08/04/27 21:44:42 LiUNb7vG0
「プロジェクトX~挑戦者たち3~ 偽装高級車販売ビジネスモデルの誕生」
「レクサスを高級車として販売せよ」トヨタ首脳部が業務命令を発した。販売部長は戸惑った。
「偽装高級車レクサスを高級車として販売することはできません!」
レクサスはトヨタマークを「し」マークに付け替え、表皮を高級にしたトヨタ車にしか見えなかった。
「高い価格設定にして広告戦略を工夫してみてはどうだろう」 トヨタ首脳の提案に、開発部長は驚嘆した。
「高級車を買うオーナーはブランドにうるさい。そんな誤魔化し効きめはありません!」
「俺たちがやらずに誰がやるんだ。俺たちの手で売り上げるんだ!」
首脳陣の熱い想いに、販売部長は心を打たれた。商人の血が騒いだ。「やらせてください!」
夜を徹してのイメージ作りが始まった。
価格は思い切ってベンツ・BMW同クラスに設定した。
意味が分かりづらいCM広告を流した。
豪華に見えるパンフレットも作った。
だが、本物の高級車とは、どうしても認知されなかった。
販売部長は、来る日も来る日もイメージアップ作戦を練った。
いっそBMWに転職すれば、どんなに楽だろうと思ったこともあった。 追い詰められていた。
そこへ首脳陣が現れ、こうつぶやいた。
「発想を変えるんだ。高級車はクルマだけで高級なんじゃない」
そうだ。サービスだ。ディーラーサービスで高級車オーナだと酔わせる方法があった。暗闇に光が射した気がした。
レクサス専門ディーラーをエレガント風に整備した。
トヨタから接客マナーを身につけたイケメン店員、美人レクサス嬢を引き抜いた。抜かれたディーラーの事はお構いなし。
レクサス専用搬送トラックも用意した。
来客には無料でお茶やケーキを振る舞い、洗車サービスも始めた。納車の際にはパーティーを開催した。
トヨタ車を高級車として販売するビジネスモデルが誕生した瞬間だった。
首脳陣と販売部長、従業員達は、レクサスショップの片隅で朝まで飲み明かした。 皆、充足感に包まれ、涙が止まらなかった。
「部長、試乗車で日本海に叫びに行ってきてもいいですか」従業員は言った。
「ああ、いいとも。だが本物の高級車だとは思うなよ。中身はトヨタのままだからな」部長は自分のジョークに、肩を揺らして笑った。