07/09/28 12:49:47 UyySTbPW
日本でスピーカー開発のための試聴というと、各社のいろいろなスピーカーを
用意しての、いわゆる「AB比較」がメインになりますが、ヨーロッパでは絶対比較。
つまり、原音のイメージと再生音とが一致しているかどうかが重要になるんです。
たとえば日本から持っていった試作品でダイアナ・クラールのヴォーカルを再生すると、
「彼女のライブには行ったことがあるけど、彼女はもっとマイクに近づいて歌うから、
歌声がこんなに奥に引っ込んで聞こえるのはリアルじゃない」といった話になる。
一般の住宅も含めて、音の響き方がまるで違います。向こうは石造りの文化ですから、
音が良く響いて低音も聞き取りやすい。それに比べると日本の部屋は狭くて響きも
少ないので、音場の広がりや低音の良し悪しが判断しにくいんです。
室内だけじゃなく街そのものの音的な環境もまるで違うということですね。滞在したのは
ドイツのハンブルグ近郊だったんですが、繁華街を歩いていても余計なBGMや騒音がなくて静かなんです。
通りを歩いていると、遠くの教会の鐘がそれこそ路地の隅々にまで染み渡るように響いてくるんですよ。
で、教会がどの方角にあるのかもよくわかる。もしかすると、音が響きやすいから、誰もが余計な音を
出さないように気をつけているのかも知れません。我々は鳴りっぷりというか、聴かせどころを
重視した設計手法が身に付いてしまっているのですが、こういう場所で日々生活している人たちに
評価されるスピーカーを造ることの難しさを、現地に滞在して改めて実感させられました。
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