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戦国ちょっといい話 - 暇つぶし2ch690:人間七七四年
08/08/17 21:47:33 ZF46RlkB
 若き頃、半身不随となった立花道雪は身の回りの事を
専ら小姓達に任せていた。皆、道雪に見込まれた若達で
あった。
 ある時、道雪の屋敷に客が来た。接客は道雪の小姓達
が担当していた。その小姓の一人が緊張のあまり、客の
膳を取り落とし、料理を座にぶちまけてしまった。時は
戦国である。粗相のひとつで戦になる世である。詫びて
腹を切ろうとする小姓を道雪は制し、客に言った。
「私の家臣が粗相を致し、誠に申し訳ない。だが彼は、
ひとたび戦となれば、体の動かぬ私のかわりに、真っ先に
敵に向かって行く、勇敢な奴です。戦の粗相なら致し方な
いが、接客の粗相は主人の責です。どうかお許しくだされ。」
道雪の小姓達も一同に進み出て、「お許しくだされ。」と
平伏した。
これを見た客は、立花主従の絆に深く感動し、粗相を許した。


 後年、道雪は死を陣中にて迎える。最期の命令は
「私の遺骸に甲冑を着せ、敵陣に向けてこの地に埋めよ。もし
この命に背けば、悪霊となって祟る。」であった。
だが家臣達は道雪の遺骸を敵地に捨て置き、逃げる事など出来
ない。皆は決めた。
「道雪様は皆で領地にお運びしよう。もし祟りがあって、道雪
様が枕元に立たれるなら、喜んで腹を切ろう。道雪様に見届け
て頂けるなら、これほどの幸せは無い。」

 生涯三十七度の戦を戦い抜き、主君大友家を支え続けた道雪。
彼が守り抜いたのは大友家だけではなく、戦国の世に稀に見る、
主従の絆であった。
その絆は彼が薫育した愛息、立花宗茂に受け継がれていくのである。



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