08/04/27 21:44:05 LiUNb7vG0
「プロジェクトX~挑戦者たち2~ スポーツカーっぽいクルマの誕生」
「レクサスのスポーツカーを開発せよ」トヨタ首脳部から業務命令が発せられた。
開発部長は戸惑いながら言った。「スポーツカーを開発する技術はありません!」
スポーツカーのエンジンはヤマハ頼み、F1マシンの開発はフェラーリに産業スパイを送り込んでようやく達成できるありさまだった。
「ISをスポーツカーに仕立ててみてはどうだろう」 トヨタ首脳の提案に、開発部長は驚嘆した。
「ISはアルテッツァの内装を豪華にしただけで、さらにスポーツカーに仕立てるなんて無理です!」
「俺たちがやらずに誰がやるんだ。俺たちの手で作り上げるんだ!」
首脳陣の熱い想いに、開発部長は心を打たれた。商人の血が騒いだ。「やらせてください!」
夜を徹しての偽装スポーツカー作りが始まった。
レクサス開発時に試作した表皮テクニックを用いてスポーティな内装にした。
マフラーを改造した。イイ音が出た。
誰でも運転できるように電子制御システムも搭載した。
だが、本物のスポーツカーの味だけはどうしても出せなかった。
開発部長は、来る日も来る日も偽装テクニックを練った。
いっそBMWに転職すれば、どんなに楽だろうと思ったこともあった。 追い詰められていた。
そこへ首脳陣が現れ、こうつぶやいた。
「発想を変えるんだ。スポーツカーは走りだけでスポーツカーなんじゃない」
そうだ。スペックだ。カタログスペックだけでスポーツカーと思わせる方法があった。暗闇に光が射した気がした。
エンジンに5リッターV8を搭載した。表示出力423ps/6600rpm、表示トルク51.5kgm/5200rpmを得た。
トランスミッションはLS460の8段ATを直結することで解決した。
「これだ。これこそ俺達が捜し求めていたスポーツカーだ!」
表示スペックだけの偽装スポーツカー誕生の瞬間だった。
首脳陣と開発部長、従業員達は、研究所の片隅で朝まで飲み明かした。 皆、充足感に包まれ、涙が止まらなかった。
「部長、完成した車で日本海に叫びに行ってきてもいいですか」従業員は言った。
「ああ、いいとも。だが制限速度は守れよ。中身はトヨタのままだからな」 開発部長は自分のジョークに、肩を揺らして笑った。