06/02/20 00:40:46 4i12X5in0
「先輩、こんばんは」
「……………」
挨拶をしても先輩から返事が無いのはいつものことなので、特に気にしない。
自分が通う高校の、それも真冬の屋上なんかに夜遅く足を運ぶのは、ひとえに
先輩に会いたいがためだ。
「……………」
「……………」
そうして、いつもの沈黙が訪れる。
手すりにもたれて夜空を眺める僕と、少し離れた場所で街を見下ろす先輩。
別に先輩は、僕の部活の先輩というわけでもない。この学校の数年前の制服
を身にまとっていることから推測して、僕が勝手に「先輩」と呼んでいるだけだ。
こんな奇妙な状況になったのは、友達が話してくれた噂話がきっかけだった。
彼曰く
・屋上に幽霊が出る
・時間は夜9時~深夜0時くらい?
・女の子
・制服はデザイン変更前のもの
・屋上から飛び降りた?
まあ、どこの学校にもありそうな噂話ではある。興味の薄い反応を示した僕に
「お前確かめてみ?」と薦めたのも彼だった。その理由は良く分かる。
僕の家は、学校から見て県道を一本挟んだ向かい側。家の玄関から校門までの直線距離、わずか80m。
「遅刻が許されない男」という異名を持つほど家が近いのだから。
「…………星、綺麗ですね」
「……………」