる。
この状況は…
 
ハ、ハーレムキタ――(゚∀゚)――!!
 
「なんとか言えよ、コラ」
ゲシ!
「ムカつくんだよ、テメェよう」
ゲシ!ゲシ!ゲシ!
 
蹴りの嵐
す、すごいツンキタ――(゚∀゚)――!!
 
「おら、財布みせろコラ」
「………なんだよ51円って」
「マジかよ…なんか可哀相になってきたな」
「おい、もう帰っていいよ…」
 
デレキタ――(゚∀゚)――!!


66:本当にあった怖い名無し
06/04/21 21:10:46 oHYAtWw/0
孤高だぜ...........

67:本当にあった怖い名無し
06/04/21 21:14:05 H/l7FhRo0
しかしそれはオヤジ狩りだ……

68:本当にあった怖い名無し
06/04/21 21:44:12 RdoylaSr0
しかし、本人は幸せだとおもってんだろうなぁ…

69:本当にあった怖い名無し
06/04/21 22:11:38 4RJ/OYDD0
この世界にツンとデレがある限り俺たちは無敵だ!!

70:本当にあった怖い名無し
06/04/21 22:55:55 6S8XhE03O
誰かまともなの書け!

71:本当にあった怖い名無し
06/04/22 00:10:25 Ic+276ZdO
>>70
君が書いたらどうかね?

72:本当にあった怖い名無し
06/04/22 01:57:48 /SFTT7eR0
6S8XhE03O 「誰かまともなの書け!」
Ic+276ZdO 「君が書いたらどうかね?」

6S8XhE03O 「な、何でわたしが書かなきゃいけないのよ!」
Ic+276ZdO 「なら大人しく待ちたまえ」

6S8XhE03O 「さ、指図しないでよね!」
Ic+276ZdO 「そんな口を利いていいのかい? 僕の父の奥さんのひとり息子はスーパーハッカーなんだ。 後悔しても知らないよ?」

6S8XhE03O 「何をするつもりなの!? …や、やめなさい!」
Ic+276ZdO 「…もう遅い」

6S8XhE03O 「お願い! やめて! そんな事されたら…わたし…わたし…!」
Ic+276ZdO 「さぁ、情報が入ってきた。ふむ…君の名前、住所、年れ……。……!!」

6S8XhE03O 「………」
Ic+276ZdO 「………」

73:本当にあった怖い名無し
06/04/22 01:58:35 /SFTT7eR0
6S8XhE03O 「………」
Ic+276ZdO 「…済まない」

6S8XhE03O 「………」
Ic+276ZdO 「知らなかったんだ…君が…。君がもう亡くなっていたなんて」

6S8XhE03O 「…わたしはただ、もっと物語を読みたかっただけなの…」
Ic+276ZdO 「…本当に、済まなかった」

6S8XhE03O 「もう良いわ…。もう逝かなくちゃ…。ここにはいられない…」
Ic+276ZdO 「………」

6S8XhE03O 「…サヨナラ。でも忘れないでね、天国にも物語を待っている人がいるって事…」
Ic+276ZdO 「……ああ」

Ic+276ZdO 「…約束するよ。君のために新しい物語を紡ぐ事を」

74:本当にあった怖い名無し
06/04/22 02:27:50 2CDP/Qo90
なんかとってもいい話にナッタ━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!

75:本当にあった怖い名無し
06/04/22 03:29:33 vnmkfgOE0
>>62
コピペ?

76:本当にあった怖い名無し
06/04/22 03:39:34 BUWmu2ro0
>>75
コピペの改変のようですな

77:本当にあった怖い名無し
06/04/22 10:39:23 aY7Qo5X80
「やあ。いい天気だね」
「最悪だわ」
「もう春だからね」
「そうね…」
「大丈夫?」
「ちょっと。泥だらけの手でさわらないで」
「あはは。嫌われたなあ」
「あたりまえでしょ。ごろごろ転がされたこと、忘れてないからね」
「しかたないよ。僕はきみと遊びたかったんだ」
「友達いないのね」
「きついなあ」
「はあ…」
「つらそうだね」
「…そりゃつらいわよ…」
「今年は、もう無理だけど。また来年、作ってもいいかな」
「わたしのこの姿見て、よく言えるわね…」
「だめかな」
「…………」
「ごめん、わかったよ。これきりにする」
「…バケツ」
「え?」
「バケツじゃなくて、ちゃんと、した帽子。用意、しときなさいよ…」
「いいの?」
「…あかいのが…いいな……てぶくろも……」
「うん、わかった」
「…………」
「じゃあ、またね」

ごめんね。ほんとは約束はできない。
ずっと病院で過ごしてきたぼくが、退院できたわけは、だいたいわかってるから。
でも、こんどの冬が楽しみなんだ。


78:本当にあった怖い名無し
06/04/22 11:44:05 IhaUG2wQ0
雪だるま?

でもほんのり切なくていいっ!GJ!

79:本当にあった怖い名無し
06/04/22 17:14:02 IxjH4GxQ0
雪だるまたんGJ!

ところで梢たんとお狐様って同じ人が書いてる?
間違ってたらスマソ

80:どん兵衛
06/04/22 20:29:09 QrrryoVq0
彼女が死んだのは、去年の夏のことだ。そして今年も、その夏が来る。


【彼女が拾った、落し物】


俺はある場所に向かって車を走らせていた。

―あれは去年の夏のこと。彼女と、ある海へ行った。海水は透き通っていて、砂浜は白くて、しかしそんな絶好の場所だと言うのに、人の姿はない。所謂、穴場、と言うやつだ。
子供の頃、親父に連れてこられてから、俺はその海が気に入っていた。だから、自分に最も愛すべき存在が出来た時に一緒に来ようと思っていた。そうして一緒に行ったのが、由衣だった。
そこで俺たちは約束を交わしたんだ。来年の夏も、一緒に来よう、と。
だが――あの海から戻って直ぐ、由衣は交通事故で亡くなった。約束は、いとも簡単に破られたのだ。

しかしまぁ、なんだ。男らしくもなく俺は未練タラタラで、加害者の手によって破られたその約束をただの自己満足の為に果たそうと、こうして車を走らせているわけだ。
少し家を出る時間が遅かったか、海には夕日が顔を出している。それはもう綺麗に輝いていて、去年の夏、彼女と一緒に見た夕日を髣髴とさせた。

夕日を何度か横目で捉えつつ、車を走らせること十分とちょっと。漸く、去年車を止めていた場所が見えてきた。
その時から、不思議な感じがしていた。まるで、助手席に由衣が乗っているような感じがしていて、そして、去年と全く同じ風景を見ている気がして。時間は違う筈なのだが、何故だろうか。まぁ不思議がってても仕様がない。
俺は駐車出来るスペースまで車を走らせ、そしてエンジンを切った。やはり不思議な感覚に囚われつつ、ゆっくりと車を降りて砂浜を見る。
何も変わっちゃいない。そりゃあ、一年しか経ってないんだから、そうか。本来なら、今日隣に居るのは由衣の筈なのだが、隣に存在するのは、ただの空虚。ぽっかりと穴を開けられ、存在を失った俺の隣の空間がただ、泣いているようにしか見えなかった。
いやいや待て、センチなことを考える為に来たわけじゃない。俺は頭の中でそう呟いてかぶりを振って、歩き出す。砂浜を踏みしめ、一歩、また一歩、と歩くたびに、柔らかな砂に靴底が飲み込まれる。いっそこのままここで溶けてしまえたら、とそう思ったが、
いやいや待て、そんなマイナスな事を考える為に来た訳じゃない、と今度はそう呟いて、軽く自分の頬を叩いた。

81:どん兵衛
06/04/22 20:30:02 QrrryoVq0
波の近くまで行き足を止め、ふとあることを思い出す。
「あぁ…確か、そうだ…」
この浜辺で、指輪を落とした。由衣にあげる為に用意した、綺麗な指輪。驚かせるつもりで隠していたのだが、何時の間にか落としてしまっていて、いい物をあげよう、とどーんと胸はってポケットを探ったときには、もうなかった。だが、
そんな情けないこと彼女には言えなくて、代わりにキスをあげた。それで彼女は嬉しそうに、
でも恥ずかしそうに笑っていた。その笑みが、今でも忘れられない。忘れられるわけがない。
今あの指輪は何処へ行っているのやら。砂に埋もれているか、はたまた波に乗って何処か遠くの国に流れ着いて、それを可愛い女の子か誰かが拾ったか。――って、んなロマンチックなことあるわけないか。
俺は一人苦笑した。傍から見ていたら、ただの精神異常者だ。危険人物だ。俺なら絶対近付かない。
「はーあ…俺、ただの馬鹿じゃん」
思考を一巡りさせたあと、溜息吐きつつ呟いた。――と、そのときだ。俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。微かに、だが、確かに。
「…ト…」
「……今、聞こえた」
「ユ…ウト」
――由衣。
頭の中で、誰かが囁いた。
「由衣…由衣、なのか!?」
「相変わらず、貧相な背中ね」
この言い草は、間違いなく由衣。声は俺の背後から聞こえてきた。だから振り向こうとしたんだが、声だけの由衣が、俺に制止を掛けた。
「振り向かないで。振り向いたら、殺すわ」
「いきなりかよ…物騒だなぁ…振り向くぞ」
「こ ろ「判りました」
どうやら本気なようなので、素直に背を向けたままでいることにした。殺されるのはマズイ。何がマズイって、この由衣という俺の彼女、かなりSだから、殺し方が惨殺そうだからだ。綺麗な浜辺を、俺みたいな奴の血で汚したくはない!!――って、自分で思って泣けてきたorz

82:どん兵衛
06/04/22 20:30:54 QrrryoVq0
まぁそんなことは置いといて、由衣は呆れたように溜息を吐いた。
「まるで変わりなし、ね」
「うっせ。折角約束守りに来てやったってのに」
「私だって、超格好いい天使様に頼んで、ここまで運んで貰ったのよ。約束の為に」
前の台詞は嘘臭いとしてスルーするが、彼女も約束を果たしに来てくれたのか。と言うか、覚えていてくれたのか――嬉しい。涙が出そうだ。いや、これもう出てる。
俺は涙を拭いつつ、言葉を発する。
「えぐッ…お前も、うッ…約束の為に?」
「気持ちわるッ!泣いてんの?」
「な、泣いてなんかいねぇやい!」
「その台詞もまた気持ち悪いわね。あんた、アニメオタクとかになってないでしょうね?」
「なってねーよ。アニオタなんて。俺はネトゲオタだ」
「結局オタクかよ」
一通りボケツッコミを交わし終えると、これまた深い呆れた溜息を吐く彼女。何もそこまでふっかーいため息吐かなくても。泣きそう。いや、泣いてんのか。
「話戻すけど、そうそう、約束の為にわざわざ出てきてやったのよ」
「わざわざって何だよ。漢字使えよ。態々、くらい漢字にしたって…」
「これ以上ボケとツッコミ交わしたところで話進まないでしょうが!ていうか、他に投下する職人さんに迷惑掛かるでしょ!?ちょ、コイツ長すぎね?とか言われるでしょ!?」
「て言ってるお前の台詞が一番長いよ」
言えば、由衣はむぐぐ、と押し黙った。よし、俺の勝ちだ。これで、えっと…ボケツッコミ勝敗は百戦中俺が九十敗で…って結局負けてるじゃねーか。
「…もういい?地の文にまでツッコミは入れないし、本当終りそうにないから言うわよ」
「ごめん、どうぞ。スペースまだあるから」
「はぁ…。ちゃんと約束は覚えてたの。忘れるわけがないでしょ、あんなことされて」
あんなこと――あぁ、あれ、か。
「キス?」
「ばッ…何ッ…あーそうですよ、それですよ、それ、キス、口付け、接吻!どれだけ恥ずかしかったか!」

83:どん兵衛
06/04/22 20:31:51 QrrryoVq0
「でも、笑ってた。それが、俺は嬉しかった。今でも忘れてないぞ、お前の笑顔」
「あんたは何恥ずかしいこと平然と…!」
「大好きだった―否、今でも大好きだ、愛してる。本当は、今日ここに来るときお前も隣に居るはずだった。なのに…なのにッ…」
止まりかけていた涙が、また溢れ出した。見っとも無い。そう思うが、どれだけ拭っても涙は溢れ出るばかりで止まってくれやしない。
さっきはふざけていたけれど、一言一言を聞く度、彼女の笑顔が浮かんでいたんだ。笑顔だけじゃない、喜怒哀楽、全ての感情が浮かんでいた。一緒に居た時に見せてくれた、全部の感情。今だって、背後でどんな顔しながら言ってるのか想像すると、それだけ嬉しかった。
そう嬉しい――でも、涙が止まらない。これは、悲しくて。
「俺は、まだ一緒に居たかった…一緒にまた、この浜辺で海見て、夕日…見て、そんで…ッ」
「今、一緒に見れてるじゃない。この綺麗な夕日」
「でもお前はッ!お前は隣にいない!抱き締められない、触れない見れない!それでどうやって…どうやって一緒に見てるって思えるんだよ…!」
言い終えると、頭に鈍い衝撃が走った。何かで頭を殴られたようだ。しかし痛い。シリアスな場面が台無しだ。
「私はねぇ、あんたのそう言うウジウジしたところが嫌いなの!私は一緒に見てると思ってるわ!?だってそうでしょ?私は今、ここに居るんだもの。姿は見せられないけど、あんたの後ろに、あたしは確かにいるの!それとも何?私が…私が幽霊ってだけで
存在を否定するの!?やめてよね、そんな下らないこと。
んなのはね、オカルト否定者のところにでも行っていいなさいよ!」
(いや、もう既にここオカ板で、実際そう言う板立ってるし――と言うツッコミは、シリアスなので喉の奥に引っ込めた。)
確かに、由衣は後ろに居る。気配を感じる。だからきっと居るんだ。でも…それだけじゃ足りない。見たい、彼女の笑顔を、感情を。

84:どん兵衛
06/04/22 20:32:39 QrrryoVq0
「振り向いちゃダメか?」
「ダメ。振り向いたら、私は消えるわ。だから、お願い、振り向かないで。私もまだ、あんたと一緒にいたいんだから」
「由衣…」
「勘違いしないでよね!別に、私はいいのよ、私は。ただ、あんたの背中がまだ一緒にいたいよ~って言ってるから、だからそう言ってあげただけよ!」
そう言う彼女の動きや、表情が、想像出来た。そうしたら、なんでか笑いが込み上げて来て、俺はぷ、と噴出した。
変わっちゃない。この浜辺も、夕日も、俺も、彼女も。何も、何一つ、変わっちゃ居ない。そして由衣は今、俺の後ろに居る。俺と一緒に後ろで夕日を見てる、きっと、顔を赤くしながら。
俺は、自分で飲み込めていたと思っていた感情を、飲み込めていなかったんだ。由衣が現れて初めて判った。俺は由衣の死を否定したかった。飲み込みたくなかった。心のどこかで、そう思っていたんだ。でも――でも、
今由衣はそれを飲み込ませてくれた。あまりにもリアルな、感情を現してくれて。
「な、由衣」
「…何よ」
「俺さ、実は去年ここに来たとき、お前に渡したいものがあったんだ。でもさー俺ってお茶目だからなくしちまってさ、そんで…渡しそびれた。ごめん」
「はぁ、あっきれた。そんなんじゃ、この先彼女出来そうにもないわね」
笑いを含ませて、彼女は言った。それに釣られて、俺も笑った。何をなくしたのか、何を渡そうとしていたかも、もう言うつもりだった。だけれど、その前に彼女が口を開く。
「さぁて、夕日はまだ見てたいけど、もうあんたの気持ちの悪い背中見てるのも嫌になってきたし帰ろうかな」
「なんでだよ!まだ一緒に居てくれよ!」
言いつつ振り向こうとすると、また頭に鈍い痛みが走った。俺はそのまま頭を抱えて蹲り、ぶるぶると震え出す。

85:どん兵衛
06/04/22 20:33:42 QrrryoVq0
「ごごご、ごめんなさい、もう殴らないで、本当記憶が…あ、蝶々が見える」
「地獄に突き落としてやろうかしら…。とにかく、そろそろ戻らなきゃいけないのよ、こっちにも色々と幽霊の事情ってもんがあってね」
「幽霊の事情なんて知るか。俺は…まだ一緒に居たいんだ」
「我侭ね。自己中ね。エゴイズムね。馬鹿ね、アホね、クズね。どうしても帰らなきゃいけないのよ。こっちに長い時間留まってるとね、色々と問題が起きるから。でもね、ユウト。一つ、ご褒美あげる」
「鈍器ならいらねぇぞ」
「本当、呪ってやろうかしら…。―私が、いいよ、って言ったら振り向いて。それまで、振り向いちゃダメだからね」
本当に、帰るのか。帰していいのか、俺。もう会えないかも、声聞けないかもしれないんだぞ。いいのか?本当に、それで。何か、ないのか、何か――!
俺は蹲ったままの姿勢で、考える。幽霊をこの世に留めるなんていう、素晴らしい能力は、残念ながら普通の男の俺にはない。だが、何かきっとまた会う方法はある。今帰しても、きっと何時か今度――そうだ。
「判った、お前がいいよって言うまで振り向かない。だから、一つだけ――約束してくれ」
「……また約束、ね。破っても知らないわよ」
「破るわけない。俺の知ってる由衣は、簡単に約束破るような女じゃない。今だって、こうして約束守って、一緒にここに立っていてくれたじゃないか!だから、聞けよ、一回しか言わないぞ!来年の夏…また来る。また一緒に夕日見ような!」

86:どん兵衛
06/04/22 20:35:25 QrrryoVq0
由衣の足音が遠ざかっていく。約束出来ないってことなのか?そんなの嫌だ!約束してくれたっていいじゃないか!例え守れなくても、せめて―せめて今だけでも!
「由衣!!」
『いいよ』
「えッ…?由衣…?」
足音が消えた。気配も、消えた。ただ残るのは、波の音と、カモメが鳴き、飛び去る音。他に何も気配を感じない。
「それって…なぁ、由衣…。お前、さっき言ったよな、いいよって言うまで振り向かいないで、って。それってさ…振り向くからな!」
声を掛けてから振り向いたが、やはりそこには誰も居なかった。だが、気付け、と言わんばかりに夕日を浴びて光る塊が、俺の目に入った。
「…これ」
歩み寄って手に取ったそれは、間違いなく、俺があのとき―去年の夏、この浜で落としたであろう指輪だった。そして、指輪の近くに、指で書いたと思われる文字があった。
『いいよ やくそくする』
文字を確認すると、その文章は消え、今度は新しく違う文章が浮き上がってきた。
『こんどは すがたをみせてあげるから』
「――由衣ッ…」
やっぱり、さっきの「いいよ」は、これだったのか。振り向いていいよ、と、いいよ、約束する、の意味があったんだ。あの馬鹿め…
泣けることしてくれる。こんなことで、俺が泣くとでも…泣くとでも…。
俺は、由衣が置いていった指輪を強く握り締めて、涙していた。ぽたぽたと頬を伝って雫が落ち、砂に吸い込まれていく。
ごめん、今回も負けたよ。ボケツッコミ勝敗百一戦中、九十一敗が、俺に与えられたよ。有難う、由衣、また――また来るから。
気付いて目を開いたとき、文字はまた変わっていた。
『やっぱ なきがお不細工』
なんでそこだけ漢字でしかも達筆なんだ―!!!

俺はまた車を走らせていた。そう、去年の夏、約束した通り、俺はあの浜辺へ向かっている。時刻は去年とほぼ同じ時間。きっと、居てくれるはずだ。
俺は気をつけながらも、少々スピードを出して、浜辺に向かい、駐車出来るスペースに車を止め、そして下りた。
そして、浜辺を見た。浜辺に、彼女の姿は――――――。



「来るのが遅ぉぉぉぉい!!」
あった。そして、俺は彼女の飛び蹴りを喰らった。

87:どん兵衛
06/04/22 20:38:28 QrrryoVq0
相変わらず、短く纏められなくてすまん。前スレで二本書かせて貰って、今回ので
三本目になるが、ここから先、投下するのにコテ使うのはやめることにする。普通の名無しに戻るよ。
今まで読んでくれた人や、あまつさへGJくれた人、本当に有難う。楽しかった。
これからは専ら読み専になると思うが、このスレには来る。最高だ。
文章書くのが純粋に楽しめるスレだな、ここは。皆有難う。それじゃあ、また今度。

あーでも、なんかネタあったらまた書(ry

88:本当にあった怖い名無し
06/04/22 23:15:41 8aUelIpHO
どーんべぇぇぅぁぅぇぇああ!












gj

89:本当にあった怖い名無し
06/04/23 01:17:59 iF+o5B6V0
きゅりりりょぉぉおお!!! って



とりあえず改行してくれないと読む気しない

90:本当にあった怖い名無し
06/04/23 01:44:27 MffDJUCYO
とか言いつつ読んでるであろう>>89はツンデレ

91:本当にあった怖い名無し
06/04/23 02:59:31 MffDJUCYO
ツンデ霊スレにありがちなこと

引っ越すと「出ていけ」

ヒロインが交通事故

何故か突然ゴングがなる

92:本当にあった怖い名無し
06/04/23 09:55:55 FIdFDI2c0
主人公は霊視が初期装備

祟りの心配はしなくていい

何故か突然ボコられる心配はある

それ霊じゃなくていい

93:本当にあった怖い名無し
06/04/23 13:02:47 TPBzJwZ10
はい、書き辛くなった所で次の方どうぞ

94:本当にあった怖い名無し
06/04/23 16:25:21 YG1ExiFF0
「・・・なによ、どうせあんただってわたしのこと忘れちゃってるんでしょ?
わかってるんだから、みんなそうだもの、くだらないデマ信じちゃって・・・
でもまあ私ももう慣れっこだしw」

きょとんとマヌケ面してるあいつに無理やり笑顔をつくってみせる
(やめときゃよかったな)といつもの後悔
なつかしい顔を久し振りに見つけたもので、つい舞い上がって声をかけてしまったけれど
どんなにたくさんの人と出会えても、忘れられねばならない運命なら、いっそ始めから誰にも出会わないほうが・・・

「・・・いいや、覚えてるよ むらさきかがみさん」

「え・・・?」

今の旦那です 

95:本当にあった怖い名無し
06/04/23 18:21:01 7B7mmu0Z0
>>94
エクセレントGJ!

96:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:15:51 q5cKLA8f0
扉なんか開けなければ良かった。
確実な死がそこに待っていると知っていたら、どんなことがあろうと
扉を開けるような愚は冒さなかったに違いない。
でも……もう遅い。
俺は扉を開けて、見てしまった。


―泣き続けるバンシーを、見てしまった。


伝承に曰く
流れるような長い髪をたなびかせた、青白い顔
泣きはらしたせいで紅くなった瞳
緑衣の上には灰色のマント

……若い女の姿であることなど、この際なんの慰めにもならない。

“死者が出る家にはバンシーが訪れる”

この家には、俺しか住んでいないのだから。

97:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:16:37 q5cKLA8f0
交易商の父がこの街に腰を落ち着けたのは10年ほど前のことだ。
商人として優秀だった父は、それまでの蓄えを元手にしてこの街で住居を兼ねた
商店を開き、この地方では手に入りにくい品々までを取り揃えた店は街の人々や
旅人にも重宝された。順風満帆な日々。
そんな父の姿を見ながら成長した俺も、13の歳から商売の手伝いをするようになり
以降6年間はみっちりと商人の心得や商売のコツを叩き込まれた。

「……まあ、お前も半人前ぐらいにはなったかな」

微かな微笑を浮かべて満足気に呟いた父は、自らの死期を悟っていたのかもしれない。
俺が19歳になって間も無くしてから父は逝き、幼いころ既に母親を亡くしていた俺は
晴れて天涯孤独の身と相成った。それが悲しくなかったわけでは無いが、満ち足りた
表情で眠るように旅立った父の顔を思い出せば、この店を立派に守り通すことこそが
俺に出来る唯一の親孝行であるように思えた。
一人で店を切り盛りするのは重労働ではあったが、古参の商人仲間や馴染みの客に
助けられつつどうにかこうにか父の真似事をこなす。

そんな生活を二年も続けたある日、俺はバンシーを見てしまったのだ。

98:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:17:27 q5cKLA8f0
いつも通りの時間に店閉まいし、遅い夕食を摂り終えた俺はランプを消して寝台に潜り込む。
夕刻から吹き始めた強い風は益々その勢いを増し、木の窓枠をギシギシと軋ませる。
目を閉じて眠気に身をゆだねようとしたその時―

…………ぁああ ぁー……

「……?」

風の音に混じり、高い声が聞こえた。身体を起こして耳を澄ます。

ああああああぁ……ぅぁあああああああああぁぁ……

「女の……泣き声?」

闇の中、手探りでランプを探して灯りを点す。
その声は店の入り口近くから聴こえてくるようだ。
寝室を出て店内を進み、樫で出来た重い扉の前に立つ。
この辺りは比較的平和な土地柄とは言え、街から街を繋ぐ街道では
稀に旅人や商隊が賊に襲われた、という話も聞く。
さてはそういった被害にあって逃げてきた人だろうか?
武器替わりの薪を握り締め、おそるおそる閂を外して扉を開けた。

「……………誰か、いるのか?」

びょうびょうと吹きすさぶ風の中、ランプを掲げて外の様子を伺った。
弱々しい灯りが照らし出したのは細い体と風に踊る髪だ。
悲しげに顔を両手で覆い、肩を震わせて泣く若い女。
濃緑色の衣と灰色のマントを視認した瞬間、脳裏に閃くものが俺を戦慄させる。
あれは確か……隣村の老人がいつか話していた―

99:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:18:28 q5cKLA8f0
―バンシー、といってな。家の前で泣いて、死者が出ることを伝える
―わしが子供の頃には時折見かけたもんがおった
―最近じゃあ、とんと噂にものぼらんが

そうだ、嘆きの精は――――確実な死を告げるのだ

「うっ…うわああああああああああああああああああっ!!!」

全力で扉を閉め、閂を下ろす。
鼓動は早まり身体には冷たい汗が滲んだ。
見てしまった。
見てしまった。
見てしまった。
この家には俺しかいないのに。
まだまだしなければならないことがあるのに。

「……なんで、俺なんだよ……」

床に膝をついて頭を垂れる。
俺はいつまで生きていられるのだろうか?
明日まで? 明後日まで? あの老人は何と言っていたっけ?

―死人が出た家のもんはな、口を揃えて「昨夜バンシーが出た」と言っとったよ

一晩、だけ? 猶予はそれだけなのか?

「そんな………」

時間が一瞬のようにも永遠のようにも感じられる中、震えながら夜を過ごした。

100:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:19:21 q5cKLA8f0
窓から差し込む光が瞼を突き刺す。
胡乱な頭で状況を把握しようとして―

「………っっ!!!!!!」

床から飛び起きた。
俺はいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
それは別にいい。大した問題じゃない。

「……ここは……あの世なのか?」

身体にはきちんと感覚がある。どこにも異常は感じられない。
見回せばそこはいつも通りの店内で、周囲からは朝の早い人々が奏でる喧騒が聞こえてくる。
まったくもって、いつもと変わらない朝だ。

「はははっ…夢でも見たのかな俺」

そうだ、そうに違いない。
バンシーなんか見ていないし、俺が死ぬ理由は無い。
昨夜は仕事疲れで神経がやられていたのだろう。
よし、そうと決まれば……

「開店の準備でもするか」

商品の陳列を確認し、店内を掃除する。
僅かな時間で朝食を作り手早く腹ごしらえをする。
食器を片付けようとした時、棚と壁の間に何かが落ちているのが見えた。
顔を近づけてみると、それはネズミの死骸だった。

101:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:20:20 q5cKLA8f0
「うわ……どっから入り込んだんだよ……」

ぶつぶつ言いながら、まだ比較的新しいその死骸を片付ける。
保存食品の類も扱う店である以上、不衛生は敵だ。
そうこうしているうちに日は昇って行き、通りには様々な人々が溢れていく。

からんからーん

「おっと…お客さんだ」

前掛けを羽織りながら急いで店に出る。
あれこれと注文の多い客の相手を終える頃には、バンシーの夢などすっかり忘れていた。


その夜。
帳簿を付けながら仕入れ品目の選択に頭を悩ませていると、店の扉を叩く音が聞こえた。
すでに店は閉めている時間だが、極々稀にこういう客がいる。
無視してしまっても咎められる筋合いは無いだろうが、そこは俺とて商人の端くれ。
融通を利かせてあげれば以降はこの店を贔屓にしてくれるかもしれない、という打算もある。
店の明かりを点けて扉を開け、営業用の―

「いらっしゃ……」
「なんで生きてるのよっ!!!!!」

―笑顔も凍るほど酷いことを言われた。

102:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:21:20 q5cKLA8f0
「なんでよ!? 死んでるはずでしょー!?」
「……………えーと、あの……お客さん?」
「信じられない……確かにこの家から死の気配がしたのに……」
「もしもし? お客さん?」

腕組みしてブツブツと呟くのは、腰まで届く美しい黒髪の女の子だ。
野暮ったい緑衣と灰色のマントがいささか大きすぎるようで、裾をずるずると引きずっている。
可愛らしいとさえ言える顔立ちの中、紅玉色の瞳だけが異彩を放っていた。
少なくとも俺はこんな瞳の色をした人種を知らない。
緑衣に灰色の外套、おまけに紅い瞳なんて……そんなの、まるで。

「……バンシー!?」
「きゃあっ! ……な、何よいきなり大声だして」
「お、お前っ! 俺を殺しに来たのかっ!?」
「殺す? なんでよ?」
「いや、だってお前、ホラ」

言葉に詰まる。アレは夢だと思っていたのに、目前の少女は間違いなく現実だ。
であるならば……俺の死もまた現実ということになってしまう。
昨夜の絶望感がじりじりと背筋を這い登り、俺は慄然とした。

「……俺が死ななかったのが不満なのか。それでまたこうして……」
「それよ! あたしもそれが聞きたいの」
「へ?」
「この家って、あんた以外に誰か住んでる?」
「いや……俺一人だけど」
「濃密な死の気配を感じたのよ……だから昨夜、張り切って泣いたのにっ!」

103:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:22:24 q5cKLA8f0
鼻息荒くまくしたてる少女の姿は、戸口で悄然と泣き続けた姿とどうにも一致しない。
これでは嘆きの精ではなく憤りの精だ。こちらの思惑などどこ吹く風、といった様子で
バンシーは続ける。

「……納得いかない……納得いかないわ………あたしの初仕事だったのに……」
「でも俺はこうして生きてるしなあ」
「だったらあの気配は? 間違いなくこの家からだったわよ?」
「………あー……もしかして……」

そんなことはないだろう、と思いながらも一応伝えてみる。
言われてみればこの家に“死”が存在したことを。
ただしそれは……

「……………………………………………ねずみ?」
「うん、ねずみ」
「………何よそれ」
「灰色で、ちゅーと鳴く……」
「知ってるわよっ!!」

があっ、と口を開けて噛み付くように怒鳴る少女。
俺もいい加減、この状況が単なる八つ当たりだと理解していた。
自然と口調がきつくなる。

「死んだのが俺じゃなくて残念だったね。とにかく、お客さんじゃないなら帰ってくれ」
「……べ、別に死んでほしかったわけじゃ……ないけど……」
「バンシーを見た家の者がどれだけそれを恐れて、悲しむか知ってるのか?
 逃れられない死ならわざわざ予告なんかしなければいいんだ……悪趣味な」
「……だって、だって……あたしの、お仕事だから……」

104:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:23:22 q5cKLA8f0
しょんぼりと肩を落とす少女の姿は、さながら叱られた子供のようだ。
紅い瞳の端にはじんわりと涙が溜まり、いまにも零れ落ちそうに見える。
商人の俺は、商品を売るのが仕事。嘆きの精は、死者を悼んで泣くのが仕事。
頭では理解出来るが、どうにもこの少女に向いている仕事とは思えない。
……まあ、ねずみの死の気配すら感知できるのはある意味で優秀なのかもしれないが。

「ごめん、俺も言いすぎたよ。でもさ……ねずみと人の区別も出来ないのはちょっと……」
「う、うるさいうるさいっ!! 初めてだったからちょっと気負いすぎただけなのっ!!」
「……あー、確かに俺も店を一人で回しはじめた頃は良く失敗したなあ…
 品物仕入れすぎてとんでもない在庫量になったり……」
「……………これは………!? 今度は間違いないわ……あの家から気配がするっ!」
「聞けよちくしょう!」

人が折角慰めるつもりで披露した失敗談も聞かず、数軒先の家を睨むバンシー。
あの家には確か……鍛冶屋の4人家族が住んでいたはずだ。
豪快な主人とキップのいいおかみさん、双子の子供達は七歳になったばかりだ。
あの中の誰かが、死ぬ?

「お、おい……ホントにあの家に……?」
「いってきまーす!!」
「待てってばよおいっ!!」

嘆きの精は身を翻し、鍛冶屋の戸口を目指してとてとてと走っていく。……あ、転んだ。
何事もなかったようなフリをしながら立ち上がり、服の土ぼこりをぱんぱんと掃う
バンシーの背中を眺めながら溜息をついた。今度もねずみだったらいいな、と思いながら。

105:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:24:21 q5cKLA8f0
翌朝早い時間に鍛冶屋を訪れた俺は、店先を掃除するおかみさんにそれとなく尋ねた。
「何か変わったことはなかったか」と。きょとんとしたのもつかの間、おかみさんは
不思議そうに答える。
「今朝起きてきたら、台所でうちの年寄り猫が眠るように死んでいた」
「子供たちが悲しむだろうから、どう伝えていいか困っている」

……ねずみではなかったが、ノリはかなり近いものがある。
きっとあのバンシーは、また今夜鍛冶屋におしかけて自らの予告を確かめるだろう。
あの荒くれ主人に怒鳴りつけられるバンシーの姿が目に浮かび、内心で決意を固める。
要らん騒ぎを起こす前に身柄を確保せねば。


「というわけで、またハズレです。……いや、ある意味では当たりなのかもしれないが」
「…………いきなり店に引っ張り込んでおいて、他に言うべきことはないの?」

店の椅子に座るのは、滅茶苦茶不満そうな顔をした件のバンシー。
ねずみから猫にクラスアップしたとはいえ、嘆きの精としてはかなりダメダメな結果である。
こいつはそのうちヤモリや蜘蛛の為に泣きかねない。

「お前ね……あの家の親父さんをこんな夜更けに叩き起こしてみろ。斧で頭カチ割られるぞ」
「ひいっ!」

頭を抱えて怯える姿を見て、少しばかり溜飲が下がる。
この人騒がせなへなちょこバンシーを放置しておくのは、本人(本精?)にも街の住民にも
よろしくない。意を決して厳しい言葉を告げる。

「お前さ、向いてないと思うよ。そのうち人間の気配にも行き当たるかもしれないけど
 あまりにも予告の精度が低すぎるんじゃないか?」
「…………余計なお世話。あたしのお仕事の邪魔しないで」
「そもそも楽しくないだろ? 人の死を告げるために泣くだけなんて」

106:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:25:20 q5cKLA8f0
俺が言いたいのはそれだった。
逃れられない死を告げるのは、決して愉快なことではないだろう。
死を求めて彷徨うのならそれは死神と何ら変わらない。
悲しいことがあって嘆くのではなく、嘆くために悲しいことを探すのは―

「―なんか、つまんなくないか?」
「……訳知り顔で好き勝手言わないで! だって他に……」
「他に?」
「他に……すること、ないもん。できることも、ないもん」
「………………」

嘆きの精は、ようやく自分の為に嘆く。
そう在るように生まれた存在だから、そうするしかできないと。
改めて少女の姿を眺めてみる。紅い瞳の他は本当に普通の人間と変わらない。
いや……普通というには器量が良すぎるか。

「お前に出来る仕事があるんだけど、良かったら話だけでも聞いてみないか?」
「…………お仕事? あたしにできること?」
「ああ……実はな…………」

その夜、俺の店の明かりは随分長いこと灯っていた。

107:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:26:23 q5cKLA8f0
「いらっしゃいませ! 何をお探しですか?」
「ありがとうございましたー!」

その街には、小さいながらも品揃えの豊富な雑貨屋がある。
二十歳を少し過ぎた若い店主と、それよりもっと若い看板娘が二人で切り盛りする店だ。

「あれっ……確かに仕入れたはずだったんだけどな……」
「そこじゃないってば。ほら、暖炉側の棚の二段目!」

くるくると表情を変える看板娘は、いつも通りに店主を叱る。
「どちらが店主か分からない」と笑う常連客。

「しかしなんだね……店主、あんたいい奥さんつかまえたじゃないの」
「「奥さんじゃありません!!」」
「……二人して否定せんでも」 

長い黒髪と紅い瞳の少女を見て、まるで嘆きの精のようだと言う人もいた。
店主と看板娘はそうすると決まって顔を見合わせて笑うのだ。



「ホント、この人かいしょー無しで困るんですよ。
 あたしがいなかったらこのお店つぶれちゃうんじゃないかな?」

―看板娘は、それはそれは楽しそうに嘆きを洩らした。

108:運動場整備部隊 ◆zR/LhJxu0Q
06/04/23 20:27:09 q5cKLA8f0
終わり。霊というか精霊というか。

109:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:28:49 p+T4upIN0
GJというよりほかあるまい。よって叫ぶ。たちどころに叫ぶ。
GJ!最高だぜブラザー!

110:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:28:55 OPEXyK3r0
GJ!

111:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:31:37 7B7mmu0Z0
メンデルスゾーンGJ!

112:本当にあった怖い名無し
06/04/23 20:33:10 9G616x8UO
GJ!
俺もうぷするよ。今回はえろ初挑戦!ラストは少しあとにあげるけど。

113:えろ初挑戦!①
06/04/23 20:36:57 9G616x8UO
よくある話と言えばよくある話だ。
家賃の安さにひかれて契約した部屋には少女の幽霊が憑いていた。
 
「…出ていけ」
強ばった顔で睨み付けていた彼女は今も散々俺に嫌がらせを仕掛けている。
 
寝ている俺の首を絞めたり包丁を投げ付けたり
風呂にドライヤーを投げ入れて感電させようとしたり、とにかく色々だ。
 
霊験あるお守りを身につけるようになってからは直接的な被害は無くなったが
今だに口では色々と突っ掛かってくる。
 
「なぁ、お前いつになったら成仏すんだよ?」
「うるさいわね!あんたには関係ないでしょ!」
 
「つーか、なんで地縛霊なんてやってんの?」
彼女は凍り付いた。
しまった、失言だ。
 
「…ごめん、無神経な質問だった」
「な、何よ!変に気を使うじゃないわよ!…交通事故よ」
 
「そうなんだ…」
「ちょっと、何よ…何しんみりしてんのよ!バカじゃないの?!」
「……」
「ななな何見てんのよ!
あんたなんか死んじゃえッ!」


114:えろ初挑戦!②
06/04/23 20:38:57 9G616x8UO
「なあ、暇だからオセロでもしない?」
「し、仕方ないわね!
どーしてもって言うなら付き合ってあげる!ほ、本当は嫌なんだからね!
感謝しなさい!」
 
敗色濃厚になるとテーブルを引っ繰り返すのは止めて欲しいが。
 
そうこうしてるうちに一年がたち、家庭の事情で俺はこの部屋を引き払わねばならなくなった。
 
「なぁ、お前、俺がいなくなっても平気か?」
「あ、当たり前じゃない!やっと静かになって清々するわよ!」
「そうか…」
「い、今まで一人でやってきたんだから!
何てこと無いわよ!ふん!」
 
情も移っていた俺は何とか彼女にしてやれることはないか、と色々と聴いてみた。


115:えろ初挑戦!③
06/04/23 20:40:29 9G616x8UO
「…じゃあ一つだけ。一つだけお願いがあるの」
夜になったらお願いすると言うと彼女は真っ赤になって姿を消した。
 
で、夜だ。
何やらいつもと違う雰囲気。
「電気、消して」
少し震えたかすれ声で言う彼女。
 
言われるままに電気を消す。窓からの月明かりだけが部屋の中をぼんやりと照らす。
 
「で、お願いって…?」
俺の問いに答えずに彼女は着ていたワンピースをするりと脱ぎ落とした。
 
彼女の透き通るような白い肌が月光に映え、幻想的な美しさを奏でる。
 
「…服、脱いで」
鼓動が煩い程に跳ね上がる中、俺は裸になる。
 
彼女はゆっくりと俺に近づいてくるが、その細い肩が震えているのを俺は見逃さなかった。


116:えろ初失敗!④
06/04/23 21:42:27 9G616x8UO
薄暗い部屋の中、彼女のにじり寄るかすかな足音だけが響く。
 
「ねぇ…一つだけ。
一つだけ私の願いを叶えてほしいの」
「うん、願いは…何?」
彼女の艶やかな素肌に目を奪われながら答える。
 
彼女はしなやかな腕を俺の首に回し、耳に口を寄せて熱っぽく囁いた。
 
「私と……
 私とファイトしなさい」
 
カーン、と部屋にゴングの音が鳴り響くと彼女は俺の首をガッチリ抱えあごに膝を叩き込んだ。
 
「あごがヤワいわね。ガムでも噛んで鍛えるといいわ」
 
思わず倒れこんだ俺に馬乗りになる彼女。
「ば、馬鹿な…お守りがあるのに…ハッ!?」
 
今、俺、裸。
お守り、服のポケット。
 
「お前は『これを狙っていたのか!?』と言う!」
「お前、こ、これを狙っていたのか!?…ハッ!?


117:えろ大失敗!⑤
06/04/23 21:44:10 9G616x8UO
「ククク…貴様が2chのツンデ霊スレを毎晩チェックしてるのは調査済みッ!
油断したわねぇ…」
 
「くそッ!」
ジタバタと暴れるがビクともしない。
「無駄無駄無駄ァ!
 さて本番よ…」
彼女はビキビキと筋を浮かんだ拳を握り込む。
 
「拳は強く強く握りこむのよ。でないと骨を痛めてしまうわ」
 
「ちょ、待っ…」
 
「ジェノッサァァーイッ!!」
 
何度も何度も何度も鉄拳を叩きこむ
「これこそがツンの最終形態よ!」
 
彼女の指が俺の眼窩をえぐり進み、脳幹を破壊すると同時に俺の意識も暗転した。


118:運動場整備部隊 ◆zR/LhJxu0Q
06/04/23 21:45:45 q5cKLA8f0
いつもいつも……w なんでアンタはそうなんだっ!! (褒め言葉)

119:エピローグ⑥
06/04/23 21:45:46 9G616x8UO
 
「こうかな?もっと下?」
 
「そうそう、それ位!うん上手よ!さすがまーくん!」
 
俺は新しい入居者である青年の上に乗って首をぐいぐい締めあげる。
 
「じゃ、私はこっち書くわねー♪」
彼女は鼻歌を混じりにかべに血文字で『呪殺!』と書き込んでいく。
 
「だいぶ弱ってきたからね。これできっと出ていくよ、こいつも」
「うふふ、だってまーくん、すごい上手く祟るんだもん」
 
「でも一思いに殺っちゃった方が早くない?」
「ダメよぉ、そしたらここに憑いちゃうでしょ!
この部屋は私たちだけの
・愛・の・巣♪」
 
彼女はそう言って俺に抱きついてくる。
 
彼女は昔のツンツンが嘘のように今はデレデレだ。
 
(幸せ…なのかな)
願わくば、お祓いとかがきませんように…



120:本当にあった怖い名無し
06/04/23 21:49:50 7B7mmu0Z0
エマニエルGJ!w

121:運動場整備部隊 ◆zR/LhJxu0Q
06/04/23 21:50:32 q5cKLA8f0
先走り割り込み失礼。マジ御免。烈海王に転蓮華されてくる。

122:本当にあった怖い名無し
06/04/23 22:15:57 7B7mmu0Z0
>>121
失礼なんていったって許さない。
何か書かなきゃ許さないよ?
んー?wんんーw

123:本当にあった怖い名無し
06/04/23 22:18:49 TPBzJwZ10
え? じゃあ俺も許さない。

124:本当にあった怖い名無し
06/04/24 00:20:57 wLM0F3bw0
「私メリーさん、今あなたの後ろにいるの」
僕は電話を切り、背後の気配に話しかけた。
「君がメリーさん?」
「電話で言ったでしょ?可哀想だけど、ルールだからあなたを殺さなきゃいけないの」
僕はその言葉を聞き慌てた。
「ちょっと待った。…死ぬ前にちょっとやりたいことが2つあるんだけど、いいかな?」
「いいけど…何?」
「君の顔が見たいんだ。誰に殺されたかわからないなんて気分が悪いだろ?」
「それはできないわ。あなたが振り向いたら私は鎌を振らなきゃいけないの」
「…じゃあ2つ目、コインランドリーに洗濯物取りに行きたいんだけど、いい?」
メリーさんは少し悩んでいたようだったが
「それくらいだったらいいわ。でも、振り向いた瞬間にあなたは死ぬ。忘れないでね。」
コインランドリーまでは片道5分、僕はメリーさんとの会話を期待していたが、
「私の姿は電話がかかってきた人にしか見えないの。変人だと思われたくなかったら話しかけない方がいいわ」
と言われ、断念した。結構人通りが多い道だったから。

125:本当にあった怖い名無し
06/04/24 00:30:57 wLM0F3bw0
洗濯物をバッグに入れ、
(後は家に帰って遺書を書いて死ぬだけだ。)
と思いながら歩いていたら、目の前の信号が変わりかけていた。
その信号は待ち時間がとても長い。
これ以上メリーさんを待たせるのも悪いので駆け抜けることにした。
幸いその交差点は車があまり通らない。いつも自転車で通っている道だ。
横断歩道半ばまで来たとき、突然クラクションが鳴った。
大型のトラックだ。
(何でこんな道を!?)
と頭が考える前に僕の体が反応していた。
後ろにいるメリーさんをかばう。
僕ごときが盾になったところで大して変わらないだろうが、やらずにいられなかった。
メリーさんの鎌が振り下ろされる前に、トラックが僕達を跳ね飛ばした。

126:本当にあった怖い名無し
06/04/24 00:42:38 wLM0F3bw0
「…ここは、天国か?」
アスファルトに叩きつけられたところまでは覚えている。
あたりを見まわす。色とりどりの花が咲いていた。
「…私にかまわず逃げればよかったのに」
声に反応して振り向くと、メリーさんがいた。
「君も死んじゃったの?」
おそるおそる尋ねる。
「私はもともとこっちの世界の住人なの。死ぬわけ無いじゃない」
そうでした。…ってことは僕、無駄死に?
「全く…私は今まで一度も失敗してないのに…あなたのせいで台無しね」
「ゴ、ゴメン」
「…あなたが転生するまで待っててあげる。次は殺させてよね」
…そうして、メリーさんと僕の霊界生活が始まったのです。
ちなみに、僕はクリスチャン。転生などする訳無いのですが、そのことを話しても
「じゃあ最後の審判まで待っててあげる」
と言って聞かないんです。

127:本当にあった怖い名無し
06/04/24 00:44:36 wLM0F3bw0
始めて書いたのですが、どうでしょうか?

128:本当にあった怖い名無し
06/04/24 02:43:08 SzKBm3JIO
駄目だな

129:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:21:43 MbqP78Ek0
天井にあるスタンドグラスから降り注ぐ月の光が室内を照らす。
目の前にいる彼女ははにかみながら上目遣いで見つめてくる。

彼女に出会ったのは雪の夜だった。
仕事帰りに突然聞こえた甲高い急ブレーキの音。
好奇心に駆られて野次馬に行った現場で見たのは、
血みどろで路上に伏した女性と、すぐ側に佇みそれを見下ろす女性。

途端に周囲のざわめきが消え、直感が目の前の危険を警告する。
立ちすくむ女性がゆっくりと視線を上げる。
早く逃げなければ、焦る気持ちとは裏腹に身体はまったく言うことを聞かない。
最後に覚えているのは彼女の哀しげな両の瞳と左手に嵌めた指輪の光だった。


自慢ではないが、私は生まれてこの方幽霊などというものとは無縁の生活を送ってきた。
それなのに、彼女に出会ってからの二週間はそんな私の常識を覆すものだった。

なによりも私を驚かせたのは、寂しい一人暮らしだとばかり思っていた私の部屋が、
実は大変賑やかな大所帯であったということだ。
格安の家賃は古くボロボロの造りのせいだけではなかったのか。

毎晩聞こえる恨み言。いつの間にか移動する食器。
気にしだすと壁の染みすら人の顔に見える始末。

「……出ていけ」「……くるしい」「……イタイ」

今日も始まったか。うるさくて眠れやしない。
実害はないからいいものの、こう毎晩では精神衛生上よろしくない。
……ここはやはり一言言ってやるべきか。

130:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:22:44 MbqP78Ek0
「あー君たち、言いたいことはわかるが、私に言われてもなにもできないんだ。
 私はできるだけ君たちの邪魔はしない。だから君たちも私の邪魔はしないでくれないか。
 具体的には夜は静かにしてほしいのだが……」

「……五月蝿い」「……しね」「……クルシメ」

どうやら彼らの機嫌を損ねてしまったようだ。
飛んできたのが辞書ではなく文庫本だったのはまだ彼らにも良心が残っているということか。


「クスクス」

窓際から楽しげな笑い声が聞こえてくる。

「……見てないでなんとかしてくれよ。君が来るまではこんな部屋でも平和だったんだ」

「あら、私のせいだって言うの?」

「どう考えても原因は君しかありえない」

「この人たちは私が来る前からここに住んでたのよ?
 それにあなたにも元々素質があったのよ。彼らの声を聞く素質がね」

「幽霊じゃなくて外国人の声が聞こえる素質なら私の人生ももっと違っていただろうな」

131:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:23:40 MbqP78Ek0
あの事故の日から、彼女は私の部屋にいる。
特になにをするというわけではない。ただそこにいるだけだ。
別に害があるわけではないので放っておいたら、
本来の家主である私よりも家主らしい顔で振舞うようになった。

「ねえ~、ビール無くなったよ~」

当たり前のように冷蔵庫を覗き込み催促する。

「おつまみ用意しとくからさ~、ビール~」

どうも最初の対応を間違えたようだ。


月日は流れたが私と彼女の生活に変化はない。
賑やかな同居人たちも相変わらず騒がしい。

「ただいま」

「お帰りなさ~い、あなたご飯にする? お風呂にする? それともワ・タ・」

「ご飯にしよう、昼食べる時間なくて腹ペコなんだ」

なにやら妙にハイテンションの彼女にかまわず食卓につく。
給料が安い割りに仕事はキツイ。いつもの様に彼女の相手をする気になれなかった。
彼女はなにか言いたげだったが、夕食の支度を済ませるとさっさと消えてしまった。

なんだったんだ?
ふたりで暮らすようになって結構経つが、いまだに彼女のことはわからないことだらけだ。

結局、彼女はその夜戻ってくることはなかった。
こんなことは初めてだ。しかし、幽霊を心配するというのも妙な話だな。

132:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:25:12 MbqP78Ek0
「……可哀想」「……かわいそう」「……カワイソウ」

……なんなんだ。ここ最近大人しくしていたと思ったら可哀想?
可哀想とは彼女のことなのか? こいつらでも他人の心配をするのか。

「……冷蔵庫」「……れいぞうこ」「……レイゾウコ」

冷蔵庫になにかあるのか。また勝手に食い散らかしたんじゃないだろうな。
ところが扉を開けた私の目に意外な物が飛び込んできた。
白いクリームと黄色いスポンジと茶色のチョコレート。
その茶色い板に「Happy Birthday!!」の文字。

そうか、今日は私の誕生日だったのか。


夜の街を闇雲に走る。
彼女とふたりで訪れた場所を一ヶ所ずつ捜して回る。
ここ最近うんざりするほど悩まされた霊の気配というものが、
今はまったく感じられない。
ほら見ろ、やっぱり彼女が側にいたからだったじゃないか。

結局、彼女を見つけることはできなかった。
なにか見落としていることがあるのだろうか?
とりあえず一旦部屋に戻ろう。

133:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:26:24 MbqP78Ek0
私の住むアパートへの途中に古びた教会がある。
管理する者もなく荒れ果てていく一方の建物は、
近所の子供たちの遊び場になっている。

特に理由があったわけではない。
神頼みのつもりでもない。そもそも神様なんて信じていない。
ふと思い出したのだ。彼女の左手の薬指に光る指輪のことを。

古びた教会の中央、天井のスタンドグラスから降り注ぐ月の光の中に、
彼女はひとり佇んでいた。

「あー、なんて言えばいいのか……とにかく悪かった。
 もうずっと誕生日なんて祝ってもらった事がなかったから」

ゆっくりと振り向く彼女の瞳はいつか見たあの哀しみを湛えていた。

「私はきっと君に甘えていたんだ。誰かが側にいることに慣れすぎて、
 いつの間にかそれを当たり前みたいに思うようになってた」

今、私ははっきりと理解していた。
私は彼女に伝えなければならない。
決して後悔するようなことがあってはいけない。

「やっとわかったんだ。私には君が必要なんだ。
 もう一度、私にチャンスをくれないか」

「……今日はずいぶんと殊勝なのね。らしくないじゃない」

いつもと違い弱々しく微笑む。
私は焦っていた。嫌な予感がする。

134:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:27:34 MbqP78Ek0
「もしかして、このまま私が消えてしまうんじゃないかとか考えてる?」

「……違うのか?」

「ついさっきまでそう思ってたの。どうしてあんなとこにいつまでもしがみついてるんだろうって。
 最初はね、まだ私に未練があるせいなんじゃないかって思ってたわ。
 ―もう気付いてるでしょうけど、これね」

そう言って左手を上げて見せる。薬指の指輪に月の光が煌めく。

「婚約者がいたの。いい人なのよ。
 ちょっと気弱なところがあって、どこかあなたに似てるのかもしれない」

もう戻れない過去を懐かしむように、そしてどこか哀しげに。

「あなたの部屋に世話になるようになってからもちょくちょく様子を見に行ったりしてたのよ。
 ……彼には私の姿は見えなかったけどね

 初めのうちはずいぶんショックがあったみたい。彼も私も。
 当たり前だよね。でも……人間って結構強くできてるのね

 ちょっとずつ時間が経つごとに私の中で何かが変わっていくのがわかった。
 彼もそうだったみたい。お互い新しい生活の中で新しい自分を見つけて……、

 そして新しい幸せも見つけて」

そこで言葉を区切るとじっと私を見つめる。

「あなたはどうだったの?」

135:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:29:03 MbqP78Ek0
「私は……そう、私も同じだ。君と暮らした日々は私にとって幸福だった。
 とても幸せだったんだ。」

「それで?」

なにやら嬉しそうな彼女を見てると、彼女の思惑通りに進んでいることを思い知らされる。
少し悔しい。

「私は君を愛している。これからも私の側にいてくれないか」

もうここまできたら隠す必要もないだろう。隠せていたかどうかはわからないが。
そうして、私はすべてを打ち明けた。

「……」

「どうした?」

私が見つめる中、彼女の頬がみるみる朱に染まる。

「う、あう、そんなこといきなり言うな!」

「君が聞くから答えただけじゃないか」

「アンタのキャラじゃないでしょ」

「大切なものを失くしたくないだけだ」

「う~、だからそういう恥ずかしいセリフを言うな」

「君の答えを聞いてない」

136:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:30:20 MbqP78Ek0
これは面白い。ここぞとばかりに攻めに転じる。

「それは、ほら、なんていうか……もう! 言わなくてもわかるでしょ!」

「ちゃんと言ってくれなきゃわからないよ」

「だからさ、私も好きでもない人の部屋にいつまでもいないって」

「それで?」

恨めしそうに私を見つめる。

「だから……私も、あなたのこと、好きよ」

一言一言吐き出すように言い終えると、上目遣いに見つめてくる。
言葉もなく立ち尽くすふたり。まったく、これではまるで小学生のようではないか。
意を決して彼女の腕を取り、胸の中に引き寄せる。

「あっ」

彼女は抵抗することなく私の腕の中に納まった。

「これからはずっと一緒だ」

「ええ、ずっと……ずっと側にいるわ」

淡い月の光の中で、ゆっくりと唇を重ねる。
ふたりを祝福するかのように、どこかでゴングがなった。

>>91-92
こんなんだっけ? あるあるwwwwww

137:本当にあった怖い名無し
06/04/24 03:32:04 x6d0zTGSO
すげえ、パーフェクトだwwGJww

138:本当にあった怖い名無し
06/04/24 06:51:44 kVt0inm00
GJwwww


139:本当にあった怖い名無し
06/04/24 07:42:11 7HwvtyfFO
GJ!
あれ、スタンドグラス だっけ??
俺はステンドグラスだとおもっていた。

ん?スタンドグラス?
ステンドグラス?
スタンド?
ステンド?








スタープラチナ?


140:本当にあった怖い名無し
06/04/24 08:01:39 mX9RSAcV0
>>124-127
いいよいいよー最後の審判GJ!w

>>129-136
総出GJ!w

141:本当にあった怖い名無し
06/04/24 10:26:27 lFqFIftj0
>>96-107
1レス見ただけでレベルが違うのがわかる。ドジっ娘いいねえ。
>>119
涎?

142:本当にあった怖い名無し
06/04/24 17:36:25 SzKBm3JIO
携帯でも見れるまとめサイト…ないかな?

143:本当にあった怖い名無し
06/04/24 17:48:03 DTCpL+NzO
>>87
文章がだるい。
もう書かなくていいよ。

144:本当にあった怖い名無し
06/04/24 19:09:10 9tpohwkVO
まぁでも…どうしても書きたいって言うなら、一応読んであげてもいいから!


145:本当にあった怖い名無し
06/04/24 20:12:28 +TOx04wK0
>>144の口調がツンデレというよりギター侍な件

146:本当にあった怖い名無し
06/04/24 20:26:44 mX9RSAcV0
ほ・・・本当だっっw残念っっをつけると完成だっw

147:本当にあった怖い名無し
06/04/24 20:35:51 HgmnS7eZ0
俺は一体どこで間違えてしまったんだろう・・・

「ず・・・ずっと、俺の傍にいて欲しい。」
「いっ言われなくても、あなたが死ぬまで傍にいるわよっ。」
「う、うん。そうだよね。俺に取り憑いてるんだもんね・・・。
 じゃあ、少しでも長く一緒にいられる様に頑張るから。」
「ふん。せっ精々頑張ってみなさい。
 別に私が一緒にいたいとか、そんなんじゃないんだから。」
それからの数ヶ月は本当に楽しかった。
不器用な俺と素直じゃない彼女。喧嘩もしょっちゅうした。
でも仲直りできると嬉しくて一緒に泣いて笑いあった。

変化はちょっとした事から始まった。
軽い立ちくらみのような眩暈
「あ、あれ?なんか・・・変・・・だ。」
「ちょ、ちょっと急にどうしたのよ!」
「う、うん。ちょっと力が入らなかった。でも、もう大丈夫。」
「そう。なら良いんだけど・・・」
「ほらほら、そんな心配そうな顔しないで。」
「な、何よ別に心配なんてしてないんだからっ。」

148:本当にあった怖い名無し
06/04/24 20:37:17 HgmnS7eZ0
しかし、その後も急に力が入らなくなったり、ぼ~っとしてしまうことが多くなり、
とうとう、寝たきりの生活になってしまった。

「ご、ごめんなさい。私が取り憑いてるからこうなっちゃうんだよね。」
「良いんだよ。・・・いつか・・・こうなる事は・・・分かってたんだから。」
「で、でも・・・辛くないの?死んじゃうん・・・だよ。怖く・・・ないの?」
今にも泣き出しそうな声で訊いてくる。
泣いているのは彼女には似合わない・・・笑っていて欲しい・・・少しでも安心させないと
上手く働かない頭で必死に考える。
「・・・・・・う~ん、死ぬのは・・・やっぱり怖い・・・かな。でも・・・君と同じになる・・・だけだし。
 きっと、今と・・・そんなに・・・変わらない・・・よ。」
「ばっ馬鹿じゃないのっ!私の傍にいられるから、死んでも良いって言うのっ!」
「出来れば、・・・生きたままで・・・傍に居たいけどけど・・・ね。
 多分、それは・・・もう・・・無理・・・みたい・・・だから。」
本当は、もう会話をするのも辛い。
言葉を発するだけで、体の中から何かかがドンドン失われていく気がする。
「なっ何言ってるのよっ!で、でも・・・」
そこから急に会話が途切れる。
彼女は一人で何かを考え始めているようだ。
そして、俺はそんな彼女をただ、見続ける事しか出来なかった。

149:本当にあった怖い名無し
06/04/24 20:38:13 HgmnS7eZ0
どれくらいの時間がたっただろう・・・
周りもよく見えなくなってきた。
「そう、そうよ。私があなたから離れればいいのよ。」
「・・・えっ?」
「良い?あなたがここまで弱ってるのは、残念だけど私が取り憑いているから。」
「・・・まぁ、・・・そう・・・だね。」
「で、私はここまで弱ったあなたには興味が無い。」
「・・・興味・・・って。・・・酷い・・・なぁ。」
「だから、私は今から別の気に入ったヤツに取り憑くの。
 で、そいつが弱った頃にはあなたは元気になってるだろうから・・・。」
「そ・・・そんな・・・上手く・・・いく・・・かな?」
「上手くいくの!良い、ホントは殺すところなんだけど・・・
 望まれて死なれたんじゃ悔しいじゃない!」
「は・・・ははは。」
「笑う所じゃない!
 良い?今度来るときまで、・・・絶対死にたくないって思うようになってるのよ!」
「・・・う、うん。」
「別に、あなたのために離れるんじゃないのよ。
 こ、このままじゃ私が悔しいから離れるんだからっ。」
「・・・あ・・・ああ。・・・・んっ?」
唇に何かが触れたような感触と、頬に冷たい雫。
「じゃあ・・・ね。結構・・・この部屋・・・好きだったわ。」
そう言うと彼女の気配が消えた。

少し経つと意識がはっきりとしてきた。
「ん、・・・少しは・・・調子良く・・・なったかな?」
ずっと寝たきりで固まっていた関節がほぐれていくのが分かる。
自分の体に羽が生えたかのように軽くなっていく。
これなら、その内動けるようになるだろう。
自然と笑みがこぼれていた。
「帰って・・・きたら、何て言ってやろう・・・かな。」

150:本当にあった怖い名無し
06/04/24 20:38:56 HgmnS7eZ0
しかし、調子が良くなったのは一時的なものだった。
立ち上がろうとした瞬間、体の中で何かが壊れた。
その後ドンドン体の感覚はなくなり、意識も朦朧としていった。
そして数時間後、俺はあっけなく死んだ。
安易に動こうとした俺が悪かったのか
彼女の決断が遅かった為か・・・
今となっては、もうどうでも良い事だ。

・・・あれからどれだけ経っただろうか・・・
今も俺はこの部屋にいる。
来る筈の無い彼女を待ち続けている。

151:本当にあった怖い名無し
06/04/24 21:03:20 XinhKBcU0
GJ
。・゚・(ノд`)・゚・。

152:本当にあった怖い名無し
06/04/24 21:16:07 eM3cui9h0
>>96
10数年前にTRPGにはまっていた時のことを思い出したよ。
バンシー。懐かしいなぁ。

153:本当にあった怖い名無し
06/04/25 00:18:08 JsBvGefO0
1/5
暖か味を帯びた風が僕の頬を撫でる。
3mほどのフェンスに囲まれた病院の屋上。
時折、真っ白なシーツが風にはためく音が聞こえる。
僕はここに入院している。
重い病気ではないと言われているが、もう2年になるかな。

ふっと僕の視界の端に人影が写り、そちらへ視線を向ける。
そこには髪を腰辺りまで伸ばした女性が空を眺めていた。
空色のワンピースに白のカーディガンを羽織っているところを見るとお見舞いに来た人かな。
僕の視線に気づいたのか、女性がこちらを向く。
「こんにちは」
僕は女性に挨拶をしたが、女性は周りを見渡す仕草をする。
今のところ、屋上には僕と女性しかいない。
「……わたしが、見えるのね」
不思議な事を言うと、女性は僕の方に歩み寄る。
触れる事のできる距離まで来ると、僕の身体に手を伸ばす。
「え?ちょっ―!」
突然の事に戸惑う僕に構わず、女性の手は僕の身体に……触れなかった。
スッと抵抗も無く身体の中に入っていく。
目を白黒させて驚く僕、いたずらっぽく笑みを浮かべる女性。
突如、ゾクリと総毛立つ感覚に襲われて身体が震える。
「一般的に言う幽霊ってやつなのよ、わたし」
女性の手が引き抜かれ、ふふっと女性が笑う。
僕は全身に冷や汗をかき、動悸が激しくなる。
「あら、ちょっと驚かせすぎたかな」
「……少し驚いたよ」
「少し、だけ?」
女性が不満そうに僕の顔を覗き込む。
正直、かなり驚いたが口に出したくはなかった。


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