08/07/20 23:51:59 HH+GrnrNO
やがてスピーカーから司会の人の声が流れだした。
周りの人たちのざわめきが華やいだものになって、まさにいよいよ花火が始まるって時。
姉がボソッと言った。
「わたし、花火、きらいだね」
「え?」
「カアサンが、見えなくなるからね?ね?」
母さん?
俺は一瞬「?」になった。
たしか、あんたの母さんは病死している筈では…と思ったところで、今日は星空だということに気づいた。
あー、星の事言ってんのか。
と気づくと、姉が自分の髪を踏んでゴテンと転んだのを目撃した時以来の気持ちになった。
「アネも人間らしいとこあるんだな」
「……人間?」
「星になったんだろお母さん」
花火があがった。
俺の視界の端で、白い光が散る。
昼間のような光に強く照らされながら姉は、
笑ってた。
「カアサン重くて死んだのに?」
「え?」
「潰されて立てなくて死んだのに?」
星になるの?、と更に笑みが深くなる。
「私は蛇に刺されて死ぬんだよ」
花火も見ず、笑顔で、俺を凝視しながら言うのだ。