06/02/27 21:15:26 hLr1AYDB0
カチャカチャ・・・
冷徹なまなざしに見据えられ、僕は肉を切り結び今までの作法を
頭に描きながら口に運ぶ。
「・・・・そうよ」
うなずきながらほっとしたような響きと共に姉がいった。
「いい。こうして・・・手を任せて」
僕の手に手を添え、姉が所作を行う。
自分の手じゃないかのように肉は切られ、口元に運ばれた。
「姉さんがいれば・・・僕は・・・」
「そうね。でも今は貴方が当主にならなきゃいけないの。わかるわね」
姉の死には不振な点が多かった。決して語られる事はないが、自殺であったと。
そしてそれは僕が里子に出されると知らされた夜のことだった。
両親は姉のその立ち振る舞いに、存在に次期党首の期待をかけていただけに
落胆は大きかった。
そして、残された僕への失望もまた、大きかった。
姉は今、こうして僕を教育している。姉は何もいわないが、僕は期待に答えなければ
ならないだろう。姉が残したこの道を進むことで。
「じゃあもう一度してみなさい」
「・・・・はい」
「そう。いい子ね」