08/06/02 20:49:25 MWUeObOm
小さな牧場と小さな馬主がやってのけた大仕事
無二のダービーは、勝つことも当てることも難しい。無印の1番人気ディープスカイに勝たれてしまった。
が、大外に持ち出してあそこまで完璧に勝たれればもとより納得の無印、無印の責は負うが、自分自身、何の後悔もない。
むしろ、同じ勝負服ばかりが先頭を駆け抜けた近年のGⅠ戦線、暦の上では6月だが、5月の風のように爽やかであった。
久々に「非社台系」のワンツー。小さな牧場と小さな馬主がやってのけた大仕事に心からの喝采を送りたい。
さて、日本ダービー。想像をこえる馬場の回復があって、発走時にはすでに良馬場の発表。
厳密には良馬場とはいえないが、それでも急速に回復したことは間違いない。
直近のむらさき賞(1800)が1分47秒7で決着して馬場差はプラス1秒。また、馬場も内外の差がありトリッキー。
むらさき賞では内ラチ沿いをすくったアグネストレジャーが抜け出し、外に進路をとった1番人気のレゴラスがゴールまで伸びあぐねる馬場。
見た目以上に外が重いのだろう。ともかく内枠、さらに先行馬に圧倒的に有利な馬場コンディション。
最後の目黒記念でもホクトスルタンがラチ沿いを一杯に逃げ切り、馬場の読みにかけては追随を許さない武豊もダービー・デーは徹頭徹尾イン狙いこだわった。
ディープSはそんな状況下での大外強襲。後にも先にも大外から一気に伸びてきたのはこの馬一頭。
勝ちタイムは2分26秒7(同距離1000万特別が2分26秒3)と平凡だが、一頭だけ離れた大外を突いたレースぶりは、ことさらディープSの強さを際立たせた。
一番の勝因は予想以上に馬場の良い1枠1番から絶好のスタートを切れたこと。突き詰めればここに尽きる。
何も追込み馬なら外枠でもと思われるだろうが、物理的には距離ロスがない。
さらに絶好のスタートを切れたことで、鞍上四位の中に心の余裕が生まれる。余裕は平静心を甦らせる。何よりこれが大きかった。
1コーナー手前でインにこだわるブラックシェルの武豊が切れ込んできた時にもスッと前を譲れる。
ディープSに譲って貰った武豊が、そのあと同厩モンテクリスエスの福永に入られ、馬を引き大きく位置取りを下げざるを得なかったのは皮肉な話だが…。
ただ、これも勝負であり、このこと一つをとっても四位と武豊の心の余裕、精神状態がいかに違っていたかもわかろう。
四位は位置取りにこだわらなかった。馬なりで4コーナーまでロスなく進み、直線は「馬場の良い」大外に持ち出すプログラミング。
武豊を筆頭にインにこだわった多くの騎手とはまったく作戦を異にしていた。もちろん、その裏には2400の競馬でベスト1600の競馬をさせるという強い意思が見える。
直線は何のためらいもなく4コーナー15番手から大外に持ち出した。外が伸びないのは事実。
が、四位の持ち出した外は大外も大外。昨日、どの馬も脚を踏み入れていない大外まで持ち出した。なまじ外は伸びなくても、さらにその外は伸びたのだ。
四位のダービー2連覇目はギャンブル。とても1番人気の乗り方ではない。が、プレッシャーを捨て自分をも捨てた。
さらに絶好のスタートを切れたことで、なんの気負いもなく「無」の境地まで到達できた。直線に入って、「行け!」と叫んだ神の声を聞いたはず。
静が動へと転じる一瞬。快勝であった。それもただの快勝というだけはなくウオッカ以上に完璧なダービー制覇あった。
2着には離れた3番手からスマイルジャックが流れ込んだ。流れ込んだというより、四位が神とタッグを組まなければダービーの栄光はこの馬のものであったはず。
折り合いに難のある馬を3番手でピタリ折り合わせる。これも小牧が能力以上の強さを引き出した会心の騎乗であった。
3着は不本意な形で武豊のブラックシェル。1コーナーの不利がなければと惜しまれる。が、それでもおそらく2着は2着。勝ち切るまでは厳しい。
4着にマイネルチャールズ、5着にバックストレッチで持って行かれ気味になったレインボーペガサス。
いずれも10番以内の内枠馬が掲示板を占めた。これも馬場が急激に回復して内有利となった証しであろう。
本命としたクリスタルウィングも結果として大外18番がこたえて6着。ただ、青葉賞で負けたアドマイヤコマンドには先着。
前半で小出しに脚を使わされたことを考えれば一応の走り。欲をいえば競馬にメリハリを欠いた。
いずれにしても2~7着のアドマイヤコマンドまでは横一線。流れ一つで着順は大きく替わる。そんなドングリの有力馬に対してディープSが頭一つ抜けていた。
問題はディープSのこの後、すでに11戦を消化した馬である。いかに常識を超えたタフガイとはいえ、この後の使い方が難しい。
>>608