06/03/07 05:13:31 4vnedwFR0
あれからどれくらいの時が流れたのだろう
見えるのは白い天井、聞こえるのは微かな機械のノイズ
変わらない日々、変えることのできない現実
「ああ、今日はいい天気。風が気持ちよさそう」
いつの間に現れたのだろうか
窓際から聞こえてきたのは女の声、視界の隅で揺れるカーテン
「……毎日毎日暇なやつだな」
「あなたの代わりに外の様子を見てあげてるんじゃない、感謝してよ」
女はひとしきり窓から見える風景を語り、いつの間にか消えている
今の私がどれだけ望んでも得られぬもの、失くしたものを女は持っている
あれからいくつの季節が巡ったのか
「あら、今日はいつものお爺ちゃんがいないわね。どうしたのかしら」
「なあ、頼みがあるんだ」
ある日生まれたひとつの決意
ここから抜け出す方法
「……やめた方がいいわ、きっと後悔する」
「今より後悔することなんて、どこにもないさ」
「……そう」
そして静寂が訪れる
目覚めた私は、そばに横たわる私自身に別れを告げて、ゆっくりと窓にかかったカーテンを開く―
そこにはただなにもない世界が広がっていた
そして私はすべてを失った