弐〇〇八年・夏  『百物語』  本スレat OCCULT
弐〇〇八年・夏  『百物語』  本スレ - 暇つぶし2ch50:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 22:03:23 xWLnFyo+0
4コ卵◆hcYOhjUtjg様代理投稿 【真ん中の子供】1/3

以前、ちょっとだけ自転車通勤をしたことがありました。
自分が乗るようになると、それまで気にも止めていなかった他の自転車乗りの人達の姿が、急に目につくようになりました。
それで気がついたのですが、幼稚園くらいの子供を伴走させているお母さんを時々みかけるのです。
そのくらいの歳なら面白がって自転車と競走する子もいるかもしれませんが、
真夏の炎天下に汗まみれで死にそうな顔をしながらヨロヨロ自転車について走る子を見かけるたびに、
『あれって虐待じゃないのかなぁ…?』と思わずにはいられませんでした。

そんなある日、通勤の途中で見かけた自転車の親子連れ。
前籠に1才くらいの幼児、後ろの荷台には5才くらいの女の子、そして自転車について走る3才くらいの女の子。
3人の子供は姉妹なのでしょうか?上の二人は幼稚園の体操着のようなおそろいの服を着ていました。

見た瞬間あれっ?と思いました。
一番上のお姉ちゃんが走るならまだ分かりますが、走っているのは真ん中の子です。
荷台に座ったお姉ちゃんは、ニコニコしながら妹?と手を繋ぎ、
妹の方は繋いだ手を頼りに引き摺られるようにして走っているのです。

51:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 22:04:50 xWLnFyo+0
4コ卵◆hcYOhjUtjg様代理投稿 【真ん中の子供】2/3

心配になって暫くその家族の自転車のすぐ後ろを付いて走ったのですが、公園脇の遊歩道を200メートルほど走ったところで
繋いだ手が離れてしまいました。
お姉ちゃんの方は、楽しそうに『あ~、離れちゃうよ~~』と笑って手を差し伸べますが、
どんどん自転車と女の子の距離は離れ、やがて女の子は走るのを諦めて立ち止まってしまいました。
汗びっしょりで肩で息をしているその子を残して、自転車は止まることなく、先へ進んで行きます。

その子に声をかけようか、暫く迷ったのですが、朝で人通りも多かったし、
お姉ちゃんも妹がついて来てないことが分かっているし、きっと母親もすぐ気づいて自転車を止めるだろう…と
言い聞かせてその場を離れてしまいました。
何より母親らしき人が一度もその子を振り返ることもせず、自転車のスピードを緩めることもなかったのが恐ろしかったので
す。

後になって声をかけなかったことを後悔したのですが、その話を姉にしたところ、
同じような経験があると言ってこんな話をしてくれました。

姉が自分の夫や子供達と一緒に家族旅行に行った時のこと。
4人でバイキング式の朝食をホテルのレストランで楽しんでいると、後から小さな男の子3人を連れたお父さんが
向かいのテーブルにやって来ました。
子供達はみんなお揃いの地味な柄のアロハシャツを着ていて、一目で兄弟ということが分かったそうです。
何故かお母さんらしき人は一緒ではありませんでした。

52:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 22:05:35 xWLnFyo+0
4コ卵◆hcYOhjUtjg様代理投稿 【真ん中の子供】3/3

子供達をテーブルに待たせると、お父さんは子供用の椅子を二つ持って来ました。
当然下の二人の子のために持って来たのだと思ったら、座ったのは一番上の子と一番下の子。
あれっ?と思い、姉は気になってチラチラそちらを見ていたらしいのですが、
その後も父親は、料理を上と下の子だけに取ってやり、真ん中の子には食事も取らせず全く無視しているのです。
真ん中の子は誰にも声をかけて貰えず、椅子に座ることもなく、ただ寂しそうにテーブルの周りをウロウロしています。
姉は、虐待??いやいや、先にお母さんとご飯を食べていたのかも…と、なんとか良い方に考えようとしたそうです。

席が近かったこともあり、その場では姉は黙っていたそうなのですが、レストランを出た後で夫に
『さっきのあれって虐待かしら?』
と話を振ったところ、夫はキョトン…。
『えっ、気がつかなかった?隣のテーブルで、子供3人連れたお父さんが…』
『子供3人?子供は2人しかいなかったよ?』

姉以外の家族には、子供は2人しか見えなかったそうなのです。
姉が絶対もう一人居たと言い張っても、
『あんなに近い場所で長い時間居合わせたんだから、見間違うはずがない』
と全員に口を揃えて言い返されたとか。

姉に『あんたが見た自転車の女の子も、案外他の人には見えてなかったんじゃない?』
と言われ、確かに3才くらいの女の子が結構スピードの出ていた自転車に数百メートルも
伴走するというのもおかしいような気がして来ました。

でも、霊だった、と思いたいだけかもしれません。
もしあの子達が生身の子供だとしたら…
そっちの方が恐ろしいと思いませんか?

-終わり-

53:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:05:54 tVe40ghs0
十一本目の蝋燭が消えようとしています……
4コ卵◆hcYOhjUtjg氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 十二話
吉国氏  お願いします…


54:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 22:07:53 xWLnFyo+0
吉国様代理投稿 「日露戦争」

祖父の叔父が日露戦争に行った時の話。
当時は、部隊間・前線と司令部の連絡は、有線で行われていて、砲撃によりしばしば寸断され、
伝令を使い司令部から前線部隊へ、命令伝達や前線の状況を司令部に報告したりしていたそうです。
彼(祖父の叔父)も新発田連隊付の伝令将校として司令部と前線を何度も行き来したそうです。

夜間も戦闘が継続したそうですが、伝令として両軍の死体を避けながら走っていると、
体が半分吹き飛ばされた者・頭に下顎しか乗っていない者・前進焼け爛れた者など
確実に死亡していると思われる兵が閃光に照らされる暗闇の中を徘徊しているのを何度も見たそうです。

一度、徘徊する頭の半分無い兵をよく見ると、彼の従卒(身の回りの世話をする兵)だった某だと気付き
凝視していると、某の方も彼に気付き「大尉殿、大尉殿」と残った片目から涙を流しながら
彼に近付いて来て手を掴むと彼を導きました。

そこには某の死体が有り、某は背中に弾の抜けた後しかない死体があったそうです。
戦後、金屋村という所の某の家に行き、遺髪を渡し彼の見た某の立派な死に方を伝えたそうです。

【完】

55:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:08:17 tVe40ghs0
十二本目の蝋燭が消えようとしています……
吉国氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 十三話
枯茶 ◆QecdIjob3g氏  お願いします…


56:枯茶 ◆QecdIjob3g
08/08/22 22:09:32 T/DM+P/m0
【013/100】
『悲しい手』

1/3
 数年前の夏、新婚の友人が嫁さんの田舎に帰って経験したことです。
友人の嫁さんには兄弟姉妹が多く、甥や姪がいっぱいいて名前と顔が覚えきれないぐらいだったそうです。
お小遣いをあげるとき、出て行くお金が半端じゃなかったと苦笑いで言ってました。小料理屋で飲みながら
そのときの話しを聞いていたのですが、ふと友人の顔が曇って、実はこんな事があったんだがどう思う、と
話し出しました。ビールのジョッキを丁度おかわりしたところで、まだ酔ってるようでもありませんでした。

 庭先で花火をやることになって、大勢の甥・姪がにぎやかにしていたそうです。上は高2で下は保育前、
それぞれお互いに面倒みながら楽しく準備していて、田舎暮らしで育つのも中々いいもんだななどと思って
その光景を眺めていたそうです。そんな時に、ひとりの女の子がシクシク泣き出しました。お気に入りの花火が
自分に回ってこなくてすねているのか、女の子のお姉さんもまわりのいとこ達も困ったようにしています。
しかしわがままで泣き散らしてるのじゃなくて、本当に悲しそうにすすり泣いているのです。そこで友人はその
女の子の姉妹を連れて、近くの店まで花火の買い足しをすることにしました。

57:枯茶 ◆QecdIjob3g
08/08/22 22:10:18 T/DM+P/m0
2/3
  女の子の姉妹と友人は手をつないで、歌を歌いながら夕方の道を浴衣で歩いたそうです。はにかむような
笑顔になった少女を右手に、少女のお姉さんを左手に握って、友人は少し安心しながらゆっくり歩いていました。
すると道端から突然、蛙が飛び出しました。小さな緑色のアマガエルだったそうです。そして次から次へとそれが
飛び出してきて、すぐに十匹ぐらいの集まりになりました。最初はびっくりしてた少女も、歓声をあげて蛙に近づいて
いきました。小さいひざを折り曲げて蛙を観察しています。

 しかし友人はすぐに妙な事に気づきました。目の前で小さな背中を見せている少女とは、ついさっきまで手をつな
いでいたはずなのに、それが振り払われる感触もなく離れていったことです。では右手に今握ってるものは何?
と右側を見ると、涙の跡をほほに残した少女がいました。顔かたちはそっくりで、でも笑い顔にはなっていない
悲しげな表情のままです。友人は左手の少女のお姉さんを見て、つないだ手を少し振ってみました。お姉さんは
仕方ないねえ、というおませな表情をしましたが、友人の右手の方を見ても何も言いません、気づいてないようです。

 いったいどういうことだろうと、日常の見当識を失ってしばらく茫然としていたと友人は言います。
 やがて蛙を見てた少女も右手に戻ってきて、三人で歩き出しました。そのとき涙の跡の少女は、蛙の少女と
重なり合うように溶け込んでいったそうです。このとき初めて友人は体に震えがきました、が、黙っていたそうです。

58:枯茶 ◆QecdIjob3g
08/08/22 22:11:05 T/DM+P/m0
3/3
 あとで親戚の人達から聞いた話だと、蛙の少女には姉のほかに双子の姉妹がいたのだけど、何年か前に事故で
亡くなったのだそうです。それ以来、蛙の少女は口数が少なくなり静かな独り言が増えた。健気に振舞ってはいるが、
どこか内気な様子になり、はかなげに感じられて、折に触れ周囲の涙をさそってるとのこと。

 でも友人が言うには、みんなで花火をしている時の少女は、泣き顔と笑い顔の二重写しから、とっても楽しそう
な笑顔に変わっていったということです。友人は3杯目のビールを待つ間、遠くを見つめるようにしてため息をつき、
「今になって、本当にせつなく思うのは・・・」と語りだしました。

「あの少女が蛙を見に駆け出したとき、俺の手に残ってた小さな手が・・・」友人は自分の手を見つめています。
「びくっとして心細そうに俺の手を握ってきた・・・小さな指で・・・。」運ばれてきたビールをその手で受け取りました。
「あのすがりつくような感触が忘れられん。」そう言って、ビールをぐいっとあおりました。

 言葉を失くして友人の話を聞いていた俺は、一言こういうのが精一杯でした。「でも・・・幸せそうでよかったよな。」
友人はさびしそうに笑いました。「うちの2歳になる娘な。このごろ一人遊びの中で『お姉ちゃん・・・』っていうんだ。」

-完-


59:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:12:02 tVe40ghs0
十三本目の蝋燭が消えようとしています……
枯茶 ◆QecdIjob3g氏 ありがとうございました…


    ξ
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第 十四話
吉国氏  お願いします…


60:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 22:14:53 xWLnFyo+0
吉国様代理投稿 「馬の警官」

祖母から聞いた話。
祖父が日本の警察から出向で朝鮮総督府高等警察課(単身赴任)にいた頃、祖母と叔父叔母たちは、
祖父の職掌上 「全羅道 茂朱」と言う田舎の外れに居を構え、現地人に裁縫や料理を教え、
孤児を引き取ったりと忙しく過していたそうです。
そんなある日、村出身の警官が馬で村に入ってきました。

彼の話によると
・馬賊がもうそこまで来ている
・茂朱警察署員も向かってきているが間に合わない
・馬賊の構成人数は、これこれでこうである
・署員が到着するまで死守されたし
との事、村の男は火打ち式猟銃を、馬の警官・祖母や叔父達は祖父のライフルを持ち警官の指示の元、
村の外塀・内塀を盾に馬賊に応戦しました。
村人が1人亡くなり叔父も左足に銃創を受けましたが、馬賊は、村を諦め散っていったそうです。
やっと到着した茂朱署員が言うには、
「何の連絡もなしに防備できたのは何故か?」
「貴村民は、いつも銃を携帯しているのか?」との事。
村の代表が馬の警官の話をすると、
「道中、彼の死体を発見しトラックに積んである」
と言われ、村人がトラックの中を覗くと“馬の警官”の死体が頭と胴体別々に置いてあったそうです。
戦後祖父が作らせた、彼の位牌が今でも叔父の家の仏壇においてあります。

【完】

61:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:15:07 tVe40ghs0
十四本目の蝋燭が消えようとしています……
吉国氏 ありがとうございました…


    ξ
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第 十五話
ねこ ◆wnkrgVCnXg氏  お願いします…


62:ねこ ◆wnkrgVCnXg
08/08/22 22:16:30 48EOxlvM0
『キャンプ場にて』  1/2

私が小学5年生のとき、市内のキャンプ場でテントを張り一泊する
という林間学校のようなものがありました。

夜、私のテントから10メートルほどの距離にある男子のテントの上を、
大きな青いシャボン玉のようなものが、ふわふわと飛んでいるのを
友人が見つけました。
「男子が懐中電灯かなんかで遊んでるのかな?」
「でもさ、光って球体にはならないよね」
「じゃあ・・・人魂?」
などと話していると怖くなり、テントの中に隠れました。
すると、その直後土砂降りの雨が降ってきました。

テントは危険だということで、生徒は全員管理棟のような建物に
移動することになりました。
女子は会議室、男子は部屋が足りないので廊下や階段に寝ることに
なりました。

63:ねこ ◆wnkrgVCnXg
08/08/22 22:18:54 48EOxlvM0
『キャンプ場にて』  2/2

部屋に入ると、私を含む同じテントにいた6人で丸く座り、怖い話を
始めました。
(もうすぐ私の番だ)と思っていると、目の端に白いものが見えました。
窓の外に何かあるのかと見ると、白いワンピースを着た女の人がゆらゆら
揺れながら立っています。
土砂降りなのに濡れてない・・・しかもここは3階で、人が立つような
場所はないはずです。
(うわ~見ちゃった~)と思っていると、私の向かいに座った子も
窓の外をチラチラ見ていて、私と目が合うと困ったように笑いました。
白い服の女の人は、「早く寝ろ!」と入ってきた先生に気を取られた
一瞬の間に消えていました。

次の日、帰る道すがら窓の外を見ていた子に女の人の話をすると、年齢や
服装、髪型などが一致したのでゾッとしました。
そして、とどめの一言。
「あの人が揺れてたのはさ、あそこの木で首吊りしてたからだよ」

テントの上を飛んでいた人魂は、あの女の人だったのでしょうか?

【完】

64:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:19:08 tVe40ghs0
十五本目の蝋燭が消えようとしています……
ねこ ◆wnkrgVCnXg氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 十六話
吉国氏  お願いします…


65:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 22:20:41 xWLnFyo+0
吉国様代理投稿「磐越道車道」

磐越自動車道のトンネル工事が沿線のいたるところで行われていた頃。
現場にバックを忘れた現場監督が、建設途中のトンネルに戻ってきました。
その現場は事故が多く「型枠」がはずれ骨折する者、パイプですねを打つ人などがいました。
工期も遅れ、監督もなんとなく作業員全体の雰囲気がおかしいと思っていたそうです。

その発電機の止まり明かりの無いトンネルの中は暗闇で、ヘルメットのライトを頼りに
300mほど先の資材保管庫(プレハブ)へ向かいました。
半分を過ぎた辺りから「ワーー」と歓声とも耳鳴りとも聞こえる音が聞こえ始め、怖いながらも進んで行くと、
とつぜん「バババ」大量の爆竹を鳴らしたような音がしました。
びっくりした彼は、持てる力の限り車に向かい走り、車に駆け込むと現場を後にしたそうです。

後日、ふとしたことから原因が分かりました。トンネル入り口の山の掘削場に苔むした岩を作業員が見つけ、
裏返してみるとそこには戊辰の役での戦死者32名の名前が彫ってありました。
掘削中に気付かず碑のあった山ごと削ってしまい、滑り落ちたまま放置されていた様です。

急遽、慰霊祭が行われ滞り無く落成を迎えることがました。
この話は慰霊祭に参加した際、私が監督から聞いた話で戊辰の役と無関係では無い私は、
悲しい気持ちになったのを覚えています。
監督は磐越道開通後、妻子を残し行方が分からなくなり十数年たった今「死亡認定」されています。

【完】

66:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:20:47 tVe40ghs0
十六本目の蝋燭が消えようとしています……
吉国氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 十七話
徳島ヴォルティス@@サポ ◆K6QUBu7wQQ氏  お願いします…


67:徳島ヴォルティス@@サポ ◆K6QUBu7wQQ
08/08/22 22:22:52 Vdl6qBan0
『夜釣り』

この春の送別会の時、お世話になった係長さんから聞いた話。
その人は釣りが趣味で、特に夜釣りにハマっているそうで。
こんな話をしてくれました。

その日も、四国の某所の岩場にて釣り糸を垂らしていたそうです。

天気は快晴、時刻は深夜。空には月が見え、風も無く、波は穏やか。
良い気分で釣り糸を垂らしていると、漁船が一隻、すーっと近付いてきました。


……おかしい。エンジンの音がしない。それに、電灯の類も点いてない。


前述しましたが、波が穏やかな日のこと。
そして場所的に、船が流されてくるとは考えにくい。


月明かりを頼りに、よく目を凝らして船室の中を見ようとしてみますが、どうしても、
中に乗っている人は見えなかったそうです。


その人は、そそくさと荷物を纏めると、相変わらずゆっくりとした速度で海の上を進んでくる
漁船を尻目に、その場から立ち去りました。


それ以外に色々気味の悪い所にも行ったけれど、やはり釣りはやめられない、とのこと。
趣味人は強し、といったところでしょうか。


(完)

68:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:23:17 tVe40ghs0
十七本目の蝋燭が消えようとしています……
徳島ヴォルティス@@サポ ◆K6QUBu7wQQ氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 十八話
影虎 ◆OTL/VNUGLY氏  お願いします…


69:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 22:24:05 xWLnFyo+0
「追いかけっこ」

仕事帰りにふらりとドライブに出掛けた。
4月の事。ふと満開の桜を見たくなり、隣の市のS神社(桜の名所)まで向かった。
時刻は21:00をとうに過ぎ、誰もいない。道路沿いの街頭がぽつん、ぽつんとあるのみ。
最近買い換えた携帯電話で桜の写真を撮ろうと試みる。
辺りが暗いせいか、今時オートフォーカスがついていないせいか上手く撮影出来ない。
黒すぎる黒に、ほんの一つ二つ薄桃色の丸が写っただけだった。

その帰りに、墓地の前を通った。
小さい頃母から良く聞かされた、人魂が出る墓地の前。
仮に人魂が出たってこちらは車。アクセル前回で逃げ切ればいいと恐怖心を押さえ込み車を飛ばす。
墓地の前を抜けて、一安心して何気なくバックミラーを見た。

いる。
薄桃色の球体がついて来ている。
私はパニックになり、そこから自宅まで一度もバックミラーを見ずに逃げた。

それ以来。
夕方、または夜暗くなってから車に乗る時、私は音楽を大音量でかけている。
それに合わせて結構な大声で歌う。明らかに変な人だが、怖いよりマシだと思っている。
だって、あの日に見た薄桃色の球体がついて来ている。車に乗る度ついて来ている。
最近では自宅近辺に近付けば近付く程恐ろしさが募る。
エンジンを切ってから荷物を抱え、キーを取り、ドアを開け玄関まで猛ダッシュだ。
多分、もう少しで追いつかれると思う。
だってあの時撮った写真の丸が増えている

【完】

70:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:24:16 tVe40ghs0
十八本目の蝋燭が消えようとしています……
影虎 ◆OTL/VNUGLY氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 十九話
笑う猫氏 お願いします…

71:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 22:25:54 xWLnFyo+0
笑う猫様代理投稿 「秋田大飢饉」1/2

天保4年の晩秋、夜も更けた頃、この南村に異形の者が迷い込んできた。
ふらふらとさまよい歩くその躰は人であるが、頭部はまさしく牛のそれであった。
数人の村人がつかまえようとしたその時、松明を手にした隣村のものが十数人現れ、鬼気迫る形相にて

「牛追いの祭りじゃ、他言は無用」

と口々に叫びながら、その異形の者を捕らえ、闇に消えていった。

翌日には村中でその話がひそひそと広がったが、誰も隣村まで確認しにいく者はいなかった。
また、その日食うものもない飢饉の有様では、実際にそれどころではなかた。
翌年には、秋田藩より徳政令が出され、年貢の軽減が行われた。
その折に隣村まで行った者の話によると、すでにその村に人や家畜の気配はなかったとのことだった。
それ以後、近づく者もおらず、今は久しく、その村を知るものはいない。

72:代理投稿 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 22:27:05 xWLnFyo+0
笑う猫様代理投稿 「秋田大飢饉」2/2

重苦しい雰囲気の中で宿の主人は話し終え、そそくさと後片づけのために席を立った。
役人はその場での解釈は避け、役所に戻り、調査台帳をまとめ終えた頃、懇意にしていた職場の先輩に意見を求めた。
先輩は天保年間の村民台帳を調べながら考えを述べた。

大飢饉の時には、餓死した者を家族が食した例は聞いたことがある。
しかし、その大木のあった村では、遺骸だけではなく、弱った者から食らったのであろう。
そして生き人を食らう罪悪感を少しでも減らすため、牛追いの祭りと称し、牛の頭皮をかぶせた者を狩ったのではなかろうか。
おまえの見た人骨の数を考えるとほぼその村全員に相当する。
牛骨も家畜の数と一致する。
飢饉の悲惨さは筆舌に尽くしがたい。
村民はもちろん親兄弟も、凄まじき修羅と化し、その様はもはや人の営みとは呼べぬものであったろう。
このことは誰にも語らず、その村の記録は破棄し、廃村として届けよ。
この言葉を深く胸に受け止めた役人は、それ以後、誰にもこの話は語らず、心の奥底にしまい込んだ。


「 完 」

73:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:28:21 tVe40ghs0
十九本目の蝋燭が消えようとしています……
笑う猫氏  ありがとうございました…


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第 二十話 は しばし、お待ちください…

74:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:32:01 tVe40ghs0
第 二十話
プリスマ氏  お願いします…

75:プリスマ
08/08/22 22:32:59 G93wp+Lq0
「閉まらずのトイレ」

父が通っていた中学校の話。
その中学校の男子トイレには、ひとつだけ使用不可能な個室トイレがありました。
別にいわくつきというわけではなくただ単に故障していただけなんでしょうが、
そのトイレは「開かずのトイレ」ならぬ「閉まらずのトイレ」と呼ばれていました。
誰も使わなかったので鍵をかけられることがなかったためにそんな名前が付けられたそうです。

ある日の休み時間、父のクラスメートがクラスに入ってくるなり、「閉まらずのトイレに人が入っている!!」と言ってきました。
そのトイレが、故障していることはみんな知っていたので、面白がって父と友人数人で見に行くことになりました。

行ってみると確かにトイレのドアが閉まっていました。
みんなで、「ここでしても流せねーよwwwwwwww」「コイツ誰だろう?」みたいな話をしていると、鍵が開いて中から人が出てきました。
その恰好が、真夏にもかかわらず、帽子、コート、手袋、ズボン、マフラーの全身黒づくめで、物凄い目でギロッと睨んだ後、トイレを出て行きました。

みんなで「誰だ?」みたいな話をしていると、一人だけ様子がおかしい奴がいました。
そいつは、最初に『閉まらずのトイレに人が入っている』と言っていた奴です。
どうしたのかと聞いてみると、彼は震えながら話し始めました。


実は、あのトイレには誰かがいるはずがない、と。
彼はみんなをからかってやろうと思って、閉まらずのトイレの内側から鍵をかけて、トイレの壁を登り隣の個室から出たそうです。
では、一体あの個室から出てきたのは誰だったのでしょうか?
その後、しばらくしてそのトイレの鏡が外されたそうです。





76:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:34:06 tVe40ghs0
二十本目の蝋燭が消えようとしています……
ブリスマ さん ありがとうございました…


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第 二十一話
暫定まとめ人 逝きます…


77:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:35:38 tVe40ghs0
第21話 【T岳】 1/2

飲み会で聞いた話。

「T岳って、知ってるよな?2000mもなくて、高山植物も豊富だし、ロープウェイもあるし、
 スキー場もあるところ。最近だと岩登りでも有名らしいな。きれいな山だし、人気あるんだよ。
 地形とかも、沢が多いところも、気をつけていれば初心者にも登りやすいし、面白い。
 けど、な。あれ、結構、人を呑み込んでいるんだよ。7~800名位だったかなあ。びっくりするだろ?
 エベレストですら、登山者なら200人も飲んでないのに、だぞ。 
 だから素人に冬のT岳はお勧めしない。夏に行け。」
「いやぁ、山登りは狂おしく遠慮いたしますwww 自分は高原で温泉派なんでwww」
「ならいいけどな。俺が山登り好きだってのは知ってるよな?技術も体力も専用の装備も勿論ある。
 そういう訳で、冬に行ったわけだ。 でもなあ。天気チェックして、ビバークポイントとか
 万全の準備はしたのに、天候急変した挙句、ホワイトアウトした。
 ま、緊急避難はしたさ。だけど雪はどんどん激しくなってくるし、ヤバイかな?と思ったら…
 足首、いきなりつかまれたんだよ。」
「さすが、”救難活動最後の砦”、小松救難隊ですな。」
「松本まで、切符四枚…松本まで…、って違うわい!
 遭難届出す前から救難隊に足首つかまれたら誰だってびっくりするわ!
 とにかく、足首つかまれたんだよ。
 で、必死で振りほどこうとしたんだけど、なにやっても外せない。
 こいつ、って思って目線を向けたら、さ。無いんだよ。」
「無い?何が?」

78:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:36:24 tVe40ghs0
2/2

「感触は間違いなくある。なのに、
 …自分の足は見えるのに、つかんでいる手がどうしても見えないんだ。
 しかも、これが冷たい手ならまだしも、暖かいんだよ、その手。男の手。
 で、だんだん、だんだん眠くなってきて…
 ヤバイ、寝るな自分、と思っても体が温まってきて、瞼が重くなってきて。
 ああ、もう寝るな、意識も、朦朧として、混沌として、少し寒くて、
 …無意識に腕を組んだ。

 そうしたら、急にトイレに行きたくなったんだよ。しかも切羽詰りまくり。
 冬山で下手にトイレはできんから、慌てて足首の辺り 振り払った。
 眠気も飛んだから、すぐに下山したんだけどな。
 あん時寝ちまってたら、と思うと身が震えるよ。」
「なんで腕組んだら意識戻ったんだろうね?」
「あー、帰ってから見たら、お前さんにもらったお守りを、胸ポケットに入れてたよ。」



「そうだ。あのお守りにまつわる、もう一つの山話があってだな……」


その話はまた、次の順番の時に。【了】


79:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:37:38 tVe40ghs0
二十一本目の蝋燭が消えようとしています……
暫定まとめ人 終了…


    ξ
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第 二十二話
赤井太郎 ◆VMdQS8tgwI 氏 お願いします…


80:赤井太郎 ◆VMdQS8tgwI
08/08/22 22:39:32 GXa4Wwn00
第 二十二話 【登っ下さい】 1/2

去年の夏、友人と2人で奥多摩へハイキングに行きました。
途中でハイキングコースを外れて獣道を登って行ったのですが、1本の木に張り紙がしてあったのです。
【登っ下さい 賞金あげます→】

「なんだコレ?てが無い、てが抜けてるよ、登っ下さいになってる、でも面白そうだな、行って見るかW」
友人が笑いながら僕の顔を見たので、僕も頷き→の示す方角へ登ることにしました。
しばらく行くとまた木に貼り紙がしてありました。
【あと30メートル ガンガレ→】

「ガンガレって、これ貼ったのは2ちゃんネラーかW」

さらに進むとまた貼り紙が「あと10メートル→」
やがて「おめでとう、ゴールだよ、賞金の1万円進呈→」の貼り紙を通り抜けると、平らな丘に出ました。

丘の正面にはゴールの貼り紙がしてある1本の木があり、その手前の地面には青いシート敷かれあった。
そのシートの横には立て札があって、「落とし穴危険」と書いてある紙が貼られていた。
それにしても何だかその場所は臭かった、何か肉が腐ったような臭いがした。
何か嫌な感じがした。
問題はゴールと書いてある紙が貼られた木だった。

その木の幹にはロープが巻き付けられていて、ロープには手錠がかけられていた。
手錠のもう一方の輪には人間の手首が付いていたのです。
しかもその手首は下に垂れ下がっているのではなく、どう見ても空中に浮いてるように見えた。
そしてその指の間には1万円札が差してあった。


81:本当にあった怖い名無し
08/08/22 22:41:07 JeK+ILpI0
VIPからきますた

82:赤井太郎 ◆VMdQS8tgwI
08/08/22 22:44:06 /BL945Ee0
【登っ下さい】 2/3

僕たち2人は青いシートの横を通り、ゴールの木の真ん前まで近よりました。
その手首は本物ソックリに見えました。
浮遊しているトリックが何なのかは分かりません。

「さすがは2ちゃんネラー、タチの悪いイタズラをするよな」友人が呟きました。
その時、僕は誰かに見られているような気がしました。
強い視線を感じたのです。
何かとても不安な感じがしてココに居たらダメだという感覚に襲われました。

「でもこの1万円札は本物みたいだぞ、遠慮なく貰っておこう」
そう言って友人が万札を抜いた瞬間、「うわぁッ!」友人が短い悲鳴をあげた。
今でもその時、何が起こったのか分かりません、瞬間的な出来事でした。
いつの間にか最初に浮遊していた手首が消失して、その代わりに友人の手首が手錠に繋がれていたのです。
僕はサバイバルナイフを取り出して幹のロープを切ろうとしました。
ところがそのロープは特殊な素材でできているのか、全く切れないのです。傷1つ付かなかった。
「下に降りて警察を呼んでくる」
「頼むわ」とションボリして友人が答えました。



83:本当にあった怖い名無し
08/08/22 22:44:30 pAtyU5PW0
別府からきますた

84:赤井太郎 ◆VMdQS8tgwI
08/08/22 22:46:06 /BL945Ee0
【登っ下さい】 3/3

僕が友人に背を向けて青いシートを通り越したあたりで
「ウワアアアアアーッッッ~」という物凄い絶叫が背後からしました、友人の声です。
振り返ると友人が消えてたんです。
そして手錠の輪の中には友人の時計をはめた手首だけが残ってました。
地面と平行に浮遊しながら切り口からは血が滴り落ちてた。
僕はパニックを起こしてその場から走って逃げました。
途中、木々の間から笑い声が響いた
「てがないよ~ヒャヒャヒャヒャッ~」
地獄の底から発せられたかのようのガラガラ声。

僕は獣道を転がるようして下山しました。
友人の家族にも警察にもこのことは言えないでいます。
言えば僕が殺人犯として逮捕されるのがオチだからです。
友人は今でも行方不明のままです。

【完】


85:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:46:29 tVe40ghs0
二十二本目の蝋燭が消えようとしています……
赤井太郎 ◆VMdQS8tgwI 氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 二十三話
影虎 ◆OTL/VNUGLY氏  お願いします…


86:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 22:47:16 xWLnFyo+0
「夜道」

割と最近の話だ。
普段、最寄駅から家までは車で通勤しているのだが、その日はたまたまバスで来ていた。
帰りもバスの予定だったが、思ったより帰宅が遅くなり、終バスは行ってしまっていた。
徒歩20分程度の距離だし、たまには歩くのもいいかと思い、街頭の殆ど無い暗い夜道を歩いていた。
ちなみに、住んでいる所が結構な田舎の為周りは田んぼだ。

蛙の声しか聞こえない夜道をひたすら歩いていくと、ふと違和感を感じた。
何の音なのか…はっきりしないが、何か音が近付いて来る。
敢えて表現するなら「こつ、こつ」という音だった。
女性が履くヒールの音とも違う。
その「こつ、こつ」は次第に「かち、かち」に変わった。そして「かきん、かきん」に。
金属質な音に不安を覚えて辺りを見回すが何も無い。もちろん、誰もいない。

ちょっと足を速めると、その音が私の後ろ5m位をずっと、ついてくる。
急に恐ろしくなって思いっきり走り出すと、その音も、ついてくる。
「かきん、かきん、かち、かち、かち、かち、こつこつこつこつこつこつこつこつ」
駄目だ逃げられない。思い切って振り向いた。

あちこちが壊れた自転車がそこにあった。そして私の真横をすぅっと通り過ぎて行った。
それを目で追うと、丁度T字路だった為左に曲がって、そのまま田んぼの畦道をずぅっと、走っていった。
明かりが無いので、すぐに見えなくなった。音だけが遠ざかっていった。
チェーンが外れかかっていた。誰も乗っていなかった。ペダルも回っていなかった。

何故、誰も乗っていない自転車が動いていたのか。謎のままだ。
追いかけられてばかりである。

【完】

87:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:48:05 tVe40ghs0
二十三本目の蝋燭が消えようとしています……
影虎 ◆OTL/VNUGLY氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 二十四話
徳島ヴォルティス@@サポ ◆K6QUBu7wQQ氏 お願いします…



88:徳島ヴォルティス@@サポ ◆K6QUBu7wQQ
08/08/22 22:49:40 Vdl6qBan0
『某バス乗り場』

母親が先日、語ってくれた話。

ある日、母親の職場の友人が、大阪に遊びに行きました。
(大王四神紀? とかいう韓流ドラマのプレミアムイベントで、ヨン様が来たのだとか)

徳島から大阪に行く時は、よく高速バスが使われます。
その友人も、例に漏れず、某高速バス乗り場から出かけていきました。

数日後、帰ってきた友人はヨン様の思い出を楽しそうに語っていたのですが、ふと、こんな
事を言ったのだそうです。

「あ、Bちゃん、私の使った高速バス乗り場、あそこちょっと気味が悪いのよ! 
 あなた来週あの乗り場使うんでしょ? 良かったら見てきて!」

このBさん、年の頃はまだ二十歳のアルバイトさんなのですが、『色々なものがよく見える人』だそうです。
職場でうめき声が聞こえる、人が壁の中に消えた……等々、体験談は事欠かないんだとか。

Bさんも、翌週に同じように高速バスを使って大阪に行く予定だったので、

「じゃあ、ちょっと見てきます」

そう言って了解し、大阪へと旅立ちました。

……翌週。帰ってきたBさんは、開口一番、こう言ったそうです。

「……居ました。足だけが、沢山」

以来、私は何があろうと、その乗り場は使わないことに決めています。
(完)

89:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:49:59 tVe40ghs0
二十四本目の蝋燭が消えようとしています……
徳島ヴォルティス@@サポ ◆K6QUBu7wQQ氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 二十五話
石原 ◆qW/OVfUbJo氏  お願いします…

90:石原 ◆qW/OVfUbJo
08/08/22 22:51:07 CzeW9iKf0
霊を飼う男 1/3


まだ幼稚園に通ってた頃の話。

たしかその日は、同じ園に通っているママさん連中とでダイエーに買い物に出かけにいっていた。
ダイエーに着くと母親が服を見に行くってんで、オレたち子供はオモチャ売り場で待たされることになった。

オモチャ売り場の一角には自由に遊べるスペースみたいな所があって、退屈しない。
ただオモチャの魔力には勝てなかったらしく、
オレは途中から鬼ごっこをほっぽりだしてプラモデルコーナーの方に足を運んでいた。
で、目を輝かせてプラモを物色していると隣りに変な大人が立っていることに気づく。

背広を着た顔の青白い人。
いや、そいつはガンプラの箱とか持ち上げてたから幽霊ではないと思う。
ただ日曜日なのにサラリーマンの恰好をして、背中に小さな女の人をおぶっているのが不思議だった。

91:石原 ◆qW/OVfUbJo
08/08/22 22:52:22 CzeW9iKf0
霊を飼う男 2/3

背中の女はマリモみたいな爆発した髪をしていて、ゴボウみたいに痩せこけた腕を男の首に巻きつけている。
オレはすぐにその女が幽霊だと悟った。
小さい時は普通にそういうものが見えていて別に恐怖はなかった。
むしろ親切心で「オジサン、背中に人がいますよ」って背広の男に声をかけた。
すると、男は意外にもこっちを見てニコッと微笑んだ。
でも微笑んだだけでその場から離れていってしまった。
オレはなんか知らないが喜んでるからいいかって感じでまた視線をプラモに向けた。

母親はまだ迎えにこなかった。
オレはさすがに退屈して、ベンチに座って目の前に置かれたテレビを見ていた。
当時は何故か延々とキョンシーが流されていた。
それ見てたら横から異様な視線を感じる。見ると、さっきの男が立っていてもちろん女の腕も見えた。
こっちが振り向くとまたニコッと笑って隣に座って来る。

オレはその時なって男が誘拐犯みたいに見え出してきて、怖くなった。
でもなんか逃げれないような雰囲気に押されてその場に固まってしまった。
男はオレの顔を覗き込むと「知ってるよ」と低い声で声をかけてきた。
で「これでしょ?」とか言って、背中の女をブラブラ揺さぶる。
あまりにもあっけらかんとしてやるのでオレは「幽霊、怖くないんですか?」って聞いた。

92:石原 ◆qW/OVfUbJo
08/08/22 22:53:31 CzeW9iKf0
霊を飼う男 3/3


そしたらそいつ
「こうするとね。おっぱいが当たるんだよ。気持ちいいんだよ」とか言って
ニヤニヤ笑い出した。
「え?」
わけがわからない。
幽霊だぞ。幽霊は怖がるものだろと子供ながらつっこみたかった。
でも当時は大人の口から「おっぱい」なんて単語を聞くだけでひどく不気味で
恐怖に身を固めることしかできなかった。

男はさらに「声が聞こえるんだよ。聞いてみなよ」と
グゥッと青白い顔を近づけてくる。オレは「いいです」ってなんとか声を絞って断ると
必死に逃げて友達たちのいる近くの遊び場に飛び込んだ。
それからようやく母親が迎えに来て恐怖から解放されたんだが
男が物陰からずっとこっちを監視しているのがわかってたから
結局、誰にも言えずじまいだった。




93:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:54:05 tVe40ghs0
二十五本目の蝋燭が消えようとしています……
石原 ◆qW/OVfUbJo氏  ありがとうございました…


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第 二十六話
名無しのオプ ◆jsR6FcQCws氏  お願いします…

94:名無しのオプ ◆jsR6FcQCws
08/08/22 22:54:43 qJMatBN50
「ニュース」1/1

今棲んでいる部屋で、たまに変な体験をすることがある。

耳元でボールペンが転がる音で目が覚めたり、
天井の隅から「チッ」という声のような音が聞こえたり。
まあどれも大した内容ではないのだが。

半年ほど前のこと。
その日は疲れがたまっていて、机でレポートをまとめながらうとうとしていた。
ぼんやり聞いていたテレビから、9時のニュースが流れ出したのを機に30分ほど仮眠をとることにした。
座椅子を倒し浅い眠りについたが、すぐに耳元においてあった携帯が鳴り出した。
目覚ましに設定してあったアラームが鳴り出したと思って時間を見ると、9時。9時?
はっとテレビを見ると、9時のニュースをやっている。
しかもよく見ると寝る前に流れていたものと全く同じ内容で、頭の中は「???」で一杯。
おかげで眠気も覚めたので、改めてレポートに取り掛かり何とか仕上げることができたのだが、
あの日、やっぱりタイムスリップしたんだろうか。

【完】

95:本当にあった怖い名無し
08/08/22 22:55:40 d6vJweNR0
VIPから来ます田

96:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:56:23 tVe40ghs0
二十六本目の蝋燭が消えようとしています……
名無しのオプ ◆jsR6FcQCws  ありがとうございました…


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97:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:57:41 tVe40ghs0
第 二十七話  暫定まとめ人、逝きます

【 山、友達 】 1/2

飲み会で聞いた話。

「山の中で、1週間ほど仕事をした時の話なんだけどな。仕事の内容自体はおいておくが、
 ま、ある程度の期間と範囲をこなす必要から、集団になる訳だ。
 勿論、潤いなんざこれっぽっちもない ム ッ サ イ !!(←注:力説)集団だぞ。
 その中で一人、ちょっと変わった奴がいた。仕事は普通、集中する仕事だと有能な位だったが、
 なんつーか、まぁ…無口、なんだが…いや、職人気質とかじゃなくて…精神異常とか、
 境界性なんたらとかそういう変わり方でもなくて…とにかく変わってる奴だった。
 そいつを青森、としておくな。
 
 山の中の仕事、ある程度の班に分かれてやったんだが…ある日の上がりのとき、気づくと
 青森がいないんだ。
 班、と言っても団子状態で動いているわけじゃない。青森がいる場所は転落の危険はない所
 だった。雑木林みたいな感じを思い浮かべてくれりゃいいよ。電力さんみたいに身軽じゃないと
 いけないような場所じゃ、決してない。耐久力さえありゃ。
 とは言え、ほっとく訳にはいかんから、全員で探したさ。知ってのとおり、山の日は釣瓶落とし。
 それでもギリギリまで探して…なお見つからん。かと言って仕事を止めるわけにもいかん。
 一応、報告はして 数日、仕事→捜索、と続いて皆さすがにクタクタになった。
 「一人で山、下りたんじゃねえの?」ってことになって…
 仕事にも障(さわ)りが出るし、捜索打ち切りにしよう、って話になったんだ。

 そしたら、さ。次の日の、早朝だよ。妙に鳥が騒ぐから起き出してみたら、
 寝泊りしている場所からすぐのところに、そいつがボーッと突っ立ってる。
 山に迷ったのか、なんて言いながら皆で取り囲んだんだが、様子がおかしい。
 …そこ、なんで「あっちょんぶりけ」をするかな。
 お前がおかしいのは十分理解してやるから、いいから人の話を聞け。

98:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:58:28 tVe40ghs0
2/2

 皆が口々に状況を聞いたんだが、どこか遠くを見るような目で、ボソボソッと
「作業中、伸ばした手の先も見えないような霧が掛かったのでその場から動かないように作業していた。」
 ってことを説明して…その説明中、「ひひひひっ、ひひっ…」って…
 何かひきつれたように何度も笑うんだ。
 霧なんて、その日は出ていなかった。朝もや位はあったがな。訳もなくゾッとしたよ。
 数日経ってるのに、居なくなってからすぐに戻ったような風体(ふうてい)、
 あー…野郎が数日風呂に入らないとすげぇ臭(にお)いになるのは判るだろ?
 目が痛くなるような臭(くさ)さって奴だ。
 それがない。持っていた携帯食料も減ってない。ひげも、伸びていない。
 それからは仕事はきちんとして、仕事自体はつつがなく終了したよ。
 だけど、な。そいつ、晩飯のあとにふと気がつくと、散歩なのかどうかは知らんがいなくなって、
 また戻ってきたり、【何か】と話をしていたりしていたよ。
 こっちが話しかければ普通に答えが返ってくるが、目が…死んだ鯉のような、
 (舟盛の魚をさして)ちょうどこんな目だったよ。

 もしかしたら、山に取り込まれたのかもな。
 その作業の後、地上に戻ってしばらくして、青森と会社と連絡が取れなくて…
 俺が見に行ったけど、住んでいたアパートは引き払われていたよ。天涯孤独だって 話だったから、
 実家に帰ったわけでもないし、どこ行ったんだろうな。

 ああ、そうそう。お前さんがくれた例のお守り、帰ってきたらなくなってた。すまんな。
 途中までは確かにあったんだが…
 …あれ…見なくなったのは…いや…

…あいつが居なくなってから…だな。」

【 了 】

99:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 22:59:28 tVe40ghs0
二十七本目の蝋燭が消えようとしています……
暫定まとめ人 終了…


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100:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 23:02:31 tVe40ghs0
第 二十八話
あさがお ◆Asagao.7R2氏  お願いします…


101:あさがお ◆Asagao.7R2
08/08/22 23:03:04 3KU2WJXa0
「その交差点は呪われているのだろうか?」

我が家の近くにある交差点。信号つきの交差点。そこの一角に、家を建てるのによさそうな土地が一筆。
日当たりもそこそこよく、周辺施設もそれなりに整っており、なかなか良い土地…なのだが、
今のところそこに家が建つことはない。理由は簡単、そこに突っ込む車が後を絶たないから。
なので現在もそこは畑のまんま。車が突っ込みそうな角のところには交通安全を促す看板が立つ。
(ちなみに私もその交差点でバスに轢かれかけたことがある。無意識のうちにバスのほうに向かって
歩いていたそうだ。リア消のころのお話)

見通しがよく、交通量もそれほど多くなく。それでも年に2~3回はそこに車が突っ込むなどの事故が
起きるのである。何かが衝突する音が起こるたび、周辺住民は外を確認し、そして
「  ま  た  あ  そ  こ  か  」
と言わんばかりに事故現場を目の当たりにする。そしてそのたびにこんなことが囁かれるのである。
「やはりこの交差点は何か呪われているのではないか」
実際、事故現場を見る限り、何かに吸い込まれるようにその土地に突っ込んだと思しきものが
何件もあったのだ。まるでこの土地に何かがいるのかのように。いつしかそこは「魔の交差点」と
言われるようになった。だが幸い、私が知る限りでは今まで死亡事故、重体事故は起こっていなかった。
そう、数ヶ月前までは…

数ヶ月前、まだ夜中のこと。何かが爆発したような、そんな音で私は目覚めた。外に出ると、
いつもの場所で、また事故が起こっていた。二人乗りバイクと乗用車の衝突事故。そして今回は
今までとは違っていた。バイクの後部座席に乗っていた女性が、頭を打ち付けたまま全然動かなく
なっていたのである(後に聞いた話では、既に心肺停止だったとか)。そして数日後、その女性は
若くして帰らぬ人となってしまった。この事故は当事者の不注意によるものと言われてはいるが、
だがそれだけではすまない、何か強大な力がかかっていたかのようにも思える。場所が場所だけに…

そして数ヵ月後、現在。今のところあれから例の交差点では事故は起こっていない。だが、先の事故で
亡くなった女性がもし成仏できてなかったとしたら…悲劇は繰り返されてしまうのだろうか…。

【完】

102:プリスマ
08/08/22 23:06:03 G93wp+Lq0
二十八本目の蝋燭が消えようとしています……
あさがお ◆Asagao.7R2 氏  ありがとうございました…


    ξ
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103:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 23:07:30 xWLnFyo+0
「夜道」

割と最近の話だ。
普段、最寄駅から家までは車で通勤しているのだが、その日はたまたまバスで来ていた。
帰りもバスの予定だったが、思ったより帰宅が遅くなり、終バスは行ってしまっていた。
徒歩20分程度の距離だし、たまには歩くのもいいかと思い、街頭の殆ど無い暗い夜道を歩いていた。
ちなみに、住んでいる所が結構な田舎の為周りは田んぼだ。

蛙の声しか聞こえない夜道をひたすら歩いていくと、ふと違和感を感じた。
何の音なのか…はっきりしないが、何か音が近付いて来る。
敢えて表現するなら「こつ、こつ」という音だった。
女性が履くヒールの音とも違う。
その「こつ、こつ」は次第に「かち、かち」に変わった。そして「かきん、かきん」に。
金属質な音に不安を覚えて辺りを見回すが何も無い。もちろん、誰もいない。

ちょっと足を速めると、その音が私の後ろ5m位をずっと、ついてくる。
急に恐ろしくなって思いっきり走り出すと、その音も、ついてくる。
「かきん、かきん、かち、かち、かち、かち、こつこつこつこつこつこつこつこつ」
駄目だ逃げられない。思い切って振り向いた。

あちこちが壊れた自転車がそこにあった。そして私の真横をすぅっと通り過ぎて行った。
それを目で追うと、丁度T字路だった為左に曲がって、そのまま田んぼの畦道をずぅっと、走っていった。
明かりが無いので、すぐに見えなくなった。音だけが遠ざかっていった。
チェーンが外れかかっていた。誰も乗っていなかった。ペダルも回っていなかった。

何故、誰も乗っていない自転車が動いていたのか。謎のままだ。
追いかけられてばかりである。

【完】

104:プリスマ
08/08/22 23:09:21 G93wp+Lq0
第 二十九話
影虎 ◆OTL/VNUGLY氏  お願いします…



105:プリスマ
08/08/22 23:12:37 G93wp+Lq0
二十九本目の蝋燭が消えようとしています……
影虎 ◆OTL/VNUGLY氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 三十話
せんこ ◆lPNVStsJp2氏  お願いします…


106:せんこ ◆lPNVStsJp2
08/08/22 23:13:42 5hfYmeDC0
「足」

私が高校生のときの学校祭での話です。

タダで昼食が食べられるということで、食堂を手伝う係をしていました。
食堂の二階は合宿用の部屋になっていて、厨房の横に二回へと続く階段があります。
忙しい時間帯も終わり、階段の横にある食器置き場で少し休憩していました。
ぼんやりしていたとき、階段のほうから微かにコツ・・・という音が聞こえた気がして、そちらへ振り返りました。

人間の足首から下、サンダルを履いた足だけが
コツ・・・コツ・・・と音をたて二階へ上っていきました。
白い階段に黒い女物のサンダルが妙に映えていました。
それを見た瞬間ゾゾゾっと鳥肌が立って、私の目はその足に釘付けになりました。
足は、そのまま2段ほど上ってフッと、まるでCGのように消えました。
怖かったのですが、まだ昼間の2時だし幽霊なんて出るわけない、絶対に見間違いだ、と自分に言い聞かせて、そのまま仕事

に戻りました。

それから一月ほどたったある昼休み。
私が食堂で見た足のことなんてすっかり忘れている頃、茶道部の友達からある話を聞きました。
「茶道部がやってる食堂に女の幽霊が出るって1年生の間で噂になっててさ、詳しいことは知らないんだけど
毎回毎回昼の2時くらいに出るんだって。」

直感的に関わってはいけない、と思い、追求はしませんでしたが、
きっと私が見たあの足も、その幽霊の物なんだと思います。

107:プリスマ
08/08/22 23:18:41 G93wp+Lq0
三十本目の蝋燭が消えようとしています……
せんこ ◆lPNVStsJp2 氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 三十一話
テンプレ0/0 ◆tbxFW3dsZU氏  お願いします…


108:テンプレ0/0 ◆tbxFW3dsZU
08/08/22 23:20:30 cRRqw+Sx0
【近所の空き地】

 我が家の近所に、もう何十年も家が建たない、空き地があります。
 大して広くありません。一般的な2階建ての家が建つ程度の広さです。

 そこは、近所では非常に有名な場所で、そこに家を建てて住んだ人は、必ず、「見る」そうです。
 詳しくは知りませんが、母の話によると、テンガロンハットだったか、シルクハットだかをかぶった老人が、ふすまをすり抜けて出てきたこともあるらしい、との事。

 …実は本当に怖いのは、何故、その場所で、噂になる程の怪異が起こっているのか。その理由なのですが…。


 …最初に住んでいた住人は、火葬場で働いていたらしく…

 …遺体を焼く際に、焼け残ったか、事前に外したかで残った、指輪等の貴金属を、回収しては、売り払って稼いでいたそうです…。
 現れる「ありえない者」は、品物の持ち主の魂か、遺品を受け取れなかった遺族の念か…。


 …本当に怖いのは、幽霊なのでしょうか…それとも…。

「完」

109:プリスマ
08/08/22 23:22:52 G93wp+Lq0
重複があったので
>>106が29話
>>108が30話
になります。

110:プリスマ
08/08/22 23:25:31 G93wp+Lq0
三十本目の蝋燭が消えようとしています……
テンプレ0/0 ◆tbxFW3dsZU 氏  ありがとうございました…


    ξ
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111:プリスマ
08/08/22 23:26:59 G93wp+Lq0
第 三十一話
マツリ ◆rr07IS1hMw氏  お願いします…


112:マツリ ◆rr07IS1hMw
08/08/22 23:27:29 tVe40ghs0
" 広い池 "  1/3

聞いた話。

「昔、俺が若い頃に住んでいた場所での話だよ。
 小高い山々の間を抜けていくと、道脇に神社さんと、広い池がある。
 ガイドブックにも載ってるし、イベントも行われるような所。
 怪異が起こると言われている場所も市内には在るが、そこはそんな噂もない、
 すっきりした場所で、渋滞があまりないこともあって自分は好んでその道を使ってたんだ。」

星がキィンと澄んだ音を出しそうなくらいの冬の夜中。しぃんとして、他に通る車もない。
いつものようにその池の脇を通ると、ハンドルを取られた。
「車の運転には自信がある。なんせ、プロの下(もと)で徹底的にしごかれたからな。」
すかさず退避措置を取るが、グイグイと池のほうに引き寄せられる。道路状況によるものじゃない。

「なんぞ…仕方ないなあ。」一人ごち、往来の邪魔にならない場所に車を止め、
道脇の神社さんに一通りのご挨拶をした後、池に向き直り、対峙(たいじ)する。
印(いん)を組み、経文(きょうもん)を唱え、行(ぎょう)を行う。
自分に縁(えにし)のある神仏絡みだったので、適切な処理をしてその日は終了。

数日後。彼女を助手席に乗せてその道を運転すると、池に向かってその神仏の真言を唱え拝む彼女。
「よく判ったな?」
「電波受信は慣れてますよ?wアマ無線三級持ってるしw…ってまあ、冗談だけどね。」
そんな他愛無い会話。

113:暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM
08/08/22 23:28:17 tVe40ghs0
2/3

さらに数日後。
彼女が家に来る予定だったのに、なかなか来ない。日はとっぷりと暮れている。
さすがに心配になり、迎えに行くことにした。いつも来るルートを逆に辿り、探すがいない。
携帯電話もつながらない。
焦る。昼寝で寝過ごしているだけなら良いが。
ペダルをこぐ足に力が入る。まもなく大通り。

夜だというのに、いつにない人だかり。
赤いパトランプが回る。サイレンが響く。カメラのフラッシュ。
路上に散らばるガラスの破片。黒く変色した路面の一部。大きくフロントのひしゃげた車。
…事故。
まさか。まさか。まさか。


「あれ。」
気がつけば、見慣れた風景。いつもお参りする、大きい神社さんの前。

彼女の家 - 大きい神社 - 大通り - 俺の家 - 池、単純に言うと、こんな位置関係。

114:マツリ ◆rr07IS1hMw
08/08/22 23:29:06 tVe40ghs0
「パニックでこんな所まで来ちまったのか?…修行が足りんな。とりあえず、戻らないと。」
自転車を方向転換し、鳥居の方に視線をやれば、そこには彼女が。
「おまっ…!何でこんな所にいるんだ?!うちに来る言(い)うてたろうが!今何時と思ってるんや!」
「あ、ああああ!何でここにいるん?助かったよー!」
半べそかいて子供のようにしがみついてくる彼女。
落ち着いてから話を聞くと、いつものように [ お参りしてから家に来る ] という行動を取り、
参道まで戻ろうとしたら、何度歩いても同じ場所に戻ってしまったらしい。
夜の神社とは言え、その時は「とっても暖かくてほんわりしていた」から恐怖は感じなかった
らしいが、それでも異界から戻れなくなるのでは、と不安になる。
化かされた時にはタバコを喫(の)むと良い、という話があるが、彼女も俺もタバコを吸わない。
仕方ないから、ミルクケーキ(注:加糖練乳にカルシウムを加え板状にした菓子)を
取り出して、一度お供えしてからかじっていたところ、俺の”におい”がしたらしい。
「汗臭くってすまんの。お前が来(こ)んから心配で走り回ったからな。」
「におい、っても嗅覚によるものじゃないよ。存在が発する雰囲気…みたいなもの…かなあ」
においの方向を見れば、そこには今までなかった、いつもの見慣れた参道が延びており、その先に俺がいたらしい。
ミルクケーキをお供えした摂社を見てみれば、池で呼ばれた神仏のお社。
「守って、もらってたんだなあ。…しかしミルクケーキ。」
「…タバコって、ある種の神様仏様には失礼でしょ?ミルクも生臭(なまぐさ)かもしれないけど、甘いお菓子だからいいかなと。」

 その日以外、大きな神社さんに夜中参りしても不思議なことは起こらなかったらしい。


「…さて、と。そろそろ帰らないとうちの【山の神】が怖いからなw二次会で失礼するよ。」
「山の神を守る山ノ神…ペトリョーシカ(注:ロシアの入れ子人形)山ノ神状態ですなwお疲れ様。」

115:プリスマ
08/08/22 23:32:38 G93wp+Lq0
三十一本目の蝋燭が消えようとしています……
マツリ ◆rr07IS1hMw 氏  ありがとうございました…


    ξ
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116:プリスマ
08/08/22 23:35:01 G93wp+Lq0
第 三十二話
水妄想 ◆2nGALdxPuM氏  お願いします…


117:本当にあった怖い名無し
08/08/22 23:36:46 13iUbqjT0
支援

118:水妄想 ◆2nGALdxPuM
08/08/22 23:37:37 7s0Id5CK0
探している(1/2)

随分と昔ですが、群馬県のある湖に友人と二人で旅行に行った時の事です。
湖畔の古い旅館の旧館は、翌日から団体客が入るそうで、その日の泊まり客は
私たち二人だけでした。
旅館の従業員さんも夜になると帰ってしまうとかで、本当に夜には誰もいなく
なってしまいました。

「大浴場も貸し切りだね~!」と最初の内は大喜びだったのですが、夜が更けて
くると、広い旅館内を静けさだけが支配して、だんだん怖くなってしまいました。
広い旅館に二人きり、というのがそう思わせている要因なんだと思い、とにかく
その場はさっさと寝てしまう事にして床につきました。

夜中の何時頃でしょうか、私は寝苦しさに、ふと目覚ましました。
隣の布団では、友人が寝息をたてて寝ています。
何となく灯りを感じで窓の障子に目をやると、外から懐中電灯でこちらを照らす
人がいるようでした。
割と至近距離からのようで、懐中電灯特有の影というか、二重丸のような明かりが
障子にはっきりと映っていました。
懐中電灯は、障子の上をなでるようにグルグルと照らし続け、私はなんだか気味が
悪くなりながらも、目を離すことができませんでした。

「う・・うう~ん・・」といううめき声が聞こえたので友人を見ると、なにやら
うなされていました。
あわてて「どうしたの?!」と声をかけましたが起きる様子はなく、その内また
スースー穏やかな寝息に戻ったので、私もそれ以上気にしませんでした。
そのうち外から障子を照らしていた懐中電灯の明かりもどこかへ去り、眠かった
ので私もそのまま眠りました。

119:水妄想 ◆2nGALdxPuM
08/08/22 23:38:39 7s0Id5CK0
探している(2/2)

翌朝、窓を開けてみてハッと気が付いたのですが、この部屋は3階で、しかも
窓の外はすぐ湖で誰も外には立つことは出来ない構造になっていました。

友人にうなされていた事を聞いてみましたが、「きっと悪い夢でも見てたんでしょ?!」
と、全く覚えていない様子でケロッとしていました。
朝食の時に女将に昨晩の事を話したら、一瞬顔が曇りましたが、
「まぁ怖い夢をご覧になったのねぇ」と一笑され、結局はぐらかされたような
気分のまま、宿を後にしました。

その日の午後、桜の名所と言われる公園で、その公園の管理人さんから
「どこから来たの?」と話しかけられ、色々と話す内に昨晩の話になりました。
そして、その人から聞かされ話ですが。
私たちが泊まった前の年に、その湖で親子の乗ったボートが転覆して子供が
湖に落ちて亡くなったそうです。
そして、助けようと飛び込んだ父親もまた還らぬ人になったとか・・・・。

友人は管理人さんの話を聞くと青くなり、実はうなされている時に金縛りに
あっていたのだと言いました。
誰かが上にのし掛かってきて、すごく苦しかったそうです。
翌朝訊ねた時になぜ知らないフリをしたのかは、金縛り体験が初めてだった
ので、それを認めたくなかったからそうです。

あの懐中電灯の明かりは、何かを必死で探しているようでした。
父親の霊が、自分が死んだことに気が付かずに子供を捜して続けてるような、
そんな気がしました。

【完】

120:プリスマ
08/08/22 23:40:09 G93wp+Lq0
三十二本目の蝋燭が消えようとしています……
水妄想 ◆2nGALdxPuM 氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 三十三話
名無しのオプ ◆jsR6FcQCws氏  お願いします…


121:名無しのオプ ◆jsR6FcQCws
08/08/22 23:40:41 qJMatBN50
「肝試し」1/2

小学生の頃の話。

夏の夜に子ども会で墓地で肝試しをやったことがある。
歩いてたどり着いたその墓地は坂に広がっていて、中央を緩やかな階段が伸びていた。
その階段のふもとがスタートで、上りきったところがゴールというコースだった。

肝試しが始まってしばらくして、順番が回ってきた。
二人一組だったがペアになったやつがかなりの怖がりで、手を握っていたのだがその手がかなり震えている。
そこまで怖がられると、ペアを組んだこちらとしては逆に醒めていくというもの。
最初は雰囲気に呑まれてびくびくしていたが、階段の中盤に差し掛かる頃には周囲を見物する余裕も出てきていた。

ふと、ある墓石に目が止まった。
いや、墓石がどうというのではなく、墓石の影に誰かが居る。
目を凝らして良く見ると、子供のようだ。
モンペのようなものを履いている子供が、かくれんぼをしているように、
足だけ墓石からはっきり出して隠れている。
何だろう、やっぱり幽霊かな?と隣のやつに聞こうと思ったけど、
相変わらずがくがく震えてるので黙っておくことにした。

それ以降は何事もなく、自分達を含めて全員が無事ゴールできた。
最後に大人子供皆で階段を下っている時、あの墓石と子供のことを思い出して、
近くにいた大人の一人に、「あそこで幽霊見たよ」と言った。
相手の顔は覚えていないので、気を引こうとして嘘をついてるな、と思われたのか、
それとも、これはヤバイ、と思われたのか、今となっては分からない。
ただ、その夏限りで子ども会で肝試しは開かれていない事だけは確かだ。

122:名無しのオプ ◆jsR6FcQCws
08/08/22 23:41:31 qJMatBN50
「肝試し」2/2

時は巡ってつい最近のこと。

「昔肝試しやったの覚えてる?」
と当時ペアを組んだやつに、話を振ってみた。
「何のこと?」
「小学生の時にさ、子ども会でやったじゃん。ほら真ん中に階段のある墓地でさあ」
「覚えてない」
怖がっていたのを思い出されたくないのかと最初は思ったが、相手はどうやら本気で覚えてないようだった。
変だなあと思い、そいつと別れた後、当時居たと記憶している親達や友達に片っ端から聞いてみたが皆覚えていないという。
自分は幽霊のこと以外にもいろいろはっきり覚えているのだが。
心の奥では釈然としないものを感じながら、それでもああやっぱりと思っていた。

件の墓地をあれからずっと探しているのだが、未だに見つけられていないから。

【完】

123:プリスマ
08/08/22 23:43:12 G93wp+Lq0
三十三本目の蝋燭が消えようとしています……
名無しのオプ ◆jsR6FcQCws 氏  ありがとうございました…


    ξ
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124:プリスマ
08/08/22 23:47:11 G93wp+Lq0
第 三十四話
テンプレ0/0 ◆tbxFW3dsZU氏  お願いします…


125:テンプレ0/0 ◆tbxFW3dsZU
08/08/22 23:54:06 cRRqw+Sx0
【亡くなった叔父さん】

 私の叔父さんは、数年前に亡くなりました。
 私にいつも笑顔で接してくれる、優しい叔父さんでした。

 叔父さんは亡くなる数ヶ月前から、鬱病のようなものを患っており、嫁である叔母さんに色々と文句を言う等、少々異常な行動が目立っていたようです。
 そして、ある日の夜、叔母さんの家から電話がありました。…叔父さんが、家から居なくなったとの事でした。

 叔父さんの家では畑を持っており、その脇には小さな物置があったのですが、一度、叔父さんが「その物置で首を吊って死にたい」と口にした、という話を聞いた事があり、叔母さんと、私の両親が探しに行きました。
 夜も遅く、仕事もあった為、私は自宅に残り、その日は寝ました。

 その日、私の夢に、その叔父さんが出てきました。
 叔父さんは、私にお小遣いを渡すと、「お父さんとお母さんには内緒だよ。」そう言いました。

 それだけの、短い夢でした。

 次の日、話を聞くと、やはりその物置の中で、叔父さんは亡くなっていたそうです。


 叔父さんは、最後の最後まで、優しい叔父さんでした。

「完」

126:プリスマ
08/08/22 23:54:25 G93wp+Lq0
三十四本目の蝋燭が消えようとしています……
テンプレ0/0 ◆tbxFW3dsZU氏  ありがとうございました…


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第 三十五話
白比丘尼(しらびくに)氏  お願いします…


127:代理投稿 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 23:57:03 xWLnFyo+0
白比丘尼様代理投稿 「訪問者」1/3

母子家族で母と二人きりで暮らしていた17歳の雨の夜の話です。
夜中の3時ぐらいに「ピーー」と玄関のチャイムが鳴りました。
母と話していた私は「こんな遅くに誰だろね」なんて言いつつ、インターフォンをとると女性の声で、
「あの…あの…突然すみません…。今晩、あの…泊めて頂けませんか」と言われました。

いきなりの事に「え?」と聞き返すと
「…あの…私近所のマンションに住んでまして、あの…私会社をクビになって…
あの…もう住む所がなくて…だから泊めて頂きたいと…」

母が私に代わってインターフォンで話はじめてくれたので、玄関の窓越しに訪問者を見てみると女性が一人立っています。
顔はもうどうみても50代なのに金髪の長髪。
白い帽子をかぶっていて、明るい緑のブラウスに赤地に白の水玉のふわっとしたスカート。
右手にはたくさんの物が入った紙袋を持っていました。

その様子をみた私は母に
「玄関に来てる人、絶対変!怖いからもうやめよう!相手にしないで『駄目です』っていって断ろう!」
とまくし立てました。
そしたら母は「ははははは」と笑って
「この雨の中、傘もなく歩いてきたんだって。傘だけでも貸してあげよう」
と言うじゃありませんか。
私はもうその人の外見をみてるので泣きたくなって、こういう事にだけは度胸がある母をうらみました。

128:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 23:58:00 xWLnFyo+0
白比丘尼様代理投稿 「訪問者」2/3


私はリビングで玄関の様子を伺っていたんですがしばらくすると
「家には入れられません!帰ってください!」
と母の怒鳴り声が聞こえました。

玄関ではガチャガチャガチャガチャ!!とチェーンの付いた扉を無理やり開けようとする音と、
閉めようとする母が出す音が大きく響き渡り、17歳の私を泣かせるだけの迫力がありました。

やっとバタン!と玄関が閉まる音がして、母がふぅふぅ言いながら部屋に帰ってきました。
「あの人、やっぱり○○(私の事)の言うとおりだね。頭おかしいみたい。怖かったでしょう、ごめんね。」
と母が言うので、
「なんかされたの?大丈夫??」
と聞き返しました。
すると母はまた笑って
「いやいや、全然大丈夫。今日はもう寝なさい」と。

しかし、この話をしている最中にまた玄関のチャイムが「K_00K_00K_00K_000」と物
凄い勢いで鳴り始め、今度は玄関のドアがドンドンドンドン!!と叩かれました。
玄関の音は30分ぐらいで止みましたが、それ以来しばらくは夜中のお客さんは怖くて怖くて仕方ありませんでした。

129:代理投稿 ◆OTL/VNUGLY
08/08/22 23:59:11 xWLnFyo+0
白比丘尼様代理投稿 「訪問者」3/3

その夜の出来事から5年後、私は一人暮らしを始める事になりました。
明日から新しい部屋で暮らす事になった晩に母と話をしていて
「そういえば、あんな事があったね。私怖くて怖くてめっちゃ泣いた記憶がある(笑」
と話したら、母が
「うーん、あれだけで怖がってるようじゃ大丈夫かしらね、一人暮らし。」
というので、「あれだけで?」と聞いたら母が言うには。

私ね、あの時あなたが物凄い怖がってたから、言わなかったけど、まずあの人ね、雨が降ってる中歩い
てきたっていったのに、全然雨にぬれてなかったのよ。
で、左手にバットを持ってたの。しかも、あの人、男の人だったよ。
私が腰を抜かしたのは言うまでもありません。

「なんで警察呼ばないの〜!!!」と言ったら
「なんだか逆恨みされそうじゃない、家はもう知られてるし」と。

みなさんも夜中の来客にはお気をつけください。
_完_

130:プリスマ
08/08/22 23:59:44 G93wp+Lq0
三十五本目の蝋燭が消えようとしています……
白比丘尼(しらびくに)氏  ありがとうございました…


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第 三十六話
ASIAN ◆cnH487U/EY氏  お願いします…


131:ASIAN ◆cnH487U/EY
08/08/23 00:01:40 tpXTUrdZO
【マンホール】1/3

マンホールって怖くね?
だって、「人の穴」だぜ?
なんかオカルティックな響きじゃん。いや、マジで「人の穴」だぜあれは。

なんて語るのはオレの人生の師であるJ先輩。色々な仕事を転々としていて人生経験の豊富なそのJ先輩は、そんな感じでマンホールの中に潜る仕事をしていた時に体験した話を語り始めた。

マンホールの中に潜って点検だのなんだのをする。そんな陰気な仕事に就いて三日目の事だったそうだ。
新人って事で仕事の先輩といつも一緒に行動してたらしいんだが、その先輩が急に来られなくなったとかで、その日J先輩は他の助っ人さんが来るまでマンホールの前で待機していたんだそうな。
時刻は朝の五時頃。人通りの少ない東北のド田舎の国道の真ん中に立ち尽くしてるのは、とてつもなくうらさびしい。
目覚めのブラックコーシーでも買ってこようかな、なんて考えながら助っ人さんを待っていたそうな。

132:ASIAN ◆cnH487U/EY
08/08/23 00:02:43 tpXTUrdZO
2/3

で、まぁ、想像して貰えば分かる通り助っ人さんって言ったら本来非番の人だ。朝の五時、仕事も無いのに起きてる人なんてまずいない。
一応連絡は付いたみたいだけど、急な話だから助っ人さんが到着するのはかなり時間がかかるだろうってのは、J先輩にも分かった。
だからその時間を有効活用しようと思って、J先輩は一人でマンホールの中に潜る事にしたんだと。
早いとこ仕事に慣れたいってのと生まれ持った出世欲が、J先輩をその場に縛り付けて置かれる事を許せなかった云々。そんな訳でマンホールに一人で降りていったんだそうな。

ヘッドライトつけて、梯子降りて、着水。頭の中にだけ存在するサブマシンガンを構えて、気分はドイツ辺りの特殊部隊。
これからルビコン計画を発動する!とかほざきながら、下水の中をじゃばじゃばとやんちゃに歩き始めた。
本当ならわざわざ下水になんか入らなくても、脇を歩けばいいものを仕事の先輩が居ないからってやりたい放題。まさに悪ガキ。


133:ASIAN ◆cnH487U/EY
08/08/23 00:03:48 tpXTUrdZO
3/3

そうやって特殊部隊ごっこをしながら二つくらい角を曲がった時、“そいつ”を見たんだと。

最初は西瓜が浮かんでると思ったらしい。丸くて、ツルツルして、しましまだったから。

でも、それが西瓜じゃないってのは直ぐに分かった。

水面から出てる上半分。ヘッドライトの光に浮かんだのは、薄い茶色のぶよぶよした表面。そして、ヘッドライトに反射するようにチカチカ光る二つの目。

ぶくぶくっ、て、それの周りが泡立った。

ざばぁっ、て、それが立ち上がった。

最後まで見る勇気なんかへたれのJ先輩には無かった。

速攻Uターン。特殊部隊っつうか敗残兵みたいにうろたえながら、必死こいてマンホールから這いずり出たそうな。

で、ほうほうのていで逃げ帰ったJ先輩は勿論翌日に辞表を届けた。

いやぁ、マジで「マンホール」に「マン」が居るとは思わんかったわ。

J先輩はそんな感じで話を締めくくった。

でもさ、それって本当に「マン」か?本当に「ヒューマン」なんか?なぁ、どうなん?

134:プリスマ
08/08/23 00:06:43 G93wp+Lq0
三十六本目の蝋燭が消えようとしています……
ASIAN ◆cnH487U/EY氏  ありがとうございました…


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135:本当にあった怖い名無し
08/08/23 00:08:28 qIuNs0lLO
ポニョだな

136:プリスマ
08/08/23 00:13:51 QoQnRl6J0
第 三十七話
影虎 ◆OTL/VNUGLY 氏  お願いします…


137:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/23 00:14:37 ayCqAQPk0
「危ない!」


会社で聞いた話。
Yさんが同僚と釣りにいったそうだ。
それもわざわざ、県をひとつ跨いだ北の方へ。

その日はとにかく暑く、日差しも強く、普段デスクワークの彼らはすっかり日焼けしてしまった。
そして高速に乗って帰る途中の事。

「すぐ前にさぁ、車がいたんだよ。ずっと」
「なのに運転してる奴が車間距離詰める詰める。なんか急に向こうが減速した感じでぶつかりそうになったんだ」
「だから俺、『危ねぇッ!!』って叫んじゃった」
「そしたらさ、みんなぽかーんってこっち見てる訳」
「で、『Yさん何言ってるんですか?』とか言われて、それで俺初めて『あぁ見ちゃった』と思ったよ」
「だって前みたら、さっきまでいた赤い軽自動車いねぇんだもの」

彼らは「まさか白昼堂々恐い事が起きるとは思っていなかった」と口を揃えて言っていた。
その後、同乗していたEさんが高熱を出して会社を休んだ。
Eさん曰く、
「熱も高いし真夏だしで熱いはずなのに、顔だけが寒かった」と言っていた。
行楽帰りの怪にはご注意を。

【完】

138:プリスマ
08/08/23 00:16:26 QoQnRl6J0
三十七本目の蝋燭が消えようとしています……
影虎 ◆OTL/VNUGLY氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 三十八話
名無しのオプ ◆jsR6FcQCws氏  お願いします…


139:名無しのオプ ◆jsR6FcQCws
08/08/23 00:18:00 SGq9Jhj70
「トンネルの話」1/2

以前ボーイスカウトに属していたことがある。
詳細は省くが、その頃に顔合わせたことも無い人たちと合宿のようなことをやった時の話。

その夜は親睦を深めるためか、公民館ような建物の2階の、20畳くらいある部屋に皆で雑魚寝をしていた。
自分はそこで知り合った人と話していたが、日が変わるころには座を囲んでいた皆が眠りに落ちていた。
自分も寝るかなと周りを見渡すと、2,3のグループが話している程度だった。
その中で、一番近くに居たグループが怪談話に興じていたので、何とはなしにそちらのほうに耳を傾けていた。

「犬鳴峠ってあるじゃん?」
「ああ、あの」
「あそこに肝試しに行ったことがあるんだ。そん時の話しようか」
「本格的だなw」
「茶化すなwえーと、俺と兄貴と俺の友達と兄貴の彼女で犬鳴トンネルに肝試しに行ったわけよ。
 夜遅かったから、流石に旧道のほうは行けなかったけどな」
「このチキンめw」
「うるさいwで、新道のトンネルを一回通りぬけたけど、まあ何も起こらなかった。
 でUターンしてもう一度トンネルに入ると、向こうから乗用車がやってきてトンネルの中ですれ違った。
 それだけで何も起きずトンネルを抜けたので、またトンネルに入った。
 乗用車とすれ違ってトンネルを抜ける、戻ってトンネルに入…ろうとして友達がポツリと言ったんだ。
 『さっきの車、その前にすれ違ったのと同じ車じゃなかったか』
 そういえばそんな気がしたけど、兄貴の
 『もう一回トンネルに入れば分かるんじゃないか』
 の言葉にみんなOKして突入したら」
「したら?」
「やっぱり乗用車とすれ違っ」

140:名無しのオプ ◆jsR6FcQCws
08/08/23 00:19:19 SGq9Jhj70
「トンネルの話」2/2

その瞬間、窓に車のヘッドライトの光の丸がさああっと横切った。
喋っていた奴も聞いていた皆もそれにビクッとしたが、
「びびったw」「何か出たのかと思ったw」
等々、軽口を叩き合っていた。
ただ話の腰を折られた所為か、怪談会はそれでお開きになった。
自分もそれを機に寝ようと思ったのだが、あることが気になって中々寝れなかった。

2階の窓に車のヘッドライトがはっきり写ることがあるんだろうか?

【完】

141:プリスマ
08/08/23 00:21:27 QoQnRl6J0
三十八本目の蝋燭が消えようとしています……
名無しのオプ ◆jsR6FcQCws氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 三十九話
負け犬 ◆LosingwcPc氏  お願いします…


142:負け犬 ◆LosingwcPc
08/08/23 00:23:38 eZeSX5wG0
「病院の階段にて」 (1/2)


岡山市内の、新幹線高架沿いのとある病院での体験。

夜になってから「祖父が緊急入院した」との知らせを受けて駆けつけた。
幸い大した事は無かったのだが、時計を見れば既に午前零時過ぎ。
無論、大阪方面の新幹線はもう走っていない。

致し方無く、会社に連絡を入れる事にした。
携帯電話を使おうとしたのだが、無論、病院内ではご法度。
そこで、3階から、階段で1階ロビーに出る事にした。

階段に出ると、足音が響いている。
トッ、トン、トッ、トン、と、片足を庇うような、足音が。

「エレベーターを使えばいいのに」

そう思いつつ、1階へと駆け下りた。



143:負け犬 ◆LosingwcPc
08/08/23 00:24:41 eZeSX5wG0
「病院の階段にて」 (2/2)

さて。
夜勤の管理職に状況を伝えて、翌日遅刻する事の承認を得ると、祖父の病室へと戻る。

再び、さっきの階段を上る事にした。

まだ、足音が響いている。
さっきよりもずっと大きい。
・・・なのに、人の気配は全く感じられない。

馬鹿な、もうすぐそこまで来ている筈なのに・・・?

私は思わず、踊り場で立ち止まった。



トッ、トン、トッ、トン、トッ、トン・・・、トトッ、トトッ、トトッ・・・、トッ、トン、トッ、トン、トッ、トン・・・

足音だけが、私のすぐ側を通り抜けて行った・・・。


今は、その病院は山陽道の近くに移転してしまい、その場所にはもう無い。


                               【完】


144:プリスマ
08/08/23 00:25:50 QoQnRl6J0
三十九本目の蝋燭が消えようとしています……
負け犬 ◆LosingwcPc氏  ありがとうございました…


    ξ
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145:プリスマ
08/08/23 00:29:58 QoQnRl6J0
第 四十話
グレゴリー ◆yNuURBcNkQ 氏  お願いします…


146:グレゴリー ◆yNuURBcNkQ
08/08/23 00:30:31 Dm5O7tk80
廃屋 1/2

ついこの間のお盆のことなんだけど、休みが取れたので友達と山にドライブに行った。
その山に、結構地元じゃ有名な廃屋があるんだけど、いい機会だから見にいくかってことになった。
友達の車で、山道を登ること数十分。
廃屋が見えてきた。友達は山道の脇に車を止めて、おれたちは外に出てみることにした。
廃屋は、草が茂る山の、結構上の方にあって、とてもじゃないけど登って探検なんてできなさそうな
ところにあったんだ。
友達は記念にと写メをとっていた。おれも取った。


147:グレゴリー ◆yNuURBcNkQ
08/08/23 00:31:36 Dm5O7tk80
廃屋 2/2

下から見上げるだけの廃屋探検も終わって、おれたちは車でまた山道を下っていた。
そのとき、友達が、
「しかし夏だよな。よくあんなとこまで登るよ」
と言った。おれは意味がわからなくて、
「なにが」
と聞いた。
「あそこ、人いたじゃん、結構」
「いねえよ!」
おれを怖がらせようと思ってるんだろうなと思った。そしたら友達は運転中なのに、びっくりした
顔でおれのほうを見て、
「いたって。あの窓から人が見えたろ」
「いねえよ、おれたち以外車だって通らなかったじゃん」
おれがそう言うと、友達ははっとしたみたいで、道のはじに車を止めて携帯を取り出した。
「絶対いたって。だって写メ取ったし!」
言いながら友達は携帯をいじって、それから固まった。
おれも自分の携帯を確認したが、そこには見上げるアングルでの廃屋が写っていた。
もちろん人なんて一人もいない。
友達の携帯を覗くと、やっぱりおれの携帯の写真と同じような写真だった。
おれ「どんな人だったんだよ」
友達「普通の人だよ。男も女も混じってさあ」
で、そんな会話をしておれも友達も気づいたみたいだった。
あんなやぶの中、夏の格好で歩いていけるはずがない。
その廃屋への道なんてないのは、地元の人間なら誰でも知っているはずだった。
けものみちとかも多分ないんじゃないかと思う。

友達はその後も始終、絶対いたって、と繰り返していた。




148:プリスマ
08/08/23 00:33:27 QoQnRl6J0
四十本目の蝋燭が消えようとしています……
グレゴリー ◆yNuURBcNkQ 氏  ありがとうございました…


    ξ
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149:az ◆CdcNSgwAiM
08/08/23 00:38:23 tgxRk/Dr0
第四十一話
うめ2 氏  お願いします…


150:うめ2
08/08/23 00:39:53 m8PDj1p50
  入れ歯

 ネットで知り合いから聞いた話。
 そいつの近所で、老人が孤独死していたそうだ。木乃伊化していて、ちょっとだけ
ニュースでも報道されたらしい。
 ただ、ニュースでは、その老人の周囲に、なぜかものすごい数の入れ歯が置かれて
いたという話はされなかった。
 二十個とか三十個くらいの入れ歯があって(これはソースによって数が違う)、ま
るで魔よけみたいに木乃伊化した布団のまわりに幾つもの入れ歯が「外向き」に配置
されていたという話。
 しかも入れ歯が一つ一つ「あきらかに別人のもの」だったらしいんだが、警察だと
公式発表はなし。
 なぜかマスコミも報道自粛して、よく地元の警察署の人が通う飲み屋から、どうも
その噂が漏れたらしいけど真相は不明。
 地元では諸説流れたらしいけど、なんか御祓いとかして、いまはその家は更地になっ
てるそうな。

  【完】

151:az ◆CdcNSgwAiM
08/08/23 00:41:43 tgxRk/Dr0
四十一本目の蝋燭が消えようとしています……
うめ2 氏  ありがとうございました…


    ξ
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第四十二話
影虎 ◆OTL/VNUGLY 氏  お願いします…


152:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/23 00:42:37 ayCqAQPk0
「ホテルの怪」

前回、前々回と私は「ラブホテルの怪」という話を投下している。
今回はラブホテルではない、普通のビジネスホテルであった話。

私の職場があるS市は政令指定都市でもある為、ビジネスホテルも数多くある。
その中でも珍しく、温泉の出るホテルに泊まった。

オサレを意識しているのか何なのか、大浴場はやたらと暗かった。
間接照明がふんだんにあるものの、肝心の足元が見辛く一度転んだ。
すりむいた膝を抱えて大きい湯船に沈んでいると、背後の小さい水風呂に誰かが入る様な音がした。
私一人しか入ってなかったはずだがな?と思いつつ振り向くと、薄暗がりの水風呂ににぼんやりと黒い物が沈むのが見えた。
心の中で「見なかった見なかった見なかった」と唱えていたら、水風呂の隣のサウナの扉が開く音がした。

反射的に振り向いて後悔した。
サウナに扉にはめ込まれたガラスに黒い手形がついていた。

びしょびしょの体で大浴場を飛び出し、部屋まで逃げたのは言うまでもない。

【完】

153:az ◆CdcNSgwAiM
08/08/23 00:46:06 tgxRk/Dr0
四十二本目の蝋燭が消えようとしています……
影虎 ◆OTL/VNUGLY 氏  ありがとうございました…


    ξ
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第四十三話
ほうこ ◆lPNVStsJp2 氏  お願いします…



154:ほうこ ◆lPNVStsJp2
08/08/23 00:48:58 x3J5DWBK0
「お別れ猫」

私が小学生のときに体験したすこし不思議な話です。
私の住んでいた地域には猫が集まるいわゆる「猫屋敷」があります。
私は猫が好きなので、ちょくちょくその屋敷へ訪れていたのですが、
私のことがよほど嫌いなのか、全く近寄らせてくれません。
それでも猫たちが可愛いので雨の日も風の日もめげずにせっせと通っていました。

そんなある日、どんな食べ物を持っていてもこちらを見向きもしなかった、とくにお気に入りの白猫が
何ももっていない私に近寄ってきてくれたのです!
ついに報われた! 嬉しくて嬉しくて、その白猫をなでまわしまくっていました。

その翌日。近所の商店に行った帰り道、なんだか遠回りしたい気分で、いつもとは違う道を帰ることにしました。
結構入り組んだ道だったのですが、分岐路のたびにこの道を通らなければ!と思い進んでいきました。
徐々に自宅の方向から離れていってしまいましたが、とくに気にしませんでした。

そのまま15分ほど歩くと、道の端になにか白いぼろきれのようなものが落ちています。なんだろう、と思い近寄ってみました。
見た瞬間、凍りつきました。
ぼろきれのようなものは、車に引かれて、無残な姿になったあの白猫だったのです。
うつろな瞳が、私のことを見つめているように感じられて、なんだか涙が出てきました。

そして、悲しいのと同時に、私は感じました。
昨日私に近寄ってきてくれたのは、いつも猫屋敷に通っていた幼い私に、この白猫なりに別れの挨拶をしてくれたんだ、と。

おわり

155:az ◆CdcNSgwAiM
08/08/23 00:50:20 tgxRk/Dr0
四十三本目の蝋燭が消えようとしています……
ほうこ ◆lPNVStsJp2 氏  ありがとうございました…


    ξ
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第四十四話
ASIAN ◆cnH487U/EY 氏  お願いします…

156:ASIAN ◆cnH487U/EY
08/08/23 00:51:13 Kciij6DJO
【蝋燭】1/4

今年もオレはこの百物語に、自前の蝋燭を持って参加しているんだぜ。今年は変な事起きなきゃいいが……。

で、蝋燭っつう事でこないだ秋葉行った時に体験した妙な出来事をちょいと報告するわ。

高校の時の友人が東京に居を構えている。地元組のオレは農村に籠もっているのに耐えきれないんで、夏はそいつのアパートに赴きささやかな東京ライフを満喫するのが、毎年の恒例となっているんだ。

で、今年も行ってきたんだわ。
一日目は酒飲んでVIP見てグダグダして終わり。二日目は秋葉行ってエロゲ物色してイリュージョンではぁはぁして終わり。

で、問題の三日目。また秋葉行ったんだけど、オレのリクエストでその日は「ツンデレ喫茶」に行こうって事になった。

恥ずかしながら小生、田舎ヲタな手前未だこの歳にして「ツンデレ喫茶」なるものは経験した事が無い。

入店直後に水かけられるのか?やっぱりツインテールなんか?やっぱり必要以上にどもるんか?

期待に胸が膨らむ。

157:ASIAN ◆cnH487U/EY
08/08/23 00:52:14 Kciij6DJO
2/4

そんな訳で始まった「ツンデレ喫茶ツアー」。

しかし、ああいうのは探せば探す程になかなかどうして見つからないもんなのな。
いい加減二人とも歩き疲れて、「次にメイド喫茶かツンデレ喫茶かそれらしいのが見えたら、とにかくそこに入ろうぜ」という事に。

果たして長い旅路の果てにたどり着いたのは電気街の裏通り、地下へと続く階段の先に店を構えるメイド喫茶であった。

いらっしゃいませ御主人様。入店一番にメイドの調教がなってないのにオレのフラストレーションはマスタースパーキン。

二人、むっつりしたままアイスコーシーを頼んで壁際のテーブル席へ腰を下ろす。

なんだよいらっしゃいませって。嘗めんなブス、なんて小声で愚痴りながら何となく店内を見渡す。

ジャズが流れるお洒落なメイド喫茶。天井にジントニックの瓶なんか下げちゃって。イケメン自重とか下らない冗談を言ってたんだ。

店内はガラガラ。オレらの他には二、三人ぐらいしか居なかった。

158:ASIAN ◆cnH487U/EY
08/08/23 00:54:02 Kciij6DJO
3/4

ふと、隣のテーブルに目がいく。一人がけのテーブル。イスは無い。なのに、まるで客席みたいに並んでる。テーブルの上には一本の蝋燭。ガラスケースに入ったそれは、そこいらで売ってそうな安っぽいもん。インテリアだとしても、なんだかちゃちい。
調教のなってないメイドを呼んで、聞いてみた。

この蝋燭って何ですか?

あ、御主人様、それだけは絶対に触らないで貰えますか?

なんで?

いえ、とにかく触らないで下さいね。

いや、なんで?

火が消えたら、落ちるんです。

何が?

さぁ。

はぁ?

私も存じ上げません。

は?

ただ、「落ちる」としか聞いてません。先輩がそう言ってました。

ガラスケースのてっぺんには、空気穴が空いている。触るな。つまりは消すなって事か?腑に落ちないけど、これ以上聞いたらうざい御主人様になっちまう。アイスコーシーを手早く片付けて、煙草を吸いながらぼうっとまた店内を見渡していた。

159:ASIAN ◆cnH487U/EY
08/08/23 00:56:20 Kciij6DJO
4/4

やっぱり気になる。視線は自然とさっきの小さなテーブルへと向かう。
何のことは無い、サイドテーブルのような外見。その上の、ガラスケースに入った蝋燭。

よく見ると、テーブルの足の周囲が他の床よりなんだが窪んでいる。

そんな重いのか?そう思ってテーブルに手をかけ、引っ張ってみる。簡単に引けた。

御主人様、さっき言いましたよね?

あ、すんません。

……行ってらっしゃいませ。

なし崩し的に会計を済ませ、地上の空気を目一杯吸い込む。

なぁ、次こそは「ツンデレ喫茶」行こうぜ。

二人、煮え切らないまま歩き出した。

160:az ◆CdcNSgwAiM
08/08/23 00:59:26 tgxRk/Dr0
四十四本目の蝋燭が消えようとしています……
ASIAN ◆cnH487U/EY 氏  ありがとうございました…


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第四十五話
しましまのごろごろ ◆lhM8WiMBbk 氏  お願いします…

161:しましまのごろごろ ◆lhM8WiMBbk
08/08/23 01:01:02 GdDf91KL0
【 成仏 】 1/1

じいちゃんの昔話。

出張先で人の気配を感じて、夜に目が覚めた。ふと目を動かすと、枕元に人がいた。
いわゆる、兵士のような格好をしている。
「誰だ?」と尋ねると、何かボソボソと話しているような音が聞こえる。
「聞こえん。」「…私は…行かなければなりません…○○に…」
しばらく聞いていて、どうも先(さき)の戦(いくさ)の若い兵士のようだ、と感じた。
狭いシングルルームのベッド、男に見下ろされているのはあんまり気分の良いものではなかった。
しかたなく起き上がる。卓上には晩酌にしていた純米吟醸酒、塩、手付かずのおにぎりがあった。

そいつの前に酒、塩、にぎりの米部分をちぎり、
「お前の気持ちはよく判った。だが、太平洋戦争は終わったんだ。もう家族の下へ
 帰っていい。どうせ俺たちも、戦が始まったら靖国神社に行くことになるさ。
 だから、それまで 家族の下(もと)へ戻っていて大丈夫だ。次の戦が始まるまでゆっくりして来い。
 俺らがそっちに逝ったら、その時はよろしく頼む。今度の休みにでも、靖国で会おう。」
と語りかけ、手を合わせた。

しばらくして、空がぼんやり明るみかけた頃、その兵士の幽霊は「ありがとう…」と
言いながらうっすら消えて無くなっていった。
その後、ひいじいちゃんの実家に行ったときにアルバムを見ていたら、その幽霊に
雰囲気の似た、笑顔の少年がひいじいちゃんと共に写っていたそうだ。

「今の日本は武力抗争はしてなくても、じわじわ侵略されている真っ最中だから、
 戦争中っちゃ戦争中なんだけどな。変態新聞社騒ぎとかが起きてるのもその一環さね。
 お前ら若いもんがもっと確(しっか)りせにゃいかんぞ。」

じいちゃんは未だに矍鑠(かくしゃく)としていて、8月と12月には靖国神社へお参りを欠かさない。




162:az ◆CdcNSgwAiM
08/08/23 01:05:19 tgxRk/Dr0
四十五本目の蝋燭が消えようとしています……
しましまのごろごろ ◆lhM8WiMBbk 氏  ありがとうございました…


    ξ
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第四十六話
◆ChC8N5VHp. 氏  お願いします…

163: ◆ChC8N5VHp.
08/08/23 01:06:56 36ZuMfwn0
1/2

現在、私は都内に住んでいますが、ちょうど2年前までは大学の関係で某県内に住んでいました。
もともと霊感めいたものは中学生のときから感じていたのですが、それほど印象に残るような経験もなく、
自分でもそんなことは忘れかけていた大学2年のころ…。

某県に来て1年目、最初に借りていたアパートが最寄りの駅や大学から離れていたうえ、
自転車を2回も立て続けに盗まれ嫌気がさしていた私は気分転換も兼ねて引っ越す決心をしました。
今度住む所は絶対に急行の止まる駅の近くでオートロックのマンション、
しかも新築などと勝手な妄想を膨らませつつも、
そんなとこ住めるわけねーだろと自分につっこみ入れたりしてたのです。
が、なんと2,3日後にほぼ思い描いていた物件があっさりと見つかってしまいました。
しかもケーブルテレビが完備、近くにコンビニと、
マンションから半径5~60メートルのなかで大体のことはできてしまうと、
本当に夢のような環境を私は7万円で手にいれることができたのでした。
しかし、今考えると疑問に思えることも結構ありました。
隣が病院ということもありますが、もともと、そのマンションは賃貸物件ではなく分譲物件だったらしく
バブル以降に建てたせいもあってか売れ行きはよくなく、結局は賃貸物件にしてしまったらしいのです。
にもかかわらず、各階には、かなりの空き部屋があったように思えました。

入居当日、そんなことは一切気にせず私は友人と2人で一気に引っ越しを完了させ、
夕方には友人も帰宅、私は一人でテレビを観ながら夕食をとっていました。
観ていた番組は怪奇特集のようなもので、再現フィルムを流していました。
で、そろそろそのフィルムもクライマックスを迎えようとしたと同時に
テレビ以外の全ての電化製品がストップしてしまったのです。
呆気にとられた私は今現在自分の置かれている状況がまったく理解できず、
しばらく茶碗を持ったままじっとテレビをみつめていました。
その後すぐにブレーカー等を調べてみましたが特に問題はありませんでした。
ただ、取り替えたばかりの蛍光灯が既に切れており、
なによりもテレビだけが映っていたというのも納得しがたいことでした。

164: ◆ChC8N5VHp.
08/08/23 01:07:53 36ZuMfwn0
2/2

その日以来、さまざまな現象が起きはじめました。
金縛りは当然のようにほぼ毎日なり、日がたつにつれ事態はどんどんエスカレートしていきました。
金縛りが生活の一部となったある日、私はソファーでうたた寝をしてしまいました。
そうするといつものように金縛りにかかってきました。
気にもしないでそのままうたた寝に興じていた私はその日に限り電話が鳴っているのに気付いたのです。
こんな時電話してくれても出れるわきゃねーだろと思いつつも、
この日は何故か反抗して体を動かしてみたくなりました。ところが、なんとかながらも動くんですよ!
そして電話口にでた私を待っていたのは、「ヒヒヒヒ・・・ヒヒヒヒ・・・」
すすり泣くような笑っているような何とも形容しがたい女性の声でした。
ものの2,3秒のことでしたが今でもはっきりと覚えています。

その後もロフトから蹴落とされそうになったり、足をひっぱられたり、
急にのしかかられたりということが頻繁に続いたのですが何故か出ていく気にもなれず、
とりあえずは友人にすすめられて毎日お水をお供えはしていました。
気分的には楽になりましたが、相変わらずその手の現象は延々とつづき、いよいよ卒業となり私は上京することになりました。

既に引越先は一か月半まえに決め、あとは引っ越すのを待つのみとなったある夜、ついに出ました…。
仰向けになって寝ているといつものように金縛りになりましたが気にせず寝ていると
耳元で誰かがしゃべっているように思えたのです。
何気なく目を開けてみると、もう鼻と鼻がぶつかるくらいのとこに凄い形相をした
髪の長い女の人が私を睨みつけていました。
さすがにその時は心底恐怖を感じ、すぐに目をつぶり心のなかでお経を唱えていました。
気がつくと汗だくで朝をむかえていました。

現在、そのような現象はもうほとんどおこらず平和に暮らしておりますが、
あの当時わたしの隣の部屋の入退居が異常に激しかったのも今となってはうなずけます。

【了】

165:本当にあった怖い名無し
08/08/23 01:07:56 HD0m9j1X0
最後の段が蛇足としか言いようが無い

166:az ◆CdcNSgwAiM
08/08/23 01:08:37 tgxRk/Dr0
四十六本目の蝋燭が消えようとしています……
◆ChC8N5VHp. 氏  ありがとうございました…


    ξ
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第四十七話
テンプレ0/0 ◆tbxFW3dsZU 氏  お願いします…

167:本当にあった怖い名無し
08/08/23 01:10:29 jBtZnPJd0
【作り話が呼んだ…】
 小学校の修学旅行で、長崎へ行った時の事です。
 ホテルで、就寝時間近くになり、担任の先生がその旨を伝えに部屋へやって来ました。その時、先生は、開いていたカーテンを見て、面白そうに言いました。
 「皆はカーテン閉めないのか。」
 そして、先生は、ある話を語り始めました。
~~~~~~~~~~
 何年前だったかな…あの事故があったのは。皆と同じで、修学旅行でこの部屋に泊まった生徒達がいたんだ。夜になって、その生徒達が、部屋でふざけて遊んでいたんだって。
 そうしているうちに、一人の生徒の上に部屋の布団を積み重ねて、その上に他の生徒が乗って遊んでいたんだって。いじめじゃなくて、本当に、ふざけてやってたそうだよ。
 そしたら、布団の下にいた生徒が、動かなくなって…確認したら、窒息してなくなってたんだって。

 …それ以来、修学旅行の一団が泊まると、楽しそうな雰囲気につられて、その生徒が窓から覗く顔が映るそうだよ…。
~~~~~~~~~~
 その話を聞いた私達は、怖がって半泣きになりながら、慌てて寝ました。

 …その日の夜中…。
 「う、うわぁ!ああああああああ!」
 同室の友人の、物凄い悲鳴で、目が覚めました。誰かが電気をつけると、その友人は部屋の隅で、泣きながら震えていました。それは、尋常ではない怖がり方でした。
 部屋の誰かが先生を呼びに行ったらしく、先生が慌てて駆け込んで来ました。

 …怖がっていた友人に話を聞くと、「窓に顔が映った」との事。
 先生は「俺の作り話が怖かったのか、悪かったな。」そう言ってなだめました。そう、先生の話は、作り話でした。
 しかし、友人は取り乱したまま、一向に落ち着く気配がありません。
 仕方がないので、先生がホテルの人を呼びに行きました。ホテルの方は、部屋に到着すると、私達に話を聞きました。

 友人が「見た」ものの話をすると、ホテルの人が言いました。
 「ああ、またですか…」

 …実は、私達が泊まっていた部屋で、数年前に生徒が一人亡くなる事故があり、夜になると、窓に顔が映るという報告が何件かあるとの事でした。

 …先生の作り話は、偶然にも、その事故を言い当てていたのでした…。もしかすると窓の顔は、作り話に呼ばれて…。

「完」

168:テンプレ0/0 ◆tbxFW3dsZU
08/08/23 01:13:36 jBtZnPJd0
すいません。>>167は私です。

169:az ◆CdcNSgwAiM
08/08/23 01:13:42 tgxRk/Dr0
四十七本目の蝋燭が消えようとしています……
テンプレ0/0 ◆tbxFW3dsZU 氏  ありがとうございました…


    ξ
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第四十八話
けい ◆6FDNQyHaxM 氏  お願いします…

170:けい ◆6FDNQyHaxM
08/08/23 01:15:02 8Xvn3BYq0
「初めての金縛り」 1/2


3年前の9月の話です。
その日は部活の大会前日で、友人(A)がうちに泊まりに来ていました。
県外への遠征で朝5時出発だったのですが、2人なら寝坊することもないだろう、と思ったのです。
自分は普段どおりベットで、Aは座椅子でタオルケットをかけて寝ていました。

夜中(何時ぐらいか分かりませんが)、人が歩く気配がして目を覚ましました。
しばらくするとトイレの水を流すような音がしたので、
「ああ、Aがトイレ行ったのか」
と、その時は納得しました。

そしてAが部屋に戻ってきた瞬間、突然金縛りが起きました。
それまで金縛りというものを経験したことのなかった自分は、一気に眠気が覚めてパニックになりました。

身体は全身が攣ったかのように動かない。動かそうとしても押し付けられる感じがする。
目を瞑ろうとするけど、今閉じたらやばい気がする(一種の強迫観念のようなものだったと思います)。
遠くで地鳴りがすると思ったら、いきなりベットが揺れ始める。まるで地震のように。


171:けい ◆6FDNQyHaxM
08/08/23 01:16:36 8Xvn3BYq0
2/2

何がなんだか分からずに必死にもがいていたのですが、ふとさっきの人の気配がしました。
Aかな?と思ってなんとか気配の方を見ると、ベットの傍に黒くてぼやけた影が立っていました。
さすがにこれはAじゃない、何かやばい、と感じて目を閉じようとしますがやはり閉じることができません。
2~3分ほどそのまま見つめていたと思います。
急にその影がはっきりし始めて、気付くと見知らぬ女性が自分を見下ろしていて・・・
その後は覚えていません。

朝4時ごろ、今度こそ本当にAがトイレに行って、自分も起きました。
Aに、「お前夜中トイレに行った?」と聞いたけどAは行かなかったそうです。
「なんかうなされてたみたいだけど大丈夫?」と言われたので金縛りのことを話すと、
「ふーん。そういえばうちではしょっちゅう黒い影とか見るな。1人ここに持ってきてしまったのかもなw
まあ、寝ぼけてたんじゃね?w」と言われました。

それ以来、3ヶ月に一回くらいのペースで金縛りにあいます。
その時は必ず、地震が来たわけでもないのに部屋が揺れて、
そしてベットの傍には黒い影が立っています。

【完】

172:az ◆CdcNSgwAiM
08/08/23 01:18:02 tgxRk/Dr0
四十八本目の蝋燭が消えようとしています……
けい ◆6FDNQyHaxM 氏  ありがとうございました…


    ξ
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第四十九話
水琴窟 ◆FMYPc6cKQE 氏  お願いします…

173:水琴窟 ◆FMYPc6cKQE
08/08/23 01:19:16 wGYF0k8W0
-喪服の行列-

10年ほど前、Kさんの実家は改築しました。
古い家は完全に取り壊し、新しい家を建てたのだそうです。
風水の本などを参考にしながら、Kさんのご両親があれこれ考えて建てたのですが
Kさんは「その割には、あまりうまくできてないんですけどね」と、笑いながら私に
話してくれました。

新築後、三ヶ月ほどたった頃のことです。
Kさんのお母さんが「昨夜、変な夢を見たのよ」と言い出しました。
お父さんとお母さんは、1階の南側の部屋で寝起きをしていて、その部屋にはご先祖をお祀りした
仏壇が置いてあったそうなのですが
お母さんが見た夢は、その仏壇に向かって、北の方角から、大勢の喪服姿の人々が歩いてくるという
不気味なものだったそうです。

その人々は老若男女様々で、見知った人は一人としていない…
一様に黒い喪服を身に纏い、列をなしてただ歩いてくる。
その顔は皆無表情で、終始、無言だったそうです。

彼らは次々に、仏壇の中に消えていったそうです。

その後、Kさんの実家で、何か変わったことがあったという話はなかったそうですが
「それって、Kさんのご先祖様だったんでしょうかね…?」と訊いてみたのですが
Kさんは、あれはご先祖様たちの行列である、という、それ以外の可能性については
敢えて考えないようにしているんです、と、答えてくれたあと、こうしめくくりました。

「だって、考えてみてくださいよ。
もしもそれがご先祖様じゃなかったら…そっちの方が怖いでしょう?」

174:プリスマ
08/08/23 01:23:00 QoQnRl6J0
四十九本目の蝋燭が消えようとしています……
水琴窟 ◆FMYPc6cKQE 氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 五十話
影虎 ◆OTL/VNUGLY氏  お願いします…


175:影虎 ◆OTL/VNUGLY
08/08/23 01:24:00 ayCqAQPk0
「へんないきもの」

祖母から聞いた話。

いつもの様に畑仕事をしていると、ふと何かの視線を感じた。
後ろを向くと、へんないきものがこちらを見ている。
猪位のサイズで、尻尾と鼻は豚、体は灰色の毛むくじゃらで、足は狸の様。
頭は猿の様な色で耳は無く、目は山羊、口は裂け、牙が生えていた。
よだれをだらだら垂らし、「ヴー…ヴー…」とうなりながらこちらへ来る。

しばらく、睨み合ったそうだ。

ふと、その変な生き物が「ヴオっ!」と一声鳴いた。
それと同時に我に帰り、腰に下げていた蚊取り線香入りの缶を思いっきり投げつけた。
人間を燃やす様な嫌な臭いが充満し、そのいきものは山へと消えた。

私は怖い。いつか家に来るのではと。

【完】

176:プリスマ
08/08/23 01:25:27 QoQnRl6J0
五十本目の蝋燭が消えようとしています……
影虎 ◆OTL/VNUGLY 氏  ありがとうございました…


    ξ
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第 五十一話
うめ2氏  お願いします…


177:うめ2
08/08/23 01:26:31 m8PDj1p50
 29800円

 これもネットの知り合いから聞いた話。
 東京近郊の某県に、へんなアパートがあった。
 小学生くらいの子供が何人もすんでいて、目つきのやたら悪い親みたいなのがいるんだ
けどたまに折檻してるのか子供の悲鳴が聞こえる。
 児童虐待じゃないかって、たまに児童相談所の職員らしい人もくるんだけど、なんか押
し問答で結局、なかに入れない。
 ただ、たまにどうみてもグラサンとコートとかの怪しい人とか、なぜかリムジンみたい
な車がそのアパートの前でとまる。
 普段は滅多になかの子供がでてこないんだけど、たまたま、小学校低学年くらいの、顔
が腫れた女の子に、近所の主婦の人が遭遇した。
 その人はだいぶ前から「このアパートはおかしい」と思っていたので、おもいきってそ
の女の子に「大丈夫」と声をかけたら、女の子がにたって笑って、

  29800円だよ

 それがなんの値段かわからないし、君が悪くなって、主婦の人はアパートの子供と関わ
るりをやめた。
 いつのまにか、アパートからは子供たちもいなくなって、目つきの悪い人もいなくなっ
たんだけど、いまでもたまに近所に、

 「29800円てここですか」と不審な男の人が尋ねてくるらしい。

 なんとなく、話を聞いて、ある種のとてもいやな想像はできたけど、近所では結局、そ
の話は完全にタブーだそうな。

  【完】


178:プリスマ
08/08/23 01:28:03 QoQnRl6J0
五十一本目の蝋燭が消えようとしています……
うめ2氏  ありがとうございました…


    ξ
  ┌┴┐
   ij ll ijij
  |ij ij
  |  |
  ┴─┴

第 五十二話
◆qYEA7rCfag氏  お願いします…


179: ◆qYEA7rCfag
08/08/23 01:28:37 1SP26gEK0
【背後】(1/3)

深夜過ぎまで、課題をこなしていた時の話です。

その日の夜も、最近恒例になっていた土砂降りでした。
普段は虫の鳴き声が聞こえるのですが、当然、それもありません。
雨音が聞こえてくる中、PCのキーを打つ音だけがカタカタと鳴っています。

ふと、画面から目を離して伸びをすると、背後が気に掛かりました。
何も居ないと、頭の片隅で分かっては居るんです。
それでも一人暮らしの性か、気になってしまうと居ても立ってもいられません。
「あー疲れたなー」と、わざわざ声に出して後ろを振り返りました。

___________
| □      |押| ○が私、その前にある■がテーブルです。
|        |し| 脇にある□はTVで、■の連続が壁になります。
| ■○     |入|
|     ___|れ|
|    |■■■■■■
|___   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|台所  | 廊下
|____|______


勿論、そこにはちゃんと閉められた押入れの襖があるだけです。
何となく安心した私は、ついでとばかりに廊下にあるトイレに立つことにしました。


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