04/09/07 08:45
どこを見ても戦いという状況の中、レイ・グレックは駆け続けていた。
最も敵が多いと思える場所に飛び込み、薙ぎ倒していく。
鬼神の如き戦いを続けるレイのゼロを、突如として赤い閃光が襲った。
「ちぃ!」
反射的に回避する。そして向き直ったそこにいたのは、エナジーライガーだった。
それも、見覚えがある。ヴォルフが乗っていた皇帝専用機だ。
「また会ったな、レイ・グレック!」
ヴォルフが叫ぶと共に、エナジーが突撃する。時速660kmの超高速の突進。通常の
ゾイドなら、反応する事も出来ないだろう。しかし、ファルコンの速さはその光のような
突撃をかわした。
「ヴォルフ・ムーロア!今度こそお前を倒す!」
ゼロ・ファルコンのバスタークローが高速回転し、エナジーの喉元をねらう。しかし、
前回の戦いでファルコンのポテンシャルを知ったヴォルフも、それを冷静に回避する。
時速500kmを超えたスピード同士の戦いは、他のゾイドの介入を許さず、必然的に
1対1の戦いとなっていった。
その頃、戦況は、完全にヘリック側に傾いていた。
ロードゲイルなどのキメラの指揮機のほとんどが破壊され、キメラ部隊が力を失っていく。
既に帝国軍と共和国軍の戦力差は、5000機以上にもなっている。セイスモサウルスが
健在とは言え、この戦力差は如何ともしがたい。帝国軍がじりじりと後退していく。もはや
勝敗が決定的になろうとした、その時だった。
353:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 08:46
突如として、非現実的で巨大な閃光が上空から放たれた。大出力荷電粒子ビームの閃光。
その一撃によって、共和国ゾイド数十機が巨大なクレーターを残して消滅した。
両軍の兵士達が一斉に顔を上げる。
そこにいたのは、ホエールキング。あらゆるゾイドの中でも最大の体格を持つ輸送ゾイドだ。
だが、ホエールキングに荷電粒子砲は搭載されていないはず。ではどこから?
ホエールキングが近づくと同時に、「それ」が姿を現した。
ホエールキングの腹部に増設された輸送用の拘束具。そこに、白いデスザウラーが積まれ
ていた。しかし、通常のデスザウラーとは明らかに違う。背中には見慣れぬバックユニットが
増設され、目の色は赤ではなく、冷たいまでの蒼。何より兵士達が疑問に思ったのは、輸送
用の拘束具が、まるでデスザウラーの動きを完全に封じるかのように作られていることだ。
354:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 08:47
空を見上げたヴォルフは、驚愕に目を見開いた。
「馬鹿な・・・・・メガザウラー・・・?」
ここにいるはずのないゾイドが、目の前にいた。
メガザウラー。
ゼネバスの象徴的ゾイド、デスザウラーにキメラ技術を応用し、複数の人工ゾイドコアを融合
させて造り上げた強化ゾイド。コアの拒絶反応をエネルギー化することにより、理論上では、
半永久的に大口径荷電粒子砲を放ち続けることが可能な最終兵器である。
だが、その無理強いた強化は、デスザウラーの凶暴性を一気に増大化させた。ヒトによる
制御が限界を超えてしまい、己の意志で活動を続ける恐れまでもってしまったのだ。その
ため、運用はもちろん、起動させることすら禁じられ、封印されたのだ。
「何故・・・あれがここに・・・・。」
ヴォルフが疑問に思ったのも無理はない。自分はあのゾイドの出撃命令など出していない
のだから。いや、出すはずがない。
メガザウラーの出撃は、帝国将校達の独自の判断であった。元々帝国将校の多くは、メガ
ザウラーの封印に反対であった。究極の破壊力が目の前にある。それは、彼らの闘争心
に火を付けるには、十分すぎる物であったのだ。
355:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 08:48
メガザウラーは、大地に降り立ち、拘束具が解除されたと同時に大口径荷電粒子砲を
放った。それだけで、共和国軍の一角が消し飛んだ。荷電粒子を吐き続けたまま方向を
変え、ゾイドを次々に消し去っていく。あのマッドサンダーさえ、粒子ビームを放射し続け
られ、シールドを破られて消滅した。凱龍輝とゴジュラスギガが前にでた。凱龍輝の集光
パネルが一時粒子砲を防ぐが、すぐに内部回路が焼け付き、凱龍輝は光の渦に消えた。
だが、その隙にゴジュラスギガが、格闘戦が可能な至近距離にまで近づいていた。
突撃するギガ。風を巻いて、肉弾戦を繰り広げる巨大ゾイド。
格闘戦ではギガの方が上手だった。ギガのハイパープレスマニュピレーターが、超重装甲
を飴のようにねじ切り、左腕をもぎ取った。粒子砲をシールドで受け流しながら、更に爪を
たたき込む。少しづつ後退していくメガザウラー。追撃するギガ。ゴジュラスギガがメガザ
ウラーを追いつめた、その時――
突然、メガザウラーの出力が増大し、先程までとは比較にならない荷電粒子ビームが
ゴジュラスギガを跡形もなく粉砕した。そしてメガザウラーは、辺りのゾイドに手当たり
次第に攻撃を加えていった。味方であるはずの、帝国ゾイドにまで。
ヴォルフが危惧したとおりになってしまった。生存本能によって、遂にメガザウラーは人の
制御を離れ、暴走を始めてしまったのである。突然の出来事に対応できず、次々とゾイドが
大口径粒子砲の光の奔流に飲み込まれていく。
356:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 08:50
異変に気づいたレイが振り返ったときには、戦場は酷い有様になっていた。たった1体の
ゾイドから、数千機以上のゾイドが逃げまどう。地獄絵図とは、こういう事をいうのだろう。
この場面に、レイは意外にも親近感があった。自分がまだ閃光師団にいた頃。ヴォルフを
守るために出撃したブラッディデーモンによって、仲間が危機にさらされていた状況。あの
時と今は、敵が混ざってることをのぞけば、全く同じと言っていいほど状況が似通っている。
だとすれば、やるべき事は同じだ!
「行くぞ、ゼロ!」
ファルコンの機首を、メガザウラーに向けた。そして突進。時速570kmの超高速。ヤツに
気づかれる前に懐へ飛び込んで、一発お見舞いしてやる!
メガザウラーが気づき、顔を向けた頃には、レイはメガザウラーの50m手前の所にいた。
粒子砲をかわしながら、一瞬でメガザウラーの死角に潜り込む。
炸裂するバスタークロー。超重装甲が削り取られ、甲高い悲鳴を上げる。
しかし、内部回路に達する前に、爪が眼前に迫ってきた。反射的にかわし、距離を離す。
すぐに荷電粒子砲が来た。辛うじて回避する。左のバスタークローが蒸発した。
機体バランスが崩れ、動きが鈍る。そこに、尾の一撃が来た。凄まじいパワー。
一撃で意識が飛びそうになる。
再びメガザウラーの頭部に光が灯る。圧倒的なエネルギー粒子が、メガザウラーの体内
で渦巻く。そして、荷電粒子の光が放たれようとした瞬間――
赤い閃光が、メガザウラーの左足の横を通り過ぎ、メガザウラーの左足首が切断された。
体勢を崩し、荷電粒子ビームは明後日の方向へと放たれた。
357:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 08:51
閃光の正体は、ヴォルフのエナジーライガーだった。
「協力するぞ、レイ・グレック!」
そう叫ぶと、ヴォルフはメガザウラーに向かって突進した。あの化け物をこの世に生み出
したのは、半分は自分の業である。だからこそ、自分がこの手で止めなければならない。
狙うのは、ヤツの右足。そこを潰せば、メガザウラーの動きを封じたに等しい。
赤いウィングブレードに光が集まっていく。必殺の「ウィングスラッシュ」だ。
一閃。切れた。だが浅い。完全に切断しきれなかった。
方向を変え直す。しかし、その時既に、荷電粒子砲の砲門がこちらに向いていた。
跳んでかわす。直撃は避けたが、足を消し飛ばされた。動けない。
巨大なキラークローがエナジーの胴体を穿った。エナジーの機体がくの字に折れ曲がり、
大地に叩きつけられた。ガトリング砲が砕け、鬣がへし折れる。
メガザウラーが足を引きずりながら近づいてくる。エナジーのエネルギーを取り込み、金属
細胞の再生を促すつもりだ。爪が迫る。ヴォルフが死を覚悟した。
しかし、メガザウラーの爪は、一発の砲弾によって遮られた。ヴォルフが振り返ると同時に、
メガザウラーに大量の砲弾が降り注いだ。ネオゼネバス軍とヘリック共和国軍のゾイド達が、
共通の敵に向かって一斉に攻撃している。あまりの砲弾の量に、超重装甲も拉げ始める。
358:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 08:53
朦朧とした意識の中、ヴォルフはエナジーの横に、レイのファルコンが並ぶのを見た。
「レイ・・何をするつもりだ・・・・・。」
そう呟き、レイがゼロのコクピットから降りるのを見た後、ヴォルフの意識は闇に飲まれた。
レイは、エナジーのエネルギーチューブをファルコンに連結させていた。
かつて、エナジーライガーが暴走した際、ファルコンは莫大な余剰エネルギーをバスター
クローから一気に放出した。あの時の事は、今でも鮮明に覚えている。
あれなら、もしかすればメガザウラーの荷電粒子砲に対抗できるかもしれない。
エネルギーチューブを連結し、コクピットに再び乗り込んだレイは、バスタークローの砲身を
メガザウラーに向けた。
その頃、メガザウラーは片足を軸に回転しながら荷電粒子砲を放出。それだけで、周りにいた
数百機のゾイドが光に消えた。
メガザウラーのダメージは、深かった。超重装甲のあちこちに亀裂が走り、右腕は力を失って
ダランと下がり、巨大な足もガクガクと震えている。
しかし、それでもメガザウラーには戦う力が残っていた。凄まじい戦闘本能が、満身創痍の
体を動かす。
359:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 08:54
レイが、エネルギーゲージを凝視する。
暴走時だったエナジーと連結したときと違い、通常のエナジーのエネルギーでは「溜め」に
時間が掛かる。それまでにメガザウラーに気づかれたら、終わりだ。
「50%・・60%・・70%・・80%・・」
その時、メガザウラーがファルコンに向き直った。口の中に眩い光が見える。
「95%・・100%!よし!いけえぇぇぇぇ!!」
トリガーを強く引く。
バスタークローから、膨大なエネルギーが光の渦となって放出される。メガザウラーも粒子砲
を放つ。2本の巨大エネルギービームは、真っ正面から衝突した。
閃光、振動、衝撃、そして轟音。
これらが全て、ほぼ同時に辺りを包んだ。
2つのエネルギーの衝突は、凄まじい振動と爆発を引き起こした。大地が抉られ、空気が燃え
上がり、ゾイドの残骸が紙切れのように舞い上がる。
その衝撃波に、ファルコンの機体がひっくり返りそうになる。いや、ひっくり返っても全くおかしく
ない。それほどの衝撃だった。
しかし、レイのファルコンは、大地に足を深く踏みしめ、衝撃に耐えている。
装甲が削れ、爪が割れ、足の関節が悲鳴を上げる。
「頑張れゼロ!頑張れ!!」
レイが叫ぶ。その声に答えるように、ゼロファルコンは更に強く足を踏みしめた。
ヴォルフが意識を取り戻したのは、ちょうどその時であった。
うっすらと目を開ける。眼前に巨大な光球が見える。メガザウラーの粒子砲と、レイのファルコ
ンが放つエネルギーの衝突。一見は互角。しかし、ファルコンの機体がもはやボロボロである。
吹き飛ぶのも時間の問題だ。
「くっ・・・・・!」
ヴォルフが、トリガーに手を伸ばした。
360:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 08:55
レイは、半ば死を覚悟していた。
この圧倒的な衝撃波に耐え抜くには、ファルコンはダメージを受けすぎている。愛機の力が
弱まっていくのが、座っているだけで分かる。
「駄目か・・・・・。」
レイが諦めかけたそのとき。
一筋の閃光が、メガザウラーの右足を直撃した。ヴォルフのエナジーが放ったエネルギー弾だ。
メガザウラーがよろける。一瞬だが、パワーダウンした。
「今だ!いけえぇぇぇぇぇぇ!!」
レイが叫ぶ。ファルコンのエネルギーが粒子砲を押し切り、メガザウラーは頭を消失した。
メガザウラーがゆっくりと倒れた。その瞬間、戦場から歓声が上がった。共和国も帝国も関係
なく・・・。
レイは、肩を激しく上下させながら、エナジーライガーに向き直った。コクピットはほぼ無傷だ。
コクピットから下り、近づいていく。
エナジーのコクピットが開いた。ヴォルフは外傷こそあまりないが、もはや動ける体力があり
そうにない。
「レイ・グレック・・・・・。」
ヴォルフが呟く。
レイは、無言で近づくと、ヴォルフに肩を貸し、コクピットから助け出した。
二人の目の前には、戦うことも忘れて歓声を上げる帝国軍と共和国軍がいる。この光景を見て、
二人は同時に思った。
「いつか必ず、この戦いは終わりを告げる。そう信じたい・・・・。」
<The end>
361:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 09:44 p+/n2P38
>>360
スゲー・・・・
362:中山 悟 ◆1AeKISTOmo
04/09/07 10:25
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| | ̄T T ̄T ヽ::::::| < アソパソマソ、新しい顔よ!
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/ ス__,、___ゝ|
ノ / 人 ヽ |
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(⌒ ) (__)
363:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 19:07
また復活したのか?
364:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 19:36
>>349-360
オリジナリティを出しましょうよ共和国軍パイロットさん。
365:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 20:14
このスレ、倉庫格納依頼出してるんだけど
倉庫入りしないんだよね。
なんでだろ。
366:名無し獣@リアルに歩行
04/09/07 23:18
あと2KBでdat落ちなんで、気にしなくていいかと。
367:名無し獣@リアルに歩行
04/09/08 15:08
俺は良くできてると思うよ。
いらんことはせんでええから。
368:名無し獣@リアルに歩行
04/09/08 17:55
>>349~
結構好きだな。磨けばやっぱり化けるんじゃないか?
369:名無し獣@リアルに歩行
04/09/09 21:04
もう次の次のスレまであるんだよね~
370:名無し獣@リアルに歩行
04/09/09 21:06
とりあえず貼っとく
自分でバトルストーリーを書いてみようVol.13
スレリンク(zoid板)l50
自分でバトルストーリーを書いてみようVol.14
スレリンク(zoid板)l50
371:名無し獣@リアルに歩行
04/09/09 23:21
もう容量限界まであと少しではないですか!
めでたしめでたし
372:名無し獣@リアルに歩行
04/09/10 12:18
銀河系の遥か彼方、地球から6万光年の距離に惑星Ziと呼ばれる星がある。
長い戦いの歴史を持つこの星であったが、その戦乱も終わり、
平和な時代が訪れた。しかし、その星に住む人と、巨大なメカ生体ゾイドの
おりなすドラマはまだまだ続く。
平和な時代を記した物語。過去の戦争の時代を記した物語。そして未来の物語。
そこには数々のバトルストーリーが確かに存在した。
歴史の狭間に消えた物語達が本当にあった事なのか、確かめる術はないに等しい。
されど語り部達はただ語るのみ。
故に、真実か否かはこれを読む貴方が決める事である。
過去に埋没した物語達や、ルールは>>2-5辺りに記される。
ルール
ゾイドに関係する物語なら、アニメや漫画、バトスト等何を題材にしても良いです。
舞台となる場所、時間等は制約無しでバトストと書いて有りますが平和でも問題無いです。
自由で柔軟な発想の作品をお待ちしています。
例外的に18禁描写はご遠慮下さい。
鯖負担の軽減として【450~470Kb】で次のスレを用意する事。
投稿された物語の感想等も大歓迎です。