06/03/20 23:46:38 bbDniWFj0
(続き)
「帰ろ」友人が踵を返す。
無花果は?と追いすがる彼女に「今日は諦めなさい」とつれない返事。
道すがら聞いたところによると、あれは本当の霊柩車でも葬式でもないという。
一体、何が葬儀の真似事をしているのかは不明だが、ただただ、とんでもなく
縁起が悪い物なのだと聞かされた。近よると、最悪命に係わることもあるらしい。
「実際に近づいて確認した人の話なんて、最近は聞いたことがないから、
本当はどうなのかわからないけど。
あんたが見てきたいのなら止めないわ。行って来い」
振り向いて見た。
道の上に、先程まであった筈の棺は、影も形もなくなっている。
無花果は明日にするわ。そう答えて山を下りたのだという。
何でも昔は霊柩車でなくて、黒い人夫が棺を担いで来て置いたらしい。
その時その時の流儀を真似ているんだろう。ハイカラだね。
友人の家族の間では、ごく普通にそんな会話が成されていたと聞く。
ちなみに彼女、翌日は無事に無花果を入手できたのだそうだ。